突然現れた少年。クロノ・ハラオウンは、その場にいた者達に戦闘行為の中止を呼び掛けた。
「直ちに戦闘行為をやめて、こちらに投降して貰おう」
突然の事に、事態が上手く飲み込めないなのは。
とりあえず、クロノの言う通りにした方が良いと思った優人。
管理局が来てくれた事に安堵したユーノ。
そして―――。
「フォトンランサー!」
突然アルフが、クロノに目掛けて魔法を放った。
「くっ!」
「今だよフェイト!」
クロノはシールド魔法でそれを防ぐ、その隙にフェイトは離脱しようとした。
「逃がすか!」
クロノはフェイト達に狙いを付け、魔法を放った。
「ブレイズカノン!」
放たれた砲撃は、フェイト達に迫る。
先程の戦闘で体力を失っていた二人には、クロノの砲撃をかわす事は出来なかった。
そして、爆煙が立ち込める。
「フェイトちゃん!」
なのははフェイトの名を叫んだが、返事は返って来なかった。
誰もが、直撃を予想していた。
爆煙が晴れると、そこにいたのは―――。
「まったく、厄介な事になってしまったな・・・・・」
「レ、レイヴン?・・・・・」
そこにはレイヴンが居た。
クロノの魔法が当たる直前に、魔法で防いだのだ。
「ここは俺に任せろ」
「で、でも・・・・・」
「いいから、さっさと行け。俺は大丈夫だ」
「フェイト。今はレイヴンの言う通りにしよ」
「う、うん・・・・・」
フェイトは戸惑ったが、言う通りに、アルフと共にその場を離脱した。
「逃がすか!」
クロノはフェイト達の追跡をしようとしたが、レイヴンによって阻まれた。
「貴様! 公務執行妨害で逮捕するぞ!」
「残念だが俺はミグラントだ。公務執行妨害なんて怖くないんだな」
「ミグラントだと? 所属は何処だ?」
「生憎フリーだ」
ミグラントは通常、何処かしらの管理局に登録されているチームに所属している物である。
未登録及び無所属のミグラントははぐれミグラントと呼ばれ、大抵の者は犯罪者とされている。
「なら、逮捕させて貰うぞ」
「お前に出来るかな?」
二人はお互いのデバイスを構えた。
一触即発の状態に、優人達は黙って見ているしかなかった。
そんな状況を打ち破るように、一人の女性の声が聞こえた。
《待ちなさいクロノ。彼とは戦わないで》
「艦長!? それは一体どういう―――」
《彼と話をさせて》
どうやら、女性はレイヴンの事を知っているらしい。
そしてレイヴンも、女性の声に聞き覚えがあった。
「久しいなリンディ。十年振りか?」
《十五年振りよ。相変わらず、時間に無頓着ね》
「余計なお世話だ。お前が居たとはな、知っていたら、フェイトと共々投降していたのに・・・・・」
《私が悪いって言うの? そういう貴方はどうしてここに?》
「色々あってな・・・・・。悪いが行かせて貰うぞ。詳しい事はアイツらに聞いてくれ」
そう言って、レイヴンはその場を立ち去った。
離脱したフェイト達の後を追ったのだろう。
「待て! 逃がす―――」
《行かせてあげなさいクロノ》
「艦長!? どうしてですか!?」
《もし、彼と戦う事になれば、貴方も無事ではすまないわ。それよりも、彼らから事情を聞く事の方が大事よ》
「・・・・・分かりました。三名の魔導師をアースラに収容します。君達もそれで良いか?」
「え、えっと・・・・・」
「とりあえず言う通りにしよう」
「うん、こちらの事情も伝えた方が良いしね」
三人は、クロノの誘導の元、アースラに乗船する事になった。
アースラに乗船した三人は、執務官のクロノと艦長のリンディ・ハラオウンに、これまでの経緯を話した。
「なるほどね・・・・・事情はだいたい分かったわ。後は、私達に任せてくれないかしら?」
「え?」
「それはどういう・・・・・」
「簡単な話だ。君達はこの件に関して手を引けって事だよ」
「どうしてですか!!」
「それは君達が一般人だからだよ」
クロノは指摘する。
確かに優人となのはは魔術、魔法をそれぞれ使え、これまでのジュエルシードを封印して来た。
しかし、魔法、魔術を使えると言っても、管理局から見れば一般人にしかならない。
「でも―――」
「悪いけど、これ以上は巻き込めないわ。後は私達に任せて、元の生活に戻りなさい」
なのはは困惑していた。
このまま彼らの言う通りにすれば、前の生活に戻れるが、フェイトとは二度と会えない気がした。
「それじゃ、話は決まったこと―――」
