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魂郷学園 第43話:断ち切れぬB/追放された土方
作者:亀鳥虎龍   2018/11/07(水) 20:20公開   ID:SITQgi7z/cc
 魂郷町のとある鍛冶屋。

土方は刀の修復を頼みに、鍛冶師の男に会いに来ていた。

男は老体と言って良いほどの高齢であったが、長年の経験で目利きが良い。

「――ったく、こんなに血で汚しやがって。 打ち直す側の気持ちも考えやがれ」

「しゃーねーだろう。 俺達の仕事は、そういう仕事なんだよ」

「どういう仕事に就けば、刀が血で錆ちまうんだ。 しっかし、コイツは新しいのを勝った方が良いな」

やれやれという顔をした鍛冶師であったが、土方があるものを見つける。

「じゃあよ、コイツをくれねぇか?」

壁に掛けられていた刀で、彼はそれに手を伸ばそうとした。

それを見た鍛冶師は、すぐさま声をかける。

「あ〜、そいつはやめとけ」

「あぁ? 何でだよ?」

「そいつは所謂、“曰く付き”って奴でな」

「なんだそりゃ? まさか音楽プレイヤーになってたり、掃除用具なってたりしてんのか?」

冗談混じりに言っている土方であったが、彼の言った事はほぼ事実だ。

真選組隊士の所持している刀の中には、明らかに“刀”と言い難い機能が備わっていたりする。

沖田総悟の刀には音楽プレイヤー機能が、近藤勲の刀にはコロコロを装着させる金具が備わっているのだ。

本当に刀なのかと疑ってしまい、流石の土方も呆れていた。

因みにマイは、朱弾ガリアスフィラ=アウトシールという槍を持っているが、緊急用の為に一般の刀を所持している。

話は逸れたが、鍛冶師は溜息まじりに答えたのだ。

「違う違う。 そいつは“妖刀”と呼べるほどの危険な奴だ」

「妖刀だぁ? まさか、そんなのがあるワケねぇだろ」

笑い飛ばす土方は、刀を手に取ってしまう。

「……どうなっても知らんぞ」

こうして土方は、新たな刀を手に入れる。

しかし、彼は気付かなかった。

この刀を手にした時、自身に災厄が起こる事を――。





―断ち切れぬB/追放された土方―




 土方は現在、攘夷志士が潜んでいる港街へと直行する。

目的地に着いたときには、既に浪人達が武器を構えていた。

「真選組副長、土方十四郎とお見受けする」

「(面白ぇ。 コイツの切れ味を試させて貰うぜ)」

浪人の数は3人。

この程度の数なら、土方にとっては倒せぬ数ではない。

「「「天誅ぅぅぅぅ!」」」

「いくぜぇぇぇぇ!」

だがここで、思わぬ事態が起こった。

「すいませんでしたぁぁぁぁ!」

なんと土方が、浪人達の前で頭を下げたのだ。

それも、土下座で。

「(あれぇぇぇぇぇ!?)」

己の意志とは無関係に、体が勝手に動く。

これには土方自身も、驚愕を隠せなかった。

「貴様ァ! 馬鹿にしてんのかぁぁぁ!」

浪人の一人がキレるが、土方は財布を取り出し、

「こ、これをあげますから、命だけは」

完全な命乞いをしてしまう。

「(何してんだ俺はぁぁぁ!?)」

自分でもあり得ない行動を起こした土方であったが、浪人達の一方的なリンチが襲いかかる。

「なんだぁ? 本当にあの土方なのか!?」

「ただのヘタレじゃねぇか!」

「やっちまえ!」

「くそっ! テメェ等、調子に――」

調子に乗った浪人達に、土方が刀を抜こうとするが、

「っ!?」

