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魂郷学園 第44話:断ち切れぬB/妖刀村麻紗
作者:亀鳥虎龍   2018/11/09(金) 19:56公開   ID:SITQgi7z/cc
 smileでは、白野達が休息を取っていた。

そんな中、テレビでは『オタクサミット 朝まで生討論』という番組が始まっていた。

この番組は名前の通り、三次元オタクと二次元オタクの間で行われる討論番組だ。

意外と食い付く視聴者がいる為、視聴率は結構高い。

「あっ、始まったアル!」

テレビの下では、神楽は何かの機械を弄っていた。






―断ち切れぬB/妖刀村麻紗―






 機械を弄る神楽を見て、銀時も訪ねてしまう。

「お前、何やってんの?」

「新八の勇姿を録画するところアル」

「そういやアイツ、今日は学校休んでたな…」

そういえばという顔で、新八の事を思い出す銀時。

地味だが真面目な彼にしては、今日に限っては学校を休んでいた。

「なあ、アレって新八さんとちゃう?」

「えっ?」

日影がテレビを観ながら呟くと、当麻達もテレビに目を向ける。

『オタクが全て、ニートや引き籠りの予備軍という考え方は改めて欲しいですね。 僕等の中にだって、ちゃんと働いて社会と向き合ってるオタクもいるんですから』

画面には、三次元オタク側の席で自身の意見を主張する新八が映っていた。

「何してんのアイツ?」

これには銀時だけでなく、当麻や白野達も本気で思ってしまう。

「くそっ、動けよポンコツ」

未だに録画に苦戦する神楽であったが、次第に討論は白熱していく。

そんな中、二次元側の一人が発した台詞がキッカケで、遂に乱闘になったのだ。

「ダメアル、全然できないヨ」

「どれ、私がやろう」

遂に諦めてしまう神楽であったが、見かねたアーチャーが助け船になってくれた。

「………」

しかしあるものを見て、彼は苦笑せざる負えない。

「すまない。 今からキミの頑張りを否定するような事を言って良いかな?」

「何アルか」

「DVDプレーヤーに、VHSテープは入らないぞ。 というか、なんであるんだ?」

どうやら神楽は、DVDプレーヤーで録画しようとしていたのだ。

それも、ビデオテープを使って。

「ん…アレ?」

一方で銀時は、テレビの映像にあるものを見つける。

番組内での乱闘で、新八と取っ組み合いをしている男。

彼は『トッシー』というあだ名の二次元オタクで、この乱闘の引き起こした言動を発した人物だ。

銀時はその顔を見て、ある事に気付く。

「コイツ、どっかで見た顔だな?」

それはトッシーの顔が、真選組副長の土方十四郎に瓜二つだったのだ。







 場所は変わり、真選組の屯所。

あの日をキッカケに、土方は無期限の謹慎処分を受けてしまう。

分かり易く言うなら、真選組をクビにされたのだ。

伊東は切腹を要求するが、近藤や隊士達の計らいでそうなったのである。

そんな中、伊東は沖田と言葉を交わしていた。

「しかし沖田君、キミが僕についてくれるとは思わなかった。 キミと彼は、近藤さんとは真選組結成前からの付き合いと聞いていたから、キミも土方派だと思っていた」

「土方派? 知りやせんでしたよ、そんな派閥があったなんて」

「ふふっ、賢い男だよ。 それで、キミの望みは何だい?」

「勿論、副長の座でさぁ」

「良いだろう。 僕につく限り、望みを叶えると約束しよう」

沖田が立ち去った後、伊東は隊士の『篠原進之進』から声をかけられる。

「宜しいのですか? そんな事をすれば、土方を追放した意味がないのでは?」

「構わいよ。 副長の座くらい、くれてやるさ。 それにね、篠原君。 僕は副長の座を欲するために、土方とくだらん権力争いをしたワケじゃないからね」

不敵な笑みを見せる伊東の顔は、何かを果たそうとする顔をしていた。

真選組を追放された土方は、おそらく知っていただろう。

この男が、どれだけ危険な存在かを――。






 再び場所は変わって、smileの店内。

「あの、さっきはすみませんでした」

銀時と神楽に挟まれる形で座り、新八は目の前の相手に謝罪している。

因みに、彼が詫びている相手は……、

「まさかあんな所に、貴方がいるなんて思ってなかったんです。 ―――土方さん」

それはあの番組のスタジオでの乱闘で、取っ組み合いになった人物。

二次元オタクのトッシーこと、土方十四郎であった。

「いや、良いんだ。 この『トモエ5000』の限定版フィギュアが無事なら」

「あっ、ありがとうございます」

許しを貰えた新八であったが、思わず「アレ?」という顔になる。

彼と同じ意見だったのか、銀時も恐る恐る尋ねた。

「あのぉ〜……。 オタク……本当に、土方さん…ですよね?」

「何ってるんだよ〜〜坂田氏」

「坂田氏!?」

「拙者は正真正銘、土方十四郎でござる」