「待って下さい。勝手に話を進めないで下さい」
リンディの言葉を遮りながら、優人は言った。
突然の言葉に、誰もが驚いたが、リンディは優人の話を聞く事にした。
「何かしら?」
「ジュエルシードの収集を、俺達に手伝わせてくれませんか?」
「君は何を言っているんだ。一般人が出る幕じゃない。大人しく―――」
「拒否するならそれでも構いません。自分達だけで、勝手にやりますから」
その言葉に、流石の二人も唖然とした。
一般人である彼が、強引にでも、事件に関わるつもりでいたからである。
「分かっているのか? 遊びでやるんじゃないんだぞ?」
「遊びでやっていないから、俺達はジュエルシードを六つも集める事が出来たんだ。そうだよな、なのは?」
「え!? は、はい! 私達は遊びでやっていません! だから、手伝わせて下さい!」
「だがしかし・・・・・」
「あの、僕からもお願いしても良いでしょうか? 二人はとても頼りになりますから」
ユーノも、二人の協力を申し出た。
クロノは少し困惑していた。秀才である彼が言うのなら、実力は確かなのであろう。しかし、一般人である彼らを危険な目に合わせて良いのかと。
クロノはどう判断して良いか迷っていると、リンディが口を開いた。
「わかりました。それなら、貴方達にも手伝って貰います」
「艦長!? 良いんですか!?」
「勝手に動かれてしまったら、こちらが困るもの。なら、目が見える所に居てもらった方が良いわ」
その言葉に、三人は喜んだ。
これで少なくとも、フェイトと接触する機会を望めるからである。
しかしリンディは、ある条件を突きつけた。
「ただし! 最低でも、親御さんの許可を取ってからです。それがない限り、貴方を今回の事件に関与させません。これはこちらの最大譲歩です」
こう言われてしまうと、三人は何も言えなかった。
「ど、どうしょう優くん・・・・・」
「・・・・・ど、どうしょうか?」
「ふ、二人とも頑張って!」
こうして二人は、親の許可を得るという、ジュエルシード集めより難関な試練を受ける事になった。
その後、親の了承を得るため、優人となのは一度帰宅することになった。
ユーノは元々捜索願いが出されて居たので、アースラに残る事になった。
「ユーノ・スクライア。君に聞きたい事がある」
部屋を出ようとしたユーノをクロノが呼び止めた。
「何でしょう?」
「高町なのはについてだ。彼女は、ジュエルシード以外のロストロギアを所有していたか?」
クロノの問いに、ユーノは?を浮かべた。
魔法すら知らなかった少女に、そんな物を所有している訳が無い。
何故そんな事を聞くのか疑問を浮かべながら、ユーノは答えた。
「いえ、そんな気配はありませんでしたが?」
それを聞いたリンディとクロノは、顔見合わせて、再びユーノに質問した。
「衛宮優人についてだが、君から見て彼はどう思う?」
再び、意味が分からない質問が来た。
ユーノは困惑しながら、その質問に答えた。
「どうって・・・・・。彼は良い人だと思いますけど・・・・・見知らずの僕を助けてくれましたし、いろいろと良くしてくれました」
そう答えると、今度はクロノとリンディは困惑していた。
あり得ないと言わんばかりである。
「あの、彼が何か?・・・・・」
少しの不安を感じながら、ユーノは二人に問いただした。
二人は、言うか言うまいが悩んだが、ユーノにある事実を告げた。
「落ち着いて聞いて頂戴。衛宮優人という少年は“人間ではじゃないの”」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
リンディの言葉に、ユーノの思考は凍り付いた。
無理もない、今まで一緒に過ごしていた友人が、人間では無いと告げられたのだから。
リンディは説明を続けた。
「彼は俗にいう、魔法生命体
プログラム
と呼ばれている物で。人間でも、使い魔でも無い存在。古代魔法文明の技術の一つに当たる物よ」
ユーノは考古学者の端くれである為、リンディの言う魔法生命体に関しては知っていた。
しかし、だからと言って、優人が魔法生命体だとは思えなかった。
「ちょっと待って下さい! 魔法生命体の事は文献で読んだから知っています! けれど、彼には自我があるじゃないですか!」
ユーノの言っている事はもっともだった。
魔法生命体は人の形を取ってはいるが、所詮はプログラムに過ぎず、与えられた命令を遂行するだけの存在なのだから。
