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魂郷学園 第35話:入【てんにゅう】
作者:亀鳥虎龍   2018/10/05(金) 19:44公開   ID:iYcaOJsNR36
 ある日の事である。

マギルゥは早朝、ネウロにこう言われたのだった。

「マギルゥ、魂郷学園に行け」

「は?」

突然の事に、彼女は首を傾げてしまう。

「……どういう事じゃ?」

その問いに対し、ネウロは答えたのだった。

「ふむ…。 実は昨日、こんな事があったのだ」






―第35話:入【てんにゅう】―





 それは昨日の事であった。

弥子達が事務所にて……、

「おう、化物。 来てやったぞ」

金髪でガラの悪い男が、事務所にやって来たのだった。

彼の名は『吾代忍』、元金融会社の社員。

現在は民間信用調査機関の副社長で、桂木探偵事務所の雑用(非常勤)。

ネウロの事を『化物』と呼ぶが、彼が人外とは認識しているだけで魔人である事は知らない。

「頼んでた資料、持って来たぜ」

「フン、ご苦労だったな」

「ケッ」

段ボール箱の中から、興味を感じるような資料に目を通すネウロ。

その中で、一番興味深いものを発見した。

「ん?」

「どうした?」

「吾代、これは?」

「あぁ? 杜王町っつー町で起きてる行方不明事件か?」

「ふむ……」

資料に目を通したネウロは、暫く沈黙する。

杜王町の人口は、平均で約53000人以上。

その内の5倍以上が行方不明者になっており、未だに見つからない事が書かれている。

「(『謎』の気配を感じる…)」

吾代を帰らせ、ネウロは再び資料に目を通すのであった。







「そう言う事で、魂郷町に行き、魂郷学園に潜入して貰いたい」

「(そいつ…ロクな帰し方をされとらんな…きっと……)」

未だに会った事のない吾代に対し、マギルゥは若干の同情を感じた。

「それで、どうして魂郷町なんじゃ?」

しかしこの疑問を解消しない限り、仕事をOKするワケにはいかない。

すると、その時である。

「私が説明しよう」

「うおっ!?」

突然の声に、マギルゥは思わず反応してしまう。

振り返ると、言峰綺礼が立っていた。

「お、驚かすな!」

「スマンな、話しはネウロから聞いているぞキャスター。 お前に会ってみたくてな、急いで来たんだよ」

「えっ…!? そうだったんか……」

意外な言葉を聞き、若干嬉しそうなったが、

「ああ、本当に会いたかった。 ネウロにコキ使われて凹んだお前の顔をこの目で拝み、 そしてそれを嘲笑う自分を想像しながら…。 それが楽しみで、遠足前の小学生のように眠れなかった

