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魂郷学園 第22話:牙を向けたJ/聖女の咆哮
作者:亀鳥虎龍   2018/07/17(火) 22:51公開   ID:CUGywFsC2NE
 一年前、ジークとジャンヌが初めて変身した時の事。

「まだいるのか……」

ガーディアンや戦闘員怪人の軍勢が、行く手を阻んでいる。

するとジャンヌの元に、一機のガジェットが出現した。

「これは……」

これを見た彼女は、すぐさま行動したのだ。

「変身!」





―第22話:牙を向けたJ/聖女の咆哮―




 坂本探偵事務所は、現在ヒマである。

正確には、ペットの迷子探しの依頼しか来ていない。

それ以外は全くヒマなのである。

「ヒマだね……」

「ヒマだな……」

「確かにヒマだが、それだけ平和だって事じゃないのか?」

「ううっ…。 確かにそうなんだけど」

「まあ、お竜さんも同感だ。 龍馬、ヒマなら商いとかやれば良いだろ? お前、そっちが得意分野なんだし」

「まあ、そうなんだけど」

すると、コンコンとノックの音が聞こえた。

「はい、どうぞ」

扉が開くと、来客は姿を見せたのだ。





 事務所を訪ねたのは、細めの男であった。

「え〜と、栗沢隆さんですね。 それで、ご依頼とは」

「実は……大事な商品を取り返して欲しいのです」

「と、おっしゃいますと?」

依頼人の栗沢は、とある企業の社長である。

彼の会社は昨夜、取り引き先と商いをしようとしたのだ。

しかし突然の煙幕に、視界を奪われてしまう。

そして煙幕が晴れたと同時に、金と商品が奪われていたのだ。

「失礼ですが、その取り引きは、買い手はどちらが?」

「我々が買い手で、相手側が売り手です」

栗沢は懐から名刺を取り出した。

名刺には、『青沢商会』と書かれている。

「相手側の名刺です。 我々で不足でしたら、そちらもお願いします」

「分かりました」

こうして彼等は、依頼を引き受けたのだった。





 同時刻の桂木探偵事務所。

 桂木弥子探偵事務所。

「美味しい〜♪」

そう言って弥子は、目の前の弁当を食していた。

因みにこの弁当で、現在12個目である。

「よく、そんなに食べられるのう………底の無い胃袋じゃわい」

そんな彼女の食欲に、魔女の様な格好の少女が顔を青ざめてしまう。

彼女名はマギルゥ。

ネウロによって召喚された、キャスタークラスのサーヴァントである。

すると、ネウロが何かに反応した。

「ふむ、『謎』が来たようだ」

「え?」

ノックする音が聞こえ、ネウロが景気のいい声で返事する。

「どうぞ♪」

「あの、此処が桂木探偵事務所ですか?」

扉が開くと、40歳前半の男が現れた。

「はい、ここが桂木探偵事務所ですよ♪」

交友的な青年を装うネウロに対し、

「(ホント…不気味すぎるわ!)」

しかし彼の行動の速さに、マギルゥは口元を引きつるしかなかった。






「改めまして、私は青沢商会の『青沢匡』と申します」

「青川商会って、あの有名な企業の事ですよね?」

「はい。 その通りです」

依頼人の名前を聞き、弥子には心当たりがあった。

青沢商会…最近で業績を上げてる新興企業。

発展途上、国に送る新しい機械の開発を政府に任されてる程の信頼を得ている。

「それで、依頼内容というのは?」

弥子が尋ねると、青沢もそれに答えた。

「実は、私どもが取り引き相手の栗沢興業に買い取って貰うつもりでいた商品を賊に奪われてしまったのです。 勿論、買い取る為に用意した金もです」

「それで、その商品とお金を取り戻せばいいんですよね?」

「正確にはその通りです」

「ところで、盗まれた品物はなんですか?」

弥子が尋ねると、青沢は一枚の写真を見せた。

写真に写っていたのは、単一の乾電池である。

ただし、大きさは通常の電池の数倍だ。

「これ…電池なんですか?」

