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魂郷学園 第15話:何事も下準備は必要
作者:亀鳥虎龍   2018/06/21(木) 20:05公開   ID:xC/v.dl.E26
 銀時とユーリが立ち去ったあと、お妙は銀時が寝ていた部屋に向かった。

彼が使っていた布団の横で、彼女は「ふう」と腰を下ろす。

そんな彼女であったが、まさにその時である。

一枚の畳がバン!と開き、一人の男が姿を見せたのだ。

「ひっ!?」

勿論これには、お妙も驚いてしまった。

現れたのは、真選組の制服を着た男。

正体は、お妙のストーカーゴリラ・近藤勲である。





―何事も下準備は必要―





「全部聞かせて貰いました」

ムカつくほど爽やかな笑みを見せる近藤に、お妙は当然キレた。

「なにカッコイイ顔して言ってんだよ! お前、警察官だろ? やって良い事と悪い事がわかってるよな!」

「全てはお妙さん、貴方の為だ」

「だから! 完全に犯罪行為しといて、ちょいとキメ顔とかしてんじゃねぇって!」

「あとは我々、真選組にお任せ下さい」

「いや、かっこよくねぇよゴリラ!」

何度もカッコイイ事を言っている近藤に、お妙の怒りはヒートアップする。

「あ、真選組に〜お任せ――」

「そゆのいいから! 早く行けや!!」

近藤が立ち去った後、お妙は頭を抱えてしまう。

前回までのシリアスな空気が、彼の所為で台無しになったからだ。

こっちは違う意味で、バカな男であった。

というより、バカなゴリラである。





 紅桜との決戦に向けて、銀時とユーリは準備を進めていた。

彼等が向かったのは、町はずれにある『からくり堂』と呼ばれる工場である。

中に入ると、銀時がすぐに声をかけた。

「どーもー」

「おう! なんだ、銀の字にユーリ! 珍しいじゃねぇか」

作業服姿でゴーグルを着けた老人が、彼等を出迎えてくれた。

彼の名は平賀源外。

江戸一番の技術力を持つ発明家だ。

万事屋や万事部とも面識があり、銀時の事を『銀の字』と呼ぶ。

「あのね爺さん、率直に言って良い?」

銀時の問いに対し、源外も「いい」と頷く。

「で、なんだ?」

「これからね、機械からくりみたいな……というより、恐ろしい機械からくりの刀持った奴と戦いに行くんだけど。 映画や漫画だと、怪我した身体を押して、あえていくわけじゃん? けど正直、勝てる気がしないわけ」