「私達も最初は驚いたわ。会って話したら、本当に人間その物なんだから。でも、解析結果は魔法生命体として出たわ」
「元からああなのか、もしくはバグでそうなったかは分からないが、少なくともロストロギアが関わっているのは間違いでは無い。君は何か知らないか?」
「・・・・・・・・・・」
ユーノは何も答えられなかった。
いきなりの事実に、ついていけなかったからである。
それを見かねた二人は、これ以上の尋問をする事はしなかった。
「流石にこれ以上は酷だな。今日はもう休んだ方が良い」
「そうね。しばらくは、考える時間がいるものね」
そう言って二人は部屋を出たが、ユーノはただ立ち尽くしていた。
一方フェイト達は、隠れ家のマンションに着いていた。
しかし、その表情に安堵は無く、不安に埋め尽くされていた。
「レイヴン・・・・大丈夫かな?・・・・」
「レイヴンなら大丈夫だって! アイツの強さは、あたし達が良く知ってる」
「うん・・・・そうだね・・・・」
「それよりも、これからどうするんだい? ジュエルシード集め。管理局の奴らが来たんじゃ――――」
「うん、分かってる。それでも、私は最後まで諦めない」
「フェイト・・・・・」
フェイトが持っているジュエルシードの数は、僅かに二つしか無い。
当初はもっと早く集めるつもりが、なのは達との争奪戦で、思いの他集まらなかったのだ。
「ごめんねアルフ。こんな事に巻き込んじゃて・・・・・」
「何言ってのさ、あたしはフェイトの使い魔だよ。フェイトを守るのがあたしの役目さ!」
「うん・・・・・ありがとうアルフ」
フェイトは笑顔で、アルフに感謝した。
アルフは、フェイトを絶対に守ろうと決意するのだった。
高町家では、緊急家族会議が開かれていた。
優人となのはは、これまでの経緯を家族に話し、管理局の手伝いをすると告げたからである。
「・・・・・なるほどな、それが今まで隠していた事か・・・・・」
「「ご、ごめんなさい・・・・・」」
優人となのはは、頭を下げて謝った。
「隠し事くらいは一つや二つはあっても良いけど、問題はそこじゃない」
四人の目は険しくなった。
やはり、管理局の手伝いをする事を了承してくれないらしい。
「その管理局って人達がいるなら、なのはや優人がやる必要がないじゃないか? 」
「そうだよ。優人やなのはが危険な目にあう必要ないよ」
「そうね、任せられる人がいるなら、任せた方が良いと思うわ」
恭也、美由紀、桃子はそれぞれ二人を説得しようとした。しかし、二人の答えは決まっていた。
「恭也兄さん、美由紀姉さん、桃子さん、心配してくれてありがとう。でも、俺達はここで降りるつもりはない」
「どうして? 管理局って人達はプロなんでしょ? なら・・・・・」
「確かに、管理局の人達に任せれば、事件を解決してくれるかも知れない。でも、俺達は納得出来ないと思う」
「納得出来ない?」
「はい、途中で降りるのは、何か間違っていると思うんです。自分でも分からないけど、間違っていると感じるんです」
優人は真っ直ぐな眼で答えた。
その眼には迷いは一切無かった。
「・・・・・なのはも、同じ気持ちか?」
「うん、このままフェイトちゃんと、お話出来ないまま終わるなんて嫌だよ」
なのはも、覚悟を決めた眼をしていた。
それはとても固い決意を固めている眼であった。
「・・・・・分かった。二人の好きなようにしなさい」
「貴方!?」
「父さん何を言っているんだよ!」
「そうだよ! 二人が大怪我しちゃうかも知れないんだよ!」
士郎の了承の一言に、三人は反発した。
しかし、士郎は意見を変えるつもりはなかった。
「二人は一度決めた事は、絶対に曲げないのは知っているだろ? それなら、二人を見守ろう」
そう言って、士郎は再度二人を見て、ある事を約束させた。
「いいか二人とも、無事に帰って来る事。約束出来るか?」
「はい!」
「うん!」
その後、桃子と美由紀は士郎の説得で、何とか了承してくれ、恭也も渋々了承し、見事に管理局の手伝いをする事になった。
ユーノは一人悩んでいた。
先程のクロノ達の会話が頭に離れないせいである。
しかし、いくら考えても、優人を魔法生命体だと思えなかったのだ。
(はぁ・・・・・僕は一体どうすれば・・・・・)
そんな事を考えていると、通信が入って来た。
(一体誰だろう?)