「はい。 正式な名前は『感電血』です。 “感覚”の『感』に“電気”の『電』、そして“血液”の『血』と書いて『感電血』です」

「それで、買い取るつもりだったのは一本だけですか?」

ネウロに尋ねられ、青沢は首を横に振った。

「いえ、我々が買う予定だったのは24本です」

「でも…コレだけ大きい電池を、何に使うつもりだったんですか?」

「知らないのですか? これは一本だけで、巨大戦艦を容易く動かせる事が出来るんですよ」

「ほう、それはすごい話しじゃのう」

感電血の機能を聞いたは、マギルゥは感心を見せる。。

「桂木先生に頼みたいのは、感電血と金の回収です。 もしもの事があったら、栗沢商会を訪ねて下さい」

「分かりました。 ですが、捜査の協力をお願いするかもしれません」

「かしこまりました。 では、私はこれで……」

青川は事務所を後にし、ネウロは不敵に笑う。

「では、行くぞヤコ」





 龍馬達は、青沢商会に足を踏み入れる。

「これはこれは探偵さん。 話しは栗沢社長から聞いております。 わざわざお越しいただいて」

「いえいえ。 それよりお聞きしたい事があるんですが」

「はい、何でしょう?」

「早速なんですけど、襲ってきた相手に誰か心当たりはありませんか?」

ジャンヌの質問に対し、青川はこう答えた。

「さ、さあ……。我々は信用第一をモットーにしておりますので、恨まれるような相手は……」

「ですが、実際には取引現場をピンポイントで狙われてるんです。 前もって情報が漏れてたとしか思えませんが?」

今度は龍馬が、当然の質問を突き付ける。

「それはお互い様です。 こちらも被害者であることをお忘れなく」

そしてそれに対し、青沢は正論を述べた。

こうして彼等は、青沢商会を去ったのである。






 ネウロ達は現在、犯行現場に来ていた。

「ここか……」

場所は廃墟で、人が来る形跡がない。

「確かに、密会には丁度良い場所かもな」

廃墟の中を歩き回るネウロ。

地面だけでなく、壁や天井にまで歩く。

すると弥子は、彼にこう言ったのだ。

「ねえ、ネウロ。 ホントにコレ、ただの強奪事件かな?」

「ほう…なぜそう思う?」

「だって…取引場所が簡単に見つかったりするなんて、奇妙過ぎる」

「なるほど…それには同感だ」

そして最後に、ネウロは小さく呟いた。

「この『謎』をには、少し時間がかかるな……」







 時刻は夜の8時過ぎ。

龍馬達は今、捜索に苦戦していた。

「ダメだ。 どこにも手掛かりが見つからない」

誰もが悩んでいたが、まさにその時である。

「!?」

何かの気配を感じ、彼等は即座に振り向く。

「フーフー!」

そこには全身タイツで目だし帽を被った集団がいた。

「……なにアレ?」

思わず龍馬が呟く。

「分からないが、俺達が狙いか?」

ジークは首を傾げる。

「ふざけた格好だな、何かの勧誘か?」

「それはないと思います」

お竜が集団の格好から勧誘と考え、ジャンヌがツッコミを入れた。

《キャノン》

そんな彼等の中に、異形が姿を露わした。

右腕が大砲の様な形状になっており、全身がダークグリーンの怪人。

『大砲の記憶』を宿す、キャノン・ドーパントが現れた。

「まさか、ドーパント!?」

「龍馬さん、まさかと思うが……」

「どうやら、二つの企業の取引を邪魔したのは、コイツ等の様だね。 そしてあのドーパントは、連中の親玉ってところだ」

背中のゴルフケースから、一本の日本刀を取り出す龍馬。

「ジーク君、ジャンヌ君。 下っ端の方は、僕とお竜さんが引き受ける。 キミ等はドーパントを頼む」

「了解した」

「はい」

ダブルドライバーを装着し、ジークとジャンヌはメモリを構える。

《CYCLONE》

《JOKER》

「「変身!」」

《CYCLONE・JOKER》

そして二人は、仮面ライダーWへと変身した。