鞘から抜こうとしても、抜く事が出来ないのだ。

「(か、刀が抜けねぇ!? これが、妖刀の呪いか!?)」

反撃をしたいが、体が無意識にそれを拒絶する。

このままでは、死ぬかもしてない。

死を覚悟した土方であったが、まさにその時である。

「はっ!」

「へびし!」

「ぬげらっ!」

「めめらぁ!」

何者かが、浪人達を薙ぎ払ったのだ。

凛とした佇まいに紫色の髪、そして手に握られた一本の赤い槍。

真選組唯一の女性隊士、マイ=ナツメであった。

「副長!」

振り返り、土方の方へと駆け寄ったマイ。

「大丈夫ですか!?」

「マイ…どうして……」

「巡回でこの辺りを歩いていたんです。 まさか、副長が襲われてたなんて……。 無事でなによりです」

ホッと胸をなで下ろしたマイであったが、まさにその時だ。

「っ!? マイ、後ろだ!」

「っ!!」

土方の叫びに、マイが後ろを振り返る。

そこには、先程の浪人達の姿があり、

「このアマぁ!」

「ふざけやがってぇ!」

「死ねぇぇぇ!」

一斉にマイへと襲いかかったのだ。





 襲いかかって来た浪人達に、マイは体勢を整えようとしたが、

「(マズイ! 間に合わない!)」

浪人達の攻撃の方が速かった。

しかし、その時である。

ズバァ!と、浪人達が斬り伏せられたのだ。

「えっ?」

驚くマイであったが、彼女の眼前に一人の男が立っていた。

真選組の隊長服を着ており、眼鏡をかけている。

黄土色の髪が風で揺れ、男はマイの元へ歩み寄った。

「真選組隊士が襲われていると思って来てみたが…無事で何よりだ、マイ君。 女性ながらも、実に真選組らしい勇敢さだったよ」

「あ、はい。 ありがとうございます」

自分を心配してくれた事に、マイは思わず感謝を述べる。

そして男は、眼鏡を上げながら土方に視線を向けた。

「それに比べてキミは…。 同じ真選組とはいえ、女性に助けられるなんて、格好がつかないんじゃないかい? そうだろう、土方君」

「お、お前は……伊東…」

土方も男に視線を向けながら、彼の名を口にする。

男の名は伊東いとう鴨太郎かもたろう

入隊して僅か一年で、参謀の地位にのし上がった実力者。

因みにマイが入隊したのは、彼の入隊から一年後なのである。





 前日の夜、真選組屯所の大広間にて、

「伊東鴨太郎君の帰陣を祝して、かんぱーーい!」

乾杯の音頭を唱えた近藤に続き、隊士達も「かんぱーい!」と叫ぶ。

「すみませんね。 お忙しい中、僕の為にここまでして貰って」

「いやいや、伊東先生には世話になりっぱなしだからな」

楽しそうに言葉を交わし合う伊東と近藤。

そんな中、マイは隣の隊士に問う。

「……あの、伊東さんって、どんな方なんですか?」

「そうか、マイは知らないんだったな」

「まあ、知らないのは当然だな。 マイがウチに来たのって、伊東さんが入隊してから一年も後だったし」

「えっ!? 一年で参謀に就いたんですか!?」

伊東の出世の早さに、マイは思わず驚いてしまうが、ある疑問を抱いた。

「あれ…? でも“参謀”って事は、地位的には副長と同じ立場ですよね?」

「確かにそうだ。 でも伊東さんは仕事もできるし、頭もキレる。 さらには北斗一刀流の免許皆伝だからな」

「同じ頭脳派でも、副長は戦術家としてだ。 政治方面に関しては、あの人の方が一番上手いからな」

「凄い人なんですね…」

お茶を啜りながら、伊東の凄さに納得するマイ。

