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魂郷学園 第48話:断ち切れぬB/本当の繋がり
作者:亀鳥虎龍   2018/12/28(金) 22:45公開   ID:SITQgi7z/cc
 前回のあらすじ。

謀反を起こし、土方と一騎撃ちに臨んだ伊東鴨太郎。

しかし彼もまた、鬼兵隊の捨て駒に過ぎなかった。

用済みにされた伊東であったが、近藤達が救いの手を差し伸べる。

この時彼は、ようやく気付いたのだ。

自分が一体、何を欲していたのかを…。






―断ち切れぬB/本当の繋がり―






 戦場と化した線路の上では、銀時と万斉の激戦が始まっていた。

「そこをどけって言ってんだろーが! テメーなんざに構ってる暇はねーんだよ!」

万斉の隙をついた銀時は、近藤達の救出へと向かうが、背後から身体が引き寄せられてしまう。

「弦!?」

正体は万斉の三味線の弦で、それが銀時の手足に巻かれていた。

「無理はせぬがいい。 動けば手足が引き千切れるでござる」

「くっ!」

「今更助けに行っても、どうしようもないぞ? 伊東のお陰で、真選組は消耗。 そこを狙えば、奴等は終わる。 真選組は消える」

冷徹に語る万斉であるが、銀時の足は止まらなかった。

手足から血が噴き出てしまうが、そんな事はお構いなしだ。

「手足が引き千切れると、言ったでござるよ」

「へっ、誰が助けに行くかよ」

「?」

「止まれねーんだよ。 前から後ろからも、糸が絡まって引っ張ってやがる。 うっとーしくて仕方ねぇ」

すると、弦がブチブチと千切れていく。

「(っ!? 鉄の強度を誇る弦が!?)」

「手足の一本や二本、どうぞくれてやらァ。 でもな、肉は切れてもこの糸……」

そして銀時は、弦の拘束を全て引き千切り、

「腐れ縁! 切れるもんなら、切ってみやがれぇぇ!」

近藤達の元へと向かったのである。






 その頃、ビルドとW達は、

「この!」

ガーディアンの軍団に苦戦されていた。

「倒しても倒しても湧いて出る。 これじゃ、キリがない!」

『このままじゃ、こちらの体力が持ちません』

絶体絶命であったが、まさにその時である。

「うおぉぉぉぉぉ!」

クローズが駆けつけて来たのだ。

「おりゃぁぁぁ!」

蒼き炎を纏った拳で、ガーディアン達を容赦なく殴り飛ばす。

「当麻……生きてたんだ」

「いや、勝手に殺さないで!? あのパトカーから脱出したのは良いけど、そのまま置いてかれたんだよ!」

「うわー、大変だったねー」

「棒読み止めて!」

「まあ、無事でなによりだよ」

安堵したビルドは、マイに視線を向ける。

「マイ、此処は私達に任せて。 アナタは近藤さん達の元に」

「っ!? でも!?」

『大丈夫です。 私達も、死ぬつもりはありません』

「ああ。 必ず生きて会おう」

「それにな、今の俺達は……負ける気はしねぇ!」

「行って!」

「……はい!」

マイは近藤達の元へ向かい、ビルド達はガーディアンの軍勢へと向かった。






 車両内で攘夷志士達と奮闘していた近藤達。

しかし窓の外から、ヘリコプターが姿を見せる。

窓側から、浪士の一人が機銃を構えていた。

「伏せろぉぉぉぉ!」

土方が叫ぶとともに、無数の弾丸が放たれたのだ。

一方の銀時は、列車の近くへと駆けつける。

しかし、背後から万斉が襲いかかって来た。

果たして、彼は間に合うのだろうか!?






 列車の方では、銃声が止んでいく。

硝煙が晴れ、顔を上げてた土方達が見たのは、

「!?」

それは自分達に背を向け、敵の弾丸を体中に受けた伊東の姿だった。

「先生ぇぇぇぇ!」

「伊東ぉぉぉぉ!」

膝が崩れ、その場で倒れた伊東。

再び銃口が標準を向けるが、まさにその時、

「うおぉぉぉぉぉ!」

銀時が万斉と共に、ヘリの正面へと突っ込んだのだ。






「万斉様ぁぁぁ!」

驚く浪士達であるが、万斉は銀時の肩に剣を突き刺す。

「ぐっ!」

「白夜叉! 貴様は何が為に戦う! 何が為に命をかける! この腐った国は、晋助が手を下さなくても、腐敗してしまう! あがいたところで、貴様一人では何もできぬ! 天人に喰い尽されたこの国は、潔く引導を渡してやる必要がある! この国は、腹を切らなければならない!」

