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魂郷学園 第34話:大人になっても歯医者は怖い!
作者:亀鳥虎龍   2018/10/04(木) 09:44公開   ID:iYcaOJsNR36
 魂郷町の何処かの建物…。

そこのベンチに腰掛け、銀時は動揺を隠せなかった。

「(早く…早くしてくれ……)」

カチッ…カチッ…と、時計の秒針が動いて行く。

「(頼む…ここでトドメを刺してくれ)」

体の震えが止まらず、遂に叫んだのだった。

「殺せよぉ! ここで終わらせてくれよぉ!」

そんな中、女性の声が彼の耳に響く。

「あのぉ〜、坂田さん。 他の患者さんの迷惑になるので、静かにしてもらえませんか?」

因みに銀時は現在、歯科医に来ていた。

目的は勿論、虫歯の治療である。






―大人になっても歯医者は怖い!―






 右頬が腫れて見えるほど、酷い虫歯になっていた銀時。

医者から「血糖値が高過ぎる」と言われるほどの甘党である彼にとって、虫歯は最大の天敵である。

「(くそ〜……そりゃ、最近歯を磨かなかったけど、こうなるとは誰も思わねぇよ! 早く帰りてぇよ。 帰って、定春に抱き着いてモフモフしてぇ!)」

冷や汗が酷く流れた彼であったが、

「あ〜! もうヤメだ! ジャンプでも読んで、気分を変えるしかねぇ!!」

本棚に向かい、ジャンプに手を伸ばす。

しかし同じように、ジャンプへと手を伸ばした者がいた。

「「ん?」」

金髪で鋭い眼光、黒を基準としたスーツが特徴の男。

それは神裂のサーヴァント、アイゼンであった。

よく見ると、左頬が腫れて見える程酷い虫歯になっている。

「おい…そのジャンプ、俺が先に取ろうとしたんだけど」

「ふざけてんのか? そのジャンプは俺が先に取ろうとしたんだぞ」

「ああん? ふざけてんのかテメェは!?」

「そりゃ、こっちの台詞だテメェ!」

「やんのかゴラァ!」

「上等だ! 表に出ろッ!!」

口論の末、遂に喧嘩へと発展仕掛けるが、

「坂田さん、アイゼンさん。 他の患者さんのご迷惑になるので、静かにしてもらえませんか?」

受付の看護婦さんに怒られたのだった。








 銀時とアイゼンはベンチに腰掛け、自分達の番を待つ中、

「(チクチョウ、面倒な奴と会っちまったぜ! つーか、名前が『アイゼン』ってなに? 鏡花水月が使えんのかよ? 崩玉も持ってんの?)」

「(まさかこの天然パーマと会う事になるとはな…。 死んだ魚みてぇな目ぇしやがって……)」

「(こいつには……)」

「(絶対に……)」

「(弱みを……)」

「(見せられねぇ……)」

「「(この年齢で歯医者が怖いなんて、死んでも言えるワケがねぇ!!)」」

互いに隣の相手に、弱みを見せないと誓った。

「な、なあ…オメェさっきから足を何度も組むの、止めてくんないかな? スゲェ目に入っちまうんだよ」

「そ…そう言うテメェも貧乏ゆすりすんの、すぐに止めなねぇか? びびびび貧乏が移っちまうよ?」

銀時は何度も足を組むアイゼンに指摘をするが、アイゼンも貧乏ゆすりをする銀時を指摘する。

「え、なに? そんな良いガタイして、歯医者が怖いの?」

「そ、そう言うテメェも怖いんじゃねぇのか?」

「そんなワケ無いだろ? こんなの、全然平気だし!」

「俺も平気だぞ? なんせ、マイドリルがウチにあるからな。 歯の治療なんて、自分で出来るし! なんせ俺、ドリラーだからな」

「(ドリラー!? てかマイドリルってなに!? コイツ、そんなもん持ってのかよ!?)」

アイゼンが思わず嘘を吐き、本気で信じた銀時であったが、

「へ、へぇ…そうなんだ。 じゃあ今度、俺が毎年出場してる『ドリルコンテスト』に参加しねぇか?」

「(ドリルコンテストぉ!? やっべ、スゲェ行きたくねぇ! コイツ、そんな大会に出てるのか!?)」

