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魂郷学園 第45話:断ち切れぬB/沖田の怒り
作者:亀鳥虎龍   2018/11/12(月) 18:07公開   ID:iYcaOJsNR36
「ハァ…ハァ……」

肩に負傷を負いながらも、山崎は敷地を走り出す。

「早く…早く副長に――」

しかし、彼は逃げ切れなかった。

ドスンと、正面から腹部を刺されてしまったのだ。

襲撃者の正体は、サングラスをかけてロングコートを纏い、背中に三味線を背負った男だ。






―断ち切れぬB/沖田の怒り―






「お、お前は…鬼兵隊の……河上万斉……」

河上万斉――、高杉晋助の率いる攘夷組織『鬼兵隊』のメンバー。

またの名を『人斬り万斉』。

ゆっくりと歩み寄る伊東に、山崎が怒りを露わにする。

「伊東…貴様、攘夷志士と手を組んでたのか!」

「山崎君。 斬り合いばかりしているキミ達のやり方では、世の中を渡れないのだよ。 もっと利口にならないと。 双方の均衡を保つパートナーとして、攘夷志士と手を取り合うのだ。 そうすれば、真選組は今よりいい組織に変わるんだ。 この、伊東鴨太郎の器によってね」

それを聞いた山崎は、這いずりながらも逃れようとする。

「へへっ、やりたきゃ勝手にやってろ。 学のない俺には、難しい話だ。 だから俺は、あの人達の元についていくよ……最後まで」

「そうか。 ではキミには、攘夷志士との戦いで殉職したという名誉を与えよう。 万斉殿、後は任せた」

伊東が立ち去ると、万斉は無言で刀を握り、

「っ!!」

山崎に刃を突き刺したのだった。






 その頃の万事部は、鍛冶屋を後にしたところであった。

真選組の中でよからぬ事態が起こっている。

それが原因で、土方はクビにされてしまった。

そう思った新八は、銀時に声をかける。

「銀さん、どうします?」

「知るか。 俺達には関係ねぇ話しだろうが」

「でも、土方さんですよ!? あのプライドの高い土方さんが、自分の嫌いな相手である銀さんや僕等に頭を下げたんです。 余程の事ですよ」

そんな中、土方が彼等に声をかけた。

「あの〜、坂田氏。 悪いんだけど…」

「ん?」

「実は今日、限定版の美少女フィギュアの発売日なんだ。 でも、一人一個しか売ってくれないんだ。 でも拙者としては、観賞用・保存用・実用用に3つは欲しいんだ。 それで、諸君らに指令を与え――」