「とは言っても、あの人は外回りで屯所にいないから、余り合う機会がないんだよな」

「そうだよな」

「そういえば、お前は見たことあるか?」

「何が?」

「実は俺、副長と伊東さんが仕事以外で離すところ、一度も見たことがねぇんだ」






 宴会が終わり、屯所は静寂の夜を過ごす。

そんな中、土方と伊東が廊下ですれ違う。

すると、伊東が口を開いたのだ。

「土方君、僕はキミに聞きたい事があるんだ」

「奇遇だな。 俺もだ」

「キミは僕の事…」

「お前は俺の事…」

「「嫌いだろう」」

「新参者でありながら近藤さんに気に入られ、キミを脅かす地位までスピード出世する。」

「それはアンタだ。 さっさと出世したいのに、上に何時までもどっかり座ってる俺が、目障りで仕方ねぇ」

「ふっ…邪推だ、土方君。 僕はそんな事、考えちゃいない」

「良かったな、お互い誤解が解けたらしい」

「目障りなんて」

「そんなかわいいもんじゃねぇさ」

互いに振り返りながら、伊東と土方は睨みな合いがら笑った。

「「いずれ、殺してやるよ」」





 場所は変わって真選組屯所。

土方は現在、近藤の部屋に来ていた。

「話しは伊東先生から聞いたよ。 大変だったな、トシ」

「………」

伊東から話を聞いていたからか、近藤は自分なりに土方を案じている。

「トシ、分かっちゃいると思うが、俺達は武士を名乗っていても、元々は学のねぇチンピラ同然の集まりだ。 そんな俺達が、己が武士らしくなれたのは、お前が作った『局中法度』のお陰でもある」

局中法度とは、土方が考案した真選組の掟。

全部で四十五ヶ条あり、隊士達はコレに従って日常の礼儀や戦の覚悟を秘めている。

もしそれを一つでも犯せば、その場で切腹を命じられるのだ。

「まあ、俺が言えた義理じゃねぇが、士道に背く真似はするなよ」

優しく接する彼に対し、土方は煙草を一服する。

「ふっ、大した野郎だ」

「?」

「あっという間に広まっちまったようだな、俺の醜態。 まあ、野郎にとっちゃ、俺を蹴落とす材料には丁度良いか」

「トシ、そんな言い方はよせ。 先生は、隊の事を思って…」

「先生と呼ぶのは止せって言っただろ。 近藤さん、アンタはアイツに局長の座を譲るつもりか? アイツがどんなに使えるかは知らんが、アンタがアイツを立てれば立てるほど、隊士達も自然とアイツを立てざる負えなくなる。 最近では、伊東に与している隊士達もいるんだ」

「まさか伊東先生が、真選組を乗っ取るつもりだと?」

「さあな。 だがな、アイツが今の自分に満足してるとは思えねぇ」

灰皿に吸い終えた煙草を押し当て、土方は正面から近藤と向き合う。

「近藤さん。 頭が二つある蛇は…一方が腐るか、反目して身体を引き裂いちまうかのどちらかなんだよ」

そんな彼に、近藤は否定的に返す。

「トシ……俺は伊東先生は、真選組に必要な男だと思っている」

「!?」

「かねてより真選組に、政治顧問が不在であることは知ってるだろ? 先生の学者並みの知識と経済力、そして北斗一刀流皆伝の培ったコネは大いに役立つ。 俺達ぁ、てめーの地位を守るために戦ってるんじゃねぇ。 この街の平和を守るために戦ってるんだ。 その為なら、俺は先生に教えを請うつもりだ。 教えを請うた者を先生と呼ぶのは、当然の断りだ。 それを家来のように扱えと言うなら、俺は断固として断る。 それにトシ、俺は一度としてお前等を家来だなんて思っちゃいねぇ。 士道の下、共に道を歩む同志だと思っている」

