■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
運命を変える者(夢小説)
VPを知らない方でも読めるように修正してみました。
(ヴァルキリープロファイル)
[→]
【PAGE 1/18】
今に思えば、奴と出会ったのは“縁”だったのだろう。
神に仇なすその男は、二メートル強の剛刀を背に担いでいる。
――陰惨とした地上には疎遠の、強き意志を宿した蒼穹の瞳。
俺が唯一、この世に残した未練とも言うべき相手。
アレン・ガード。
奴は俺の死に際に、まるで自分が自決するかのような顔でそう名乗った。
アルトリア城の廊下に、青年の声が響く。
コツコツと軍靴の音が鳴り、止まる。と、アルトリア軍近衛騎士団長の父は、息子を振り返った。「王立騎士団長」の名に相応しく、父は厳格な男だ。歳は五十前半。明るく映える金髪に、気難しそうな凛とした面立ち。蓄えた鬚は几帳面に整っており、ギリシャ神話の男神を思わせる精悍な男だった。
彼は絹で出来た上等なマントを翻し、息子に向きなおると頭を振る。
「ジェラード王女、ロンベルト殿、そして兵士三十数名の死者。……事態は明白だ」
「父さん!」
珍しく息子が食い下がる。普段は聞き分けの良い息子の――ロウファの思いに比例して、彼が着こんでいる銀の甲冑がカシャリと鳴った。
無理も無い。
息子――このロウファと言う青年は、アルトリア最強と謳われた傭兵・アリューゼを、誰よりも慕っていたのだから。
父の凛々しさに反して、ロウファは中性的な美青年騎士だった。銀の甲冑に流れる、細い金髪。青の瞳。女性のように線の細い面立ちが、今は怒りできゅっと引きしめられている。
父は溜息を吐いた。
「わかってくれ」
去り際に、ロウファの肩を叩く。会話を終える時の、父の癖だ。
いつも一方的で、それ以上の質問は許さない。
ロウファは唇を噛んだ。俯く。
槍を握る、自分の手が震えた。自分の無力が、無知が、歯痒い。
(アリューゼさん……)
胸中(こころ)の声が、力なく零れていく。
まるで暗闇で灯火を失った幼子ように、ロウファの胸には、ぽっかりと穴が開いていた。
――三日前。
「ここに、男性が駆け込んで来なかったか!?左目に刀傷のある、長身の男性だ!!」
ロウファが昼の稽古を終えて門前を過ぎると、西門の門番に、血相を変えて一人の青年が詰め寄っていた。
歳はロウファと同じ二十前後。ロウファより色素の薄い金髪と、蒼色の瞳が印象的だ。カーキ色のジャケットに黒のTシャツ、白のズボンという――鎧が剣士の標準装備であるアルトリアでは、珍しい姿の青年だった。彼は背に、二メートル強の白い大きな筒を抱えていた。
(左目に刀傷のある、長身の男性……?)
突然現れた青年の言葉に、ロウファはぴたりと足を止めた。
左目に刀傷――
アリューゼの特徴だ。
ロウファはハッと目を剥いた。
「ちょ、ちょっと君!それってもしかして、アリューゼさんの――」
「頼む!通してくれ!!急がないと、手遅れになる!!」
ロウファに心当たりがあると見るや、青年は門番を押しのけて城に割り込もうとした。慌てて、門番とロウファが、青年を押しとめる。
「ちょっと待ってくれ!その前に事情を――」
ロウファが問うと、青年は、何かに気付いたように、は、と瞬きを落とした。
「……悲鳴」
そう、確かに彼は言った。
ロウファは怪訝に思いながらも、青年に倣って耳を澄ましてみる。
が。
だんっ!
青年は二人の意識が別を向いたと見るや、脇を押さえていた門番を肘鉄で黙らせ、城中に駆け出した。
「こ、こら!!!!」
慌てて、ロウファが後を追う。
だが彼はすでに、十数メートル前を駆けていた。
多くの兵が倒れた、血まみれの廊下を無言で駆け抜けて――……。
……………………
………………
ロウファがハッと顔を上げると、部屋の蝋燭が、ゆらゆらと自分を照らしていた。
今日は槍の稽古にも身が入らない。そう思って、自室の本を読み漁っていた時のことだ。いつの間にか、うたた寝したらしい。
[→]
【PAGE 1/18】
■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る