 キャノン・ドーパントへと突進し、先制攻撃を仕掛けたW。

パンチやキックを放つが、キャノンには全く通じでいなかった。

「なんて硬い!」

『でしたら、コレです!』

《HEAT!》

ジャンヌの意志で動いた右手が、右のメモリを挿し替える。

《HEAT・JOKER》

『熱の記憶』を宿したヒートジョーカーにチェンジし、炎を纏った右手で殴りつけた。

「はっ!」

熱の力で攻撃力を引き上げるヒートメモリの火力で、拳の一撃はキャノンにダメージを与える。

「うぐっ!」

「まだまだぁ!」

一撃一撃は重く、キャノンの強固な体を怯ませていく

「オラァ!」

「ぐがぁ!」

キャノンを殴り飛ばし、Wは右側のメモリを取り出す。

「これで――」

しかし、その時だった。

「イー!」

黒タイツの男が放った何かが、ドライバーの右スロットに付着したのだ。

「!?」

それは液体金属で、ドライバーの右スロットが封じられてしまった。

「そこだぁ!」

キャノンが右腕から砲弾を放ち、Wに命中したのである。

「ぐあぁぁぁぁ!」

直撃を受けたWは、その場で変身が解けてしまった。






「ジーク君!」

倒れたジークを目にし、龍馬は焦りを隠せない。

「そこをどけ!」

ジャンヌの肉体を抱えていたお竜も応戦するが、タイツ男がハンマーで腹部を殴りつけた。

「がっ!」

痛みに耐えられず、彼女はジャンヌの肉体を落としてしまう。

「――つっ!」

タイミング良く意識が戻ったジャンヌであったが、地面に落ちた衝撃で痛みが響く。

「ある人から聞いたんだよ。 仮面ライダーWは、ベルトのスロットを封じれば怖くないってな」

勝利を得たキャノンに対し、龍馬は奥歯を噛み締めながら、

「(誰が教えたかは知らないが、余計な事をしてくれたよ!)」

この場にいない情報を教えた相手に、怒りを露わにしたのである。

「(この場合、全員で逃げるのは不可能だ…)」

思考を巡らせ、龍馬が出した結論はこうだ。

「ジャンヌ君! キミだけでも逃げてくれ!」

「っ!? それはできません!」

勿論、ジャンヌはそれを拒否するが、

「お竜さん!」

「おうよ」

「お竜さん、何を!?」

「そおい!」

お竜が彼女の襟元を掴み、豪快に投げたのだ。

「きゃぁぁぁぁぁ!」

キラーン!という音が聞こえ、ジャンヌは遥か彼方へと飛んで行った。






 その頃、ネウロ達はというと、

「ぷは〜、美味しかった〜♪」

「大盛りラーメン10杯……胸やけがするわい」

食事を済ませ、一旦事務所へと戻る予定であった。

まさにその時である。

「きゃぁぁぁぁぁ!」

「へっ?」

叫び声が聞こえ、マギルゥは思わず振り返るが、

「んが!」

何かにぶつかってしまう。

ぶつかったのはなんと、金髪の少女であった。

「ええっ!? どどどどどういう事!?」

驚く弥子であったが、ネウロが何かを目にする。

「ヤコ、面白い連中が来てるぞ」

「へ?」

彼と同じ方向に視線を向けると、「フー!フー!」と叫ぶタイツ集団が現れた。

「うわっ、なにアレ?」

ネウロの影響か、奇人変人に耐性が付いている弥子。

「ねえ、ネウロ。 あの人達、なんかこっちに来てない?」

「ふむ…」

指をゴキリと鳴らし、ネウロはニヤリと笑う。

「よし、ちょっと蹴散らすか♪」







「ふぅ…。 こんなものか」

パンパンと手をはたきながら、集団を再起不能にしたネウロ。

「(うわぁ〜、御愁傷様)」

集団に同情しながらも、弥子は金髪の少女に目を向ける。

「(この人、どうして落ちて来たのかな? というか、何であの人達に狙われたんだろう…)」

「おいマギルゥ、早く起きろ!」

「んが!」

ゲシゲシとマギルゥを踏みつけ、彼女に起きるように促すネウロ。

「あの〜……」

すると別の方向から声が聞こえ、弥子はすぐに振り返る。

そこにいたのは、青沢社長であった。






 事務所にて、青沢と顔を向き合うネウロ達。