「ござる!?」

身分証を見せる土方であったが、彼の喋り方に驚きを隠せない。

すると土方は、神楽に視線を向ける。

「おっ、神楽氏! そのチャイナ服は『中華少女パパイヤ』のコスプレでござるな。 完成度が高いでござる。 写真撮っても良いでござるか?」

写真を取り始める土方であったが、神楽も満更でもない様子で照れていた。

そんな彼の姿に、新八や銀時達は驚きを隠せない。

「…………オイ、どういうことだ?」

「本人みたいですけど、別人みたい」

「普段は真面目な人だから、何処かでタガが外れたんじゃない?」

撮影を終え、土方は再び席に着く。

「あの、土方さん」

「なんだい、志村氏?」

「真選組の仕事はどうしたんですか?」

新八の問いに対し、土方は当然のように答えた。

「真選組なら、クビになったでござる」






「えぇぇぇぇ! クビィィィィ! どういう事ォォォ!?」

真選組をクビにされたと聞かされ、新八は驚愕を隠せざる負えない。

「んー、まあ……つまらない人間関係とか嫌になったんだよね。 今は働かなくても行きていける手段を探してるって感じかな。 働いたら負けって感じだし」

「(ニートだ! ニートの考え方だ!!)」

完全なニートと化した土方に、新八も内心でツッコミを入れてしまう。

「実を言うと、貯金をフィギュアに使ったから、お金も殆どないんだよね。 こうなったら、刀を売るしかないな」

「最低だよこの人! フィギュアの為に、侍の魂を売る気だよ!」

遂には背中の刀を売ろうと考えに至った土方。

しかし、刀を見ながら呟く。

「けど、この刀だけは手放せないんだよね。 店の人がコレを『妖刀』だって言ってたけど、それと関係あるのかな?」

「えっ?」






 またもや場所は変わり、万事屋凛々の明星ブレイブヴェスペリアの事務所。

「マイ=ナツメ…。 真選組の隊士を務めています」

「真選組の隊士からのご依頼とはな…。 それで、依頼ってのは?」

ユーリと正面から向き合い、マイは口を開く。

「実は、副長を探して欲しいんです」

「副長?」

「真選組“鬼の副長”、土方十四郎のことね?」

「はい」

「でも聞いた話だと、彼は局中法度を犯した罪で、真選組を永久追放されたって聞いたけど」

「何でオメェが、そんな情報を知ってんだよ」

真選組の内情を知っていたジュディスに、ユーリはジト目で問いだす。

勿論彼女も、「秘密よ」と言って誤魔化した。

「それは承知の上です。 ですが、自身にも厳しい副長が、仕事を不真面目に行うなんておかしいんです」

土方の指導は、スパルタを絵に描くように厳しいものだ。

しかしマイは知っている。

それが彼の、不器用な優しさの裏返しである事を。

封筒を差し出し、マイは深く頭を下げた。

「これは仕事の報酬です。 お願いです、万事屋さん。 副長の捜索を手伝ってください」

無言で封筒を手に取ったユーリは、その中を確認する。

中には一万円札が20枚入っており、彼はその内の5万円を抜き取ると、

「コイツは、副長の復帰祝いに使ってやれ」

「っ! それじゃ!」

「この依頼、凛々の明星ブレイブヴェスペリアが引き受けたぜ」

楽しそうに笑いながら、ユーリは仕度を始めるのだった。






 一方その頃、万事部の方は、

「この刃紋…」

土方の刀が『妖刀』と聞き、村田鉄子の鍛冶屋へと直行。

そして彼等に頼まれ、鉄子は刀の鑑定を行っていた。

「間違いない、村麻紗だ」

「村麻紗?」

「室町時代の刀工、千子村麻紗が作り上げた名刀だ。 だがその切れ味から、人の魂を喰らう妖刀でもあるんだ」

妖刀と知った途端、土方は食い付くように問いだす。

「やっぱり妖刀でござったか! それでどんな妖刀でござるか!? 中から美女が出て来るでござるか!?」

「え、いや……」

「オメェは黙ってろ!」

「へぶし!」

流石に鉄子も戸惑ったが、銀時と神楽が彼をボコボコにする。

頼んで正解だったが、同時に疑問が残ってしまう。

この刀と、土方のオタク化の関係である。

「それで、どういう経緯で妖刀になったんだ?」

当麻が問うと、鉄子は村麻紗の情報を伝えた。

「母親に斬り殺された……引き籠り息子の怨念が宿っている」

「どんな妖刀ぉぉぉぉぉ!?」

「伝説によれば、普段は不登校で部屋に引きこもってアニメばかり見ているのに「修学旅行だけは行きたい」と言いいだし、それにキレた母親が刀で息子を斬り殺した。 その時に使われたのが村麻紗だ」

「どこに伝説の要素があった!?」

「最近だよね! 最近のニュースでもやってるよね!?」

村麻紗が妖刀になった経緯を聞き、あまりにもくだらない内容であったので、当麻と銀時はツッコミを入れてしまう。

「村麻紗を腰に差した人間は、引き籠り息子の怨念よって、二次元メディアに対する興味が強くなり、同時に働く意欲が無くなってしまう。 そして最終的に、ヘタれたオタクになってしまう」