隊士達を“部下”ではなく“同志”と呼び、対等に扱う。

近藤勲が真選組の局長に付いているのも、彼のこの人柄の良さが理由である。

しかし土方は、彼のその考えを危惧していた。

沖田曰く、近藤は相手の『善』の部分を見抜くのは上手いが、『悪』の部分を見抜くのは下手。

この人柄ゆえか、良い意味でも悪い意味でも“お人好し”と言われる事もある。

そんな彼に、土方は思わず叫んでしまう。

「近藤さん、アンタは何も分かっちゃいねぇ……。 キレイ事じゃ、組織は動かせねぇぞ!!」

しかし、その時だった。

突如として土方が、近藤の部屋を飛び出した。

「えっ、トシィィィィ!?」










 自室に戻り、土方はリモコン手に取る。

テレビの電源を入れると、画面に映ったのは、

「美少女侍、トモエ5000見参!!」

女の子やオタク達の間で流行っているテレビアニメ、『美少女侍トモエ5000』であった。

「しまったぁ! もう始まってるゥゥゥ!! 予約すれば良かったぁぁぁぁ!」

だがこの時、土方は我に返ってしまう。

「(ま…また身体が勝手に!何つーもん観てるんだ俺はぁぁぁ!?)」

再び身体が無意識に動き、今度はアニメに釘付けになってしまったのだ。

「っ!」

しかし、背後からの気配に後ろを振り返る。

襖の隙間から、沖田がニタリとドSスマイルを見せていたのだった。






 場所は変わって、とある住宅街。

「く、くそぅ〜!」

ゴキブリを人型にした怪人、コックローチ・ドーパントが倒れていた。

その理由は勿論、彼の目の前に立っている。

「覆面の銀行強盗は分かるが、ゴキブリの銀行強盗は初めてだな」

『流石にゴキブリは、生理的に無理ですね…』

仮面ライダーWと交戦するも、見事に圧倒されていたのだ。

「今度こそ終わりだ。 悪いが、メモリブレイクだ」

《JOKER》

ジョーカーメモリを抜き、マキシマムスロットに挿し込む。

《JOKER・MAXIMUM DRIVE》

一気に跳び上がり、必殺キックを放った。

「『ジョーカーエクストリーム!』」

「ぐぎゃぁぁぁぁ!」

チュドーン!と爆散し、コックローチは元の男の姿に戻る。

排出されたメモリも、その場で砕けたのだった。

「後は警察に――っ!?」

変身を解こうとしたWであったが、男の姿に驚きを隠せない。

男の来ている服が、真選組の隊員服であったのだ。

「真選組の制服だと?」

『まさか真選組が、犯罪行為を行ったのでしょうか?』

「まだ分からない。 恐らく、身分証があるはずだ」

Wはしゃがむと、男の懐を探る。

財布を見つけ、中の身分証を取り出す。

免許証に目を通すと、住所は真選組屯所だった。

「間違いない。 この男は、真選組の隊員だ」

人がいなかったのが幸いか、発見者は一人もいない。

「もしもし、病院ですか? 人が倒れているので、救急車をお願いします。 場所は……」

ジークは携帯電話を取り出すと、すぐさま病院に連絡を入れたのである。





 再び場所は変わり、廃工場の方では、

「いい加減に、諦めたらどうなの?」

仮面ライダービルドが目の前の相手に、仮面越しで呆れてしまう。

「ふざけやがって!」

目の前にいるのは、苺を模した様な赤い頭部の怪人。

一目見ると、メト○ン星人にも見えてもおかしくない姿。

この怪人は『甘味の記憶』のガイアメモリで変身した、スイーツ・ドーパントなのである。

因みにこの怪人、この廃工場で攘夷志士を襲っていたようで、彼等の悲鳴が近所迷惑になったので、万事部に真相の依頼が来たのである。

「喰らえぇ!」

口から吐き出したクリームで、ビルドを攻撃しようとするスイーツ。

しかし、一発も命中出来ていない。

「面倒だから、さっさと終わらせる」

《ラビトタンクスパークリング》

スパークリング缶を装填し、ビルドはスパークリングフォームへとチェンジした。

《Are you ready?》

「ビルドアップ」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング! イェイ! イェーイ!》

左脚から発する『ラビッドバブル』の破裂を活かし、ビルドは高速で移動する。

一気に懐まで近付くと、同時に四コマ忍法刀とドリスクラッシャーの二刀流攻撃を放つ。

素早い斬撃の乱撃を放ち、その場でレバーを回転させる。

《Ready Go! スパークリングフィニッシュ!》

そして助走をつけた飛び蹴りを叩きこみ、スイーツを吹き飛ばしたのだった。

「ぐぎゃぁぁぁぁ!」

ボカァン!という爆音とともに、スイーツ・ドーパントは爆散。

男も元の姿に戻り、メモリも砕けたのである。

「あとは警察に任せて……って、アレ?」

変身を解こうとしたビルドであったが、男の姿に若干驚いてしまう。

