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学園都市Golden 第8話:悪魔の右腕
作者:亀鳥虎龍   2019/01/10(木) 15:55公開   ID:SITQgi7z/cc
 前回のあらすじ。

フォルトゥナ都市の式典、『魔剣祭』の護衛を行う事になった当麻達。

しかし公衆の面前で、教皇のサンクトゥスが殺害されてしまう。

侵入者の男は、圧倒的な強さで騎士達を圧倒。

更には、聖人の神裂ですらも追いこんでしまう。

そんな彼等の窮地を救ったのは、教団騎士のネロ。

「応援を呼ぶ! それまで死ぬなよ!」

「…期待せずに待つさ」

そして彼は、男に立ち向かうのだった。






悪魔の右腕デビルブリンガー






 愛銃の『ブルーローズ』の引鉄を引き、弾丸を放つネロ。

男は赤いコートをなびかせながら跳び上がるが、すかさずネロも跳び上がる。

両足で男の身体を挟み込み、逃がさないように拘束。

そのまま弾丸を放つネロであったが、男も二丁の拳銃で対抗する。

至近距離からの弾丸を、ネロは顔を逸らしながら避けていく。

しかし拘束を解かれ、男はスパーダ像の頭頂部に着地。

石像の額に刺さっていた剣を抜くと、そのままネロへと跳び上がった。

男の剣撃が放たれ、ネロはブルーローズの銃身でガードする。

しかしその衝撃で、スパーダ像の胴と剣の間へと落ちていく。

柄部分に着地した男であったが、ネロは予想外の行動にでる。

「うらぁぁぁぁぁ!」

なんと彼は、スパーダ像の剣を両足で押し倒したのだ。

徐々に傾いていく剣を足場に、ネロは男へと走り出す。

再び蹴りを放つが、男も蹴りで相殺させた。

剣が地面へと倒れるとともに、ネロと男も地面に着地する。

「お前がどこの誰かは知らねぇが……その余裕面、ムカつくぜ」






 神裂火織は、驚愕を隠せなかった。

先程まで自分や教団騎士を圧倒していた男に、一人の青年が立ち向かっていたのだ。

魔剣祭の途中で出席し、ヘッドホンで音楽を聞いていた。

彼の事をクレドに聞くと、青年はネロという名前だと知る。

教団騎士であるが、規律に従わず、単独行動を好む性格の持ち主。

また、騎士にとって卑しい武器である『銃』を愛用している。

風貌も何処か、騎士とは言い難いものだ。

ネロが右腕を包帯で吊るしている事を尋ねると、一か月前に負ったものだとクレドが答えた。

話しでは“ミティスの森”と呼ばれる森林地帯で、悪魔と戦った時に負わされたそうだ。

そんな彼が、赤い男に一人で立ち向かっている。

「(マズイ…。 彼は右腕の怪我というハンデがある! そんな状態で、戦わせるワケには!)」

加勢に行きたかったが、ダメージが未だに回復しきっていない。

するとその時、エレノアとベルベットが駆け寄る。

「マスター!」

「神裂、無事!?」

「平気――とは、言えませんね」

ロクロウとアイゼンも駆け寄り、彼女に肩を貸す。

「すまん。 加勢に行きたかったが、住人の人ごみで中々…」

「構いません」

「どうやら、ヤバイ状況になったようだな」

そして最後に当麻とインデックス、マギルゥが駆け寄って来たのだ。

「神裂! 大丈夫か!?」

「大丈夫とは、言えません」

「すまん。 インデックスだけでも逃がしたかったんだが…。 本人が一緒に行くって…」

「謝らないでください。 彼女も自分の意思で決めた事です」

「しかし、マズイ状況じゃのう」

「あの赤い人、見るからに強いんだよ」

当麻達は男とネロに視線を向け、ゴクリと唾を飲み込む。

そんな中で、ネロはブルーローズを懐に仕舞う。

「……銃だけじゃ、ダメって事か…」

背後に刺さっていた剣を蹴り上げると、左手でキャッチする。

そのまま地面に突き刺すと、柄を思いっきり捻った。

「それじゃ、そのデカイ剣で勝負といこうぜオッサン!」

彼が手にした剣は、教団騎士で支給されている『カリバーン』という剣だ。

魔剣教団の技術局が開発した、背の部分に推進器のついた剣。

柄の部分がアクセル状になっていて、捻ると噴射口から推進剤を放出し、剣の速度を上げる仕組みとなっている。

