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魂郷学園 第12話:紅桜
作者:亀鳥虎龍   2018/06/21(木) 08:19公開   ID:xC/v.dl.E26
 前回のあらすじ。

失踪した桂の手掛かりを追う為、銀時達はエリザベスと夜に、現場近くの路地に来ていた。

しかし遭遇した警官が、件の辻斬りに殺害されてしまう。

襲いかかる辻斬りであったが、銀時の参戦でことなきを得た新八達。

「――ったく、ヅラ探しで此処まで来てみれば…どっかで見たツラじゃねぇか」

「ホントだ…何処かで嗅いだニオイだね……」

そして辻斬りは、自らの素顔を晒したのだった。





―紅桜―





 辻斬りの顔を見た新八は、驚きを隠せずにいた。

「あ…アンタは!? 人斬り…人斬り似蔵!」

岡田似蔵、またの名を人斬り似蔵。

盲目でありながら、研ぎ澄まされた聴覚と嗅覚だけで相手を斬り伏せた攘夷志士。

銀時達は嘗て、ある事件で彼と戦った事がある。

その為、似蔵の事は面識済みである。

鼻炎用スプレーを鼻腔内に吹きかける似蔵を、新八は強く睨みつけた。

「件の辻斬りは、アンタの仕業だったのか!」

すると、別の人影が現れる。

「ようやく見つけたぜ」

ユーリとジュディス、そしてカロルにラピードの万事屋メンバーである。

「あん? オメェ等、お登勢のババァんトコの……」

「よう」

銀時は万事屋との面識があり、軽い挨拶だけを交わす。

「どうやらお互い、目的が繋がっていたようだ」

「へ?」

「つまり、俺等全員、アイツに用があるって事だよ新八君」

そんな中、似蔵は地面に刺さった愛刀を引き抜く。

淡い紅色に光る刀身を見たユーリは、すぐに確信したのだ。

アレが盗まれた妖刀、紅桜であることを……。

「嬉しいね。 わざわざ俺に会いにきてくれたってワケか…。 コイツは災いを呼ぶ妖刀と聞くがね、どうやら強者を引き寄せてくれるようだ。 桂にアンタ、こうも会いたい奴に会えるなんて、俺にとっては吉兆を呼ぶ刀だ」

「なっ!? 桂さんをどうしたんだ!?」

新八の激昂に対し、似蔵は平然と答える。

「おや、おたくらの知り合いだったのかい? それはすまない事をしたね。 オニューの刀を手に入れたから、つい斬っちまったよ」

「ヅラがテメェみてぇなただの人殺しに、負けるワケがねぇだろ」

「怒るなよ、悪かったと言ってる。 あっ、そうだ……」

すると似蔵は、懐から一房の髪の毛を見せた。

「ホラ、ついでに奴の形見だけでも返しておくよ」






 似蔵が懐からとり出した、一房の髪の毛。

「!?」

コレを見た新八とエリザベスは、驚愕で声が出なくなる。

まさにそれは、似蔵が桂を殺害した証拠となったからだ。

「記念にむしり取ったんだが、アンタ等に渡した方がヤツも喜ぶだろう。ところで、桂ってのはホントに男かい? この滑らかな髪、どう見ても女の様な……」

しかし、まさにその時だ。

銀時が一気に駆けより、容赦なく木刀を振り下ろす。

勿論、似蔵も紅桜でそれを防ぐ。

「寝ぼけた事言ってんじゃねぇよ! ヅラはテメェみてぇな雑魚に、やられるような奴じゃねぇ!!」

今までない怒りを露わにする銀時。

その場にいた者達が戦慄し、新八はその怒りを誰よりも察した。

銀時にとって桂は、ともに戦場を駆け抜けた戦友。

そんな彼の死を信じたくないのは、紛れもない銀時なのだ。

怒りを露わにする銀時に対し、似蔵は愉しむかのように笑う。

「クククク…確かに俺一人じゃ、奴には敵うまいよ。 だが、ヤツを斬ったのは俺じゃない」

「!?」

「俺はちょいと、体を貸してやっただけでね。 なあ、紅桜よ……」

だがこの時、銀時はあるものを目にしたのだ。

果たして、彼が見たモノとは!?





