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魂郷学園 第29話:鼠【むしくい】
作者:亀鳥虎龍   2018/07/22(日) 16:05公開   ID:CUGywFsC2NE
 前回のあらすじ。

音石明によって、スタンド使いとなった鼠。

それを狩る為、承太郎達は追跡を開始。

とある農家にて、鼠が住人を生きたまま溶かしていた。

仗助の活躍により、鼠はその場で倒される。

しかし承太郎が別の部屋で攻撃された事から、『もう一匹』の存在が確認されたのだった。







―鼠【むしくい】―







 老夫婦を安全な場所へ行かせた後、承太郎は協力者のSPW財団に連絡を取った。

『はい、こちらスピードワゴン財団です』

「もしもし、こちらは空条承太郎だ」

『承太郎さんですか!? 良かった、連絡しようと何度もコールを鳴らしてました』

「すまない。 例の鼠を追跡中だったんだ。 もしや…音石のことか?」

『そうです! 音石明は、例の『弓と矢』を使って、鼠を射っていたことを隠していました!』

「「!?」」

この真実を聞き、仗助達は驚きを隠せなかった。

「何だって!? 音石のヤロォ!」

「確認する。 3匹や4匹じゃあないんだな?」

『はい、二匹です。 薬で吐かせたので間違いありません!』

「分かった。 また何かあったら連絡する」

『了解しました』

電話を切ると、承太郎は帽子を深く被る。

「やれやれ。 音石明、やってくれたぜ」

こうして再び、鼠の追跡が再開したのだった。

「でも、承太郎さん。 こんなに広い園田地帯で、あんなちっこい鼠をどうやって追いかけるんですか?」

「同感です。 何か秘策はあるんですか?」

二人が問うと、承太郎は当たり前のように答える。

「『シートン動物記』の著者のE・T・シートンは、「追跡不可能な動物はいない」と言った。 彼は走るのが速い動物よりも『地形』と『風向き』、そして『習性』を研究している。 鼠は視力の弱さをカバーする為に、臭いやヒゲの触角で通り道を決める。 そして鼠のというのは、常に何かを喰っていないと10数時間で餓死する」

近くの畑の前にしゃがむと、承太郎はゆっくりと作物に触れる。

根元には何かの噛み跡が残っていた。

「噛み口だ…まだ新しい」

「やった! スゲェっス!」

そして承太郎達は、最初の用水路へと戻ったのである。







 用水路に戻ると、承太郎は双眼鏡で辺りを見渡した。

「足跡があった。 やはり自分の知ってる道を通ったか。 日没まであと3時間、風は無風…住宅地までの距離は1.5km。 自分の縄張りにいる者は、仲間だろうが人間だろうが皆殺し。 てめーさえよけりゃいいという……最早、この地球上に生きてていい生物じゃあないぜ」

仕掛けた罠にも目を向けるが、触れた形跡はない。

「罠の餌には、目もくれてませんね」

「完全に素通りだな」

すると承太郎は、ビデオカメラの映像に目を通す。

「映ってる……『用心深さ』の知恵はあるようだな」

映像の鼠は、片方の耳が大きく欠けている。

「耳が大きく欠けてますね?」

「よし、今からコイツを『虫喰い』と呼ぼう」

罠やビデオカメラをバックに戻すと、承太郎はある物を取り出した。

「なんスかソレ?」

「ライフルの実弾だ」

「実弾っスか!?」

「ベアリングでは20メートルを越すと弾着が大きくブレる。 コイツなら50〜70メートルなら、なんとかなるかもしれん」

「それもスタンドの手で飛ばすんスか? でも俺、自信がねぇっスよ」

それを聞いた承太郎は、ゆっくり背を向ける。

「だろうな。 じゃあ、俺がやるしかねぇ」

そんな彼に対し、仗助は思わずムッと感じた。

「ムッ! ちょっと待って下さい。 なんスかその言い方。 ちょいとカチーンときましたよ。 大体、鼠を逃したのは承太郎さんでしょ? さっき一匹目をやっつけたのは俺ですからね」