そう思いながら繋げてみると、思いがけない人物からの通信であった。
《やっほー、ユーノくん聞こえる?》
「なのは!? 優人!? 一体どうやって!?」
《レイジングハートにお願いして、通信を繋げて貰ったんだ》
【これくらい、朝飯前です】
「ははは・・・・・そうなんだ・・・・・」
この二人には驚からされてばっかだなと、ユーノは思った。
《? どうしたのユーノくん? 何か元気無いみたいだけど・・・・・》
「!? い、いや、何でも無いよ。ただ疲れているだけだから・・・・・」
ユーノは、クロノの話を隠す事にした。
1ヶ月、一緒に過ごした自分でもショックだったのだから、兄妹同然に育ったなのはが聞いたら、どんなにショックを受けるか、考えたら怖くなったからだ。
「それで? 士郎さん達を説得出来たの?」
《うん、ちゃんと許可を貰ったよ。だからまた一緒にジュエルシードを集める事が出来るね》
「良かったね二人とも」
《ああ、これからもよろしく》
「え?」
《え? じゃないだろ。これからも、ユーノには魔法を教えて貰うんだから》
「僕で良いの?」
《当たり前だろ。友達に教わるのが一番だ》
「あ―――」
優人の一言で、ユーノはある答えに辿り着いた。
そう、魔法生命体や人間以前に、衛宮優人は自分の友人なのだと。
「・・・・・うん、そうだね。まだ教える事があったね」
《そう言う訳で、まだまだ教えて貰うよ。ユーノ》
《よろしくなの!》
「うん! こちらこそ、よろしくね!」
こうしてユーノは、優人との友情を再度確認する事が出来たのであった。
地球に近い、とある辺境世界に立っている城にアルバートがいた。
そこに、一人の人間がやって来た。
顔はフードで隠してはいるが、男性だと分かる。
男はアルバートに膝まずいた。
「マスター。管理局が地球にやって来ました。如何なさいます?」
「予想以上に来てしまったか・・・・・。原因はあの次元震か・・・・・」
次元震が起きてしまったのは、アルバートにとっては予想外であったが、彼にとっては許容範囲内であった。
「・・・・・いささか強引な手だが、例のプランを実行するしかあるまい」
「では私が―――」
「待てアサシン。貴様は引き続き、闇の書の主と、例のサーヴァントの監視を続けるがよい。あれは私がやる」
そう言って、アルバートは椅子から立ち上がり。愛用の剣を持ち出した。
「では、ご武運を」
「貴様こそ、しくじるなよ?」
「アルバート・アサシンに名に懸けて、任務を遂行致します」
そう言って、アルバート・アサシンと名乗った男は、その場から消えた。
「さて、私も行くとするか」
そしてアルバートも、闇の中に消えて行ったのである。
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キャラステータス
クロノ・ハラオウン
使用魔法 ミッド式
得意魔法 射撃全般
デバイス S2U
ステータス
筋力 B+
耐久 B+
敏捷 C+
魔力 A
幸運 D
スキル
統率力(A)
集団戦闘において、味方の戦闘力を上げるスキル
心眼・真(B)
修行、鍛練により培った、戦術論理。
練達(A)
クロノが厳しい修練と努力によって得たスキル。
このスキルを所持していると、筋力、耐久、敏捷のステータスが上がる。
アースラに乗船していた執務官。
若いながらも、最年少で執務官になった少年。
魔力量はなのは、フェイト共に劣るが、戦闘技術は二人を凌駕する物である。
現在、なのは、優人、ユーノを引き連れ、ジュエルシード回収を行っている。