 その頃、桂を捜索していた神楽は、

「定春、ここにヅラのニオイがするアルか?」

「ワン!」

定春の嗅覚を頼りに、港まで足を運んでいた。

「なんだろ、あの船?」

「おい、見つかったか!?」

しかし突然の声に反応し、すぐさま物陰に隠れる。

そこには、三人の男達が何かを話していた。

「ダメだ、こりゃまた例の病気が出たな。 岡田さん…どこぞの侍にやられてから、しばらく大人してたってのに」

「やっぱアブネーよ、あの人。 こないだもあの桂を斬ったとか触れ回ってたが、あの人ならやりかねんよ」

「どーすんだお前ら。 ちゃんと見張っとかねーから。 アレの存在が明るみに出たら……」

そんな会話をしながら、船へと向かって歩いて行く男達。

彼らの口から「桂を斬った」という言葉を聞いて、神楽は三人が去ったのを確認。

そして紙と筆を取り出し、この港の場所を示す地図を描き始める。

地図を定春の首輪に括りつけると、彼にこう言ったのだ。

「定春、これを銀ちゃん達のところに届けるアル」

「ワン!」

「可愛いメス犬がいても、寄り道しちゃダメだよ」

「ワン!」

「上に乗っかっちゃダメだヨ」

定春が走り去るのを確認すると、神楽は番傘を肩に置く。

「よし、行くか」

船へと向かおうとしたが、ピキーン!と何かを感じ取った。

「右!」

首を右に振ると、そこにはラーメン屋台がある。

「感じてしまったものは、仕方ないアル。 腹が減ったら戦は出来いないアル」

店主の男が包丁でネギを切っており、神楽は屋台へと向かった。

「おい、ハゲ親父! ラーメン三杯」

「はいよ。 それと、俺ぁハゲてねぇよ」

こうして神楽は、屋台のラーメンで腹ごしらえをしたのである。





 一方の銀時は、とんでもない状況に陥っていた。

似蔵との激戦は、苛烈さを増していたからだ。

何度も打ち合う中、二人は橋まで移動する。

しかし似蔵が振るう紅桜の速度は、一太刀ごとに速くなっていく。

勿論、威力も同等だ。

何せ攻撃を防いだ銀時ごと、橋の底板を崩壊させ、彼を川底に叩きつけたのである。

もはやそれは、人間業ではない。

「ゲホッ、ゲホッ……」

「おかしいねぇ…。 ホントにアンタ、伝説の攘夷志士『白夜叉』かい?」

白夜叉――攘夷戦争時代に付いた、銀時の二つ名の事である。

白い戦闘装束を纏い、銀色の髪が敵の返り血で赤く染まるまで、戦場の中を鬼神の如く駆け抜けた事からだ。

「おかしいね、おい…。 アンタそれ、ホントに刀なのか?」

橋から見下ろす似蔵に対し、銀時は彼の右腕に目を向ける。

正確には、紅桜に目を向けていた。

一本の刀だった紅桜が、似蔵の右腕と一体化していたのだ。

「“刀というより生き物みたいだった”って? 冗談じゃねよ。 ありゃ生き物っていうより――化け物じゃねぇか!」

橋から降りて来た似蔵が、銀時に攻撃を仕掛ける。

落下の勢いを利用し、叩き潰そうとしたのだ。

水しぶきが舞う中、銀時は似蔵の背後に回っていた。

彼の膝に下段蹴りを放ち、そのまま川の中へと転ばせる。

さらに右腕を足で踏みつけ、その動きを封じこんだ。

「喧嘩は剣だけでやるもんじゃねぇんだよ!」

剣が使えなければ、後は勝負は決まると感じたのだろう。

しかし、紅桜はそんなに甘い代物ではなかった。

「何っ!?」

紅桜の刀身から伸びた触手が、木刀に絡みついたのだ。

この瞬間を見逃さなかった似蔵は、そのまま銀時を跳ね飛ばす。

「喧嘩じゃない、殺し合いだろうが!」

大きく薙ぎ払われた一閃。

コレを見た銀時は、咄嗟に木刀で受け止めた。

バキィィィィン!と、凄まじい一撃が彼を吹き飛ばす。

「がっ!」

吹き飛ばされた銀時は、橋脚へと叩きつけられる。

「銀さぁぁぁぁん!」

欄干から戦いを見守っていた新八は、思わず叫んでしまう。

「ククク……こんなもんかい?」

似蔵が襲いかかるが、まさにその時である。

「ハッ!」

「!?」

欄干から飛び降りたユーリが、愛刀のニバンボシを振り下ろしたのだ。





「ほう、今度はアンタが遊んでくれるのかい?」

倒れた銀時に代わり、ユーリと似蔵の激戦が繰り広げられていた。

激しい攻防戦であるが、明らかに似蔵の方が圧倒している。

「(くそっ! なんだ、この腕力は!? 明らかに人間離れしてやがるじゃねぇか!)」

一撃一撃が重くなっていき、ユーリの腕も痺れていく。

「(マジでコイツ、体に機械か何かが埋め込まれてんのか!?)」

こればかりは、流石の彼も防御に専念するのが精一杯であった。

「(隙は一瞬だ! 次の攻撃に転じる直前、奴は必ず隙を見せる。 その一瞬を狙うんだ)」

似蔵が次の攻撃に入ろうとした瞬間、ユーリは有無を言わずに突進する。

「そこだ!」

懐に入り、容赦無い薙ぎ払いを放つ。

しかしその一閃は、その場で防がれてしまったのだ。

「なにっ!?」

「俺ァ、病で目をやっちまってねぇ。 その代わり、ニオイと音で相手を把握してるんだよ」