しかし人格はトッシーに戻ってしまった為、台詞の内容がくだらなかった。

「テメェは恥も外聞も覚えろやぁぁぁ!」

「実用用って何に使う気だぁ!」

「心配するのもアホらしくなったわぁ!」

「ふざけんのも大概にしろぉぉ!」

「ヤハハハハハ!」

勿論、銀時、神楽、新八、当麻にボコボコにされてしまう。

この光景に十六夜は、お腹を押さえるほど爆笑した。

するとその時、一台のパトカーが止まったのだ。






 場所は変わり、ユーリ達はというと、

「ううっ……」

「つ、強ぇ……」

マイを無理矢理連れ出そうとした隊士達を、全員叩き伏せたところであった。

「そんじゃ、聞かせて貰おうか? お前等の目的を」

胸倉を掴みながら、隊士の一人を問い詰めるユーリ。

そんな彼に、隊士は口を開いたのである。

「お、俺達は…伊東さんのめいで、町にいる土方派の真選組を粛清しろと言われてる」

「っ!? 伊東さんが!?」

伊東の名前が出た事に、マイはすぐさま反応した。

「何故です! 何故そんな事を!」

「あ、あの人が真選組のトップになれば、真選組は更なる強大な組織になれるんだ。 その為の第一歩として、攘夷志士と手を組んだ」

「そんな!」

「おいおい。 そんなことしたら、アンタ等は反逆者だぞ?」

頭を掻きながら、ユーリは呆れるしか他は無かった。

「そうならないように…近藤の…暗殺を…計画…したのだ……」

「なっ!? 近藤局長を!?」

「ちっ! ふざけやがって!」

「ユーリ! このままじゃ、土方さんも危ないんじゃ!?」

「そうね。 クビにされたとはいえ、真選組の副長だった人よ。 口封じをされかねないかもね」

「こうなりゃヤケだ! 何が何でも、土方を探すぞ!」

ユーリの叫びに、マイも胸を締め付けられるような気持ちになるが、

「マイ、準備は良いか?」

「……はい!」

決意を堅め、彼等と共に掛けるのであった。






「副長! 良かった、見つかった!」

銀時達の近くで停まったパトカーから、真選組の隊士達が降りて来た。

「副長、すぐに隊に戻ってください!」

慌てる隊士達に、新八が尋ねたのだ。

「何かあったんですか?」

「実は、山崎さんが! 山崎さんが、何者かに殺害されました!」

「っ!? や、山崎さんが!?」

山崎が殺されたと聞き、新八は当麻達が驚愕せざる負えなかった。

「屯所の外れで、血まみれになって倒れていました!」

「我々が来た時には、既に遅く…。 下手人も見つかっていません」

「局長は別件でこの街を離れているので、まだこの事を知りません!」

「副長、すぐに戻ってください!」

「でも拙者、クビになった身だし」

「そんな事を言ってる場合じゃないでしょ!」

しかし、その時だった。

「さあ、副長も…我々と山崎のもとへ――」

「っ!?」

刀を抜き、土方へと斬りかかろうとした隊士達。

だが、まさにその時だ。

「させっかコラァ!」

突然現れたユーリ達が、飛び蹴りで隊士達を吹き飛ばしたのである。






「ユーリ!?」

「銀時!? 丁度良い! 土方そいつを連れて逃げるぞ!」

「お、おう!」

「に、逃がすな! 追えぇ!」

ワケが分からなかった銀時達であったが、土方を連れて逃げ出す。

上司の無事を見て、マイは思わず胸を撫で下ろす。

「副長! 良かった、無事だったんですね!」

「いや、鏡見てから言ってくんない!? 俺らまで巻きこまれてんだけど!」

「でも、どういう事ですか!? 何で真選組が土方さんを!?」

新八の言う事はもっともだ。

まさか真選組が、上司である土方に刃を向けるとは思わなかったからだ。

「おい、ユーリ! お前、なんか知ってんのか!?」

「話しは後だ! 今は追手を切り抜けるぞ!!」

路地裏まで逃げ出した彼らであったが、パトカーが正面から突進してきた。

さっきの隊士達だろうが、それを神楽が両手の腕力だけで受け止める。

「ふんがぁぁぁ!」

前部分が若干潰れたが、走行に支障はないようだ。

なおも前進するパトカーだが、夜兎族である神楽の前では意味もなさない。

「うわわわ! 神楽氏、凄いよ! さながら、『Dr.スランプ』のアラレ氏の再来の如く……」

「「ウルセェ! テメェは黙ってろ!」」