「先程は失礼しました。 実は桂木先生に、お伝えしたい事がありまして……」

「構いません。 それで、どうしたんですか?」

「はい。 実は我が社の方で調査をしていたところ、感電血を欲しがっているというある組織を見つけまして……」

「っ! それは一体何ていう組織なんですか!?」

重要な情報を得られたと感じた弥子は、真っ先に尋ねた。

そして青沢は、その質問に答える。

「はい。その名は、“悪の組織”……」

「……………へ?」

思わず沈黙した弥子であったが、マギルゥが再び尋ねた。

「すまん。 その“悪の組織”、名前はなんて言うんじゃ?」

「ですから、“悪の組織”という名の悪の組織です」

その頃、彼等に保護(?)されたジャンヌは、

「……随分、遠くに飛ばされたようですね…」

事務所の一つ下の階の空き部屋で上半身を起こす。

すると、携帯電話ガジェット『スタッグフォン』が鳴りだした。

「もしもし」

『よう、お友達の電話を使わせて貰ってるぜ』

「っ!?」

電話に出ると、キャノンの声が聞こえた。

「ジーク君や龍馬さん達は無事ですか!?」

『安心しな、ちゃんと保護してるぜ』

「……何が望みですか?」

『アンタのガイアメモリを全て持って来い。 そうすれば、命だけは助けてやるよ』

「……分かりました。 後悔はしないでください」

『そんじゃ、明日の○番地の廃工場で』

ガチャリと電話が切れ、ジャンヌは奥歯を噛み締める。

『クワー』

窓の外には、中の様子を眺めるガジェットが見つめており、

「……もう、迷うワケにはいきません」

そして彼女は、ある決断をしたのだ。

しかしこの時、ジャンヌは全く知らなかった。

一匹の蟲を通じて、ネウロにこの様子を観られていた事に……。






 翌日、○番地の廃工場。

「これで、メモリは全て手に入る」

緑の軍服姿に、固めに眼帯を着けた男。

この男こそ、キャノン・ドーパントの本体である。

「できれば、彼女には来て欲しくないんだよね」

龍馬は不安を募らせるが、それも叶わなかった。

カツン…カツン…と、足音が外から聞こえる。

「…約束通り、来ましたよ」

ジャンヌの姿を確認すると、男は不敵な笑みを浮かべた。

「ようやく来たな。 それじゃあ、メモリを渡して貰おうか」

「………」

自身のメモリを投げ渡すと、男はすぐさま受け取る。

「ふむ、確かにガイアメモリだな」

「約束です。 彼等を解放してください」

「分かってるよ」

《キャノン》

男はメモリを首筋のコネクタに挿しこむと、キャノン・ドーパントへと変身した。

「メモリが手に入れば、アンタは用済みだ」

「っ!? 約束が違います! メモリを渡せば、命は助けてくれると!」

「馬鹿か? 悪の組織が、約束を守ると思ってたか? お前みたいな正直な奴は、バカを見やすいんだよ。 このバーーーーーカ!」

勝ち誇ったかのように嘲笑うキャノンに対し、ジャンヌは静かに怒りをあらわにする。

「……大人しく約束を守って下されば、こっちも手荒な事はしたくなかったのに」

「ブハハハハハ! Wにもなれないお前が、そんなことできるワケねーだろ! なあ、お前等! この馬鹿女を、皆で笑ってやろうぜ!」

「「アハハハハハ!」」

部下達と笑うキャノン。

ジークや龍馬達は、それに怒りを覚える、

だが、その時だった。

『クワー!』

一体のガジェットが、彼女の肩へと飛び乗ったのだ。

「……後悔しないでくださいね。 私はもう、知りませんよ」

恐竜のような姿のガジェットを、その場で変形させるジャンヌ。

ガジェットは鼻先に角が付いた、恐竜の頭部の様な意匠が付いた白いガイアメモリとなり、

《FANG》

同時にジークのドライバーに挿しこまれていたジョーカーメモリが、ジャンヌのドライバーに転送された。

彼女はメモリを奥へと挿しこみ、右のスロットに白いメモリを挿しこむ。

「ダメだ、ジャンヌ!」

「ジャンヌ君、よすんだぁぁ!」

