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魂郷学園 第2話:少女B誘拐事件/災禍の顕主
作者:亀鳥虎龍   2018/05/13(日) 20:36公開   ID:u2/trWfDi0U
 白野が行きつけにしている喫茶店『smile』。

扉を開けると、店員であるベルベットが迎える。

「あ、いらっしゃい」

「コーヒーお願い」

「了解」

彼女が淹れてくれたコーヒーを受け取り、ゆっくりと啜っていく。

しかし、白野は知らなかった。

彼女を中心に、新たな戦いが始まる事を……。






―少女B誘拐事件/災禍の顕主―





「あむ」

美味しそうにサンドウィッチを口に運ぶ白野。

「それにしても、この料理はよくできているな。 文字通り、味がよく出ている」

褐色の肌に白い髪の男、『アーチャー』がコーヒーを啜り、

「いや〜、ホントですねぇ」

ピンクの神に狐の耳が生えた少女、『キャスター』がサラダを口に運び、

「うむ。 このオレもこのコーヒーの酸味はとても良いと思うぞ」

金髪で黒いジャケットを羽織った男、『ギルガメッシュ』がコーヒーを啜り、

「ベルベットの料理は、良い文明です」

銀髪に褐色の肌の少女、『アルテラ』も嬉しそうにフレンチトーストを口にする。

「余も同感だ」

そしてセイバーも、紅茶を楽しそうにすすった。

「そう言って貰えると、こっちも作り甲斐があるってものよ」

そう言うとベルベットも、楽しそうに笑うのである。






 魂郷町の何処かにある一軒の居酒屋『スナックお登勢』。

その二階にある事務所『凛々の明星ブレイブヴェスペリア』は、どんな依頼も受けるなんも屋でもある。

「ふぁ〜……」

長い黒髪で黒い衣を纏った青年が、ソファーに横たわっていた。

彼の名はユーリ・ローウェル。

この事務所のメンバーで、町の人々とっての頼れる兄貴分でもある。

「カロルは学校だし…、ジュディは別の仕事だし…ヒマだぜ」

するとピンポーン!とインターホンが鳴り、ユーリはそれに反応した。

「はいはいっと」

玄関前まで歩くと、彼はゆっくり扉を開く。

そこには、一人の女性が立っていた。

長身で黒髪のポニーテール、白地のTシャツに片方が切り落とされたGパン姿。

ユーリにとっては、初めて見る外見の女性だ。

「あの、どんな依頼も引き受けるという事務所は、ここでしょうか?」

「おう、凛々の明星ブレイブヴェスペリアにようこそ!ってな」






 リビングのソファーに座り、ユーリは女性と顔を向かい合う。

「とりあえず、アンタの名前を聞こうか?」

「神裂火織と申します」

「ユーリ・ローウェルだ。 んで、依頼というのは?」

「人を探して欲しいのです」

そう言うと神裂は、一枚の写真を見せる。

写真には、美しい黒髪に琥珀色の瞳が特徴の少女が写っていた。

「コイツは?」

「彼女は…」

「私の…友人です」

神裂の依頼はこうである。

この街に住んでいる友人から、連絡が取れなくなったので探してくれという。

「彼女は週に一回、私に連絡を寄越してくれるのです。 ですが最近、連絡が来なくなってしまって……」

「成程、よく分かった。 けどな、人探しは結構難しいぜ?」

「分かっています。 それを承知でお願いしたいのです」

深々と頭を下げる神裂であったが、ユーリは深くため息を吐く。

「分かったよ。 んじゃ明日、この事務所に来なよ」

そう言って彼は、すぐさま捜索へと向かうのであった。






 魂郷町の街中を歩き、捜索を開始から10分後。

「黒い髪に琥珀色の瞳の少女か…簡単に見つかるか?」

しかし、簡単に見つかるまでもなく、

「ふぅ〜。 とりあえず、一休みするか」

目の前の喫茶店に目にした。

彼は扉を開けると、一人の女性が声を出す。

「いらっしゃい」

「っ!?」

それを見たユーリは、目を大きく見開く。

美しい黒髪に琥珀色の瞳の少女――ベルベット・クラウが、目の前に立っていたのだ。






 カウンター席に座ると、ユーリはメニューを目に通す。

「何か注文は?」

「コーヒーとチョコレートパフェを」

「了解」

コクリと頷くと、ベルベットは厨房へと向かう。

「(黒い髪と琥珀色の瞳……。 写真の通りの見た目だな)」

「はい、コーヒーとチョコレートパフェ」

「どうも」

スプーンで掬い、パフェを口に運ぶユーリ。

「美味ぇな」

「そりゃ、どうも」

辺りを見渡す彼であるが、客らしき人物が見当たらない。

「客は…あまり多くないな」

「マスター曰く、「営業は適当で良い」だとか」

「それは経営者として、流石にどうかと思うけどな」

するとユーリは、思わずベルベットに問いかける。

「……実はな、アンタを探してる奴がいるんだけどよ」

「えっ?」

「そいつ、アンタからの連絡が届かなかったのが不安になったそうだ」

「………」

「アンタ、何で知り合いからの連絡を寄越さなかったんだ?」

「………」

暫く沈黙したベルベットであったが、彼女はゆっくり口を開く。

「実は私…記憶が無いの……」

「っ!? 記憶喪失ってヤツか!?」

「ええ。 今の私に分かるのは名前と、自分が味覚喪失って事よ」

「(味覚がねぇのに、この腕前かよ!? スゲェな)」

パフェと完食し、最後にコーヒーを啜ったユーリ。

「ご馳走さん」

そう言うと、彼はsmileを後にしたのであった。






 翌日、神裂が事務所を訪れた。

「失礼します」

「おう、来たか」

