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魂郷学園 第17話:護るための剣
作者:亀鳥虎龍   2018/06/22(金) 22:47公開   ID:xC/v.dl.E26
 鉄子から託された刀を抜き、銀時は似蔵を正面から睨む。

そんな彼に似蔵は、ゆっくりと口を開く。

「俺は目が全く見えんが、光を感じる事は出来る。 アンタはキラキラ光る、鋭い銀色だ。 しかしどうしてかな、アンタの色は……気に入らねぇ!」

互いに走り出し、正面から刃をぶつける。

「何故来た? そんな体で何が出来る? 自分のやってる事が分からないくらい、おかしくなったのかい?」

「そういうアンタも、調子が悪そうじゃねぇか? 顔色悪いぜ、腹でも壊したのか?」

「腹ァ壊してるのは、アンタだろ!」

鍔迫り合いの中、似蔵は銀時の脇腹を左手で強く掴む。

それも、昨夜の戦いで負傷した箇所を。

「ンググググ……」

痛みに耐えながらも、銀時は力を振り絞り、

「ウラァァァァァ!」

似蔵を後ろへと吹き飛ばす。

同時に自身も、後退して距離を取る。

「くくく…おい、どうした? 血が出てるよ」

彼の血で塗れた左手で、その感触を楽しむ似蔵。

しかし似蔵の左頬が、プシュと切れたのだ。

「!?」

「おいおい、どうした? 血が出てるぜ?」

「ククク……ハーハハハハハハ!」

そして再び、二人は刃をぶつけるのだった。





―護るための剣―





 場所は変わって右甲板。

敵の浪人を斬り伏せた桂とキャスターは、ようやく高杉を見つける。

彼は木箱に座りながら、楽しそうに上を眺めていた。

「ヅラ、アレ見ろよ。 銀時が来てるぜ」

二人も上を見上げると、屋根の上で銀時と似蔵が戦っている。

「紅桜相手に一人でやるらしいぞ? ククク…相変わらずバカだな。 生身で戦艦とやり合ってるもんだぜ」

似蔵の動きを観察しながら、桂はゆっくり口を開く。

「もはや、人間の動きではないな。 紅桜の伝達指令に付いて行けず、肉体からだが悲鳴を上げているはずだ。 あの男…死ぬぞ」

紅桜を使う以上、似蔵に掛かる負担は大きい。

この戦いが長引けば、途中で死ぬ可能性も高くなる。

そう察した桂は、視線を高杉へと向けた。

「貴様は知っていたはずだ。 紅桜を使えばどのような事になるかを。 仲間だぞ、なんとも思わんのか!?」

問われた高杉は、当然の如く答える。

「ありゃ、アイツが自分でやったことだ。 アレで死んだとしても、本望だろうよ」





 屋根の上では、銀時と似蔵の激戦は続いている。

「本望だと?」

「そのとおりだ! あの男は今、刀になろうとしているのだ! 高杉という名の篝火を護るための刀に! 再び闇に戻るくらいならば、自ら火に飛び込み、その勢いを増長させることも厭わん男だ!」