「へっ! 死にてーなら、一人で練炭自殺でもしてろ」

「坂田銀時、お前は亡霊でござる。 嘗て晋助らと共に侍の国を護ろうとした思い、それを捨てられずに妄執した、生きた亡霊でござる。 ここには、ぬしの護るものはもうない……亡霊は、帰るべき場所へ帰れ!」

万斉の一閃と共に、銀時はヘリコプターから落ちた。

鎮魂歌レクイエムをくれてやるでござる」

トドメを刺そうとした万斉だが、まさにその時だ。

「コレは!?」

ヘリコプターごと、身体が弦に巻かれていた。

「おい、兄ちゃん…。 ヘッドホン取れコノヤロー」

立ち上がった銀時は、木刀に弦を巻き付ける。

「拙者の弦を!? 撃てぇぇぇ!」

機銃から弾丸が放たれるが、一発も命中していない。

「俺はなぁ…安い国の為なんぞに、命を掛けるつもりはねぇ…」

生身とは思えない腕力で、弦で繋げたヘリを引き寄せる。

「俺の護りたいもんは……何一つ、変わっちゃいねぇぇぇぇ! うおぉぉぉぉぉ!」

木刀を振り下ろすとともに、繋がれたヘリも落下。

そのまま、地面へと激突したのである。






「万斉様ぁぁぁ!」

万斉の敗北を知り、浪士達は驚愕してしまう。

そんな中、車内の方では…

「何をしている…。 ボヤボヤするな、副長。 指揮を…」

伊東の呟きに、土方は外の隊士達に叫ぶ。

「総員に告ぐ! 敵の大将は討ち取った! 最早敵は、総卒を失った烏合の衆! 一気にたたみかけろォ!!」

この叫びに士気が上がった隊士達は、鬼兵隊の浪士達を切り伏せていく。

「ひ、引けぇぇぇ!」

「逃がすなぁ!」

敗北を悟った鬼兵隊は、その場を立ち去るのであった。







 静寂となった車両には新八達、そして伊東だけが残された。

「どうしてあんな事を?」

沈黙を破った新八は、先程の事を伊東に問う。

「さっきまで裏切っていた貴方が、僕等を庇ったりしたんですか?」

この問いに伊東は、新八達に視線を向ける。

「…その前に聞きたい。 キミ達は、真選組の者ではないな? しかし、彼等とは見えないいとで繋がっている。 彼等の敵でもなければ、味方になったわけでもない……」

「……ただの腐れ縁ですよ」

「ふっ、そんな形のいともあったのか…知らなかったよ。 いや、僕の場合、それすら知ろうともしなかった」

幼少時代を振り返りながら、彼は自身の本音を口に出す。

「人と繋がりたいと願っていながら、自らの手で断ち切っていた。 人から拒絶されたくない、傷つきたくない…。 ちっぽけな自尊心を護ろうと、本当に欲しかったものすら見失っていた。 その所為で、ようやく見つけた大切な絆さえ、自分の手で壊してしまった。 共に戦いたいのに、立つ事が出来ない…。 剣を取りたくても、腕が無い…。 何故…いつも…気付くのが遅いんだろう。 ようやく気付いたのに…僕は死んでいく。 死ねば一人だ。 もう、一人は嫌だ。 一人になりたくない……」

右腕で左腕を失った肩を掴む伊東に、新八達は何も言えなかった。

そんな彼等の元に、マイが歩み寄る。

「マイさん…」

彼女は視線を伊東に向けると、伊東も視線をマイに向けた。

「……言い残す事は、ありませんか?」

「…ないな。 そんな資格、僕にはない」

「…分かりました」

矛先を向け、マイは力強く叫ぶ。

「伊東鴨太郎! 近藤勲局長暗殺容疑、及び局中法度第21条に則り……貴方を処刑します!」

「っ!?」

“処刑”という言葉を聞き、新八達は驚きを隠せない。

更に外の敵を討ち取った隊士達が現れ、その中にいた原田がマイに近付く。

「マイ、あとは俺等がやる」

「……お願いします」

彼女の肩に優しく手を置くと、原田は視線を隊士達に向ける。

これを合図に、隊士達は伊東の方へと向かう。

「待って下さい! この人はもう――」

「長くはない」と言おうとした新八だが、マイがそれを遮った。

「新八君。 今回は、キミや銀さん達のお陰で助かったよ。 それは感謝してる。 でも、この頼みだけは聞けない。 彼のした事の為に、多くの犠牲が出たの。 裏切り者は、真選組わたしたちで処分しなきゃならないの」