男が着ていた服が、真選組の隊員服だったからだ。

「どういうこと?」

これにはビルドも、頭を傾げてしまうのだった。





 数日後、とあるファミレス。

「……どうやらマジで、俺は妖刀こいつの呪いを受けちまったらしい」

「ダハハハハハ!」

「お前信じちゃいねぇだろ。 というより、信じるわきゃないだろ」

妖刀を手にしてから、土方は己の意志とは関係ない行動を取り始めた。

マガジン以外の漫画雑誌を屯所内で読む。

会議中に携帯電話の電源を切らない。

敵の前で命乞いをする。

どれも全て、彼が自ら作り上げた局中法度の禁に触れたものである。

しかも最近は、アニメグッズを買い漁ったり、ヘタレになったりしていたのだ。

土方は妖刀の呪いが原因ではないかと考えるが、それを聞いた沖田が笑い飛ばした。

「けど、土方さん。 そんなにヤベェ代物なら、さっさと捨てちまえば良いじゃないですかい?」

「それが出来れば苦労しねぇんだよ。 風呂の時も、便所の時も、どういうワケか放す事が出来ねぇんだわ。 あの鍛冶屋の親父も、どっかに行っちまったみたいだしよ」

「コイツぁ、ウカウカしれられませんぜい。 このままじゃ、隊士達が伊東さんに期待を向けられますぜ」

「それだけじゃねぇ。 俺はこの数日の間に、局中法度を何度も犯してる。 本来なら切腹もんだ」

席から立つと、土方は背中を向ける。

「お前も、俺と一緒にいたら目ぇつけられるぞ」

立ち去ろうとした土方であったが、沖田はすぐに追いかけ、

「土方さん!」

その場で彼の肩に手を置いた。

思わず土方は振り返り、沖田はこう言ったのだ。

「焼きそばパン買って来いやぁ〜」





 数時間後の真選組屯所。

この時間帯は、隊士達が広間で会議をする時間なのである。

「おかしい…。 トシが来ていない。 会議の時間は過ぎているぞ?」

時計を見ながら、土方の来訪を待つ近藤。

そんな彼に、伊東は立ち上がりながら言った。

「丁度良い機会だ、近藤さん。 実は僕は、彼を議題にするつもりでいた。 諸君も知っての通り、最近の土方君は自ら作った局中法度の禁を犯している。 それどころか、今回の重要会議に遅刻するという失態を犯している」

彼の言うとおり、土方が局中法度を破った回数は十数度もある。

そして今、会議に遅刻するという失態。

コレを聞いた隊士達も、渋々納得するしかない。

「待ってくれ、先生。 もしかするとトシは、事情で遅れてるはずだ」

「僕は今回の事を言ってるワケではないのです。 土方君がどれだけ功績を上げて来たか、彼が真選組で必要な存在かは重々承知だ。 しかし、真選組の手本となる彼が、規律を乱す事はあってはならない。 実際今日までの数日間、彼の仕事をマイ君が請け負ったそうじゃないか。 デスクワークや書類整理、さらには警護任務における隊士達の配置の指導なども、全て彼女が担っている」

伊東が言うように、土方の様子がおかしくなってからは、彼のサボった分の仕事をマイが自分から担っている。

新米とは思えないその働きぶりから、隊士達も一目置くようになった。

しかも休暇も取らず、疲労した身体に鞭を打つほどだ。

流石にマズイと感じた近藤も、この日に限っては彼女に4日間の特別休暇を命じた。

因みに今日が、その特別休暇の4日目であったりする。

「確かに彼女は、真面目で仕事もできる。 しかしそれを除いても、まだ新米である事には変わりない。 それなのに、土方君は部屋に引きこまってはアニメに没頭している。 新米に仕事を押し付ける先輩など、取り除くべき悪の芽だ。 さあ、近藤さん! 彼への処罰の決断を!」

力強く叫ぶ伊東であったが、まさにその時だ。

襖が倒れ、そのままうつ伏せに倒れる人物の姿が。

「ちゃーっす! 沖田先輩、焼きそばパン買ってきました!」

その正体は、議題の中心人物・土方十四郎であった。

沖田にパシられ、焼きそばパンを買って来たのだ。

会議に遅れたのも、これが原因である。

「っ!!」

買って来たパンを見せるも、自分を見る近藤や隊士達の姿に、土方もこの時間帯は会議であることに気付く。

そして視線を、沖田と伊東に向ける。

二人のその顔は、勝利を確信したような笑みであった。

「(し、しまったぁぁぁ! ハメられたぁぁぁ! コイツ等、組んでやがったぁぁぁ!!)」

ようやく罠に嵌められた事に気付いた土方であったが、それも後の祭りである。

こうして彼は、コレまでの隊規違反を機に、重い処罰が下されたのだった。


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■作者からのメッセージ
 今回から『真選組動乱編』が始まります。
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