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魂郷学園 第46話:断ち切れぬB/復活・鬼の副長
作者:亀鳥虎龍   2018/11/18(日) 23:24公開   ID:iYcaOJsNR36
 沖田が爆破させた爆弾で、列車は爆炎を上げながら線路を走る。

血相を変えた隊士の一人が、伊東に向かって叫ぶ。

「伊東先生! 爆破された場所から炎が燃えて、此処のままでは危険です!」

「列車を止めるな! 近藤に逃げられてしまう」

伊東は眼鏡を上げながら、前方車両の方を睨む。

爆発を利用し、近藤を素早く救出した沖田。

土方以上に掴みどころのない性格をしている彼に、文字通り出しぬかれたのだ。

内心で「流石だよ沖田君」と呟くが、それでも彼は勝利を確信していた。

列車には自分の仲間しかいない、二人かれらの味方はいないのだ――と。







―断ち切れぬB/復活・鬼の副長―






 沖田と近藤は、前方車両の機関部を目指していた。

一つ手前の車両まで乗り込むと、近藤は奥歯を噛み締める。

「すまねぇ、総悟。 こうなったのは全て……俺のせいだ」

唯一の味方であった沖田に、謝罪の言葉を述べる近藤。

既に列車内の隊士達は、全て伊東の配下のようだ。

おそらく要人の護衛任務も、自身を亡きものにする為の嘘であろう。

反乱分子に気付かず、更には隊士達に剣を向けられる。

沖田がいなかったら、明らかに命はなかった。

「俺はお前等に……トシになんて詫びればいいんだ……」

そんな中、近藤の脳裏には土方の顔が浮かんだ。

思えば彼は、自分に警告を告げていた。

それなのに、それを無視してしまう。

以前、こう言われた事があった。

――近藤さん、アンタは何も分かっちゃいねぇ……。 キレイ事じゃ、組織は動かせねぇぞ!!

あの時の土方の言葉を思い出し、近藤は自嘲せざる負えなかった。

全くその通りだった。

土方は他人だけでなく、自身にも厳しい男だ。

心を鬼にしてまで、あんな厳しい事を言った。

彼の忠告に耳を傾けていれば、こんなことにはならなかっただろう

そう思った近藤であったが、まさにその時だった。

沖田が車両の扉を閉め、外からカギをかけたのだ。






「おい、総悟! 何する気だ!」

扉を開けようとした近藤であるが、外から鍵をかけられているので開けられない。

「近藤さん、戦は大将の首を取られたら終わりだ」

「ふざけるな、開けろ!」

「前にも言いましたよね? アンタの悪いところは、人が良過ぎるトコだって。 誰もかれも疑おうとしねぇ。 挙句の果てに、あんな狐にまで懐に入れちまう」

そう言うと沖田は、車両を切り離す。

「でも、そんなアンタだからこそ、真選組がある。 アンタがいたからこそ、一緒に戦えた」

背を向けると、車両内へと足を進む沖田。

おそらく、単身で伊東の元へと向かう気だ。

「待て、総悟! お前に死なれたら俺は! 総悟ォォォォォ!!」

近藤の叫びも虚しく、彼を乗せた車両は離れて行ったのだった。






「前方車両が切り離されました!」

「後方車両を作動させろ! 近藤を絶対に逃がすな!」

隊士の一人が後方車両の機関部へと向かう中、車両前方の扉が開く。

現れたのは、沖田総悟のみだった。

近藤を逃がす為、単身で足止めするつもりのようだ。

「沖田君。 キミは利口な男だと思ったよ。 だが、それも無駄な事だ。 僕の計画通り、近藤は死ぬ」

窓の外を見ると、河上万斉がバイクを走らせていた。

その背後には、無数の武装車両。

「鬼兵隊か……」

流石の沖田であっても、鬼兵隊も加われば勝てる可能性は低い。

しかし彼の表情は、常に余裕であった。

恐怖を感じた様子など、微塵もなかったのだ。

「ワリーな伊東さん。 俺も実は、一人じゃないんでさぁ」

親指で窓の外を指す沖田に釣られ、伊東も窓の外を見る。

外には一台の車が、爆発の中を走っていた。

それは半壊したパトカーで、車内には見慣れない顔がいる。

銀髪の男と眼鏡の少年、大きな髪飾りの少女にツンツン頭の少年、さらにヘッドホンを付けた少年に長い黒髪の青年、茶髪の少年に蒼い髪の女性、そして緑の髪の少女が乗っていた。