そんな中で村田兄妹も、互いの言葉をぶつけ合っていた。

「光に目を焼かれ、最早それ以外見えぬ! なんと…哀れで愚かな男か…しかしそこにはその善も悪も超えた美がある!! 一振りの剣と同じく、そこには美がある!!」

何時もの大声で叫ぶ鉄矢であったが、鉄子は悲しげな顔で呟く。

「アレのどこが美しい? あんなものが、兄者の作りたかったモノだとでもいうのか!? もう止めてくれ。 私は兄者の刀で、血が流れるところをもう見たくない!」

妹の説得に対し、鉄矢は真っ向から返す。

「ならば何故、あの男をここに連れてきた!? わざわざ死ににこさせたようなものではないか!! まさか、お前の打ったあの鈍刀で、私の紅桜に勝てるとでも……」

ドガァ!と壁にぶつかった音が聞こえ、村田兄妹も聞こえた方へと顔を向ける。

「くっ……」

「「なっ!?」」

壁に背を向けて倒れたのは似蔵で、コレを見た二人は驚愕を隠せなかった。

そして似蔵を吹き飛ばした相手を、銀時の姿を確認する。





「ハァ…ハァ……」

前回の深手によるダメージが残っているにも関わらず、彼は息を上げながらも立っていたのだ。

「ば、バカな!? 」

この光景に対し、鉄矢は自分の目を疑った。

「紅桜と互角…いやそれ以上の力でやり合っているだと!?」

彼にとっては、信じられない事だ。

紅桜の侵食で、似蔵は体力が衰えている。

しかし紅桜そのものの能力は、データを重ねて数段向上しているハズなのだ。

だというのに、現状はこの有様なのである。

「(──まさか!!)」

「うおおおおおお!!」

立ちあがり、再び襲いかかる似蔵。

高速で豪快に紅桜を振るうが、銀時はそれに付いていっているのだ。

「(あの男…紅桜を上回る早さで成長している!? いや…あれは……極限の命のやり取りの中で――)」

似蔵が豪快に薙ぎ払うが、銀時はそれを跳躍で回避し、刀身へと跳び移った。

「(体の奥底に眠る、戦いの甦ったというのか!?)」

刀を突き刺し、似蔵に負傷を負わせた銀時。

「(あれが…あれが、白夜叉!)」

「うぐぅぅぅぅ〜……」

完全に形勢は逆転、銀時が似蔵を追い詰める。

刺された個所から電気が奔り、紅桜が悲鳴を上げているようにも見えてしまう。

「(――消えねぇ…何度も消そうとしても、目障りな光が……消えねぇ!)」

しかし似蔵から、メキメキと不気味な音が聞こえ、

「!?」

それを見た銀時は、驚愕するしかなかった。

「大将!」

コレを見たライダーも、思わず走りだす。

果たして、似蔵に何が起こったのか!?





