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魂郷学園 第39話:殺【きらよしかげ】
作者:亀鳥虎龍   2018/10/09(火) 15:36公開   ID:iYcaOJsNR36
 殺人鬼・吉良吉影が逃走し、仗助達は追跡を開始する。

「犯人の名前は吉良吉影、年齢は33歳。 住所は杜王町浄禅寺1の28。 スタンドは近距離型の『キラークイーン』」

『左手』が持ち主の元へと飛んで行き、

「おい、あそこを曲がったぞ」

向かった先は、意外な場所であった。

「こ、ここは!?」

スタンド使いのエステシャン『辻彩』が経営する『エステ・シンデレラ』である。





―第39話:殺【きらよしかげ】―





「何でヤローが『シンデレラ』に!?」

驚く仗助であるが、康一がある事を思い出した。

「そういえばアイツ、僕等の事や由花子さんの名前を知ってた! あと、『シンデレラ』の事も」

一行が扉を開くと、そこにはあるものが目に映った。

「なんだぁ、コイツは!?」

そこにあったのは、吉良の上着である。

上着だけではない、靴やズボンも脱ぎ散らかっていた。

「奴の服が何で!?」

すると『左手』は、一番奥の部屋へと入っていく。

「そこか!」

中へ入ると、そこには、

「ど、どういうこった!? なんで吉良がんだ!?」

テーブルに俯くように倒れる吉良と、床に仰向けになっている彩の姿があった。

彼女の喉元には、何かで貫かれたかのような傷がある。

しかも吉良は、既に死亡していた。

一度は死体の傍に来た『左手』であったが仗助がある事に気付く。

「待て! そいつ、左手があるぞ! いや、それ以前に『顔』がねぇ!」

「えっ!?」

死体に左手が存在し、しかも顔がなかったのである。

「どうなってんだ!?」

「お……同じ……」

すると、彩が声を発した。

「彩さん!?」

「同じ背丈かっこうの男…を…連れて来て…私の……目の前で……男を殺した」

「!?」

「恐ろしい男だった…そのあと…『シンデレラ』で…顔と…髪の毛…指紋を……変えさせられた」

「別人になったって事かよ!?」

驚きを隠せない一行であったが、最後に彩は何かを伝えようとしていた。

「顔……男の……かお……は…」

しかし、承太郎はあることに気付いた。

吉良吉影が、決して証拠を残さないことを。

「仗助! 康一くん! 彼女から離れるんだ!」

まさにその時であった。

「ああっ!」

彩と身元不明の死体は『爆死』して消滅。

「うおっ!」

「うわあああ!」

仗助と康一は、間一髪で爆風から免れた。

「あ、彩さぁぁぁぁん!」

すると『左手』は扉の向こうへと飛んで行く。

「奴はこの奥だ!」

全員が『左手』を追って外へと出た。







 外に出たが、道路はスーツ姿の男性だらけであった。

「こ、こいつは!?」

丁度この時刻は、会社員の帰宅する時間でもあった。

「どれだ……吉良はどいつになりやがったんだ!?」

「吉良吉影ぇぇぇ! 卑怯だぞぉ! 出て来いぃぃぃ!」

康一が叫ぶが、会社員たちは当たり前のように道を歩く。

「…逃げ切りやがった……。 奴は怯えもしなければ、隠れもしない。 この杜王町からも出る事もない…いつも通りの生活に戻ったって事か」

「そんな…そんな事って!?」

自分達から逃げ切った吉良に、承太郎とマギルゥは冷や汗を流してしまう。

辻綾(スタンド名『シンデレラ』)――死亡。

吉良吉影――顔も名前も別人となる(スタンド『キラークイン』と『左手』も健在)。






 杜王駅から車で約15分。

杜王グランドホテルから北へ広がる海岸線に、年間30万人の観光客が訪れる別荘・リゾート地帯がある。

そこに、吉良吉影の家があった。

承太郎達は、別人となった吉良を追う為、この家で手掛かりを探していた。

台所を探す康一と億泰。

すると億泰は、康一にこう言ったのだった。

「おい、康一。 もしもよぉ〜、連れ込んで殺した女の『生首』とか『目玉』とがか出たらどうするよぉ〜。 殺人鬼ってのは、そういうのを集めるのが趣味って言うからよ」

「そ、それはないと思うよ。 アイツ自身、自分の証拠になるようなものは一切残さないから」







 同じ頃、承太郎やマギルゥ達はというと、

「………」

吉良の私室を捜索していた。

そんな中、承太郎がアルバムのページを開く。

「奴のアルバムっスか? コレが子供の時? 面影のあるふうっスねー」

「吉良吉影、1月30日の杜王町生まれ。 集めた人物像は、身長は175センチで体重は65キロ。 血液型はA。 両親が年を取ってからの子供で、父親の『吉廣ヨシヒロ』は、ヤツが21歳の時に心臓癌で死亡。 母親もその後に年を取って亡くなってる」

「両親の死に、不審な点はあったのか?」

「いや、全く無い。 近所の人の証言によると、とても中の良い家族だったそうだ」

「中の良い家族っスか」

「D学院文学部卒、市内のカメユーデパート入社。 その後に杜王町店に勤務。 前科なし、結婚歴なし。 誰ともトラブルなく接するが、特に親しい友人も恋人もなし。 手術経験もない。 『左手』はヤツに戻ったが、指紋や歯型・手術のあとで見つけるのは不可能だ」