今度は銀時の嘘を、アイゼンが信じてしまうのであった。

「あ…ああ。 予定が空いたらな……」

「あれ? 銀さんも来てたんですか?」

みっともない意地を張っていた二人であったが、新八が姿を見せたのである。






「新八?」

「もしかして、銀さんも虫歯ですか?」

首を傾げる新八に、銀時は冷や汗を流しながら答える。

「あ、ああ…散歩がてらにドリリにな……」

「ドリリ?」

「お前も、こっちでドリって来たのか?」

「いや、僕は歯の治療で来たんですけど。 急にトイレに行きたくなったんで、席を外してたんです」

すると新八は、苦笑しながら自身の頬に手を当てる。

「でも、気をつけた方がいいですよ。 此処の治療……早いけど、凄い痛いですよ?」

「「!?」」

それを聞いた二人は、プレッシャーを感じ取った。

「へぇ……そうなんだ」

「そうなんですよ。 なんでも、大人でも泣き叫ぶ程だそうで…」

「志村新八さ〜ん。 時間ですよぉ〜」

「あ、はーい。 じゃあ、先に治療にいきますね。 銀さん達も、覚悟した方がいいですよ」

それだけ言い残し、新八は治療室へと向かうのだった。






 新八が治療へ向かい、後は静けさだけが残った。

「……まあ、歯の治療に痛みは当然だよな」

「あ、ああ…そうだな」

銀時とアイゼンが小さくそう言うが、まさにその時だった。

「ギャァァァァァァァ!」

「「!?」」

ドリルの音とともに、新八の悲鳴が響いたのである。

「新八さん、暴れないで下さい!」

「(なんか…尋常に痛がってないか!?)」

聞こえてくる音や声で、アイゼンは不安の表情になってしまう。

すると治療室から、ピーという音が聞こえた。

「先生、大変です! 新八さんの脈が!!」

「すぐに心臓マッサージして。 ダメだったら、電気ショック使って」

「(電気ショック!? 何で歯医者にそんなもんがあるんだ!? ここ歯医者だよね!?)」

歯医者に絶対必要ないモノの名前が聞こえ、銀時は内心でツッコんでしまう。

「先生! 脈が戻りましたけど、替わりにアレが取れました!」

「(“アレ”が取れた!? アレって、何が取れたんだ!?)」

“アレ”という単語に、アイゼンが内心でツッコミを入れてしまった。

「あ〜、それはもう必要ないから。 なんならポン酢に浸けといて」

「(ポン酢!? 何でポン酢があんの!?)」

「(先生、コレはどっちかというと、ゴマダレの方がいいかと)」

「(ゴマダレ!? しゃぶしゃんぶしてんのか!? コレってしゃぶしゃぶだよな!?)」

とんでもない会話が聞こえたため、二人は余計に不安になってしまう。

「はい、治療が終わりました。 これでまた、以前と同じようにご飯が食べられますよ」

「あ、ホントだ。 ウソみたいに痛みが取れた。 ありがとうございます、先生」

「(オイィィィィ! 待て、待つんだ新八ィィィ!)」

「(痛みが取れた代わりに、なんか大事なものが取れたみたいだぞ!?)」

治療室を出る直前、新八は看護師とこんな会話をしていた。

「これ、痛み止めの薬と、ウチで作った歯ブラシです」

「あっ。 すみません、気を遣って貰って」

「じゃあ、お大事に」

「ありがとうございました」

治療室から出てきた新八は、凄く上機嫌であった。

「いやぁ〜…痛かったけど、中々いい歯医者でしたよ。 見て下さい、親切に歯ブラシもつけてくれたんですよ」

そう言って彼は、歯ブラシ――と一体化した右腕を見せたのである。






「「………」」

歯ブラシと一体化した腕を見せた新八に、銀時もアイゼンも沈黙してしまい、

「「(“つける”って、何処にィィィィ!?)」」

遂には内心で、ツッコミをせざるおえなかった。

「(オイィィィ! 歯の痛みと一緒に、大事なもんが持ってかれてんじゃねぇか!?)」

「(何で歯の治療で、腕が歯ブラシになっちまうんだ!? 等価交換ってレベルじゃねぇぞ!?)」