この意見に対し、承太郎は迷わず、

「そうか……じゃあ、お前が二発持て」

「えっ!?」

ライフル弾を仗助に渡した。

「(プレッシャー……)」

「(何故でしょう。 空条承太郎と一緒にいると、凄くプレッシャーを感じます)」

プレッシャーを感じる仗助に、神裂は内心で呟いたのである。






 追跡を開始し、十数メートルの距離まで歩く。

途中で沼地に辿りつき、足跡もそこで消えている。

「フム……泳いだか」

そう判断した承太郎は、そのまま沼に足を浸けながら歩く。

「えっ…マジかよ……」

靴や服を汚したくないのか、仗助は驚きを隠せない。

「(うへぇ、気持ち悪ぃ。 承太郎さん、平気なのかぁ?)」

靴や靴下を脇に挟んだり咥えたりしながら、仗助は沼に足を入れる。

「(ううっ。 流石にこれは…)」

最初は抵抗を感じた神裂も、沼に足を入れながら進んでいく。

一歩ずつ進んでいくと、承太郎がある事に気付く。

「おい。 この辺り、蛭がいるから気を付けろ」

「「えっ!?」」

それを聞いた二人は、思わず声を上げてしまい、

「あっ!!」

「って、うわっ!」

仗助は口に咥えていた靴とソックスを、水面へと落としてしまった。

同時に神裂も足を滑らせ、盛大に転んでしまう。

お陰で彼女の体は、沼水でずぶ濡れになってしまった。

現在、間抜けなイメージが強い二人である。







 暫く歩いて数十メートルのところで、信じられない事が起こった。

「……ばかな」

それは承太郎の顔に、驚愕の表情が出てしまう程である。

「承太郎さん?」

「どうしました?」

神裂が尋ねると、承太郎の口からとんでもない言葉が出てきた。

「気を付けろ、皆……。 続いていた足跡が、いきなりここで消えている」

「えっ!?」

それは足跡が、途中で消えてしまったのだ。

「ど、どういうことッスか!?」

「まさか、土の中に潜ったのですか!?」

あり得ないという顔をするが、承太郎はコレの正体に気付いた。

「違う! これは『バックトラック』だ! まさか鼠もやるとは、思ってなかったぜ!」

バックトラックとは……進んできた足跡をそのまま戻って、敵から居場所を隠す野生動物の特殊技能である。

日本ではヒグマやイタチ、ウサギなどがやるという。

しかし、鼠がバックトラックをしたという記録はない!