そう言った銀時とユーリが、左右から隊士達を叩き伏せた。






 待ち伏せしていた隊士達が待ちかまえていたが、銀時達が奪ったパトカーの突進で吹き飛ばされてしまう。

「こちら三番隊、こちら三番隊。 応答願います、どうぞ」

襲った隊士を装い、銀時は無線で連絡を入れる。

『土方は見つかったか?』

「見つけましたが、強くて可愛い味方が現れました。 どうぞアル」

『アル?』

しかし神楽の横入りでややこしくなったので、すぐに彼女の頭をバシッと叩く。

『まあいい。 どんな手段を使ってでも殺せ。 近藤を消したとしても、土方が生きていたら意味が無い。 近藤と土方を暗殺し、真選組を伊東派のものにするのだ』

「近藤さん、土方さん暗殺?」

『あくまで攘夷志士の犯行に見せかけるのだ。 近藤は予定通り、伊東さんが仕込んだ列車に乗ってる』

「えっ、どこの列車ですか?」

『聞いてなかったのか? 政府の要人護衛を偽って、武州行きの列車に乗せてある』

どうやら近藤は、敵の策にまんまと掛かってしまったようだ。

「銀時、俺に貸せ」

「ほい」

何を考えたのか、無線を受け取ったユーリが言った。

「あーあー、応答願います。 実はマイ=ナツメを確保しました。 コイツから、土方の居場所を吐き出してるところです」

『なにっ!? それで、奴は何か言ったのか!?』

「いえ、それが全然…。 拷問しましたが、全く吐きませんでした。 今は気絶してます」

『なら、丁度良い。 土方はヤツを評価してたからな。 奴をおびき寄せる餌にしろ』

「りょーかい♪」

無線を切ると、ユーリは視線を土方に向ける。

視線を向けられた土方は、顔を青ざめながら目を逸らした。

どうやらヘタレオタクと化してなお、彼なりに真選組を案じているようだ。





 その頃、武州行きの列車では、

「武州に帰るのも、久しぶりだな。」

窓の外を眺めながら、近藤が当時の事を呟く。

「あの頃は、俺もトシも総悟も、しょうもない悪ガキだった。 たまに思うんだ。 俺はちゃんと侍らしい生き方をしているのか? マシな生き方をしているのかってな」

そんな彼に、伊東が答えたのである。

「キミは立派な侍だ。 僕でも、キミの様な清廉な人に出会った事がなかったからね。 真選組を一枚の布とするなら、キミは白だ。 どんな理想も受け入れ、何色にも染め上げる御旗。 違って僕は黒だ。 どんな理想も塗りつぶしてしまう」

同時に、無数の隊士達が近藤に刃を向けた。

「すまないね、近藤さん。 キミは、ここで死んでもらう」

不敵な笑みをこぼす伊東であったが、近藤が笑いだしたのだ。

「ダーハハハハ! 流石は先生! 俺を白い布に例えるとはな。 しかし俺の場合、ちぎれ毛のフンドシってところだろうな」

「何を言ってるんだ?」と思いながら、伊東は近藤の話を聞く。

「何色にも染め上げる御旗? 奴等はな、そんな甘っちょろいもんじゃねぇ。 “あか”だよ。 洗っても洗っても、簡単には落ちねぇ汚れだ。 先生、連中はアンタが思ってるほど、得体のしれねぇ奴等だ。 アンタじゃ、手に負えねぇ」

すると車両後部の扉から、沖田が入って来たのだ。

「沖田君、何をしている。 キミには見張りを頼んだ筈だ!」

「……が、なにしてんだ」

ポツリと呟く沖田に、伊東は背筋をゾクリとさせる。

「テメーが、なにしてんだ。 クソヤロー」

コレを見た隊士の一人が、沖田の肩を掴む。

「……手を離せよ」

「沖田君、伊東先生に向かってなんて口を――」

彼を窘めようとしたが、まさにその時だった。

隊士はその場で斬り伏せられ、沖田は怒りのこもった声で叫んだ。

「いいからその人から、手を離せって言ってんだぁぁぁぁ!」





 普段とは想像つかない怒りを見せる沖田に、伊東はなんとか平然を保った。

「成程。 沖田君、やはりキミは土方派だったか。 さしずめ、土方に命じられ、僕等の動向を探るためのスパイ。 土方を裏切ったのも、僕を欺くための演技だった」

そんな彼に対し、沖田は口を開く。

「違ぇよ。 言った筈だ、俺は欲しいのは“副長の座”。 それ以外は眼中にねぇ。 その為なら、邪魔ものは消すだけだ。 土方が消えた以上――、次はアンタの番だ、伊東先生。 俺ぁ、アンタの下にも土方ヤローの下にもつかねぇ。 そこをどきな。 局長近藤さんの隣に座るのは、この俺でぃ」