「歯ブラシが傷んだら、またこちらに来て下さい」

受付カウンターまで歩み寄り、看護師と顔をわせる新八。

「あの、ちょっと良いですか?」

「(そうだ、言うんだ新八!)」

「(ここでクレームをつけろ!)」

彼が何かを思い出し、二人は小さな期待をするが、

「実は僕……硬めのブラシじゃないと、磨いた気になれないんですよ」

「「(そっちじゃねぇだろォォォォ!)」」

改造とは関係ない事に、内心でツッコミを放ってしまう。

「大丈夫です。 股間にも歯ブラシを着けたので、そっちは弄ると硬くなりますから」

「(それどう見ても、ただの勃ピーじゃねぇか!)」

「(そんなのでどうやって歯ぁ磨くんだ!? 女しか口にしねぇぞ!!)」

今でも内心のツッコミを放つ二人であったが、

「ん? アレ、銀さんも歯ぁやっちまったのか?」

今度は当麻が、治療室から現れたのだった。

「当麻――」

「いやぁ〜、凄いぜこの歯医者。 痛みを我慢すれば、治療が早く治っちまった。 しかも電動歯ブラシもつけてくれたんだぜ」

楽しそうに笑う当麻であったが、額には歯ブラシを握った腕が振動している。

この腕を見たアイゼンと銀時は、これが誰の腕かすぐに判断出来た。

「(電動歯ブラシというより…)」

「(どう見ても新八の腕じゃね!?)」






 額に人体の一部をつけられた事を気にとめていない当麻に、銀時もアイゼンも驚愕してしまう。

「ホント、時代の進み方は凄いな。 ポン酢の匂いがするけど、かなり使えるぞ」

「そうかな? 僕的にやっぱり歯は、自分の手で磨いた方が良いと思うよ?」

二人は楽しそうに会話するが、銀時とアイゼンは動揺を隠せない。

「「(いや、 “自分の手”というより、ソレどう見てもお前の腕ェェェ!)」」

「新ぱ――電動歯ブラシが壊れたら、またこちらに来て下さいね」

「(いや、さっき“新八さんの手”って言いかけたよね!?)」

「(とんでもねぇヤブ医者じゃねぇか!)」

銀時とアイゼンが内心でツッコミをする中、当麻が受付カウンターの看護師にこう言った。

「あの、すいません。 この電動歯ブラシ、イマイチ手が届かないんだけど、 どうすればいいっスか?」

「大丈夫です。 その時は自分で歯ブラシを持って磨いて下さい」

「(じゃあ何でつけたんだよ!)」

「(どう見ても嫌がらせじゃねぇか!!)」

「なるほど!」

「「(お前もお前で納得してんじゃねぇよ!)」」

自分が改造された事自体を気にしていない新八や当麻に、二人は再び内心でツッコミを入れる。

「じゃあ、お大事に」

「「(お前等が大事にしろォォォォ! 患者をなんだと思ってるんだァァァァ!!)」」

病院を後にする新八と当麻を見送る看護師に、アイゼンと銀時が最後まで内心で叫んだ。





 病院を後にした当麻と新八。

そんな二人を見届けた銀時とアイゼンは、恐怖で声が出なかった。

「(オイ、どうすんだよアレ!?)」

「(完全に改造手術だぞ! ショ●カーも真っ青じゃねぇか!!)」

「次の方、どうぞぉ〜」

看護師の声とともに、銀時もアイゼンも立ち上がる。

「(や…やべぇ……体が勝手に!)」

「(行きたくねぇ! 行ったら、なんか大事なもんを失っちまう!)」

改造されたくない――内心で呟くが、体が言う事を聞かない。

徐々に治療室へと向かう二人は、

「(頼む…俺を……)」

「(誰でもいい…俺を……)」

「「(俺達を…止めてくれェェェェェ!)」」

遂に治療室へと入ったのであった。





……続かない。


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■作者からのメッセージ
 その後、毎日歯磨きを欠かさないと決めた銀時とアイゼンであった。
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