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魂郷学園 第4話:破滅へのカウントダウン
作者:亀鳥虎龍   2018/05/18(金) 11:23公開   ID:SITQgi7z/cc
 月明かりが美しい夜。

「………」

ベルベットは何故か、野原の上に立っていた。

辺りを見渡すと、そこで一人の少年を見つける。

金髪にローブが特徴で、外見は10歳くらいの少年だ。

「あっ!」

少年も彼女に気付き、すぐに駆け寄った。

「どうしたの? 随分と思いつめた顔だけど」

「…そう見える?」

「見える」

「そう……」

包帯を解き、左腕を見せるベルベット。

「自分の正体を知って、今の自分が怖くなったの……」

「………」

「いっそ…死んだ方が、皆の為なのかな……」

寂そうに空を眺めるが、少年が優しく手を握る。

「そんな事ないよ」

「えっ?」

「死んだ方がいいなんて、誰も思わない筈だよ」

「それは……」

「僕も必ず、ベルベットに認めて貰いたいと思ってるから」

「それって、どういう――」

意味深な言葉が気になるが、彼女の意識は途切れてしまった。






―破滅へのカウントダウン―





「う…んあ……」

ベルベットが目を開けると、彼女はベッドの上。

「気が付いたかい?」

そう言って、白衣姿でガスマスクを被った男が現れる。

「森厳…博士……」

男の名は岸谷森厳。

研究組織『ネブラ』の幹部で、ベルベットがsmileで働くキッカケを作った人物。

「ここはネブラの研究所にある、医務室のベッドの上だ。 緊急の連絡だって言われてね。 すぐにこっちに来たんだよ」

「そうだ…アタシ、たしか……」

自身が襲われた時の事を思い出す。

同時に、包帯が巻かれた左腕に視線を向けた。

「その様子だと、キミは自分の正体に気付いたようだね……」

「……ええ」

己の正体を知り、目から涙が流れたのである。





「ハァ…ハァ……」

神裂火織は、路地裏に座り込んでいた。

「どういう事ですか!? どうしてあんな事に!?」

何故彼女は、自分の置かれている状況に混乱しているのか?

それは、今から20分前の事である。






 20分前、撤退を余儀なくされた神裂。

彼女はクリズムのいた廃工場へ向かう。

「!?」

しかし工場の前には、数台のパトカーが止まっていた。

驚く神裂であったが、近くの廃車の裏で身を隠す。

黒い制服姿で、腰には日本刀が差されている。

「(あの制服…真選組?)」

真選組……政府の公認の元、凶悪犯罪対策として結成された特別警察組織。

「(何故、彼等がここに?)」

疑問に思ったが、隊士達の会話を聞く事が出来た。

「しっかし、信じられん殺し方だな」

「ああ。 日本刀の様なもので、心臓を一突きだぞ?」

「クリズムさんだっけ? どうしてこんな廃墟で……」

「(クリズム!? まさか、クリズム=ベック!? 彼が殺害されたんですか!?)」

「そういや、手錠で繋がれてた女の子は?」

「ネブラんとこの救急車で運ばれてったよ。 あの子、smileの従業員やってる子だよ。 俺たまにあの店で、外食済ませる事があるから、何度か顔を見てるよ」

「(ベルベット=クラウ!? 彼女が無事だというのですか!?)」

「ところで、あの通報通りだとすれば、下手人はどこ行ったんだ?」

「(まさか…クリズムを殺害した犯人が!?)」

隊士達の会話を聞いていた神裂。

しかし会話の中に、信じられない言葉が出て来たのだ。

「確か…「○○番地の廃工場跡で、人が殺されてました。 犯人は――神裂火織という女です。 急いでください」って」

「!?」

コレを聞いた彼女は、驚愕を隠しきれなかった。

この廃工場に戻ってきたばかりの自分が、殺人の容疑者にされていたのだ。

「(何故、ベルベットではなく私が!? いや、彼女は手錠で繋がれている。 つまり、殺害は不可能!? しかもクリズムは、心臓を日本刀で一突き……とにかく、長居するワケにも!)」