「なるほど。 それで、ワシの機械からくりに頼りたいワケにだな!」

「うん。 正直、結構痛いの。 怪我が。 楽して勝てるやつがあればなあと思って」

「楽して勝ちたいのか。 バトル漫画や映画の主人公なら、100パー言っちゃいけない台詞を吐いたな」

「うん、吐いた。 楽して勝ちたい。 命が惜しい。 生きたい。 信長の倍は生きたい。 頼む」

「おいおい。 ヒーローの言っちゃいけない台詞が湯水の如くでてくるのね」

肩を竦める源外であったが、コレが本心だから仕方ない。

正直ユーリも、内心では銀時と同じ意見である。

こちらは紅桜の脅威を知っているのだ。

できれば楽に勝てる方法を得たい。

当然、そんな甘い話しはないが……。

「しかしなぁ〜。 今のウチにあるもんといえば……」

源外が深く考えてる最中、銀時は工場の奥に目を向ける。

大きなものを布で隠しているようで、気になって引っ張ると、

「うおぉぉぉぉぉ!?」

するすると布が落ち、巨大な機械からくりが姿を現した。

全長20メートル近くはありそうな巨大ロボット。

カラーリングは赤で、頭部は一つ目モノアイ形状、そして角飾が付いている。

誰がどう見ても、機動戦士のライバルメカだ。

「いや、何でこんなのがあるんだ!?」

これにはユーリも、流石に驚きを隠せない

銀時も目を輝かせ、すぐさま源外に詰め寄る。

「これ! コレ貸して! これなら絶対勝てるわ!」

「だめじゃよ! やっとこさ修理が終わって、今日あたり取りに来るんじゃ」

すると、奇妙な格好をした男が入って来た。

「どーもー。 出来てますか?」





 マスクで目を覆い、奇妙なヘルメットを被った赤い軍服の男。

如何にも“赤い彗星”と呼ばれる男――らしい。

「あっ、お客さんが来た。 出来てますよ」

「うわっ、完璧じゃないですか。 これなら戦えますよ」

「あの、貸して貰えません?」

「見せて貰おうか?」

「いや、もう見てますよね?」

「じゃあ、修理代はジオンに請求しといてください」

立ち去ろうとした男に、銀時は首を傾げる。

「この人、こんなにオジサンだったっけ?」

「坊やだからさ」

「いやいや、それ言いたかっただけですよね?」

律儀にツッコミをする銀時に、源外は溜息をついた。

「お前、随分元気だな。 十分戦えるじゃんか」

する突然、男は驚いた様子で銀時を見つめる。

「アルテンシアか!?」

「坂田です」

「では私は、サイド7セブンへ――」

踵を返す男であったが、寸前で「あ」と口を開く。

「ちょっとあの、ションベンがしたいんだけど、トイレ借りて良いかな?」

「あ、いいですよ。 あっちにありますから」

「ションベンとか言わないで」

「最近、近くなっちゃってさ。 甘いにおいがするんだよね」

「それ、糖尿ですよね?」

「それでは私は、通常の三倍のスピードで行ってまいります」

そう言うと男は、小走りでトイレに向かった。





「全然普通のスピードじゃん」

男の背中を見届けながら、銀時はポツリと呟く。

「あっ、そうだ!」

すると源外が、思い出したかのように棚の中を物色する。

「銀の字、コレを使え! これなら絶対に勝てる!」

「んだよ、あるなら先に言ってくれよ」

「コレを食え。 コレを食えば勝てるぞ」

源外が取りだしたのは、一つの丸いフルーツだ。

外皮の色は紫で、独特の模様をしている。

あのジャンプで有名な、『ゴ○ゴ○の実』であった。

「あ〜、これか〜」

「コレを食えばな、全身がゴムのように伸びるぞ」

「別に海賊王になりたいワケじゃないんだけどなぁ〜」

「ゴムゴムの銀時、いいじゃん。 “偉大なる航路グランドライン”に旅立てよ」

「えぇ〜、面倒臭ぇよ。 別に俺、海そんなに好きじゃないしな」

麦わら帽子をかぶせられながら、銀時は嬉しそうな顔になる。

そのまま口を近づけようとしたが、その直前で「ん?」という顔をした。

匂いを嗅ぐと、どこかで嗅いだ事のある匂いだ。

「――っていうのはウッソぉ〜。 はい残念〜、偽物でしたぁ〜。 それはただのマスクメロンでしたぁ〜。 はい、バカぁ〜。 人間がゴムゴムになるワケない〜。 ジャンプの読み過ぎ、ジャンプの読み過ぎ♪」