いずれも真選組の制服を着ているが、伊東に見覚えのない連中だ。

パトカーの横には、一台のバイクが奔っている。

乗っているのは、仮面で正体を隠した人物。

おそらく、噂になっている『仮面ライダー』だと認識した。

仮面ライダーの後ろには、マイ=ナツメが乗っている。

それだけはまだ良かった。

問題なのは、パトカーの屋根の上にいる人物だ。

「バカな……何故ヤツが!?」

そこには、追放したハズの土方がいたのだった。






「御用改めだぁぁぁ! 真選組副長、土方十四郎のお通りだぁぁぁ!」

バズーカをぶっ放しながら、銀時は大声で叫んだ。

「んが!」

そんな土方であったが、途中で木の枝で顔をぶつけた。

「おいぃぃぃ! 何してんだオメェは!」

「あわわわわ! やっぱり僕には無理ぃぃぃ!」

「ふざけんな! 人の顔を殴った時だけ復活しやがって!」

しかしトッシーの人格は相変わらずで、すぐにヘタレになってしまう。

その光景に、沖田はポツリと呟いた。

「……チッ。 目障りなのがぞろぞろと。 まあ、いいや。 奴ら潰すには、軍隊が一個あっても足りねーぜ」






 加勢に来た土方に対し、伊東は平然としていた。

「ふん、土方め。 今更来たところで無駄な事だ。 近藤共々、ここで消してくれる」

「消えるのはテメェ等だ。 見知った連中もいるが、そっちにいる以上、覚悟は出来てんだろうな?」

鞘から刀を抜き、沖田は静かに呟く。

「真選組局中法度第二十一条『敵と内通せし者はコレを罰する』。 テメー等全員、俺が粛清する」

「クククク…。 自分の状況を分かってないようだな。 奴の作った局中法度など、もう意味もない。 キミ達の真選組は終わるのだ。 粛清しろ、僕は近藤を追う」

扉を開け、伊東は万斉の後ろへと乗り移った。

そんな中で、沖田は伊東派の隊士達と目を合わせる。

「真選組一番隊隊長として、テメー等に最後の教えを授けてやらぁ。 圧倒的に力の差のある敵を前にした時、その実力の差を覆すには、数に頼るのが一番だ」

襲いかかる隊士達を前に、沖田は眉を微動だにしない。

「呼吸を合わせろ。 心体ともに気を練り、充実した瞬間、同時に斬りかかれ。 そして……」

まさに、次の瞬間だったのだ。

隊士達が窓を突き破って吹き飛び、車内には屍が転がり、

「……死んじまいなぁ」

彼等の返り血を浴びた沖田が、ペロリと唇を舐めたのだった。






 万事部一行&土方を乗せたパトカーは、列車の周囲を見る。

真選組だけでなく、攘夷志士の戦闘車両も走っていた。

「攘夷志士か…。 コイツは、ただの内輪揉めじゃなさそうだな」

「近藤さんはどの車両に?」

「あの車両じゃねぇか」

ユーリが指をさした先には、前から離れて走る車両。

あそこに近藤がいると確信した。

「そんじゃ、土方氏」と言って、銀時は扉を開けると、

「援軍も来た事だし、後は自分テメーでなんとかしろ」

そのまま土方を、外へと放りだす。

「ちょ、ちょっと待ってよ坂田氏ぃぃぃぃ!」

ドアにしがみつきながら、土方は必死に叫んだ。

「やっぱり僕には無理だよぉぉぉ! さながらヤムチャ氏を、フリーザ氏が暴れているナメック星に送り、そのまま宇宙命運を託すべき暴挙だよぉぉぉ!」

「大丈夫、オメェはベジータだ。 やればできる!」

「坂田氏ぃぃぃぃ!」

「(何だ、このやり取りは?)」

本気でそう思いながらも、当麻は仮面ライダークローズに変身していた。

すると、一台のパトカーが奔って来る。

「副長ぉぉぉぉ!」

乗っていたのは、スキンヘッドの男。

それは真選組十番隊隊長の原田右之助だ。

「原田隊長!」

「マイ! お前の通信、俺達の耳に届いたぜ! 副長、無事ですかぁぁ!」

「いや、どう見ても無事じゃないでしょ」