ニヤリと笑いながら、似蔵は再び凶刃を振るった。

「つまり、俺に死角はないんだよ!」

咄嗟にユーリは、ニバンボシで防いだが、

「ぐあっ!」

ドガァーン!と、橋脚へと吹き飛ばされたのだ。

「ユーリ!」

「いっつ……。 くそっ、右腕を折っちまったぜ」

上半身を起こすほどの気力を見せたユーリだが、右腕を骨折するほどの重傷を負う。

「アンタも中々の強さだったね。 でも、ここまでのようだ」

愉悦の笑みを見せた似蔵に対し、ユーリも何故か笑みを見せる。

「はっ、そうでもねぇみてぇだぜ?」

まさにその時だった。

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

銀時が似蔵に向かって、飛びかかって来たのだ。





 一気に接近し、銀時は容赦なく木刀を振るった。

「クククク…隙を窺ってたのか。 中々やるねぇ。 でも忘れたのかい?」

しかし似蔵は、彼の方へと振り向き、

「俺の鼻に、死角はない!」

同時に紅桜の刃を振るったのだ。

ガキィーン!と、凄まじい一撃を放ち、

「なっ!?」

木刀もその場で、粉々に砕けた。

「がっ!」

再び橋脚へと吹き飛ばされた銀時であったが、すぐさま起き上がろうとする。

「(ヤロ〜……。 何やったらあんなに強くなれんだ? 人間の力じゃねぇぞ――)」

しかし、その時であった。

ブシュゥと、彼の胸が横一線に切れたのだ。

「おいおい、こりゃヤベ――」

完全に不利を感じた銀時であったが、次の瞬間だった。

似蔵が紅桜での刺突を放ったのだ。

心臓を狙って来たが、銀時は両手で軌道を逸らす事に成功。

しかし代償として、自身の脇腹を貫かせる事になってしまう。

「うぐっ!」

口からは血を吐き、この光景を見ていた新八は狼狽える。

「(嘘だ…嘘だ銀さんが!?)」

だが新八は、咄嗟にエリザベスから刀を奪った。

果たして、彼は何に使用というのか!?






 似蔵に追い詰められた銀時は、彼にこう言われたのである。

「ククク…。 流石のアンタも桂も、平和なこの国では腕も鈍るか……」

「………」

「あの人もがっかりしてるだろうね。 共に闘った盟友達が、揃いも揃ってこのザマだ。 アンタ達の様な弱い侍の所為で、この国は腐敗した。 もし…アンタじゃなく、俺があの人の隣にいれば、この国は腐敗せずに済んだはず。 士道だ摂理だ…そんなモノは侍には不要。 侍に必要は剣のみさね。 剣を折れたアンタは、もう侍じゃない。 惰弱な侍は、この国から消えるがいい」

トドメを刺そうと、似蔵は刃に力を込める。

しかし銀時も、タダでやられるつもりはない。

「剣が折れたって? 剣ならまだあるぜ。 とっておきのがもう一本……」

両手で紅桜の刀身を掴み、その動きを封じたのだ。

「(なっ!? 抜けない――)」

刀を抜こうとするが、抜く事が出来ない似蔵。

まさにその時だった。

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

上から飛び降りて来た新八が、刀を振り下ろしたのだ。

これにより似蔵の右腕は切り落とされ、そのまま宙を舞った。

同時に切り離された紅桜も、元の日本刀の形に戻ったのである。

「あ〜らら…腕が取れちまったよ。 酷いことするね、僕ぅ?」

「それ以上来てみろ! 次は、左腕を貰う!」

腕を落とされたにもかかわらず、似蔵は平然としか顔を見せた。

コレを見て新八も、戦闘態勢に入る。

しかし、その時だった。

突然何者かが、土手から飛び降りて来たのだ。

それは真選組一番隊隊長、沖田総悟だった。

どうやら立ち去ったユーリが気になり、二人を追って来たのだろう。

「真選組の沖田だ。 貴様、岡田似蔵だな?」

鋭く睨む沖田に対し、似蔵は紅桜を拾い上げ、

「邪魔なのが来ちまったねぇ。 勝負はお預けだ。 まあ、次会った時は、やり合おうや」

それだけ言い残し、似蔵はその場から走り去った。





「追え!」

「待てぇ!」

「逃がすな!」

沖田は隊士達に似蔵を追わせ、自身は銀時の方へと歩み寄る。

銀時の傷を見て、沖田はすぐに深手だと分かった。

今の彼には、自力で立てる力が残っていないのだ。

「銀さん! しっかりして下さい!」

「旦那、大丈夫ですか!? くそっ、もう少し早く来ていれば!」

駆けつけるのが遅かった事を悔やむ沖田であったが、

「新八…オメェ…やれば…できる子だと……信じてたよ……」

銀時は新八にそう言い残し、その場で意識を失ってしまう。

「銀さん!」

「運びますぜ!」

「はい!」

沖田と新八は、銀時を抱きかかえ、

「どうやらこの依頼…厄介な方向に行っちまったな」

ユーリは深くため息を突くしかなかった。


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