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魂郷学園 第18話:白夜叉
作者:亀鳥虎龍   2018/06/23(土) 21:56公開   ID:xC/v.dl.E26
 船の右甲板では、背を向ける高杉に桂が言い放つ。

「高杉、俺はお前が嫌いだ。 昔も今もな。 だが、仲間だと思っている。 昔も今もだ。 いつからたがった、俺たちの道は」

「フッ、何を言ってやがる」

高杉は刀傷のついた教本を取りだし、昔の事を思い出す。

「確かに俺たちは、始まりこそ同じ場所だったかもしれねェ。 だが、あの頃から俺達は、同じ場所など見ちゃいねぇ。 どいつもこいつも好き勝手、てんでバラバラの方角を見て生きていたじゃねーか」

それこそが、彼らの恩師の教えでもあった。

「俺はあの頃と何も変わっちゃいねぇ。 俺の見ているモンは、あの頃と何も変わっちゃいねぇ。 俺は──」





―白夜叉―





 前甲板では、当麻達がスタークと戦っていた。

「うおぉぉぉ!」

ドラゴンフルボトルを左手で握り、当麻はスタークを何度も殴る。

攻撃を防ぎながら、スタークは何かを呟くが、

「ハザードレベルが2.6…2.8…2.9……」

「うおぉぉぉぉ!」

ドガッ!と、渾身の一撃が直撃する。

この攻撃を受けたスタークだったが、多少よろめく程度であった。

「3.0! おめでとう、遂に覚醒したか!」

「覚醒? 何の事だ!?」

「悪いが、それは言えない。 俺も、此処をおさらばしなきゃならないんでな」

そう言うと彼は、そのまま船の縁から飛び降りたのだ。

「なっ!?」

驚く一行であったが、まさにその時だった。

「こいつをかっぱらって正解だったぜ」

スタークは馬型ホバーバイク『ペガサス』に跨っている。

恐らく船にあった中の一台を、リモコン操作で待機させていたようだ。

「そういうワケで、俺は失礼するぜ。 チャオ♪」

ホバーバイクを飛ばし、そのまま逃げ去ったのである。

それとは別に、一隻の船が近付いてきた。

「なんだありゃ?」

「ん?」

誰もが首を傾げたであったが、真選組の隊士達が船の旗を見て驚く。

「なっ!? バカな!? あの旗は!?」

「何で…何で奴等が此処に!?」

コレを見た隊士の一人が、思わず叫んだのだった。

「春雨…宇宙海賊『春雨』だぁぁぁ!」





 場所は戻って船の右甲板。

「ヅラぁ…俺はな、テメェ等が国を護るためだァ、仲間のためだァ剣をとった時も、そんなもんどうでもよかったのさ」

高杉が薄ら笑いを浮かべ、彼の言葉を桂は黙って聞く。

「考えても見ろ。 その握った剣、コイツの使い方を俺達に教えてくれたのは誰だ? 俺達に武士の道、生きる術、それらを教えてくれたのは誰だ? 俺達に生きる世界を与えてくれたのは、紛れもねェ──松陽先生だ」

恩師『吉田松陽』と過ごした日々、弟子の彼等にとっては掛け替えのない宝であった。

「なのに世界は、俺達からあの人を奪った。 だったら俺達は、この世界に喧嘩を売るしかあるめェ、あの人を奪ったこの世界を…ブッ潰すしかあるめぇよ」

大切な人を奪った世界への復讐。

これこそが、高杉の攘夷活動の起因となっていた。

「なァ、ヅラ。 お前はこの世界で何を思って生きる? 俺達から先生を奪ったこの世界を、どうして享受し、のうのうと生きていける? 俺はそいつが腹立たしくてならねェ」

先程まで黙っていた桂も、ようやく口を開く。

「高杉…俺とて何度、この地を更地に変えてやろうかと思ったかしれぬ。 だがアイツが…アイツがそれに耐えているのに──アイツが…一番この世界を憎んでいるハズの銀時が耐えているのに、俺達に何ができる?」