ネロはカリバーンを振るい、男は剣でそれを防ぐ。

そのまま二人は、激しい刃のぶつかり合いを始めた。






 ネロと男の刃が、火花を散らし合っていく。

勝負は互角。

これには当麻達も、驚くしかない。

特にネロは、右腕の負傷というハンデを抱えている。

そんな状態で、敵と渡り合っているのだ。

しかし力の差は、男の方が圧倒的に上。

「ぐっ!」

男の剣撃が、ネロのカリバーンを弾き飛ばしたのだ。

更に追い撃ちに、男は突進突きを放つ。

「まずい!」

コレを見た誰もが、マズイという顔になってしまう。

しかしネロは、それを右腕で防いだのだ。

突きの衝撃で、右腕の包帯が吹き飛んでしまう。

「仕留めた、と思ったが……スゲェ腕だな。 チタンでも仕込んでんのか?」

男が始めて口を開いた事に、ネロは若干驚いた。

「ちっ、喋れるのかよ」

「見ての通りだ。 喋れないなんて自己紹介、したか?」

「…てっきり無口かと――思ったぜ!」

右腕を振るうと、男は後ろへと退るが、

「うおぉぉぉぉぉ!」

ネロは右腕を使い、スパーダ像の剣を持ち上げたのだ。

豪快に投げ飛ばすが、男は軽く体を逸らして避ける。

この光景に、当麻達は驚きを隠せなかった。

神裂ですら再起不能した、あの男の一撃を素手で防いだ事には驚いた。

腕一本だけで、巨大な石像の剣を投げた事事にも驚いた。

だが彼等が一番驚いたのは、ネロの右腕を見た事だった。

左腕とは対照的な形状は、異形と呼んでもおかしくなかったからだ。

おそらく包帯は怪我ではなく、あの腕を隠すためであったのだろう。

異形の右腕『デビルブリンガー』を構え、ネロは男を強く睨む。

「これ以上は、時間が無いんでね。 人が来る前に、片付けてやるよ」







 銃と剣の次に、徒手空拳で挑んだネロ。

右腕の拳を振るい、男は剣で防御する。

しかし衝撃で、そのまま吹き飛ばされてしまった。

この光景を見て、ベルベットは呟いてしまう。

「アイツも……業魔? いや、違う……」

嘗ての彼女も、左腕が異形と化した事はあった。

しかし、一つだけ分かった事がある。

ネロは人間ではないが、業魔とは別の存在だという事だ。

そんな中、ネロは吹き飛んだ男の方へと右腕を突き出す。

瞬間、彼の右腕から、青白い別の腕が伸びて来たのだ。

その腕は男の足を掴むと、ネロの動きに合わせるように引き寄せる。

右腕を一度放すと、彼は男の顔面に渾身の一撃を叩きつけたのだ。

床が大きく陥没し、男の頭部はめり込んでしまう。

しかしネロは、馬乗りになりながら右腕の拳で殴り続けた。

何度も何度も何度も何度も何度も……。

そして男の顔面を掴み、そのままスパーダ像へと投げ飛ばす。

続けざまに剣を投げ飛ばすと、男を磔にするように突き刺さったのだった。






「ハァ…ハァ……」

磔になったように、剣が胸に刺さった男。

当麻はこの光景をインデックスに見せまいと、顔を覆うように彼女を抱きしめる。

一方で神裂は、驚きを隠せなかった。

自分を追い詰めたあの男を、ネロという青年が一人で倒したのだ。

しかし、同時に罪悪感もある。

一人の青年に、人殺しをさせてしまった――。

そんな気持ちが芽生え、ネロには申し訳ない事をしたと感じてしまう。

我に返ったネロも、自身の行為に眩暈めまいを感じた。

男の死体に背を向け、右腕を隠すように袖を下ろす。

彼は当麻達の方へと近付くと、ゆっくりと口を開く。

「なあ、頼みがあるんだが……」

何を言おうとしたのかを察し、神裂は安心させるように笑う。

「安心して下さい。 右腕の事は、誰にも話しません。 勿論、クレドにも…」

「………恩に着る」

俯きながらも、感謝を述べたネロ。

しかし、まさにその時だった。

「……やるな」

「っ!?」

突然の声に、ネロは背後を振り返る。

「お前の力を、どうやら舐めていたらしい……」

声の主は、あの赤い男だった。






 心臓に剣が刺さっているにも関わらず、男は仰け反るように磔の状態から脱する。

「心臓を刺されてるのに……死んでない!?」

「あ、ありえねぇだろ!?」

「どうなっとんじゃ!?」