「何も『特徴のない情報』ってことッスね」

『吉良吉影』に関する情報を聞き、仗助は深くため息を吐いた。

「他に情報がないんスかね? 『ワキガ』くせ〜とか、鼻をクンクンさせながら歩くとか」

「ん…?」

するとマギルゥは、タンスの上にある入賞トロフィーや賞状を目にする。

「ん? どうしたんスか?」

「いえ、どれも全部3位とか銅賞だなぁと思ってな。 コンクールに出るくらいなら、銀賞とか優勝トロフィーがあってもおかしくないはずじゃぞ」

「そういや、確かにそッスね?」

「なんか…全部『3位』というのも、流石に不気味じゃな」

彼女の意見に同意したのか、承太郎もコクリと首を縦に振る。

「どうやら奴は、『目立たないように』人生を送ってきている。 この写真も、自分が目立たないポジジョンに写っている」

写真に写る吉良は、他の誰より目立たない位置に撮られている。

「大学も2流で、会社でも目立たない。 しかし仕事はそつなくこなす。 妬まれずバカにされず、コイツは自身の短所と長所を表に出さないように生きているんだ」

「まさか、トロフィーも写真もワザとやってるんか!?」

思わずマギルゥが口に出した言葉に、承太郎は再びコクリと頷く。

「その通りだ、『高い知能と能力を隠す』。 これがトラブルに出くわさない事だと、ヤツ自身は知っている」

「他に手掛かりはないのか? 例えば…ヤツ自身がハマっていた『趣味』とか……」

お手上げという感じのマギルゥであったが、仗助がテーブルの引き出しを開けた。

「だったら、このテーブルの引き出しはどうスか? 中に小瓶が入ってるみたいですけど」

中には蓋に4桁の数字が書かれた小瓶が入っていた。






「なにか、中にビッシリ入っとるな?」

「この数字は……もしかして『年数』って事っスか?」

小瓶の一つを手に取った仗助は、その中を開けてみた。

「コレっていったい、何なんスかね?」

手のひらの上に出してみるが、承太郎がその正体を言った。

「そいつは『爪』だ」

「「え?」」

それを聞いた仗助とマギルゥは、思わず声を漏らす。

「えぇぇぇぇ!?」

「つつつ『爪』ぇ〜!? 早く言ってぇ〜!」

小瓶の中身を知った仗助は、思わず小瓶を落としてしまう。

「何で『爪』なんか瓶の中に入れとるんじゃよ!? 誰の爪じゃ!?」

「まさか、被害者の!?」

この時二人は『被害者の爪』と思ったが、承太郎は否定するように答えた。

「いや、どうやらヤツ自身の『爪』のようだ。 一年毎に切った『爪』を、その瓶の中に入れて保管しているようだ。 自分で切った『爪』を捨てず、集めるのが趣味らしい」

小瓶と一緒に引き出しに入っていたノートを手に取ると、そのページに目を通す。

「しかもこのノートには、『爪』のデータが丁寧に書きこんである」

「データって、自分の爪で何を測っておったんか?」

マギルゥが若干引きつった顔で尋ねると、承太郎はノートに書かれた『データ』を見せる。

「コイツを見れば分かる」

そこには、手や足の爪に関するデータがビッシリと記されていた。

「げっ!?」

「うわっ!?」

コレに対し仗助とマギルゥは、思わずドン引きしてしまう。

「ここまで書きこむか普通は!? うわっ、足の『爪』のデータも書かれてるじゃねぇか!」

「しかもこの『趣味』、15年前からやっとるぞ!?」

「この頃の右手は……嘘だろ? 親指の『爪』が31.5センチ以上も伸びてるだと!?」

「平凡を装う男の、異常な趣味を見つけたって感じだぜ……」

「でも、何のためにこんな事しとんじゃ!?」

マギルゥが驚きながら尋ねるが、承太郎があるモノを見つけた。

「見ろ! このデータをつける理由が分かったぜ!」

左手のデータを記したページの端に、『絶好調!! 誰も僕を止める事は出来ない!』と書かれていた。

「……どういう意味スか?」

「これは『占い』だ。 古代のユダヤ商人は、『太陽の黒点』の動きで商売の景気を見るらしい。 吉良吉影も『爪』の伸びる長さで体調を占っていたようだ。 もちろん、『殺し』の体調をだ」