 全員が背中を合わせながら、周囲を警戒する。

「つまりこういうことっスか。 俺達は鼠に一杯食わされた!」

「どうやらやばい雰囲気だな…この地形、狩られてるのは俺達の方かもしれん」

「あの岩陰に隠れましょう!」

神裂が指を指すと、全員が岩陰へと身を潜める。

「気を付けろ。 何処から撃って来るか分からねぇからな」

そんな中、神裂は雑草の中で何かを見つけ、

「ん?」

無意識に触れてしまう。

まさにその瞬間だった。

それは突然、バチン!と彼女の指を挟んだ。

「なっ! こ、コレはぁ!?」

「っ!!」

その正体は、承太郎達が仕掛けた罠。

これは虫喰いが、彼等を嵌める為の『罠』だったのだ。

虫喰いがスタンドの『針』を飛ばし、針は神裂へと向かって来る。

「危ねぇ!」

瞬間、仗助が彼女の前に飛びだす。

ビスッと、彼の肩に針が刺さってしまう。

「東方仗助!」

しかし、その時であった。

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

承太郎が、スタープラチナの能力を解放したのだ。

その能力は、光を超える速度に達した事で生み出される--『時間停止』であった。







 周囲の時間が止まり、承太郎だけが動ける。

「やれやれ、久々に使うからな。 動けるのは1秒程度だぜ。」

スタープラチナは指で弾くように、針を刺さった肉ごとで取り除く。

「時は動き出す」

時が動き始めた瞬間、

「――っ痛!」

仗助は血の出た肩を押さえる。

「慌てるな、毒がまわる前に針を抜いといた。 刺さった部分の肉ごとな。 絆創膏でも貼っとけ」

「お、おっす、」

「だが、今ので大体の位置はつかめた。 正確な位置じゃあないが、あの斜面中腹あたり。 距離60メートルにある三つの岩の辺りからだ」

承太郎が指で示し、それを見た仗助と神裂は驚く。

「す、すげぇ…鼠も承太郎さんも! 今回、間抜けなイメージになってるのは俺だけッスか?」

「マヌケどころか、足を引っ張ってますが……」







 日没まで残り1時間。

双眼鏡で覗きながら、承太郎達は虫喰いの様子を窺う。

「撃ってくる様子は、今のところはないですね」

「やたら撃つと、俺達に正確な位置を知られることを知ってやがるんだ」

「なるほど、敵ながら天晴れって事ですか…」

「ネズ公を褒めてどうすんスか! 何か、行動を起こしましょう!」

仗助がそう言うと、承太郎もそれに同意する。

「よく言った仗助。 こいつは気合い入れてかからねーと、虫喰いにやられるぜ」

「では、なにか対策が?」

「…そうだな」

それを聞いた承太郎は、岩陰から立ちあがった。

コレを見た仗助が、思わず叫んだのである。

「何する気ですか!? いくらスタープラチナの時間停止でも、連続で撃ってきたら全て回避できるワケが…」

「だから、奴に撃ちこませる為に近付く。 その位置を仗助、お前が見つけて撃つんだ」

「な、なんですって〜!?」

「しょ、正気ですか!?」

「やるしかねぇんだよ。 俺や神裂は攻撃されても、クレイジー・ダイヤモンドに治してもらえる。 しかし仗助、お前は自分自身を治せない」

虫喰いに近付く為、ゆっくりと歩み寄っていく。

「気合い入れろよ、お前等!」







 ゆっくりと歩み寄る承太郎であったが、まさにその時だった。

虫喰いのスタンドから、針が3発も放たれる。

「(ちょ、ちょっと! こ、心の準備って奴が!)」

仗助は双眼鏡で覗くが、虫喰いは既に移動していた。

一方の承太郎は、

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

時を止め、針を即座に避ける。

そして時が動きだし、針は不発となった。

「ギッ!?」

コレを見た虫喰いも、驚きを隠せない。

「見つけたか?」

「い、いや……一か所にとどまってませんぜ。 攻撃直後に移動してるみてぇだ」

「よし。 斜面横から回り込むように近付いてみる。 撃つ瞬間を狙えよ」

「う…撃つ瞬間……」

更にプレッシャーを感じる仗助なのであった。

隣の神裂も、緊張で声を出せないでいる。







 再び針を放って来るが、

「いた! 見つけたぞ!」

遂に仗助が、虫喰いを発見したのだ。

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

同時に承太郎は再び時を止め、針を避けたのである。

時が動きだし、承太郎は近付こうとしたが、

「っ!?」

「なっ!?」

「何だと?」

なんと針が、背後から承太郎の手足に命中したのだ。

「まさか…承太郎さんがかわすのを予想して…岩で針を反射させた!?」

「何て…計算された『跳弾』…」

誰もが驚きを隠せず、承太郎の手足が溶け始めていく。

「ぐっ!」

「承太郎さん!」

「俺を見てんじゃあねーぞ、仗助! しっかり狙え! 攻撃してくる時を、必ず仕留めろ」

ドドドドドドドド…と、プレッシャーで指が震えている仗助。

「(くそっ! 俺がもたつけば、承太郎さんが!)」

虫喰いは岩から頭を出しているが、頭だけでは狙いがつけられない。

しかし長引けば、承太郎の体は溶かされていく。

「(こんな時に、なにも出来ないなんて……なんて無力!)」

この光景を見届ける事しか出来ず、神裂は己の無力を呪った。

だが、その時である。

仗助の顔つきが変わり、そして……、

「……急に闘志がわいて来たぜ。 野郎〜〜〜、必ず当ててやる」

そして遂に、クレイジー・Dが弾丸を放った。






 弾丸は虫喰いの方へと飛んで行くが、バキィーン!と岩に当たってしまう。

「!?」

「外した!?」

衝撃音を聞いた虫喰いは驚きを隠せず、神裂も絶望を感じるしかなかった。

虫喰いは撃ってきた方角に狙いを定めるが、そこである光景を目にする。

「ギャ!?」

そこには、双眼鏡をスコープにして構える仗助があった。

「やはり見たな……外すと必ず見ると思ったよ。 体をこっちへ向けて…」

背後にはクレイジー・Dが、既にライフル弾を構えている。

「今度は的が大きい……。 確実に狙えるぜ」

弾丸が放たれ、虫喰いは逃げようとするが、それは既に遅かった。

「ギャァーーース!」

弾丸は見事に命中し、虫喰いは絶命したのだ。

最後の最後に、仗助が勝負を決したのである。

「今回はマヌケじゃあなかったぜ…。 プレッシャーを跳ね返す男・東方仗助と呼んでくれっス!」

「(この土壇場で、逆転のチャンスを見出すなて!? 『聖人』の私ですら、あの状況は絶望的だった。 これが、ジョースターの血族…)」

ニヤリと勝利の笑みをみせる仗助に、神裂も緊張の糸がほどけ、

「音石明の招いたスタンド鼠…。 人間の招いた自然破壊てな感じで複雑な気持ちだが、やれやれ…仗助が頼れる奴で、ひと安心というところか……」

承太郎も安心するのであった。

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神裂「やっぱり、私いらないじゃないですか!?」
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