銀時こそが、一番この世界を憎んでいる――。

同じ松陽の弟子であった桂は、それを誰よりも理解していた。

「俺にはもうこの国は壊せん。 壊すには…ここには大事なものが出来過ぎた」

銀時やエリザベス、そして新八達の顔が、今の桂の脳裏に浮かんでいる。

「今のお前は抜いた刃を収める機を失い、ただいたずらに破壊を楽しむ獣にしか見えん。 この国が気に食わぬなら壊せばいい。だが、この国に住まう人々ごと破壊しかねん貴様のやり方は、黙って見てられぬ。 他に方法があるはずだ。 犠牲を出さずとも、この国を変える方法が。 松陽先生もきっとそれを望んで…」

説得を試みようとした桂であったが、まさにその時であった。

「よう、桂」

「!?」

突然の声に、彼は後ろを振り返る。

「悪いな、桂ァ。 アンタの首は高く売れるんでなぁ」

そこには豚の天人が剣を向けている。

更に上には、猿の天人が銃を向けていた。

「天人!?」

驚愕する桂に対し、高杉は船の縁に腕を乗せながら口を開く。

「ヅラ、聞いたぜ。 お前さん、以前銀時と一緒に、あの春雨相手にやらかしたらしいじゃねぇか。 俺ァねェ、連中と手を組んで、後ろ盾を得られねぇか苦心してたんだが…おかげで上手く事が運びそうだ。 お前達の首を手土産にな」