当麻達も、これには驚きを隠せない。

普通の人間は、心臓を刺されたら死んでしまう。

本来なら、生きているワケがないのだ。

だが、男は生きていた。

この光景に、ネロは思わず呟く。

「アンタ、バケモノかよ?」

「似たようなもんだろ? 俺も…お前も……」

胸に刺さった剣を自分で抜きながら、男は騎士達の死体を見渡す。

「それと、コイツ等もな…」

「え?」

ネロ達も騎士達の死体を見渡すが、驚きを隠せなかった。

兜から見えた顔は、人間のようなものではなかったのだ。

それはまさに、悪魔の様である。

「まあ、お前はそいつ等とは違うようだがな」

すると男は、いつの間にか天井の穴から姿を見せていた。

「おい、どういう意味だ!」

「その内分かるんじゃねぇか? こっちも仕事があるんでね…お前の相手はあとでな」

「逃がすかよ!」

銃を撃ったネロであったが、男は既に視界に消えていた。

弾は天井に当たり、着弾の白煙が虚しく舞う。

白煙が晴れたと同時に再度、男が穴から顔を見せ、

「あばよ、坊や」

そう言い残し、今度こそ消え去ったのだった。

ネロ達は死体に再度目を向けようとしたが、教団騎士が駆けつける。

騎士達が死体に布を被せて運ぶ様子を目にしたので、あの死体の顔は見間違いだと判断した。

もしあの死体が開くまであったら、誰もが違和感に気付くからだ。

最後尾に来たクレドに歩み寄り、ネロは怪訝な顔で呟く。

「すまない、逃げられた」






 騎士達が凄惨な現場の処理をしている中、ネロはクレドと言葉を交わす。

「奴はフォリトゥナ城へ向かったらしい。 すぐに追うんだ」

「だったら、アンタの『デュランダル』を貸してくれ。 言ってとくが冗談じゃない。 一度戦ったから分かる。 アイツはカリバーンで対抗できる相手じゃない」

それを聞いた神裂達も、「確かに…」という感じで頷く。

特に神裂は、一度戦っているから分かっている。

仮に彼女が魔法名を解放させたとしても、あの男に勝てるとは思えない。

それと同じくらい、彼女はネロと同じ気持ちだった。

「……その必要はない」

「?」

するとキリエが、一つのケースを引きずって来たのだ。

「持って来てくれたのか!?」

「兄さんに頼まれて……コレが必要だって」

「助かるよ」

ケースを受け取ったネロは、その中身を組み上げていく。

そして彼は、その中身を取りだした。

「やっぱ、コレがあるとないとじゃ、大違いだからな」

それは一本の大型剣で、ネロはそれを片腕で担いだ。

「で? 奴はフォルトゥナ城だって言ったっけ?」

「ここの抜け出した後、奴がそちらへ向かうところを見た者がいる。 必ず捕えろ。 私は本部へ戻る」

「了解」

クレドが出入り口の方へと向かう。

「大丈夫? 怪我も治ってないんでしょ?」

心配するキリエであったが、ネロは安心させるように答える。

「仕事なんだ。 それにコイツさえあれば、片腕でも十分さ」

「ネロ……」

首に掛けたネックレスを握り締め、ネロとキリエは見つめ合う。

「……外まで送るよ」

二人はクレドを追うように、外へと向かうのだった。






 ネロとキリエの様子を眺めながら、マギルゥ達は呟いた。

「あやつ等、若干イチャついとらんか?」

「微笑ましいじゃないですか?」

「マジかアイツ…恋人おんながいたのか!?」

「まじか…」

自身のサーヴァント4人に、神裂は呆れながら口を開く。

「ほら、早く行きましょう」

「そうね」

「ああ」

「うん」

そして当麻達も、すぐに外へと向かった。







 人気のないフォルトゥナ都市の街中。

「ここがフォルトゥナか…」

黒い長髪をなびかせ、一人の青年が呟く。

「――ったく、無茶ぶりな依頼を寄越しやがって」

頭を掻きながら、青年は辺りを見渡す。

片手や片足に刃を付けた異形が、複数現れる。

「はぁ…仕方ねぇ」

青年は風呂敷を取り、鞘から刀を引き抜く。

「そんじゃ、行くとしますか!」

そして彼は、異形達に立ち向かうのだった。


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