ジークと龍馬の制止を振り切り、彼女はスロットを展開し、

「変身!」

《FANG・JOKER》

ジークの意識は途切れ、ジャンヌの姿が変ったのである。

右半身は白で、左半身が黒。

目や触角、全身が刃の様な鋭利さを見せる。

Wの基本は本来、右半身のメモリを担当する『ソウルサイド』、左半身のメモリを担当する『ボディサイド』という役割が存在する。

右半身のメモリで属性を変え、左半身のメモリで戦法を変えるのが基本。

因みに変身の時も、ボディサイドの肉体が基準となる事が多い。

しかし今回は、ソウルサイドの肉体が基準になって変身したのだ。

それが、Wが持つ第7のメモリである『牙の記憶ファングメモリ』を用いた形態。

「うああああああああああああああ!」

咆哮と共に、仮面ライダーW・ファングジョーカーが戦場に立ったのだった。






 咆哮で工場内を響かせながら、Wは突進していく。

「フー!」

タイツ集団が刀や棍棒で、一斉に襲いかかる。

しかしWの攻撃を前に、容赦なくやられてしまう。

ある者は殴り飛ばされ、ある者は投げ飛ばされる。

中には地面や壁、さらに柱に叩きつけられてしまう者達もいた。

「なんだ…あのWは!? 話しが違うじゃないか!?」

キャノンは驚きを隠せず、足が震えてしまう。

タイツ達を再起不能にしたWは、そのままキャノンへと襲いかかった。

「うあぁぁぁぁ!」

咆哮と共に、Wは容赦無い猛攻を行う。

《ARM FANG》

ファングメモリの装飾にある角『タクティカルホーン』を一度弾くと、右腕に鋭い刃・アームセイバーが出現する。

猛獣が爪を振るうが如く、Wは腕の刃を容赦なく振るう。

まるで暴れる獣の如く、全てを殲滅せんとする狂戦士バーサーカーの如く。

目に映るものを排除するまで、その攻撃は止まらい。

これが、ファングメモリの恐ろしさ。

ソウルサイドを守る為なら手段を厭わない、最強最悪の暴走装置なのだ。

初めてこの形態フォームに変身した時、Wはその場にいる敵を殲滅した。

その真実を知ったジャンヌは、今までない恐怖を覚えてしまう。

自分を失うくらいなら、ファングはもう使わない――。

怯えながら、自身にそう誓うほどであった。







「ウオォォォォォォ!」

『ジャンヌ! 落ち着くんだ、ジャンヌ!』

ジークの声が響くが、Wは止まってはくれない。

「うぐっ!」

龍馬の元まで吹き飛ばされたキャノンは、遂に最終手段に移った。

「う、動くな! 動くとコイツの命が無いぞ!」

「えっ、ちょっと!?」

それは龍馬を盾にする事だ。

無論、Wは止まる事を知らない。

「ちょ、ちょちょちょちょちょちょっと!?」

これには龍馬も動揺を隠せない。

「うああああああ!」

『ダメだジャンヌ! ダメだぁぁぁぁ!』

ジークの叫びと共に、アームセイバーが振るわれた。






「っ!?」

ジークが目を覚ますと、周りは燃え盛る炎の中であった。

「ここは……」

「…けて」

「ジャンヌ!?」

「たす…けて……」

この状況で、彼はすぐに気付いた。

ここは、ジャンヌの精神の中だと――。

「ジャンヌ!」

声のした方へと駆け寄ると、うつ伏せで倒れたジャンヌを見つける。

「…じ…ジーク君……」

「よかった、無事だった」

ゆっくりと起こし、ジークは彼女の手を優しく握る。

「もう二度と、キミを一人にしない。 いこう!」

「……はい!」

二人は優しく抱き合い、そして――。






 目を閉じていた龍馬が、ゆっくりとまぶたを開くと、

「おお……」

首筋にアームセイバーの刃が、約1ミリのところで止まっていた。

「待たせてすみません、龍馬さん」

「じゃ、ジャンヌ君……まさか君!?」

「はっ!」

「ぶへっ!」

龍馬を安心させると同時に、Wはキャノンを殴り飛ばす。

「さあ、貴方の罪を数えろ!」

遂にWは、ファングジョーカーの力をものにしたのだ!