「高杉ィィ!!」

怒る桂であったが、高杉は狂気に満ちた笑みを見せた。

「言ったハズだ。 俺ァ、ただ壊すだけだ……この腐った世界を」





 鬼兵隊の船の横についた春雨の船は接舷し、天人の軍勢を次々と送り込む。

そして真選組と衝突し、激しい戦いを繰り広げている。

しかし数の差で、僅かに真選組が押されていた。

その光景を、船の甲板から眺める一人の人間と一人の天人。

「万斉殿、我らは桂と件の侍の首がもらえると聞いて…万斉殿?」

すると天人が、隣の相手に声をかける。

サングラスとヘッドホンを着用し、ロングコートを羽織って三味線を背負った男。

彼こそ、鬼兵隊の“人斬り万斉”こと『河上万斉』である。

天人は話しかけるが、本人はヘッドホンから流れる音楽を聴きながら鼻歌を歌っていた。

「ふんふんふ〜ん♪」

「ちょっと!? 聞いてるの万斉殿!?」

「聴いてるでござる。 これね、今イチオシの寺門…」

「そっちじゃなくてこっちの話! なんなの、何でこんな奴を交渉に寄越したワケ!?」

どうやらまったく聞いていなかったようで、流石の天人も怒鳴りながらツッコむ。

「心配ないでござる。 所詮は幕府の犬なぞ雑魚でござる。 すぐに片が付きますよ」

そう言って万斉は、真選組と春雨の戦いを見ていたのだった。





「すまねぁ、守ってやれなくて…」

兄の亡骸を抱く鉄子に、銀時は謝罪の言葉を口にする。

すると彼等の元に、土方と沖田が現れた。

「あっ、これは真選組の皆さん」

「テメェ、無事だった」

皮肉を言う土方であったが、銀時はそれを受け流す。

「あの、この船そろそろヤバイんで、コイツ等を連れて脱出してくれませんかね?」

「テメェはどうする気だ?」

「最後に、ちょっくら人にあって来る」

「ですが旦那、その身体で」

沖田の言うとおり、今の銀時の傷は深い。

先日の戦闘の後にも拘らず、更に傷だらけになっているのだ。

生きてるのが不思議過ぎる。

「そうですよ銀さん」

「銀ちゃん」

新八と神楽も心配する中、彼は笑いながら答えた。

「大丈夫。 高杉アイツ、友達だから。 信じて。 話しつけてくるから。 だから、頼むよ」

深く頭を下げる銀時に、土方も渋々「分かった」と頷く。

すると、今度はマイ達が現れる。

「副長! 急いで脱出だ!」

「何かあったんですか?」

新八が問うと、彼女は息を切らしながら答えた。

「春雨の船が、この船に攻め込んできました!」

「えっ!? 春雨が!?」

宇宙海賊『春雨』……銀河中に広がる、犯罪のジンケート。

銀時達も以前、春雨の関わった麻薬事件を解決した事がある。

まさか春雨が、今回の事件に関わるとは思っていなかった。

「ちっ、高杉のヤロー。 天人と手ェ組んでたか」

「今、脱出の準備をしています。 早く船に急げ!」

それを聞いた銀時は、新八達に告げる。

「そういうこった。 お前等は先に船に急げ」

「銀さん……」

すると新八は、自身が使っていた刀を手渡す。

「これ、使って下さい」

「ああ。 んじゃ、ちょっくら行って来る」

刀を受け取った銀時は、皆の元を後にした。

向かうは、嘗ての盟友・高杉晋助のもと……。





「終わりだな、桂」

「ちっ!」

猿の天人が引き金に力を込めようとしたが、その時である。

「後ろがガラ空きだ」

「がっ!?」

突然現れたユーリによって、背後から斬られてしまう。

「何っ!?」

豚の天人は驚くが、桂によって斬り伏せられる。

「ハッ!」

「すまぬ、助かった!」

「なに、気にすんな」

すると、今度はエリザベスが現れた。

『桂さん、準備が出来ました』

「そうか。 ではエリザベス、先に脱出してくれ」

『今度は、ちゃんと帰ってきてくださいよ』

「ああ、無論だ」

ユーリとエリザベスの元を去り、桂は高杉のもとへと走り出す。

「高杉ィィィ!」






 真選組の船が飛び去り、天人達が高杉を出迎える。

「天人と手ェ組むとはな」

「!?」

「性根まで腐ったか、高杉」

だがここで、銀時が立ちはだかった。

「その身体で似蔵アイツを倒したのか? 大した奴だ」

「アイツは!?」

「間違いない! あの時の侍!」

以前の計画を妨害した銀時の存在に気付き、天人達が思わず声を上げる。

「死ねぇ!」

天人二人が、銀時に襲いかかるが、

「邪魔してんじゃねぇよ!」

刀を抜いた銀時が、その場で斬り伏せたのだ。

「フン」

その光景に、思わず笑みを見せる高杉。

すると、また子と武市も駆けつける。

「退け、このくたばり損ない! 蜂の巣にしてやるっス!」

「晋助殿、行きましょう」

また子が銃口を向けるが、高杉がそれを阻止し、

「どけ。 何時か、り合わなきゃいけねぇやつだ」

自ら銀時の前に立つ。

「なァ、銀時。 お前はこの世界で何を思って生きる? 俺達から先生を奪ったこの世界を、どうして享受し、のうのうと生きていける? 俺はそいつが腹立たしくてならねェ」

桂の時と同じ問いをする高杉に、銀時は当然のように答えた。