「な、成程な。 いろんな意味で、そいつがヤベェ刀だって事は分かった」

「だが同時に、贋作の多い刀だ。 例え本物を見つけられたとしても、コイツが伝説の代物という可能性は低い。 そもそも、妖刀の話も眉唾ものだからな」

視線を銀時達の背後にいる土方に向けながら、鉄子は言葉を続ける。

「もしこの刀が、正真正銘の妖刀村麻紗だとすれば………その男の本来の魂は、食い尽されているだろうな」

沈黙した銀時達だったが、耳元でカチッという音が聞こえた。

「っ!?」







 その頃、凛々の明星ブレイブヴェスペリアは土方探しの真っ最中であった。

「土方さん? そういや最近、見てねぇな」

「えっ、土方さん? 見てないわね」

「いやぁ、見てないな」

町の人に聞いてみたが、誰も土方を見てないようだ。

「――ったく、どこほっつき歩いてんだ」

「真選組の副長だから、それなりに顔が利いてると思ったんだけどな」

「彼が行きそうな場所は、殆ど調べ回ったしね」

街中を歩きながら、ユーリ達は捜索を続けたが、

「あっ、マイ!」

真選組の隊士が数人、彼等の元へと駆け寄って来る。

「お前、どこ行ってたんだ? 局長が探してたぞ」

「えっ? 局長がですか!?」

「とにかく、早く屯所に戻るんだ」

「まっ、待って下さい! ちょっと、放して――」

隊士の一人がマイの腕を掴むと、そのまま彼女を連れ出そうとしたが、

「待てよ」

ユーリが隊士の腕を掴んだ。

握力は強くなり、隊士はマイの腕を話してしまう。

「き、貴様!」

「女の腕をいきなり掴むなんざ、男のやる事じゃないよな?」

隊士を殴り飛ばすと、ユーリは他の隊士達を睨む。

「大体お前等、上司のところに連れてくのに、無理矢理はねぇんじゃねぇのか?」

「それに今日、局長は武州に行くから屯所を留守にしてるって聞いてますよ!?」

「っ!?」

それを聞いた隊士達は、「しまった!」という顔をする。

「その顔…何かあるみてぇだな」

ユーリはニバンボシを鞘から抜くと、鋭い眼つきで睨んだ。

「吐いて貰うぜ、テメェ等の目的をよ」

彼から放たれた闘気を感じ取り、隊士達も刀を抜く。

数は全部で10人だが、ユーリが一人殴り倒したので9人となった。

「そんじゃ、いくぜ!」

こうしてユーリは、真選組隊士達と真っ向勝負となったのだ。






 真選組の屯所では、伊東が篠原にこんな話をしていた。

「篠原君、武士にとって最大の不幸は何だと思う? それは、理解されない事さ。 愚鈍な主君に使え、その才と共に消えていった名将達は多い。 僕も彼等のように、真の理解者を得られなかった。 学問所で神童とうたわれていたときも、名門・北斗流の皆伝を得ても、時流に乗り攘夷志士と剣を交わっても、僕の器を満たせるものはなかった。 けどそれが、この真選組で出会えた」

土方の顔が脳裏に浮かびながら、伊東は不敵な笑みを浮かべる。

「あの男だけが知っている。 土方あの男こそ、僕の最大の理解者だ。 僕の渇きを、あの男だけが知っていた。 僕にとっての最大の不幸は、最大の理解者が一番の敵だったことだ。 まあいい、理解者がいないのなら、認めさせるまでだ」

彼はゆらりと立ち上がり、縁側の外を見上げた。

「一番危険な土方は消えた。 あとは……近藤勲を暗殺し、真選組を我がものにする」

そんな彼等の会話を、山崎が廊下から立ち聞きしている。

彼は土方のめいを受け、伊東をマークしていたのだ。

そしてその読み通り、伊東は反乱を企てていた。

「(やっぱり、副長の言った通りだ。 早くこの事を伝えないと……)」

その場を立ち去ろうとした山崎であったが、自身への視線を感じ取ったのだ。

伊東は既に、自分が監視されていた事に気付いていたのである。

それと同時に、山崎は別の襲撃者に襲われてしまった。







 場所は戻って、鍛冶屋の方では、

「――ったく、煙草を吸いに来たら、よりによってテメェ等の顔を拝むとはな」

「土方さん!」

「お前、ひょっとして――」

僅かに本来の意識を取り戻した土方は、銀時達の方へと顔を向ける。

「俺も、ヤキが回ったもんだな……。 コイツが最後だ。 こうなりゃ、ワラでもなんでも掴んでやらぁ……。 コイツは、一度しか言わねぇ。 お前等に、最初で最後の頼みだ」

意識を飲まれそうになりながらも、彼は頭を下げたのだ。

「頼む…アイツ等を……俺達の真選組を……守ってくれ!」

それが最初で最後の、土方から万事部への依頼だった。


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■作者からのメッセージ
 因みにサブタイトルの“B”の意味は、この長編の最終話に教えます。

銀時「小説自体は終わらねぇからな」
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