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学園都市Golden 第14話:悪魔も泣きだす男
作者:亀鳥虎龍   2019/02/13(水) 21:39公開   ID:SITQgi7z/cc
 数年前、サンクトゥスが教皇になったばかりの頃の話だ。

それは、自身の寝室での事である。

一人の男が、部屋の中に現れたのだ。

銀色の髪に、衣の上から羽織る青いコート。

そして腰には、一本の日本刀を差していた。

警戒したサンクトゥスだが、男は殺気を放ちながら声をかける。

「安心しろ。 何もしなければ、命は取らん」

「何が目的だ」

「スパーダがこの街の領主だったという逸話を聞いてな、その足跡を辿って来た」

人間では出せない殺気に、彼は男に問いかけた。

「貴様は…悪魔か…?」

「人間でないのであれば、何だと言うのだ?」

「まさか、神だと言うのか?」

冷や汗を流すサンクトゥスであるが、男は窓際まで歩くと、

「スパーダを神として崇めるか……。 その殊勝な心掛けは、嫌いではない。 だが覚えておくといい。 俺はいずれ、その神をも超える。 その時、貴様等はどちらを崇めるか、せいぜい考えておくといい。 嘗ての神か、それを超えた神の子か……。 いずれ、究極の選択を迫る事になるだろう」