ビルドに変身していた白野は、彼の発言にツッコミを入れる。

「ったく、ようやく来たか。 んじゃ、コイツはオメェ等に任せるから、俺等は帰るぞ」

銀時がそう言うが、原田が無視しながら叫んだ。

「伊東の野郎ぉ! とうとう本性を現しやがったな! だが、副長が戻ってきたからには、もう大丈夫だ!」

「あの、原田隊長?」

「副長! 俺達は敵を食いとめます! 副長は、局長の救出に行って下さい」

「ですから、その副長が……」

「マイ! お前は副長の援護だ! 任せたぞ!」

「あ、はい――じゃなくて!」

マイの叫びをスルーし、原田達のパトカーは敵陣へと向かった。

「最後まで聞いてくださぁぁぁぁい!」

「聞けやハゲェェェェ!」







 前方車両の扉から、外の様子を覗く近藤。

「あ、あれは!?」

その際、銀時達と同行する土方を見つける。

「バカヤロウ……何で、お前がここにいるんだよ。 俺にクビにされたお前が……」

その姿に、彼は涙を流した。

「トシぃぃぃ! 何で来たんだ、バカヤロォォォォ!」

普通なら、ここは感動の場面なのだが、

「えっ?」

銀時がバズーカを構え、容赦なくぶっ放したのだ。

「あべし!」

ドガァ!という爆音とともに、近藤は容赦なく吹き飛んでしまった。






 吹き飛んだ際に、頭をぶつけて倒れた近藤。

コレを見たマイは、思わずツッコミを入れてしまう。

「何してるんですか銀さぁぁぁん!?」

「安心しろ、あそこにはゴリラの死体しか転がってねぇ」

場の空気をブチ壊した銀時に、流石の近藤もキレた。

「何すんだオメー等!」

「おっ、生きてた。 無事か? なんかお前、暗殺されそうになってるらしいな?」

「今されかけたよ! たった今!」

さっきまでの緊張感が消えたが、近藤が彼等がいる事を指摘する。

「まさか、お前等がトシをここに!? 何でお前等が、トシの肩を!?」

その問いに対し、銀時は簡単に答えた。

「遺言でな」

「遺言?」

「妖刀に魂を喰われてる。 今のコイツは、ヘタれたオタク。 もう、戻って来る事もねぇだろう」

「妖刀だと!? まさか……いや!」

最初は信じられなかった近藤であったが、思い当たる事はいくつもあった。

「(ここ最近のトシの不可解な行動。 アレがもし、妖刀のせいだとすれば……)」

鬼の副長・土方十四郎がヘタレ化するなど、天変地異が起きてもあり得ない。

しかし、妖刀の呪いが原因だとすれば話しも通る。

「そんな状態で、トシはお前等に何を頼んだ?」

「“真選組を護ってくれ”だとさ」

「っ!?」

「面倒だから、てめーでやれってここまで連れて来た。 ウチは部活動でここまで来たからな」

「いや、部活動でこんな危険地帯まで行きますか?」

「つっても、今回ばかりはタダ働きってワケにはいかねぇんでな。 無事に帰れたら、なんか奢って貰うぜ」

「ああ、構わんさ。 パフェでもステーキでも……。 しかし万事部…お前等に、俺の依頼を引き受けてほしいんだ」

「依頼?」

「マイ、お前も聞いて欲しい。 コイツは俺の遺言になる」

「えっ?」

「トシを、ここから連れ出して欲しい。 戦いを拒む、今のトシを巻き込みたくはねぇ」

そう言うと近藤は、深く頭を下げたのだ。






 銀時達に頭を下げながら、近藤はこの状況になるまでの事を振り返る。

「俺は、「伊東に注意しろ」というトシの忠告を拒んだ。 些細な失態を犯したトシを、伊東の思うがままに遮断した。 トシが、こうなっちまってる事も知らずに。 プライドの高ぇトシが、お前等に頭を下げてまで託した事も知らずに…。 すまなかった、トシ。 俺は、大馬鹿野郎だ。 全隊士に告げてくれ、近藤勲は戦死したと。 これ以上、仲間の死ぬ姿は見たくねぇ」