「決まってんだろ、そんなこと。 ……パフェが美味しいから」

「ハッ、なんだそりゃ?」

「俺にはなぁ、ここに大切なもんが出来ちまったんだよ…」

ボカァン!と、船が爆発を起こし、

「銀時ぃぃぃ!」

「高杉ィィィ!」

これが合図になり、銀時は高杉とぶつかり合う。

己の、大切な者達を護るために……。





 キンキン!と、刃と刃が火花を散らし合う。

それを天人達や鬼兵隊の面々は眺めるしかなかった。

ともに攘夷戦争を戦い、違う道を歩んだ二人の侍。

その強さは、全くの互角だ。

鬼兵隊総督の名に恥じない強さを見せる高杉。

似蔵戦の深手があるにもかかわらず、銀時もそれに喰らい付く。

その姿はまさに、銀色の髪を揺らす夜叉の如しだった。

「信じられん、あれが白夜叉!?」

春雨の船から、天人の一人が呟くが、

「あれが坂田銀時…白夜叉か……。 強い、一手し合って貰いたいものだな」

万斉はどこか楽しそうに笑うのである。

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

激戦が続く中、二人の一閃がぶつかり合う。

だが衝撃に耐えられなかったのか、互いの刃が折れてしまった。

しかし銀時も高杉も、止まる事も知らない。

刀身を失った刀を捨て、今度は拳をぶつけ合ったのだ。

「うおぉぉぉぉ!」

「オラァ!」

銀時が拳を放つが、高杉はそれを即座に防ぐ。

逆に高杉が拳で攻めるが、銀時もすぐさま防ぐ。

互いに放った拳を、二人は即座に掴み取る。

そのまま力の押し合いになるが、まさにその時であった。

「おらぁぁぁぁぁぁ!」

ドガァ!と、銀時の頭突きが、高杉の頭を捉えたのだ。





「がっ――」

頭部に受けた衝撃は、そのまま脳へと響く。

高杉はその場で倒れてしまうが、銀時もその場で倒れてしまう。

しかし、銀時は辛うじて動けた。

甲板に転がっていた刀を拾うと、そのまま高杉の方へと進んでいく。

「くっ!」

刀を構え、彼を斬ろうとする銀時。

「白夜叉ぁぁぁぁ!」

また子が銃口を向けながら叫ぶが、高杉が「手を出すんじゃねぇ!」と一喝する。

「さて銀時、お前に俺が斬れるか?」

不敵に笑う高杉に対し、銀時の脳裏には過去の記憶が過ってしまう。

共に師の元で学び、共にカブトムシ取りを楽しんだ。

もう、あの頃には戻れない――。

そう思った銀時であったが、再び爆発が起こったのだ。

ボカァーン!と、爆発で吹き飛んでしまった銀時と高杉。

「相変わらず、甘ぇヤツだな」

武市に肩を貸して貰い、高杉は春雨の船へと向かう。

「高杉ぃぃぃぃ!」

そんな彼に、銀時が力強く叫んだ。

「俺達は次に会った時は、仲間もクソも関係ねぇ! 全力で、テメェをぶった斬る! せいぜい街で会わなねぇように、気をつけるこったなぁぁぁ!!」

「………フン」

鬼兵隊の面々が乗り込むと、春雨の船は飛び去っていった。






 飛び去る春雨の船。

それを眺める銀時の元へ、桂が駆け寄ってきた。

「銀時!」

「よう、ヅラ。 どうしたその頭、失恋でもしたか?」

「黙れ、イメチェンだ。 そういう貴様もなんだそのナリは、爆撃にでもあったか?」

「黙っとけや、イメチェンだ」

「どんなイメチェンだ!」

再会と同時に、何時ものやり取りを交わす二人。

「そんなことより、この船を去るぞ。 今の爆発は、俺が工場に仕掛けた爆弾だ。 この爆発は、この船が粉々になるまで続くぞ」

「え〜、先に言ってよ〜」

すると桂は、銀時の襟元を掴むと、

「えっ、ちょっと!?」

そのまま彼を引きずるように走り出す。

「あららららららら!?」

そして勢いよく、船から飛び降りたのだ。

「きゃあああああ!」

絶叫する銀時は、思わず桂の足にしがみつく。

一方で羽織りを脱ぎ捨てた桂は、そのままパラシュートを開いたのだ。

上から見ると、エリザベスの顔になっているが……。

「用意周到なこって、ルパンかお前は?」

「ルパンじゃない、ヅラだ! あっ、間違えた桂だ。 伊達に今まで、真選組の追跡をかわしてきたワケではない」

すると桂は、懐から一冊の本を取り出す。

恩師の教えが書かれた、思い出の品を……。

「それにしても、奴もコレを持っていたとはな。 始まりは皆、同じだった。 なのに、どんどん遠くへ離れて行ったものだな」

春雨の船が遠くなり、桂はそれを眺めるしかなかった。

「銀時。 お前も覚えているか、コイツを?」

「ああ」

この問いに対し、銀時は呟くように答える。

「ラーメンこぼして捨てた」

目の前に広がる、青空と海を眺めながら……。

こうして紅桜を巡る事件は、幕を閉じたのであった。





紅桜編……完!

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 次回から、新キャラを登場させます!
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