そのまま姿を消したのだった。







―悪魔も泣きだす男―







 ダンテと別れ、降臨の間を目指すネロ達。

悪魔の因子を移植し、それを己のものにする為の儀式『帰天』。

もしもクレドやアグナスのように、帰天で悪魔になった騎士がいたとしたら…。

ネロは自分の知らないところで、教団が良からぬ事を行っているを知った。

ダンテが教皇を暗殺したのも、彼が独自にその情報を手に入れたから。

だが、今のネロにはどうでもいい事だ。

彼が足を進めるのはただ一つ。

“教団がキリエを巻き込んだ”……。

それだけ分かれば十分だった。






 教団本部の最下層にある部屋、通称『降臨の間』。

ようやく辿りつく事が出来たネロ達であったが、同時にあるものを見てしまう。

「こ、コイツは!?」

そこには巨大な人型の石像が立てられており、これには彼等も驚愕する。

更に頭頂部の上には、サンクトゥスが立っていた。

「ようやく辿りついたな…」

「キリエは何処だ!」

ネロが叫ぶと、石像の額にある宝石のような突起から、キリエの上半身だけが出てきた。

「キリエ!」

「後は、お前と閻魔刀を回収すれば終わる。 そしてこの究極の人造悪魔は、『神』として君臨するのだ」

石像からゆっくりと降りて来たサンクトゥスは、体に魔力のバリアを纏う。

「やれるもんなら、やってみろ!」

ネロも閻魔刀を右手で握り、当麻達も構える。

遂に、サンクトゥスとの戦いが始まった。






 宙に浮かびながら、サンクトゥスは火炎弾を放つ。

しかし当麻は右手を突き出し、それを打ち消す。

「ほう、面白い能力だな」

「そいつはどうも」

「では、コレはどうかな?」

サンクトゥスが手を振るうと、凄まじい衝撃波が飛んで来た。

「うおっ!」

「くっ!」

「ヤロッ!」

当麻とベルベット、ユーリは紙一重で回避する。

だがネロは、一気に跳び上がり、

「うおぉぉぉぉ!」

閻魔刀でバリアを破壊した。

「ぬっ!」

「そこだぁぁぁぁ!」

更に悪魔の右腕デビルブリンガーで、容赦なく殴り飛ばす。

「ぐっ! おのれ……」

「どうした、爺さん? 偉そうに言って、もうギブアップか?」

「ふっ、言ってくれる。 ならば、コレはどうかな?」

突如、空高く上昇したサンクトゥス。

すると同時に、巨像が腕を大きく上げる。

「まさか…動くのか!?」

誰もが驚くが、それは既に遅かった。

巨像は豪快に、腕を振り下ろしたのだ。

轟音と共に、その一撃が襲いかかった。

「がっ!」

壁まで吹き飛ばされた当麻は、同時に頭を強く打ってしまう。

「み…みん…な……」

そして彼の意識は、その場で途切れたのだった。






「ん……」

当麻が目を覚ますと、彼は辺りを見渡す。

あの巨像の一撃の所為か、周りは瓦礫だらけ。

しかも視界は、砂煙で遮られている。

「一体…どうなって――いっ!」

体を起こそうとしたが、右腕に凄まじい激痛を感じた。

左腕で触ってみると、右腕が脱臼していた事が分かった。

「(これじゃ、幻想殺しイマジンブレイカーは使えないな…)」

「と、とうま……」

「先輩!?」

すると、弱々しい声を発するベルベットが、這いずるようにやって来る。

「先輩、大丈夫か!?」

「左足が折れたけどね…」

負傷した足の痛みに、彼女は苦痛の表情を見せてしまう。

ユーリの無事を確認するが、彼の姿が見当たらない。

すると、砂煙が晴れていく。

同時に当麻とベルベットは、驚愕の光景を目にする。

「クレドォォォォ!」

それはクレドがサンクトゥスに胸を貫かれ、巨像の手に掴まれたネロが叫ぶ光景だった。






 ネロから奪った閻魔刀で、クレドの身体を刺したサンクトゥス。

「まさか、貴様が裏切るとはな…。 何故だ?」

「アナタの理想の為なら、何だってやって来た。 だがアナタはキリエを……何も知らない妹ですら巻きこんだ。 それだけは、相手がアナタでも許せなかった!」

「家族への愛か? くだらん!」

閻魔刀の刃を引き抜くと共に、巨像から突き落とされたクレド。

「今の我等に必要なのは、絶対的な力だけだ」

落下していくクレド。

その光景を、当麻やベルベット、そしてネロは見ているしか出来ない。

しかし、その時だった。

地面に激突する直前、何者かが現れた。

そしてクレドの身体を抱え、そのまま地面に借地する。

彼を助けたのは、赤き男・ダンテだった。






「ダンテ!?」

驚く当麻達だったが、ダンテは全く気にしていない。

クレドを下ろすと、彼はサンクトゥスへと視線を向ける。

すると今度は、金髪で黒いビスチェとズボン姿の女性が現れる。

彼女の姿を目にしたサンクトゥスは、予想していたように呟く。

「ほう、ようやく変装を解いたか……グロリア」

「あら、バレてたの? もう少し地味な方が良かったかしら?」

それを聞いた当麻達は、思わず驚愕する。

グロリア……フォルトゥナ城で遭遇した女性だ。

状況を見る限り、彼女はダンテの仲間で、教団に潜入するために変装をしていたのだろう。

そんな彼等に、サンクトゥスは勝ち誇るように叫ぶ。

「だが、もう遅い。 まさかスパーダの血統がこの地で生まれていた事は、流石の貴様等も予想していなかっただろう? もう誰も、神を止める事は出来ない」