「くそっ!」

今までない恐怖を覚えたキャノンは、すぐさま逃げようとするが、

《SHOULDER FANG》

Wはタクティカルホーンを二回弾くと、右肩から刃の『ショルダーセイバー』を出現させる。

「そこぉ!」

ブーメランの要領で投げ飛ばし、キャノンへと向かっていく。。

「うぎゃぁ!」

しかしキャノンは、それを紙一重で避けたのである。

「は、ハーーーーハハハハハ! どうだ、俺の実力を!」

何故か勝ち誇るキャノンであったが、Wがその場で叫んだ。

「今です、お竜さん!」

「おうよ!」

そして横から、お竜が鉄拳を喰らわせたのだった。

「ぶへぇぇぇぇ!?」

殴られたキャノンは、その場で吹き飛ばされてしまう。

実はショルダーセイバーは、お竜の縄を切る為に投げたもので、攻撃が目的ではなかったのだ。

完全に形勢が逆転したキャノンだが、彼は大声で叫ぶ。

「お前等! コイツ等をやっつけろ!」

部下を呼ぶが、返事が来ない。

すると外から、一人の青年が現れた。

「もしかして、彼等の事ですか?」

「助かりました、ネウロ」

「いえいえ」

Wが礼を言うと、脳噛ネウロが当然のように返す。

頼みの部下を倒されたキャノンは、袋の鼠となった。

『今度こそ、決着をつけるぞ』

「メモリブレイクには、互いの呼吸を合わせる必要がありますからね…」

『ファング必殺技か…“ファングストライザー”というのは、どうだろうか?』

「ふふっ、良いですね。 では、それでいきましょう」

タクティカルホーンを三回弾くと、右足首に必殺の刃『マキシマムセイバー』が出現する。

《FANG・MAXIMUM DRIVE》

一度飛んだWは、体を高速回転させた。

「『ファングストライザー!』」

そのままキャノンに接近し、必殺技『ファングストライザー』を放ったのだ。

回し蹴りの要領で斬り裂き、キャノンは吹き飛ばされ、

「ぐあぁぁぁぁぁ!」

爆発と共に、元の姿に戻ったのであった。

「あっ、もう終わったんだ」

その様子を、弥子とマギルゥは影から見ていたのである。






 時刻は夕方過ぎ。

ジーク達は男に、金と感電血の隠し場所を案内させる。

隠し場所に辿りついたが、空っぽのアタッシュケースと段ボール箱しかない。

「コレは一体?」

「おい、何処に隠した? ホントの事を言え。 さもないと、顔面ストレート100発な」

お竜に胸倉を掴まれた男であったが、彼は必死で叫んだ。

因みに男の顔は、お竜にボコられて酷い状態である。

「ほ、本当に知らないんだ! 確かにその中に入れておいたんだ!」

「とうか、そんな大事な物を放って全員外で戦ってたなんて……マヌケにも程がありますよ……」

一人でも見張りを置かなかった男に、とジャンヌは呆れてしまう。

「俺達が戦っている間…その時に誰かが持ち去った」

誰が持ち去ったのか、全員が深く考える。

すると弥子は、何か気付いたようで、

「流石は名探偵の桂木弥子さんじゃな。 ヒントは…利益ぜよ……っと失敬」

龍馬も深く帽子を被りながら、思わず方言の土佐弁になってしまう。

「気付いたようだな、ヤコ」

「うん。 行こう、ネウロ」

真相に辿りついた弥子を見て、ネウロは小さく呟いた。

「この『謎』はもう、我が輩の舌の上だ」






 時刻は、深夜の12時。

誰もいないはずの青沢商会本社に、2人の男の姿があった。

「急げ! モタモタするな!」