 場所は変わり、前甲板の方では、

「くっ!」

「どうした? まだまだこんなもんじゃないだろ?」

乱入してきたスタークに、マイは窮地に追い込まれていた。

「折角、楽しめると思ったのになぁ〜。 はぁ、残念だ」

タガー型専用武器『スチームブレード』を構え、ゆっくりと歩み寄るスターク。

「じゃあな」

その凶刃が、マイに振り下ろされそうになるが、その時である。

「スタァァァクゥゥゥ!」

「おっと!」

何者かが飛び掛かり、スタークへと殴りかかった。

勿論、彼も即座に回避する。

「コイツは驚いた。 よくここまで来れたな」

「ボトルの能力を使えばね」

そこには白野、承太郎、十六夜、日影、当麻の5人が現れたのだ。

因みに、スタークに殴りかかったのは当麻である。

「えっ……と、アナタ達は一体?」

困惑するマイに、十六夜が笑いながら答えた。

「ヤハハハハ! 気にすんな。 俺等もアイツに用があるからな」

フルボトルを振り終えた白野は、ビルドドライバーに装填する。

《ラビット! タンク! ベストマッチ!》

レバーを回し、スナップライドビルダーを出現させ、

《Are you ready?》

「変身!」

《鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イェーイ!》

仮面ライダービルドへと変身したのだ。





 その頃、船内の方では、

「ふんぐぉぉぉぉぉぉ!」

「フン!」

カロルと新八と対峙していた武市であったが、

「ふむ、道場剣術は中々の様ですが、真剣での斬り合いは初めてですね? 震えていらっしゃいますよ?」

彼の指摘通り、新八は刀を持っている手が震えていた。

「こ、これは酔剣と言ってな! よ、酔えば酔うほど強くなる幻の……」

「フフフフ…無理はせぬほうがいいですよ?」

その強がりを笑う武市であるが、刀を持っている手が震えている。

「ち、因みに私の剣技は、『志村剣』といって、あの志村けんがコントに使う……」

人の事を偉そうに言いながら、彼自身も虚勢を張っていたのだ。

「いや、お前もかいぃぃぃぃぃ!」

「人の事が言えなかった! そっちも戦闘がダメダメじゃん!」

新八とカロルも当然、即座にツッコミを入れる。

「私はね、どっちかっていうと頭脳派タイプだから、こういうのはあの猪女にいつも任せてるんです」

「誰が猪っスかァァ!! そのへっぴり腰に一発ブチ込んでやろうか!」

近くで神楽と戦っているまた子の怒鳴り声が響く。

「実践は度胸っス先輩!! こっちが殺らなきゃ殺られるのみっスよ!」





 銃口を向け、弾丸を容赦なく放つまた子。

それを見ながら神楽も、かわしながら近付いて行く。

得意の接近戦に持ち込もうとする神楽と、彼女を近付けんとするまた子。

先程の二人とは逆に、互角の勝負を繰り広げていた。

足元に放たれた弾丸を避けるため、神楽は空中へと跳ぶ。

しかし、これがまた子の狙いであった。

「(かかった! 空中では身動きとれまい! 死ねぇ!)」

バァン!と放たれた弾丸は、神楽へと向かっていく。

放った弾丸は3発で、見事にすべて命中。

「(った…)」

勝利を得たと確信したまた子だが、彼女の予想は多く外れてしまう。

「にっ!」

「なっ!?」

なんと神楽は、両手の指と歯で弾丸を受け止めたのだ。

驚くまた子であったが、神楽はそれを見逃さなかった。

「ふん!」

「がっ!」

一度着地すると、足払いで彼女を転ばす。

そして馬乗りになり、神楽は渾身の一撃を放とうとした。

「私をろうなんざ、百年早いネ! 小娘ェェェ!」

「くっ!」

自身の敗北を覚悟したまた子であったが、その時である。

ボカァン!と、天井が崩壊したのだ。

「「えっ?」」

全員が驚くが、何かが蠢いている。

まさにその時、あるものが彼等の目に映ってしまう。

そこには、変わり果てた似蔵が立っており、

「銀さん!」

「銀ちゃん!」

彼から伸びる触手に、身体を縛られた銀時の姿があった。




「な、何なんスかアレぇ!?」

変わり果てた似蔵の姿に、また子は絶叫してしまう。

両腕は巨大なコードのような触手の集合体で、背中から肩にかけて無機質なパイプが盛り上がっている。

かろうじて人型は成しているものの、異形となった姿はもはや人間とは呼べないだろう。

「…似蔵、さん?」

思わず彼の名を呼ぶ武市であったが、

「う…う……あがぁぁぁぁぁぁ!」

似蔵は腕の触手を振るい、武市を攻撃したのだ。

「ガハッ!」

武市はドガッと壁に叩きつけられ、ズルズルと崩れ落ちる。

「か…神楽ちゃんの…三年後が……見たか…た……」

「先輩!」

気絶した彼を目にし、また子は驚愕を禁じ得ない。

「似蔵! 貴様、乱心したッスか!?」

叫ぶまた子であるが、似蔵は「コォォォ…」と呻くだけである。

「意識が…まさか紅桜に? チィ、嫌な予感が的中したッス。 止まれ似蔵ォ!」

殺すしかないと判断し、何度も銃を撃つが、似蔵には全く効いていない。

「ウオォォォォォ!」

それどころか、彼の攻撃が襲いかかる。

「がっ!」

攻撃を喰らったまた子は、壁に激突してしまい、その場で気絶してしまう。

仲間すらも攻撃する似蔵はもう、理性すらも失っている。

新八達の前にいるのは、紅桜そのものであった。





「完全に紅桜に侵食されたようだな! 自我のない似蔵殿の身体は全身これ剣と化した!」

屋根に空いた穴から見下ろしながら、鉄矢が叫ぶように言い放つ。

「もはや白夜叉といえど、アレは止められまい! アレこそ紅桜の完全なる姿! アレこそ究極の剣!! 一つの理念の元、余分なものを捨て去った者だけが手にできる力! つまらぬ事に囚われるお前たちに、もう止められるわけがない!」