そして工場を後にし、20分後の現在に至った。






「まさか、殺人の容疑者にされるなんて……」

神裂は焦った。

ある人物を救わんとした自身が、殺人の容疑者にされていた。

「(彼女なら…ベルベット・クラウなら、何かを知っているはず!)」

何かを確信した神裂は、咄嗟に叫んだのである。

「ランサー! アサシン! ライダー!」

すると彼女の前に、三人の男女が現れる。

赤い髪に真面目そうな雰囲気の少女、ランサーの『エレノア・ヒューム』。

金髪でスーツの上からコートを羽織った男、ライダーの『アイゼン』。

黒髪に和装姿の男、アサシンの『ロクロウ・ランゲツ』。

彼等三人は、神裂に召喚されたサーヴァントなのである。

「頼みがあるんです」

写真を見せ、三人も目を通す。

「この女性の入院先を、調べて欲しいんです」

「……分かった」

三人は散り、神裂は奥歯を噛み締める。

「くっ…」






 翌日、研究所の方では……、

「失礼するよ」

「?」

窓の外を眺めるベルベットの元に、一人の青年が現れる。

金髪で白衣姿、黒縁の眼鏡をかけた青年だ。

「先生……」

初めてネブラに保護された時から、彼女の主治医になった。

「大丈夫?」

「ええ。 少し疲れてるけど、大丈夫」

「そっか……」

しかし、その時である。

「うわぁぁぁぁ!」

「「!?」」

外から声が聞こえ、二人は外を見下ろす。

そこには4人の男女が、真選組の隊士達を襲撃していた。

その中には、神裂火織も入っている。

コレを見たベルベットは、すぐさまベッドから降りた。

「ベルベット!? どうする気だい!?」

「外に行くの。 あの女には、私を攫ったツケを返して貰うから」

「その状態でかい!? それはダメだ!」

驚いた青年であったが、即座に彼女の腕を掴む。

「そんな身体で向かえば、キミは命を落とす。 僕は、キミを危険に晒しくない……。 いや、失いたくないんだ」

「……本気なの?」

「本心だ」

それを聞いた直後、ベルベットは一度だけ振り返る。

目には涙が流れたが、彼女はあどけない笑みを見せた。

「……ありがとう」

そして青年の手をどけ、病室の外へと出る。

彼は再び腕を掴もうとしたが、それはもう遅かった。






 神裂達が隊士達を襲撃する中、

「まさか、こんな白昼に現れるなんて!」

《ラビット! タンク! ベストマッチ!》

白野が現れ、彼女はドライバーにボトルを挿し込む。

《Are you ready?》

「変身!」

《鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イェーイ!》

仮面ライダービルドへと変身し、神裂達へと立ち向かった。

「ハッ!」

ビルドの放った拳を、神裂は刀で受け止める。

「またアナタですか……」

「まだベルベットを狙うつもり!?」

「ええ。 ですが、今度は誘拐ではなく、別の目的できました」

「何なの、別の目的って?」

「答える必要はありません」

すると右から鉄拳が放たれ、ビルドの顔に打ち込まれた。

「がっ!」

殴られたビルドは、そのまま吹き飛ばされてしまう。

「ライダー!」

「油断するな、マスター。 コイツは簡単にやられるタイプじゃねぇぞ」

「分かっています」

「くっ!」

ビルド――白野はベルベットの見舞いの為、この研究所を訪れていた。

しかしその直後、敵の襲撃を目にし、現在に至っている。

ただの見舞いのつもりだったので、サーヴァントを連れていない。

「これなら!」

《ゴリラ! ダイヤモンド! ベストマッチ!》

ボトルを取り替え、ドライバーのレバーを回す。

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド! イェーイ!》

先日と同じく、ゴリラモンドフォームへと変身したのだ。





「うおぉぉぉぉ!」

右腕を豪快に放つが、ライダーに避けられ、

「オラァ!」

彼の拳を喰らう羽目になってしまう。

「かわせるもんなら、かわしてみな!」

拳の猛攻で、ビルドは回避することも出来ず、

「オラァ!」

容赦無く吹き飛ばされてしまったのだ。

「ガハッ!」

壁に激突し、その場で倒れこんでしまう。

「行きましょう……」

神裂は研究所へと向かおうとするが、ビルドは再び立ち上がる。

「ま…待って……」

「……まだ戦う気ですか?」

振り返った神裂であったが、ビルドの手には何かが握られていた。

「ホントは、使いたくないけど……」

それをドライバーの『ボルティックチャージャー』にある拡張スロットに装着し、ラビットボトルとタンクボトルを装填すると、

《ハザードオン!》

「でも、迷ってる暇はない!」

《ラビット! タンク! スーパーベストマッチ!》

その場でレバーを回したのだ。






 ビルドへの変身時、『スナップライドビルダー』と呼ばれるフレームが出現する。

《ドンテンカン! ドンテンカン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!》

しかしこの時のみ、鋳型のフレームが出現し、

《Are you ready?》

「ビルドアップ」

まるでプレスするように、ビルドを挟み込む。

変身が完了すると、その姿を彼女達の前に見せる。

《アンコントロールスイッチ!》

複眼はラビットタンクフォームと同じであるが、全身が鋭利的で漆黒に染まっていた。

《ブラックハザード!ヤベーイ!》

専用デバイス『ハザードトリガー』を用いた形態、『ラビットタンクハザードフォーム』へチェンジしたのだ。






 新たな姿へと変わったビルドは、そのまま神裂へと攻撃する。

「どんな姿になろうとも、結果は同じです!」

再び対峙する二人。

激しい攻防戦が繰り出されるが、やはり神裂の方が有利だ。