「神父とは思えんほど最悪じゃな!」

最後に本音を聞かされ、見事に凹んでしまった。

「フッ、相変わらずでなによりだ」

「キミの方こそ」

そして言峰とネウロは、固い握手を交わしたのである。

「(最悪じゃ、最凶の外道コンビじゃ!)」







 その後、言峰がこう言ったのである。

「話を戻そう。 なぜ魂郷町かというと、これには理由があるのだ」

「理由?」

首を傾げるマギルゥに、言峰は説明を始めた。

杜王町の隣にある町『魂郷町』、その住人が杜王町の行方不明事件を調査しているらしい。

「しかも、調査しているのは魂郷学園の生徒だけ。 なぜ彼等は、そのような事をするのか……それを調べる必要がある」

「成程……」

「その事件は我が輩も既に目を通している」

資料を手に、ネウロは不敵な笑みを見せる。

「では、話しが早いな」

「ちょっと、待て」

しかしマギルゥは、冷や汗を流しながら問いだす。

「まさか、儂一人で魂郷学園に乗り込めとか言うんじゃないだろうな?」

「そうだが?」

「それ以前に儂に押し付けるな! 自分でやれば良いじゃろ!」

「嫌か?」

「当たり前じゃ! 誰がそんな事――」

一度は断ろうとしたマギルゥであったが、彼女は知らなかった。

ネウロの本当の恐ろしさを――。

「嫌か?」

困ったような顔をするネウロであったが、普通の人間なら「そんな顔してもダメ!」と言うが、

「(断ったら殺す気じゃ!)」

本能的に殺されると判断できてしまった。

「わ…分かった……」

こうしてマギルゥは、魂郷学園に潜入する事になったのである。







 翌日、魂郷学園にて…、

「承太郎、おはよう!」

「おう」

「ところで、例の殺人鬼の手掛かりはまだなのか?」

「いや、まだない」

そんな会話をしながら、承太郎と十六夜が登校する。

鼠のスタンド使いの一件以降、杜王町は平穏な時間が続いていた。

だがその後、更なる事件が待ちかまえていたのだ。

康一は漫画家の『岸辺露伴』と共に、幽霊の少女『杉本鈴美』から殺人鬼の話しを聞かされたである。

さらにその数日後、彼女の言った殺人鬼が動き始めたのだ。

仗助と億泰が出会った中等部の少年・“重ちー”こと『矢安宮やんぐう重清しげきよ』が、その殺人鬼に殺害されたのである。

しかし遺体は見つからず、未だに行方不明。

だが彼のスタンドの『ハーヴェスト』が、殺人鬼から奪ったボタンを託した事で急展開となった。

ボタンを仗助から受け取った承太郎は、ボタンから手掛かりを探していた。

しかし、肝心の手掛かりは見つかっていない。







「だが、必ず手掛かりがあるはずだ」

「それにしても、重ちーの死体が見つからないってのは奇妙だよな」

十六夜が腕を組みながら考えていた。

仗助と億泰が重ちーと別れてたのは、たったの約五分後。

その五分の間に、殺人鬼はどうやって彼の遺体を隠したのか。

殺人鬼がスタンド使いである事は明白だが、どんな能力かは未だに不明なのである。

「けど、一番の問題は……」

「ああ、奴が何処に住んでいるかだ」

敵の潜伏場所も分からない以上、打つ手が全く無かった。

すると、十六夜はこう言ったのである。

「俺の勘だけど、殺人鬼はこの街か杜王町の何処かに住んでるんじゃないか?」

「根拠は?」

「杜王町は人口平均の5倍が行方不明者。 その行方不明者が、そいつに殺されたと考えれば」

「成程、確かに理にかなっているな」

「あくまで推測だから、当てにならないと思うよ」

そう言って彼は、お手上げの動作を見せ、

「(今度また、杜王町に行くしかねぇか)」

承太郎も内心で呟くのだった。






 魂郷学園3年H組。

この教室の生徒である承太郎と十六夜は、そのまま自分達の席へと座る。

「ふう……」

「おはようさん」

「あっ、おはよう」

「よう」

日影が声を掛けると、二人もすぐに返事する。

「そういえば、知っとるか? 今日は転入生が来るそうやで?」

「へぇ、初めて聞いたな」

「はい、皆さん。 席に着いて下さい」

そう言って黒い着流しに、額に角が生えた男が教卓に立つ。

彼の名は鬼灯。

この学校の教頭で、そして鬼である。

「え〜、皆さんは知っていると思いますが……撃ちの学校に、転入生が来ました。 どうぞ」

ゆっくりと教室に入る少女。

「今日からクラスの生徒になる、マギルゥさんです。 仲よくするように」

それは潜入捜査で、学生に扮したマギルゥであった。








 夕方、学生寮にある自室に入ったマギルゥ。

「はぁ…疲れた……」

ベッドに仰向けになると、そのまま天井を見上げる。

そして彼女は、こんな事を思った。

「弥子も昔は、こういう状況だったじゃろうか……」

弥子がネウロと出会ったのは、彼女が高校生の時。

学生と探偵を同時に行っていくのは、相当な苦労であろう。

「そう考えると、この程度で凹んでる自分が情けなくなるのう…」

すると、その時である。

インターホンが鳴ったので、思わず玄関の方へと向かう。

「だれじゃあ?」

扉を開けると、日影が立っていた。

「どうも」

「え〜と…日影……じゃったか?」

「せや。 マギルゥさん、メシは食ったか?」

「えっ? いや、まだじゃが……」

「そんなら、一緒にメシ食わんか?」

「えっ!? 良いんか?」

「後輩の岸波さんから誘われてな。 折角やし、アンタもどうや?」

食事に呼ばれ、マギルゥはすぐに準備する。

「待たせたのう(ついでにタダメシが食えてラッキーじゃ)」

「ほな、行こか」

そう言って二人は、ある場所へと向かう。






「こっちこっち!」

日影に連れて来られたマギルゥは、白野の部屋へと着く。

部屋の主である白野も、扉の前で待っていた。

そして、ゆっくりと扉を開けると……、

「お帰りなさいませ、お嬢様」

執事服にエプロン姿の男が、食事の準備をしていた。

「………」

バタンと、思わず扉を閉めるマギルゥ。

「……白野」

「なに?」

「ここ……ぬしの部屋じゃろ?」

「そうだけど?」

「今のは?」

「大丈夫。 ウチのアーチャーは、女子力最強だから!」

堂々と答え、ガッツポーズを見せる白野に対し、

「そんな能力、手にした憶えはないぞ?」

アーチャーが扉を開けながら、当たり前のように答えた。

「えっ? でも、料理は普通に作ってくれてるよね? 裁縫も編み物も上手いし」

「執事として振る舞ったつもりだったが?」

「(……どんな生活しとるんじゃ? というか“アーチャー”ということは、コイツってもしや英霊!?)」

これにはマギルゥも、言葉を失うのであった。





 テーブルに並ぶ食事。

椅子に腰かけ、女性陣は辺りを見渡す。

参加しているのは白野、マギルゥ、日影だけでない。

セイバーとキャスター、そしてアルテラも同席している。

「あの、日影。 コレは一体?」

「ああ、そうやった。 この人等は岸波さんの召喚した英霊で…。 赤いドレスの女性がセイバーさん、和装の女性がキャスターさん、褐色の肌の子がアルテラさんや。 んで、さっきの執事服の人がアーチャーさん。 あと二人いるんやけど……」