大きく目を見開く鉄矢を見て、鉄子は遂に悟ったのである。

自身の知る兄の姿は、もうどこにもいないのだと――。

そんな中、彼女は銀時が落とした刀が目に映った。

兄を止めるために、紅桜を倒すために託した一振りを…。

未だに気を失っている銀時。

似蔵は彼に目を向けながら、紅桜の付いた腕を上げる。

「(──…エナイ…メザワリナ光ガ…消エナ…)」

もはや自分が何者かすらもわからなくなった頭で、言葉を反復する似蔵。

左腕で銀時を持ち上げ、右腕の刃を振り上げる。

だが、その時であった。

天井の穴から飛び降りてきた鉄子が、似蔵の左腕に刀を突き刺したのだ。





「鉄子ォォ!!」

「死なせない! コイツは死なせない!! それ以上その剣で、人は死なせない!」

これを見て、鉄矢は呆気に取られた。

今までボソボソとしか話さず、自己主張も控えめだった妹が、力強く叫んだのだ。

「がアァァァァ!!」

「!!」

すると似蔵の右腕の刃が、狙いを鉄子へと変えて振るわれる。

「ほわちゃぁぁぁ!」

しかし神楽が、蹴りで打ち上げたのだ。

「デカブツぅぅぅ!」

「そのモジャモジャを!」

「放せぇぇぇぇぇ!」

さらに新八とカロルと共に、似蔵の腕や頭に掴みかかったのである。

「ガァァァァァァァ!」

しかし似蔵は咆哮しながら、彼等を振り払おうと暴れ出す。

この光景を見ていた鉄矢は、妹の行動が理解できなかった。

「(何故…何故だ。 鉄子、何故理解しようとしない!? 私はこれまで紅桜に全てを捧げてきた。 他の一切、良心や節度さえ捨てて。 それは私の全てなんだ、それを失えば私には何も残らん)」

脳裏に蘇るのは、父が亡くなってすぐのこと。

――惜しい人を亡くしたな…。

――でも、息子がいるんじゃ?

――ありゃ駄目だ。 まあ、親父が稀代の仁鉄だから、食うには困らねぇんじゃねぇか?

鍛冶屋を継いだ鉄矢は、少しでもいい刀を作ろうと日々努力してきた。

しかし先代の父は、稀代の刀工と謳われている。

当然その腕の差は歴然で、客達も鉄矢を見限っていく。

次第に鍛冶屋を訪れていた客も、最後は遠のいてしまう。

生前の父も、自分ではなく鉄子の鍛冶を認めていた。

――鉄子…オメェは鍛冶の腕は下手だが、鉄矢には無ぇもんを持ってる。 アイツも何時か、分かってくれるといいんだが…。

しかしこの言葉の意味を、鉄矢は今でも理解できなかった。

「(親父を超える為、剣だけを見て生きてきた。 全てを投げうち、剣だけを打ってきた。 いらないんだ、私は剣以外何もいらない。 それしかないんだ、私にはもう剣しか……)」

そんな中、似蔵の身体にしがみついていた者達が振り落とされた。

体勢を崩し、床に倒れてしまう。

その中の1人である鉄子に、似蔵は狙いを定める。

刃を高々と掲げ、振り下ろそうとしていた。

「てっ…!!」

その光景を見た鉄矢は、狼狽するように身を乗り出す。

ドゴォォォォンと、紅桜の刃が容赦なく振り下ろされた。

一直線に下ろされた刃は、床を叩き割り、その衝撃で砂塵を巻き上げたのである。





 目を開けると、鉄子は無事であった。

砂塵が晴れるとそこには、彼女を庇って斬られた鉄矢が倒れている。

「あ、兄者!」

すぐさま鉄矢に駆け寄り、抱き起す鉄子。

しかし出血が酷く、彼自身も虫の息であった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

鉄子の悲痛の叫びが響く中、似蔵は紅桜を振り下ろそうとする。

だが、その時だった。

「おらぁ!」

目を覚ました銀時が、刀を取って似蔵の顔を斬りつけたのだ。

似蔵の顔から鮮血が噴き出し、その場に倒れ込む。

「銀さん!」

触手から脱出した銀時であったが、既に体力は限界を迎えていた。

「兄者ッ!! 兄者しっかり! 兄者!」

力なく横たわる兄の身体を抱き上げ、必死に呼びかける鉄子。

口から血を吐きながらも、鉄矢は悟ったような顔で笑みを浮かべていた。

「フッ、そういうことか。 剣以外の余計なものは…全て捨てたつもりだった。 人としてよりも、刀工として…剣を作ることだけに生きるつもりだった」

今にも消えてしまいそうな声で呟きながら、涙を流す妹の頬に右手を添える。

「だが最後の最後で──お前だけは、捨てられなかったか…。 こんな生半可な覚悟で、究極の剣など打てるわけもなかった…」

「余計なモンなんかじゃねぇよ!」

「!」

そんな彼に対し、銀時がボロボロの体で立ち上がった。

「この世に余計なモンなんかじゃねぇよ。 全てを捧げて、剣を作るためだけに生きる? それが職人だァ? 大層なことぬかしてんじゃないよ! ただ面倒くせぇだけじゃねぇか!」