しかも彼女には、味方が3人もいる。

「アサシン! ライダー!」

「「おう!」」

アサシンが双剣で斬り、ライダーが拳を放つ。

「ランサー!」

「はい!」

そして怯んだ隙を、ランサーが槍で突いた。

この連携により、ビルドは容赦なく吹き飛んでしまう。

「くっ!」

すぐさま立ち上がったが、まさにその時である。

「っ!?」

彼女の体に、異変が起こったのだ。

「(マズイ…意識が……)」

咄嗟にハザードトリガーに手を伸ばそうとしたが、その時である。

「なにをしようとしているかは知らんが、させるかぁ!」

ライダーが突進し、拳を突き出したのだ。

拳は直撃し、ビルドを吹き飛ばした。

「よし、これで……」

しかし、彼等は知らなかったのだ。

ライダーのこの行為が、自分達を危険に晒す引き金トリガーになった事を――。





 ライダーの拳が直撃し、一度は吹き飛ばされたビルド。

しかし再び立ち上がったが、顔は俯いた状態である。

それどころか、両手はダランと下がった状態だ。

「おい、どうなったんだ?」

「ん?」

誰もが首を傾げるが、ビルドの右手が動く。

《マックスハザードオン!》

ハザードトリガーの本体上部にあるスイッチが押され、レバーが回される。

《オーバーフロー!》

俯いていた顔が正面を向き、ビルドは地を蹴ったのだ。

「え――」

そして目の前にいたライダーが、拳を正面から喰らってしまい、

「「「!?」」」

神裂達を通り過ぎるかのように、その場から吹き飛んだのだった。

研究所の壁を突き破り、ライダーはその場で倒れてしまう。

「ライダー!?」

ハザードトリガーの真の恐ろしさ……。

それは強力な力を得る代償として、脳に耐えられないほどの刺激を与える危険性を持つこと。

長時間も使用を続ければ、理性を失って自我が消滅。

そして最終的には、破壊衝動の赴くままに暴走状態に陥ってしまう。

今ここに、『危険な引き金ハザードトリガー』を引いたビルドが、襲いかかろうとしていたのだ。






 ビルドは懐に飛び込み、神裂に猛攻を仕掛けた。

「ぐっ!」

先程は逆で、神裂が劣勢に立たされる。

言葉を発さず、急所を的確に狙うビルド。

その姿は、破壊を止めない暴走マシーンそのもの。

「このっ!」

反撃に出ようとした神裂であったが、それすらも防がれる。

「なっ!?」

更に腹部にボディーブローを打ち込まれ、そのまま吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ!」

“暴走”という単語には、様々な事例が存在する。

精神的不安定に陥った事で起きる事。

猛獣のように本能のままに赴く事。

理性がブレーキとして利かなくなる事。

このような事例によって、人は乱暴に走ってしまう。

しかし、ビルドの暴走は違った。

言葉を発さず、余分な思考や感情の一切を廃する。

今のビルドはまさに、歩く兵器そのものであった。

「そこだぁぁぁぁ!」

アサシンが背後を突き、剣を振り下ろそうとする。

暗殺者の英霊らしい戦術であるが、それも無意味に終わった。

なんとビルドは、振り向きもせずに後ろ蹴りを叩き込んだのだ。

「がっ――」

「アサシン!」

吹き飛ばされたアサシンを見て、神裂は驚愕してしまう。

「あ…あぁ…」

この光景に、ランサーは体が動けなかった。

サーヴァントが二人もやられる光景を目にして、本能的に勝てないと分かったからだ。

そして己のマスターが、一方的に攻撃される姿を見守る事しか出来なかった。





「うぐっ!」

戦う力はおろか、動くことすらできない神裂。

そんな彼女の事すら気にせず、ビルドはレバーを回す。

《Ready Go! ハザードフィニッシュ!》

コレを見た神裂は、反射的に目を閉じてしまう。

「マスタァァァァァ!」

ランサーの叫びも虚しく、必殺技を発動させるビルド。

そして――。





「ん……えっ?」

先程まで目を閉じていた神裂であったが、ゆっくりと目を開ける。

「!?」

彼女の目に映った背中。

ライダーではなく、アサシンもない。

勿論、ランサーでもなかった。

「アナタは!?」

その正体はなんと、ベルベット・クラウである。

「がはっ!」

口から血を吐き出すが、彼女はビルドの体を押さえ込む。

「はぁぁぁぁぁ!」

そして包帯を解いた左腕を振るい、容赦なく吹き飛ばしたのだ。

この攻撃でビルドドライバーが外れ、強制的に変身が解除された。

「――っつ!」

その場で膝を突いた白野であったが、彼女は辺りを目にしてしまう。

「えっ?」

周りのモノが破壊され、アサシンとライダーは倒れている。

なにより、ベルベットがいた事に驚いてしまう。

「ベルベット……!?」

「ようやく…正気に…戻…った…わね……」

「これ…私がやったの!?」

驚愕を隠せない白野であったが、ベルベットは彼女の元へと歩み出す。

「そんな…かお……しないでよ……」

困惑する白野の頬に右手を添え、彼女は笑顔を見せた。

「アタシ…この町で…アンタや…皆に会えて……すごく……幸せ…だった……。 ありがとう……」

一粒の涙がこぼれ、その場で倒れてしまう。

動かないベルベットを目にし、白野の中の何かが砕け、

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

最後は絶望の叫びが、外まで響くのであった。

その後、真選組が駆けつけ、神裂達は逮捕されたのである。


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■作者からのメッセージ
 ハザードフォームが早くも登場!

ですが、僕は後悔してません!
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