「そんな事を15年間もやってたんか!?」

「つーか15年前つったら、杉本鈴美とその家族が殺された年じゃないッスか!? 何てヤツだ、ビョーキ野郎め!」

「しかも今年の×月で、爪の長さは20センチ以上も既に伸びとる!?」

「どちらにしても、手掛かりになるようなものはないみたいだな」

しかし、その時であった。

バシャァ!と、ひとりでにポラロイドカメラがシャッターを切った。

「「「!?」」」

これには、この場にいる三人が警戒する。

「今のはよ〜……この家にはよぉ〜……誰かが居るんスかね? 」

「らしいな。 だが仗助、油断はするな」

「あの男……まさか、仲間がいたのか?」

仲間の存在を考えたマギルゥであったが、承太郎がそれを否定するように答える。

「いや、おそらくそれは絶対にない。 吉良は一匹狼だ。 犯罪はまず、人間関係から足がつく。 “仲間がチクる”ってやつだ。 ヤツが最も信用しないタイプだ」

「けどこの家には、誰かが居る筈なんですよね?」

するとその時であった。

仗助はカメラから出て来た写真をみる。

「承太郎さん! マギルゥさん! 見て下さい、この写真を!」

「「!?」」

写真に写る彼等の背後に、この場にいない筈の人物が写っていた。

「俺等の背後に! 死んだ『吉良の父親』が写ってるッスよ!?」

既に亡くなっているはずの『吉良吉廣』が、座る込むように写っていたのだった。







 写真と同じ位置を振り返るが、吉廣の姿は全く見当たらない。

「何で写真に、死んだ人間が写ってるんじゃ!?」

「まさか、『吉良の父親』の幽霊が、あの世に行かずにここ、留まってるんじゃ!?」

「杉本鈴美の例もある。 彼女がコンビニオーソンの『隣』で『自縛霊』としてとどまってるように、吉良の父親も『魂のエネルギー』となってとどまってる……ありあえるぜ」

「この表情……「とっとと帰れ」って顔見たいっすよ?」

すると、今度は電話が鳴りだしたのだ。

「「帰れ!」と言われて、簡単に帰るワケにはいかねぇよ!」

するとその時であった。

『早く電話に出んかボケぇ!』

独りでに受話器が動きだし、スピーカーから声が聞こえた。

恐らく、吉良吉廣の声であろう。

しかも受話器は、そのまま仗助の顔面に命中した。

「うげっ!」

「ねえ、そっちで何か見つかった?」

「何かあったッスか?」

すると同時に、億泰達が台所から戻って来た。

『お前達、何か勘違いしてないか? ワシのその顔は、「お前達を逃がさない」という顔だ! 息子の秘密を探るお前達には、ここで死んでもらう!』

『!?』

その声を聞いた全員が、驚愕の顔を見せた。

「テメェ! 自分の息子の『殺し』を知ってんのか!?」

「おい、この写真!?」

するとマギルゥが、写真を見て何かに気付いた。

「さっきと全然変わってんぞ!?」

そこにはただ座り込んでいた吉廣が、受話器を持った状態で座っていた。

「まさか、コイツの能力は……写真の中を支配できるってことか!?」

「その通り。 だから、お前達はワシに勝てん。 息子を探るものは、こ〜ろ〜す〜」

今度はナイフを手に取り、写真の中の仗助達に近付く。

そして、彼等の首を刎ねたのである。

刎ねられた順番は、仗助→マギルゥ→承太郎の順だ。

箪笥から出現したナイフが浮き、刃先を仗助に向ける。

「マジかぁぁぁ!?」

「だったら! ドラララララ!」