ユーリはソファーに座らせ、状況を報告する。

「まずは、報告だ。 探し人は見つかった」

「ほ、本当です!?」

「ただし、本人は記憶喪失になってるようだ」

「えっ!?」

「事実だ。 アンタへの連絡が断たれていたのも、それが原因だ」

「そう…ですか」

それを聞いた神裂は、一枚の封筒を差し出す。

ユーリは受け取ると、中身は一万円札の束が入っていた。

「これは依頼の報酬です。 ありがとうございました」

一礼すると、彼女は事務所を後にする。

そんな姿を、ユーリは奇妙な違和感を感じた。






 事務所を後にした神裂は、路地裏へと姿を見せる。

そんな彼女の元に、一人の人物が現れた。

紅い髪で、顔にはバーコード状の刺青を入れた神父だ。

「見つかったのかい?」

「ええ。 ですが、本人は記憶喪失だそうです」

「……自作自演とかは?」

「そうでもなさそうです」

「まあ、僕等は仕事を果たすまでさ」

そう言って彼――ステイル・マグヌスは、煙草を口に咥えた。

「待ってろ、災禍の顕主」






 午後15時頃。

「〜〜♪」

鼻歌を歌いながら、店のテーブルを拭いているベルベット。

すると、扉がゆっくりと開いた。

「あっ、いらっしゃい」

入って来たのは、赤い髪の神父である。

「キミ、一人かい?」

「ん? そうだけど…」

「そうかい。 なら一応、人避けの張って正解だったよ」

「っ!?」

神父の言葉に、ベルベットがゾクリと背筋を凍らせてしまう。

「アンタ、何者……」

「ステイル=マグヌスと名乗りたいが、今は『Fortis931』と名乗っておくよ」

「どういう意味?」

この問いに対し、ステイルは手から炎の剣を生み出し、

「強いて言うなら―――殺し名さ」

容赦なく振り下ろした。





「くっ!」

突然の炎に、ベルベットは再び後ろへと下がる。

そんな中、彼女は違和感を感じた。

コレだけの騒ぎが起きているのに、誰も気づいていないのかと――。

「ああ、周りの事が気になるのかい? 安心してくれ、人避けの結界を張ってるから、この部屋の騒動は聞こえてないよ」

「最初から、アタシを殺す為に!?」

「今更気付いたのかい? 災禍の顕主」

「何を言ってるの? 災禍の顕主?」

「(ホントに憶えていないようだな。 まあ、そんな事はどうでもいい)」

「アタシを狙う理由は何なの?」

「あの子を返して欲しい。 それだけだ」

するとステイルの背後から、炎の巨人が出現し、

「やれ、魔女狩りの王イノケンティウス

彼の命令とともに、その拳を振り下ろした。






「うっ……」

ベルベットが目を覚ますと、部屋のほとんどは焼き焦げていた。

それどころか、彼女も右半身に火傷を負っている。

「驚いたよ。 魔女狩りの王イノケンティウスの攻撃を受けて、生きているなんてね」

「ハァ…ハァ……」

「さて、あの子は何処だ?」

「何の…事よ?」

この問いに対し、ベルベットは疑問を感じるが、

「とぼける気かい?」

ステイルは彼女の背中に手を当て、凄まじい炎を放った。

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

「もう一度言うぞ。 彼女は、何処だ?」

「知ら…ない…」

「そうかい…ならもう一度」

「グアァァァァァァ!」

拷問を受けるベルベットであったが、必死に体を動かし、

「うあぁぁぁ!」

「!?」

なんとかステイルの拘束から脱する。

そして咄嗟に走り、窓ガラスを突き破った。

「しまった!?」





 窓を突き破り、難を逃れたベルベット。

「ハァ…ハァ…」

火傷が酷く、上手く体を動かせない。

「くっ!」

ズキンと火傷が痛む。

しかし、その時であった。

「七閃」

「!?」

突然の攻撃に、彼女は思わず左手で防ぐ。

「っつ!」

攻撃の放たれた方向には、ポニーテールに左右非対称の格好をした女性が立っていた。

女性――神裂火織が、ベルベットに鋭い視線を向ける。

「咄嗟に防ぐとは、迷いのない反射速度ですね。 流石は災禍の顕主」

「ハァ…ハァ……。 だから、何の事よ!?」

「遥か1000年以上前、世界を闇に陥れた存在――災禍の顕主。 それが、アナタの正体です」

「ふざけないで! アタシは人間よ!」

「では、その左腕は何ですか?」

「えっ?」

彼女に指摘され、ベルベットは自身の左腕を見た。

それは右腕とは対照的に、左腕は赤黒い異形となっている。

明らかにコレは、人間のものではなかった。

「あ…あ……あああああああ!?」

長手袋の下は包帯を巻いていたが、彼女自身は左腕を見て驚愕する。

まるで、初めて目にしたかのように……。

「うそっ!? これが私の左腕なの!? イヤァァァァ!?」

混乱する彼女に、神裂は刀を構え、

「今の貴方に、言葉が通じると思えないですが……あの子の居場所を聞き出す為です」

「!?」

一瞬の内に接近し、鞘から刃を抜いたのだった。






 まさに一瞬の事だ。

神裂の一撃とともに、ベルベットは意識を失ってしまう。

「………」

「神裂!」

「ステイル…」

「災禍の顕主は!?」

「気絶させました」

「そうか……」

駆け寄ったステイルに、神裂はベルベットをゆっくりと持ち上げる。

「行きましょう」

「ああ」

こうして二人は、ベルベットを連れ去ったのであった。

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