見事に源外に騙された銀時。

彼が出来た事は、怒り任せで源外を小突く事だった。

「痛っ!」

バキ!という音と共に、銀時は何度もじゃれるように彼を殴打する。

「痛い! 痛い! お前、元気じゃん! 十分戦える!」

遂には源外も反撃を開始し、最後は取っ組み合いになった。

蚊帳の外になっていたユーリは、この光景を呆れて眺めていたが、

「世界の終わりが近付くのも、そう遠くはねぇな」

サラッと怖い事を言ったのだ。

因みに鍛冶屋へ向かったのは、その一時間後である。





 その頃、鬼兵隊の船では…、

「コラァ、小娘!」

磔にされた神楽に、また子は怒号を上げていた。

「こっちは虫の居所が悪いッス! いい加減に目的を吐けぇ!」

「うっ……」

まさにその時だ。

「ウゲェェェェェェ!」

神楽が口から、大量のゲロを吐いたのである。

「吐いたァ!?」

これにはまた子も武市も驚き、浪人達がモップですぐさま片付けた。

先程のラーメンの食い過ぎと船酔いによるものだ。

これにはまた子も遂に、怒りが頂点に達した。

「このガキィ! ぶっ殺す!」

拳銃を手に取り、銃口を彼女達に向ける。

しかし、その時だった。

「ちょっと待ってくださいな」

「!?」

背後からの声に、全員が思わず振り向く。

そこには、二人の少年が立っていた。

「女のヒステリーで、仲間を殺されちゃ、たまったもんじゃないんでね」

新八とカロルが、助けに来てくれたのだ。

「新八、助けに来たアルか!?」

仲間の登場に、神楽も喜びの笑みを見せる。

「遅くなってすまなかったね、神楽ちゃん」

「すぐに助けてやるから待ってて」

不敵な笑みを見せる二人に、また子は銃口を向けた。

「お前等、一体何者なんスか!?」

「何度も言わせんなよ。 その子の、仲間さ」

「貴様等ぁ! 何人仲間を連れてきたッスか!」

「「………」」

この問いに対し、新八もカロルも答えなかった。

というより、答えられなかったのだ。

その証拠に、「あ、やべ」という顔をしながら、二人は額に脂汗を浮かべたのである。





 新八とカロルが、脂汗を出るほどの動揺を見せる。

この光景に、神楽は「まさか!?」という顔になった。

「(まさか、二人だけしか来てねぇのかヨ!? というより、“応援を連れて来る”という選択すら頭になかったのかよ!?)」

助けられる側としては、更なる不安を持って来た二人に、若干の怒りを覚えてしまう。

「まさか、二人だけ?」

武市が問うと、新八はようやく口を開く。

「い…勢いで、来ちゃったから……」

「勢いで?」

「うん…勢いで……来ちゃった……」

「まさか、そんな状態で?」

「た、戦わずして! 三人を返すって選択肢だって、あるだろう!」

遂には逆切れを起こした新八だったが、武市に「ないんじゃないかな?」と返されてしまう。

これにはカロルも、「絶対にないよ」と呟く。

「殺して良いッスか?」

「どうぞ」

武市との軽い会話の後、また子は二人に銃口を向けた。

コレを見た新八は、「ちょっと待ってちょっと待って!」と叫びながら焦ってしまう。

「ううっ」

勿論カロルも、ハンマーを構えながらも怯えている。

「やめてあげてヨ! その子、メガネなだけでとってもメガネなバカなんだヨ!」

「神楽ちゃん、申し訳ない。 少年には全く興味がないのです!」

神楽のフォローも、少女限定フェミニストには届かなかった。

しかし、その時だ。

ドゴォォォン!という轟音が響き、船体がひっくり返るような振動が襲って来たのである。





 突如として、船に響いた轟音。

同時に船体が、激しく揺れ出す。

磔にされた神楽達はともかく、他は体勢を崩してしまう。

「な、何なんスか!?」

困惑するまた子であったが、部下の一人が叫んだ。

「真選組です! 真選組の船が、砲撃してきました!」

「何ですと!?」

「くっそぉ! コレも全部、似蔵の所為っス! 全員、戦闘態勢につけェェェェ!」

号令と共に、浪士達が持ち場へと向かう。

この混乱の中、新八とカロルは船首の方へと走る。

磔にされたを救うためだ。

彼女達の元へ近付くと、カロルがナイフで縄を切る。

「新八! 待ってたアルよ!」

「ゴメン、遅くなったよ」

「ところで新八、銀ちゃんは? 銀ちゃん達はどうしたアルか?」

「………」

神楽に問われた新八とカロルは、一瞬戸惑ったが、

「く、来るよ。 後から来るよ」

それだけしか言えなかった。






 その頃、船倉の中では、

「ウググググ……」

似蔵が一人、苦しんだ顔をしていた。

「ゼェ…ゼェ……」

「よう」

「!?」

すると、背後からから声が聞こえる。

振り返ると、一人の男が背中を戸口に預けて立っていた。

左目を包帯で隠し、蝶柄の入った紫の和装姿。

鬼兵隊の総督、高杉晋助である。

「お苦しみのところ、失礼するぜ。 お前のお客さんだ」

煙管を吹きながら、高杉は不敵な笑みを浮かべた。

「色々派手にやってくれたらしいじゃねぇか。 おかげでちょいとばかし、幕府の犬ころ達とやり合うはめになったまった」

「………」

「桂、ったらしいじゃねぇか? オマケに銀時ともやり合ったとか。 わざわざ村田まで使って……」

現状を前にして、彼は楽しそうに笑っている。

こうなる事を分かっていたのかもしれない――。

高杉の考える事は、似蔵には決して分からなかった。

――おい、そんな小せぇもん壊して、満足か?

始めて出会った時、高杉はただの人斬りだった自分にそう言った。

――どうせ壊すなら、どうだ一緒に? 世界をぶっ壊さねぇか?