自分の所為で、多くの犠牲が増えてしまう。

それに耐えられない近藤は、自身の死で終わらせようとする。

だが、その時だった。

「あーあー、ヤマトの諸君、我等が大将、近藤勲は救出した。 勝機は我等の手にある。 局長の顔に泥を塗り、恩を仇で返した輩を、月に代わってお仕置きするのだ!」

『おい、何だこのふざけた通信は!』

『誰の命令だ!』

無線を手にした土方は、隊士達に通信を入れたのだ。

困惑する隊士達であったが、土方は強く叫ぶ。

「誰だと? 真選組副長、土方十四郎だぁ!」

驚きを隠せない新八達であったが、土方は近藤に顔を向ける。

「近藤氏、僕等はキミに命を預ける。 その代わり、キミに課せられた義務がある。 それは、絶対に死なねーことだ。 恥辱にまみれようが、仲間を失おうが、キミは生き残らなければならない。 キミがいる限り、真選組は終わらないんだ」

懐から煙草を取り出し、口に咥えて火を付けた。

「近藤さん、アンタは真選組の魂だ。 俺達はそれを護る剣なんだよ」

「トシ……」

そんな中、万斉のバイクが奔って来たのだ。

後ろに乗っていた伊東が、蔑みの視線を向ける。

「一度折れたキミに、何が護れる? 折角あの鍛冶師を利用し、村麻紗の呪いでキミをヘタレオタクにしたつもりだったが。 土方君、どうやらキミとは、ここで決着をつけなければならないようだ」

「っ!? まさか、土方さんのヘタレ化は、偶然じゃなかったのか!?」

「全部アイツのせいアルか!」

全てが伊東の策略と知り、新八も神楽も怒りを露わにした。

しかし土方は、不敵な笑みを見せながら外へ出る。

「剣ならあるぜ、ここにな」

そう言うと彼は、刀を抜こうとしたが、

「んぐぐぐぐ……」

ヘタレ化したせいで、抜きたくても抜けない。

「どうした、早く抜きやがれ」

「うるせぇ!」

銀時の挑発的な言動を受けながらも、土方は力強く叫んだ。

「万事部ぅぅぅ! さっきはベラベラ説教しやがってよぉ! だが、礼を言わせて貰うぜ! ありがとよぉぉぉ!」

「らしくねーこと、言ってんじゃあねぇよ。 まさかトッシーですか?」

「違う…。 俺は、真選組副長! 土方十四郎だぁぁぁ!」

同時に村麻紗の刃が、遂に鞘から解き放たれたのである。

今ここに、鬼の副長・土方十四郎が復活したのだった。







 遂に妖刀を引き抜いた土方に、万事部の面々も驚く。

「トッシー!」

「すごい、妖刀の呪いを!」

「自力でねじ伏せた!」

この光景を見届け、銀時は近藤に視線を向ける。

「というワケだ、ゴリラ。 オメーの依頼は受けられねぇ。 アイツが、先客だからな」

「ふっ、そうか…。 というか、此処までが仕事じゃなかったのか?」

「気にすんな。 その代わり、宣言通り奢って貰うぜ」

近藤の手を掴み、銀時は彼をパトカーへと移動させた。

「ん?」

妖刀を抜いた土方から、万斉は何かを感じ取る。

「変わった。 あの男の魂の鼓動リズムが。 幼稚なアニソンから、骨太のロックンロールでござる。 いや、ぬしもか…伊東殿。 格調高いクラシックから、凶暴なメタルでござる。 ふむ、良い曲だ」

後ろで刀を抜く伊東に気付き、万斉は不敵に笑う。

「思う存分、奏でるがいい! 美しき協奏曲を!」

バイクの速度を上げ、そのままパトカーへと走る万斉。

そして土方と伊東は、正面から迎え撃つ。

「土方ぁぁぁぁ!」

「伊東ぉぉぉぉ!」

二人の刃が、すれ違い様に鳴り響くのだった。

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 次回、アイツも登場します。
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