似蔵も立ち上がって、再び戦闘態勢をとろうとしている。

「色んなモンを背負って、頭抱えて生きる度胸もねー奴が、職人だなんだカッコつけんじゃねェ! 見とけ…テメェの言う“余計なモン”が、どれだけの力を持ってるか」

そんな相手を見据えながら刀を握り、銀時は切っ先で似蔵を指す。

「テメェの妹が、魂を込めて打ち込んだコイツの斬れ味──その目に焼き付けな!」

「ガァァァァァァァァ!」

似蔵が咆哮を上げながら、彼は銀時へと突進してくる。

それを銀時は、正面から走り出す。

「銀さん! 無茶だ、正面からやり合って紅桜に…」

鉄子の叫びを遮るかのように、銀時と似蔵は真っ向からぶつかった。

「がぁぁぁぁぁぁ!」

「うおらぁぁぁぁぁ!」

二人はすれ違いに刃を振るい、互いに背中を向ける。

果たして、勝負の行方は!?





互いに背中を向ける銀時と似蔵。

しかし銀時の刀は折れており、刀身が宙を舞っていた。

刀身が床に刺さるが、二人は未だに動かない。

――刀なんぞ、所詮は人斬り包丁だ。 どんなに精魂込めて打とうが、使う相手は選べん。 それでも俺達ァ、鎚を打つのを止めるワケにはいかねぇ。 おまんま食いっぱぐれちまうからな。

静寂の中、鉄矢は父・仁鉄の言葉を思い出す。

――それだけじゃねぇ、俺達が作るのは武器だ。 だから打って打って打って、打ちまくらなきゃならねぇ。 鉄じゃねぇよ、自分テメェの『魂』をだ。

「!?」

――鉄とともに自分の『魂』を叩き上げろ。 優しく清廉な人になれ、そして美しく生きろ。 そうすれば刀コイツをマシに使ってくれる奴がいるかもな。 なあ、鉄子。 お前はどんな刀を打ちたい?

幼き頃に鉄子は、父の問いにこう答えた。

――まもるけん。

――あ? 声が小せぇよ。

――人を…護る剣……。

この言葉が鉄矢の脳裏で聞こえた瞬間、紅桜の刀身にヒビが入る。

そして最後は、粉々に砕け散ったのだ。

先程まで暴走していた似蔵の肉体も、紅桜と共に消滅していく。

その光景は、まるで桜の花びらのようであった。





 父の言葉がよぎった鉄矢は、ある事を思い出したのである。

“護るための剣”……それが、鉄子が目指している理想の剣。

どんなに才能に恵まれても、どんなに努力をしても、“目標”がなければ意味がない。

己の理想を描こうとする鉄子と、父を超えたいだけの鉄矢。

どんなに同じ刀を作っても、“魂”を込めて“目標”へ辿りついた者には敵わない。

父が鉄子を認めていた理由――それは己の目指す“理想”を、既に持っていたからだ。

鉄矢はやっとで理解出来た。

“自分に無くて、鉄子が持っていたもの”を…。

「護るための剣…か……。 鉄子…お前らしいな…。 どうやら…私は…まだ…打ち方が…足りなかった…らしい…」

しかし、気付くのは遅すぎた。

そして同時に、強く後悔したのだ。

もっと早く気づいていれば、こうなる事もなかっただろうと……。

この機を逃さなかったネウロも、一瞬だけ魔人の姿になり、

「頂きます…」

鉄矢の生み出した『謎』を喰らった。

意識が徐々に薄れていく中、鉄矢は妹の頬に手を添える。

「鉄子…良い…鍛冶屋に…な……れ――」

最期の言葉を妹に遺し、彼は遂に息絶えたのだった。

力を失くした手を握り、鉄子は涙ながら呟く。

「聞こえないよ、兄者。 何時もみたいに…大きな声で言ってくれないと……聞こえないよ……」

激しい死闘により、銀時が勝利を掴み取る。

その代償は、あまりにも悲しいものであった。


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■作者からのメッセージ
 次回で、紅桜編終了です。
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