確かに近藤の暗殺は、決して許される事ではない。

しかし、流石に処刑する必要はないはずだ。

納得できない新八は、思わず声を荒げしまうが、

「だからって――」

「新八君!」

「っ!」

「お願いだから……。 これは元々、真選組わたしたちの問題なの。 だからせめて、真選組わたしたちのやり方で……」

大粒の涙を流しながら、マイは深く頭を下げる。

これを見た新八は、何も言い返す事が出来なかった。

そんな彼の肩に、近藤が優しく手を置く。

「新八君。 女性を泣かせるようじゃ、おとことしては、失格だぞ……」

そんな彼の目にも、大粒の涙が零れた。







 列車から程近くの荒地。

うつ伏せに倒れた伊東の周りには、真選組の隊士達が囲むように立っていた。

誰もが全員、神妙な顔になっている。

新八は、内心で呟く。

本当に良かったのかと――。

そんな彼の隣で、ユーリは静かに呟く。

「覚えておけ、新八」

「えっ?」

「一度でも掟を破った奴、秩序を乱した奴は、何時かは危険な存在になりかねねぇ。 その前に、誰かがその芽を摘み取らなきゃならねぇんだ。 組織ん中で生きるってのは、そういう事なんだよ」

面には出さなかったが、新八はユーリも自分と同じ気持ちだと気付く。

すると、万斉との戦いから戻ってきた銀時が歩み寄る。

「それに、アイツはもう長くはない。 それでも真選組は、伊東アイツを薄汚ねぇ裏切り者のままで死なせるつもりはねぇ」

地に伏せた伊東の前に、土方は刀を投げ置いた。

「立て、伊東。 ケリを着けるぞ」

それを聞いた彼は、刀を手にし持ち、ゆっくりと立ち上がる。

「土方ァァァァ!」

「伊東ォォォォ!」

刀を構え、地を蹴り、二人は正面から走り出す。

すれ違い様に放たれた一閃は、土方の方が速かった。

伊東の身体からは、大量の血が流れ出す。

「せめて最後は、武士として、仲間として、伊東アイツを死なせてやりてーんだよ」

意識が薄れる中で伊東は、自分と真選組との『絆』を感じ取る。

憑き物が落ちたかのような、晴れやかな表情を見せ、

「り…がとう……あり…が…とう……」

真選組に感謝の言葉を伝え、その場で息絶えた。

こうして、伊東鴨太郎の落命と共に、真選組反乱事件は幕を下ろしたのである。






 銀時達とは別の荒地。

「まさか…伊東先生が……あの人が負けるなんて……」

伊東派の隊士である篠原が、傷付いた身体で足を進めていた。

沖田との戦いで、彼は窓の外まで吹き飛ばされてしまうが、辛うじて急所は外れていたのだ。

ボロボロになりながらも、篠原は真選組から離れていく。

篠原は、彼等を恐れているわけではない。

しかし局中法度の第21条に則れば、自分は間違いなく粛清対象だ。

そう考えた篠原は、すぐさま“逃げる”という選択を選んだのである。

「とにかく、逃げなければ…。 奴等に見つかる前に……」

出来るだけ遠くに逃げようとしたが、まさにその時であった。

「どこに行く気だ?」

「!?」

背後からの声に、彼は反射的に振り返る。

だが同時に、腹部を何かで刺されてしまう。

「お、お前は!?」

自身を刺した相手の顔に、篠原は驚きを隠せない。

その正体は、銀時との戦いで死んだと思われた万斉だったからだ。

どうやら万斉は、あの落下したヘリから脱出していたのである。

「将の最期を見届けず、その場を逃げるとはな」

「ガハッ!」」

口から血を吐き、篠原は膝をついてしまうが、

「さらばだ」

最後に放たれた一閃が、彼の首を落としたのだ。

――俺の護りたいもんは……何一つ、変わっちゃいねぇぇぇぇ!