沖田の目的を知った伊東は、眼鏡を上げながらクスリと笑う。

「なるほど。 土方を消すために僕を利用し、用済みとなったら僕を消すか――。 奇遇だよ、沖田君。 僕もキミと同じ考えだ」

すると、物陰に隠れていた隊士達が、沖田の背後を取っていた。

それを見た沖田も、懐から棒状の機械を取りだし、そのスイッチを押す。

ボカァーン!とう爆音が、車両から鳴り響いた。

「爆弾か!」

爆発の衝撃で車両が揺れ、伊東達は体勢を崩す。

同時に沖田が、疾風の如く走り出し、近藤の腕を引っ張る。

そのまま二人は、前方車両へと逃げたのだった。





 銀時達を乗せたパトカーは、近藤の元へと走っていた。

「つまり真選組に反乱分子がいて……その人達が今、近藤さんを殺そうとしている!」

「そういうこった。 まさか、ここまでやらかすとは思ってなかったけどな」

「近藤さんが…近藤さんが暗殺される!」

ユーリ達から状況を聞いた新八は、すぐさま土方に叫ぶ。

「土方さん! 土方さん、しっかりして下さい!」

「僕は知らない僕は知らない僕は知らない…」

「このままじゃ! アナタの大切な人達が皆、消えてしまうんですよ!」

しかしヘタレと化した土方は、目を逸らすだけであった。

そんな中で、マイが行動を起こしたのである。

「神楽ちゃん、無線を全車両から本部に繋げて」

「あいあいさ」

神楽がパトカーのダッシュボードに手を突っ込み、チューナーを弄って『全域』に合わせた。

無線を手に取ると、マイは息を吸った後に叫ぶ。

「屯所及び、町にいる全隊士に告ぎます! 現在、伊東派の真選組が、近藤局長の暗殺を目論んでいます! 手の空いている者は直ちに武州行きの列車に向かって下さい!」

『その声、まさかマイか!?』

『ちょっと待て! 何でお前が指揮ってんだ!?』

驚く隊士達であったが、そんな事を気にしてる場合じゃない。

「これは私ではありません! 真選組副長、土方十四郎ご本人からの命令です! 来なかった者は、命令違反で切腹です! 急いでください! もう一度言います! これは土方副長からの命令です! 急いでください!」

無線を置くと、マイは息を切らしてしまう。

それを見た銀時は、土方の胸倉を掴む。

「見たかよ。 一人の女が、真選組の為に命張ってんだぞ。 俺もそろそろ、そのツラを見るのも飽きてきたぜ。 ちょうどいい…真選組が消えるなら、テメェも一緒に消えて貰おうじゃねぇか。 墓場くらいは送ってやらぁ」

「冗談じゃない! 僕は行かない――」

「テメーが人に頼むタマか? 他人に真選組を押しつけてくたばるタマか? くたばるなら、護りてーもんを護りながらくたばりやがれ! それが、土方十四郎だろうがぁぁぁ!!」

銀時の叱咤激励を受けた瞬間、土方に異変が起こった。

「……ってーな」

「んあ?」

「痛ェって、言ってんだろーが!」

咆哮と共に銀時の顔面を掴み、そのままダッシュボードへ叩きつけたのだ。

ヘタレオタクのトッシーなら、決してできない行為。

コレを見た新八達が、まさかと言う顔になる。

「まさか…まさか!?」

そう、そのまさかだった。

鬼の副長と呼ばれた男が、彼等の前に帰って来たのだ。

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■作者からのメッセージ
 次回、『断ち切れぬB/復活・鬼の副長』
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