この言葉を聞き、似蔵は彼の下についたのだ。

「で、立派なデータはとれたのかぃ? 村田もさぞ、大喜びだろうよ。 奴は自分の剣を強くすることしか考えてねーからな」

飄々とした態度の高杉に、似蔵はこう言った。

「アンタはどうなんだい?」

「ん?」

「昔の同志が簡単にやられちまって、哀しんでいるのか、それとも……」

まさに、その瞬間だった。

高杉が腰の刀を抜き、似蔵の頭へ目掛けて振り下ろす。

それに反応した似蔵は、失くした右腕の代わりとなった紅桜で受け止めた。

「ほォ、随分と立派な腕が生えたじゃねーか。仲良くやってるようで安心したよ。文字通り一心同体ってやつか」

背を向けた高杉は、刀を鞘に納めながら歩いて行く。

「さっさと片付けてこい。 アレを全部潰してきたら、今回の件は不問にしてやらァ。 どの道連中とは、いずれこうなっていただろうしな……それから」

戸口へと向かっていた足を止め、彼は振り返って似蔵を睨む。

「二度と俺達を同志なんて呼び方するんじゃねェ。そんな甘っちょろいモンじゃねーんだよ、俺達は。 次言ったら紅桜そいつごとブッた斬るぜ」

それだけ言い残し、高杉は倉庫から去って行く。

「(今のは、本気で斬るつもり…だったねぇ)」

目が見えずとも、彼の恐ろしさを肌で感じた似蔵なのであった





 ブースターが作動し、鬼兵隊の船が空へ飛ぶ。

「成程、状況はよく分かった。 でも、本当に桂さんがいるのかな?」

「定春が言ってたアル、間違いないネ」

そんな会話をしながら、新八達は船内を走り出す。

幸いにも鬼兵隊の浪士達は、真選組との戦闘で手が一杯。

この混乱を利用し、彼等は桂の捜索を始めたのだった。





 鬼兵隊の船に近付き、真選組の船は接舷に成功した。

「よぉぉぉぉぉし! 乗り込めぇぇぇぇ!」

甲板で指揮を執る近藤の号令に、隊士達のときの声が「おおおおお!」と上がる。

白兵戦を仕掛けるべく、彼等は鬼兵隊の船へと飛び移った。

部下達の勇敢な背中を見守りながら、土方はマヨネーズが大量にかかったドンブリ『土方スペシャル』をかきこむ。

この光景を目にしながら、沖田とマイはジト目で声をかける。

「殺し合いの前に、なに食べてるんですか?」

「もし腹ァ斬られたら、血じゃなくてマヨネーズがでますぜ?」

「コレ食わねぇと力入らねぇんだよ」

土方は当然のように答え、近藤も戦う準備に取り掛かる。

「よし、行くぞ」

「近藤さん」

しかし沖田が、すぐさま呼び止めたのだ。

「近藤さんはここに残ってくだせぇ。 コレは命懸けの戦いです。 たくさん犠牲が出ます。 近藤さんにもしもの事があったら、真選組はこれからこの先どうするんですか?」

それを聞いた近藤は、不敵な笑みを見せながら答えた。

「総悟。 俺はなぁ、この真選組を作った時から決めてる事がある。 生きるも死ぬもお前等と一緒――それが、近藤勲の生き様さ」

「近藤さん。 真選組は死なねぇよ」

煙草を一服し、土方は小さく笑う。

「分かってるじゃねぇか、トシ」

刀を抜き、気合いを見せる近藤。

「さて、鬼退治といこうじゃねぇか!」

そして近藤は、鬼兵隊の船へと飛び移ろうとしたが、

「あらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

誤って足を滑らせ、落っこちてしまったのだ。

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

これにはマイも驚愕を隠せず、

「「近藤さぁぁぁぁぁん!」」

土方と沖田は、二人揃って叫んでしまう。

ボチャンと海へと落ちた近藤だったが、プカプカと海面に浮かんでる姿が確認出来た。

上空から落ちてなお、普通に生きていた近藤。

ゴリラの如き、凄まじい生命力である。

局長が無事である事を確認出来ると、

「いくぞ」

「へい」

すぐに鬼兵隊の船に移った土方と沖田であった。

「えっ、ちょっと!?」

マイも戸惑いながらも、鬼兵隊の船へと移動したのだ。

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■作者からのメッセージ
 次回へ続く。

銀時「今さらだけどさ、この『紅桜編』……実写版が基準だよね?」

新八「言わないでください」
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