仗助がクレイジー・ダイヤモンドで殴りつけ、ナイフを弾こうとする。

「なっ!? ナイフが透けてる!?」

なんとナイフが、拳を透過したのだ。

「まさか!? 写真通りになるまで、攻撃するんか!?」

「承太郎さん! 無敵のスタープラチナで、何とかして下さいよぉ!」

仗助が叫ぶが、承太郎の返答はこうであった。

「無理だ」

「え?」

「心霊写真が相手じゃ、スタープラチナでも太刀打ちできん。 諦めるんだ」

「何言ってるッスかアンターーー!」

「マズイ!」

そんな中、ナイフが仗助に近付いていく。

まさに、絶体絶命!

だが、その時であった。

「確かに、写真の親父を『攻撃』するのは諦めた。 しかし、こういう方法もある」

承太郎は写真に写る『吉廣』の姿だけをレンズに近付け、パシャッ!とシャッターを押すと、

「コイツの能力は、『自分の写った写真の中を支配する』。 なら……コイツの写真だけを撮って、ひとりだけにすれば良い」

「何ィ!?」

カメラからは吉廣だけが写った写真が現像された。






「た……助かった……?」

吉廣が別の写真に写った事で、ナイフはその場で落ち、

「た、助かった〜〜…」

マギルゥも滝の様な涙を流しながら、腰が抜けてしまう。

「やれやれ。 仗助、コイツに何かキメのいいセリフを言ってやれ。 バシッとな」

「えっ!?」

承太郎にそう言われ、仗助は思わず叫ぶのであった。

「お……お前なんて全然怖くなかったぜバ〜〜〜カッ!」






「まさか! ワシの攻撃から逃れるとは!?」

吉廣は再びシャッターを押そうとするが、

「オラァ!」

スタープラチナがそれよりも速く、カメラを破壊したのだった。

「悪いがテメェは大人しくして貰うぜ」

「な、なにをぉ〜!?」

すると承太郎は写真を二つに折ると、引き出しの中のセロハンテープでぐるぐる巻きにする。

最後に画鋲で柱に張り付ければ、

「ギャー!」

「成程。 折ってピッタリ面と面を合わせれば、確かに逃げられねぇわな」

見事に吉廣を封じる事が出来たのであった。

「その冷静さと判断力…ホントに敵にしたくないですね」

こうして一行は、再び手掛かりを探すに向かうのであった。






 杜王町の住宅街、そこにある一軒の家。

この家の主婦『川尻しのぶ』は、夫の帰りを待っていた。

とはいえど、彼女と夫との関係は冷めきっている。

「……ただいま」

すると、彼女の夫『浩作』が帰ってきた。

「ほら、夕食があるから食べときな」

そう言って親指でカップ麺を差すが、浩作は台所に向かうと調理を始めた。

「あ、アンタが料理なんて……どういう風の吹きまわし?」

若干驚いたしのぶであったが、テーブルには二人分の料理が置かれた。

「何よ、アタシの分の作ったっていうの? バカじゃない?」

そう言いながらも、しのぶは夫の手料理を口に運んだ。

「(あら、美味しいじゃない)」

そんな中、浩作は別のテーブルで自身の爪を切っていたのだった。

因みにこのやり取りは、承太郎達が吉廣を逃してしまった少し後の話である。





吉良吉影・追跡編――完

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■作者からのメッセージ
 吉良との決戦は、しばらく後になる思います。
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