「は、はい!」

2人は本社の裏口から出て、近くにあるトラックに向かおうとしている。

しかし、その時だった。

突然の照明ライトがカッと光り、彼等の姿を照らしたのだ。

「「!?」」

「また会いましたね、社長さん」

「あ、アナタ達は!?」

トラックの前に待ち構えていた人物達の1人──龍馬に尋ねられ、本社から出てきた2人の男の1人──青沢匡が驚く。

「こんな時間に、夜のドライブですか? それにしては、随分と色気のない連れとトラックですね?」

不敵な笑みを見せ、龍馬が変な質問をするが、

「あ、あはは…こ、今回は大変ご活躍だったようで……」

青沢はそれには答えず、苦し紛れの世辞を述べる。

「ですが、お金と感電血はどこにもありませんでした」

「そ、それは…いやはや………」

ジャンヌがそう言うと、何故かそわそわした仕草を見せる青沢。

「随分と出来すぎた話じゃありませんか? アナタ方の正確な情報のお蔭で、我々は犯人を無事確保できた。 しかしいくら探しても、盗まれた感電血と金は見つからない…。 この場合、誰が得をすると思いますか?」

ネウロが助手としての口調で語るが、魔人としての眼光で青沢を睨む。

これに対し、青沢は目が泳いでしまう。

「社長さん、確か保険に入ってましたよね?」

「な、何を――」

龍馬の発言に対し、青沢は言い返そうとするが、

「とぼけても無駄ですよ。 お金が見つからなかったとしても、アナタ方には保険金が降りますから損害は全くありません。 むしろプラスですからね」

「それに、取引先が潰れてくれればなお結構じゃな。 なんせ、口封じにもなるしのぉ♪」

ネウロとマギルゥに遮れてしまう。

「さあ、先生…。 いつものように……」

右腕をネウロの意志で操られた弥子は、

「この事件の黒幕……」

人差し指を真っ直ぐに伸ばし、彼女はその指先で青沢を差した。

「犯人は……お前だ!」

「!!?」

指を差された青沢は、動揺を隠しきれない状態である。

「わ、我々を侮辱する気ですか先生! おい、警察を呼べ!」

部下に警察を呼ぶように指示する青沢であったが、

「良いのですか? 警察を呼ばれてマズイのは、アナタ方だと思いますよ?」

「しょ、証拠は!? そこまで言うなら証拠があるんだろうな!?」

挑発するネウロに対し、思わず悪あがきをしてしまう。

「良いでしょう。 ジークさん、あのトラックのシートを取って下さい」

「これだな?」

ジークはトラックへと歩み寄ると、荷台のシートを手に取る。

「ああっ!」

彼が荷台を覆っていたシートを外すと、中身が晒し出された。

そこには、残りの感電血がとケース乗せられていたのである。

ケースの中身は恐らく、盗まれた金であろう。

「コレが証拠です。 これで文句はないですか?」

「あ…あぁ……」

証拠を見られ、青沢は遂に膝を着く。

この瞬間を待ち望んだネウロは、

「いただきます」

彼から『謎』を喰らうのだった。

コレをキッカケに、坂本探偵事務所と桂木探偵事務所は、良き協力関係になったのである。

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銀時「文章が長すぎるわぁぁぁぁ!」

当麻「銀さん、それ言っちゃダメ!」
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