銀時の言葉を思い出し、万斉を不敵な笑みを浮かべる。

「白夜叉…。 ぬしの魂の歌、もう少し聞きたくなったでござる」

それだけ呟くと、彼はその場を立ち去ったのだった。






 数日後、真選組屯所の一室。

この部屋では、山崎の葬式が行われていた。

松平を中心に、真選組が総出で出席。

仲間の死に、多くの者達が涙する。

和尚がポクポクと木魚を叩く。

そんな彼等の様子を、奥の襖から覗く者がいた。

「(や、ヤバイィィィ! 完全に死んだ事になてるよ俺!? まさか、既に葬式が始まってたなんて! 完全に出遅れちゃったよぉぉぉ!)」

正体はなんと、この葬式の当事者・山崎退である。

なぜ、死んだはずの彼がいるのか……。

実はこれには、ちゃんとした理由があった。

伊東が立ち去った直後、万斉の刃が付きたてられそうになった時だ。

刀は山崎の脳天を貫かず、彼の眼前に突き刺さる。

――気が変わったでござる。 ぬしの歌、もう少し聞きたくなった。

万斉は刀を仕舞うと、彼の元を立ち去る。

――生きのびて、その続きを聞かせてくれる日を楽しみにしてるでござる。

不敵な笑みを見せながら、そのまま立ち去ったのだ。

例え敵でも、己の信念を貫く者は殺さない。

それが河上万斉のやる方かもしれない。

「(という感じで、奇跡的に生きのびたのは良いけど……。 まずいぞ、敵に情けを掛けられて助かったうえ、今の今まで入院で連絡しなかった事がばれたら…『すいませ〜ん。 やっぱり生きてました♪』なんて言ったら、確実に粛清される! どうしよう、もう死んじゃおっかな…死んだ方がマシだよね――)」

すると、松平が大声で叫び出したのだ。

「バカヤロォォォォ! 年寄りより先に死んじまうんじゃねぇよぉぉぉぉ!」

「(止めてぇぇぇ! それ以上盛り上がらないでぇぇぇ! 余計に出ずらくなるからぁぁぁ!)」

「俺ぁ、お前の事を息子の様に……うぐ……」

「(とっつぁん…そんなに俺の事……)」

松平の言葉に、山崎は思わず涙が出そうになるが、

「プー助ぇぇぇ! 俺を置いてかないでくれぇぇぇぇ!」

「(何故に犬とセットぉぉぉぉ!)」

現実は常に非常であった。

実はこの葬式、松平の愛犬『プー助』がメインの葬式だったのだ。

「(というかコレ、どう見ても犬がメインの葬式じゃねぇか! 俺の写真なんか、隅っこに置いてあるし!? ついでに山崎も弔っておく的な!? いくら地味でも、流石にそれはないだろぉぉぉぉ!)」

まあ、山崎の存在感は、基本的にこんなもんである。







 一方その頃、土方は銀時達とsmileにいた。

今回の一件での活躍により、土方はクビを取り下げられたのだ。

現在は休職中で、銀時達に礼をしようと食事に誘ったのである。

新八から「復帰はしないんですか?」と問われたが、土方の答えは意外なものであった。

「え、謹慎を延長した?」

「ああ、今回の不祥事の責任は重いからな」

因みに村麻紗の呪いは、当麻の右手で打ち消す事に成功している。

それでも謹慎を延長したのは、土方なりに責任の重さを感じたからだろう。

「世話になったな」

「もういくのか?」

「ああ。 地獄で奴等に笑われねぇように、前に進んでいかねぇからな。 あばよ」

土方が去る姿を見届けながら、銀時達は不敵な笑みを見せた。

「土方さん、大丈夫ですよね?」

「ああ、大丈夫だ」







 屯所の方では、山崎が白装束姿になっていた。

自身の葬式をないがしろされ、彼は復讐に燃えていたのだ。

「(ふざけやがって! こうなったら驚かせて――)」

しかし、その時である。

「どけ!」

「んがっ!」

背後から何者かに、蹴り飛ばされてしまったのだ。

蹴り飛ばされた山崎は、襖を突き破り、

「うわぁぁぁぁ!」

「山崎さんが化けて出てきたァァァ!?」

コレを見た隊士達も驚いてしまう。

「テメェらァァァ! こんなもんでビビってんじゃぇぇぇ!」

怒号を上げた人物に、誰もが視線を向けた。

そこには真選組副長、土方十四郎が立っていたのだ。

「副長!?」

「副長ぉぉぉぉ!」

長らく屯所を離れた彼が、真選組に戻って来たのである。

隊士達が一斉に、土方の方へと集まっていく。

副長の帰還に対し、誰もが喜びを見せる。

その光景を見たマイも喜び、沖田も笑いながら肩を竦めた。

勿論、近藤も嬉しそうに、ニカッと笑たのである。

「(よく帰ってきたな、トシ)」









真選組動乱編・完


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■作者からのメッセージ
 因みにサブタイトルの“B”は、『繋ぐ』や『絆』を意味する『Bond』からです。
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