「えっ!?」

コレを聞いたマギルゥは、驚きを隠せなかった。

「(まさか、一度に6人の英霊を!?)」

それはそうであろう。

英霊を6人も召喚し、そのマスターになるのは尋常ではない。

そんな白野の器量に、マギルゥは驚愕しか出来なかったのだ。






 アーチャーがグラスに淹れてくれたジュースを飲み、エレノアは白野に声を掛ける。

「なあ、白野」

「なに?」

「まさか、普段からこんな生活なんですか?」

「え、普通だよ?」

「どの辺りがじゃ?」

「少なくても、学生寮で執事がいる学生生活は“普通”とは言わんよ」

学生寮で執事に紅茶を入れて貰う学生の生活は、全くもって“普通”とは言い難い。

コレに対し、マギルゥと日影は若干呆れてしまうのだった。

「彼、普段からあんな感じですか?」

「というと?」

「食事とか…」

「そうだね。 今朝の時も――」

(起きたか、マスター。 朝食の準備が出来るてるぞ)

「――と言って、フレンチトーストを作ってくれたし、コーヒーも淹れてくれたよ」

「なっ!」

英霊サーヴァントとは、令呪と呼ばれる刻印を持った魔術師に召喚される英雄の霊体。

世間で言うところの『使い魔』のような存在であるが、アーチャーは普通に執事そのものであった。

「まさに召使いサーヴァントやな。 あの制服とエプロンも、普通に似合っとるし」

アーチャーの振る舞い方に、召使いサーヴァントらしさを感じた日影。

「なんというか、ご令嬢に使える執事そのものじゃ……」

白野の生活に対し、ちょっとだけ憧れを感じてしまったマギルゥ。

「でも……何か負けた気がするで。 何でやろ?」

「当然じゃろうな。 エプロンが似合ってるところが特に」

しかし同時に、彼のエプロン姿と料理の腕に敗北感を感じ出てしまった。

「ある意味で、凄い生活を送っておらん?」

マギルゥが尋ねるが、白野は不満そうな顔を見せる。

「まあ、そうなんだけど…ちょっとばかし、五月蝿いところが……」

――一口入れたら、30回以上は噛むんだぞ

「――とか…」

――同じものだけでなく、三角食べも勧めるが?

「――とか……そういうのが、イチイチ面倒」

これにはセイバー達三人も、コクリと頷く。

それを聞いた二人は、心の中で思った。

「「(それは、執事というより……)」」






「というか……公私ともに世話になっておらん?」

「う、うん。 凄くお世話になってる」

そんな中、日影はアーチャーの実力を思い出す。

「戦闘では主人を護り…平時は身の回りのお世話をする…。 まさに、最高の執事やな」

「(やっぱりサーヴァントだけに、戦闘もできるんじゃな)」

若干失礼であるが、当然のことを内心で呟くマギルゥ。

「今もさりげなく不備がないか、こっちを気にしておるしな」

「あの気の遣い方、まさにプロじゃな」

完璧な執事っぷりに、二人は感心を見せる。

「でも、気が利き過ぎるのも疲れるよ?」

そう言って白野は、その時の事を思い出す。

――リボンが曲がっている。 プリーツが崩れているぞ。 昨日は服にブラシをかけなかっただろ?

「――とか」

――ハンカチとティッシュは持ったか?

「――とか、いつもこんな感じで」

これにはセイバー達三人も、再びコクリと頷く。

それを聞いた二人は、思わず心の中で呟く。

「「(それは、執事というより……)」」







「まあ、マスターの身嗜みに気を遣うのも執事の仕事やしな」

「主人に恥をかかせない為に必要な事じゃしのう」

身嗜みに関しては、二人も共感はできる。

「うー……それはそうかもしれないけど…はやり過ぎだと思う」

そう言って白野は、ある事を思い出していた。

――女の子がお腹を冷やしてはいけない。 私の手編みだ、はいていけ。

「――流石に…毛糸のパンツはちょっと………」

これにはセイバー達三人も、また再び頷いている。

手編みで作った毛糸のパンツには、流石の二人もドン引きだったようである。

「「(それは完璧なオカンだ)」」

コレを聞いて遂に、内心でツッコミを入れてしまう。

色々あったが、転入初日に楽しい食事会を送るマギルゥであった。

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■作者からのメッセージ
ネウロ「さて……奴が帰って来た時、どんな目に遭わせてやろうか♪」

弥子「(うわ、外道だ)」

この先ににあるマギルゥの未来(?)に、弥子は同情せざる負えなかった。
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