「どうかな? その坊やは、まだ諦めてないようだぜ?」

ダンテの言うとおりだった。

ネロは悪魔の右腕デビルブリンガーを伸ばし、サンクトゥスに攻撃を仕掛ける。

「砕け散れ!」

押し込むように叩き付けるが、サンクトゥスの姿は見当たらなかった。

「がっ!」

既に神の手の上に移動し、ネロの右腕に閻魔刀を突き刺していたのだ。

「無駄だ。 もはや脱出する事は出来ん。 貴様は神と一体となるのだ」

それだけ言うと、サンクトゥスは神の中へ入り、キリエも取り込まれてしまう。

徐々に身体が吸収されていくネロに、ダンテが楽しそうに叫ぶ。

「坊や、もうギブアップか?」

「生憎、ネタ切れでね。 暫く、休ませて貰うよ」

「そいつは構わねぇが、閻魔刀は返してくれるんだろうな?」

「へっ……取って来なよ」

右手の中指を立てながら、遂にネロは完全に吸収されてしまった。

「はっ、悪ガキめ」






 ネロが吸収される様子を目にし、当麻は悔しい気持ちでいっぱいだった。

仲間が捕まり、敵の思惑に利用される。

それだけ考えただけで、助けられなかった自分を許せなかった。

「当麻! ベルベット!」

「っ!?」

するとジョルノとライフィセット、白野と雪泉、そして神裂と幽助が駆けつける。

「お前等…どうやってここが!?」

「その話は後です。 これは一体?」

神を見上げるジョルノ達に、神裂はダンテに視線を向けた。

「教えてください。 何がどうなってるんですか!? それと、あの巨大な石像は?」

その問いかけに、ダンテは肩を竦めながら答える。

「教団の教皇様は、人間を止めて悪魔になってたんだよ。 そしてアレは、その教皇様のお気に入りだ」

「っ!?」

サンクトゥスが生存していた事に驚く神裂だったが、彼が人間ではない事にも驚いた。

「ネロは……アナタの追跡を命じられた騎士は? 彼は今どこに?」

「アレに吸収された」

「そんな!?」

「おい…なんかおかしいぞ?」

幽助がそう言うと、全員が視線を向ける。

神の背中から、羽の様な器官が出現したのだ。

そしてそのまま、空へと飛び上がった。






「おいトリッシュ、見ろよ。 羽が生えたぜ! 羽が!」

「はぁ…どう見ても悪趣味ね」

思わず噴き出すダンテとは違い、グロリア――もといトリッシュはうんざりしてしまう。

瀕死のクレドに歩み寄ると、ダンテは親指で飛び去る神を差す。

「なあ、アレは何処へ向かってるんだ?」

彼を気遣う素振りを見せないダンテだが、長く持たないと察したからだ。

クレドは胸の傷を抑えながら、瓦礫を支えにしながら立ちあがる。

「教団の目的は……理想郷の建設だ……選ばれし者だけが住まえる、神の楽園……。 今の腐敗した世界を…根本から帰る為には…そうせなければならないと…。 そして、新たな世界の創造の為には、まず大いなる混沌をもって、この世界は海せなければならない……」

それを聞いたトリッシュは、その意味を理解出来た。

「閻魔刀は、その為の鍵ってことね」

「………」

誰もが沈黙する中、当麻が『ついていけない』という顔になる。

「あの〜、どういう意味なんだ?」

「要するに教団は、自分達が呼び出した悪魔たちに人々を襲わせ、その悪魔たちを倒す自分達は救世主だと知らしめるつもりなんです」

「っ!?」

ジョルノの解釈を聞き、背筋が凍ってしまう。

閻魔刀は、スパーダが魔界を封じるために使った魔剣。

サンクトゥスが執拗に求めていたのは、この地に存在する地獄門を解放する為だ。

クレドの言う混沌とはそれだ。

悪魔が蔓延る世界。

そしてそれを救う救世主を、教団は演じようとしているのだ。

「何よそれ…そんな事の為に……アンタ達は何も知らない人達を傷付けるつもりなの……」

健在の右足で立ちあがり、ベルベットはクレドを強く睨む。

「ふざけないで! アンタ達のしてる事は、自分達の身勝手な傲慢そのものじゃない! 神様の存在を信じ、毎日それを祈る人々の心を弄んでるだけじゃない!」

涙を流しながら、ベルベットは怒り任せに叫ぶ。

「どんなに悲しい事や辛い事があっても、どんなに険しい道のりでも、前を見て歩く『意志』……。 それを持って人は、始めて強くなれる…。 アンタ達のしてる事は、その人達の『意志』を……自分達の身勝手で壊そうとしてる。 そんなの…そんなの絶対に許さない!」

「……私の両親は、悪魔に殺された。 それも、ただの悪魔じゃない。 帰天に失敗し、悪魔の力を暴走させた騎士達にだ」

「……え?」

「私も真実を聞かされ、そして計画を知って、最初は戸惑った。 しかし教皇様は仰った」

――クレドよ、コレからも尊い犠牲が生まれるかもしれん。 しかし我等の理想郷の為には、その犠牲が必要なのだ。 我々は彼等の為に、その罪を背負わなければならん。

「その言葉に、私はあのお方に仕える事を選んだ」

クレドが教団に肩入れした理由を聞き、ベルベットはある人物の顔が脳裏に浮かぶ。

嘗て『災禍の顕主』と呼ばれた頃、自身の因縁の相手だった義兄の事だ。

彼もまた、家族の死をキッカケに、世界を救おうとしたのだ。

その為なら、家族であるベルベットを犠牲に出来た。

この街で初めてクレドを見た時、ベルベットは何処かで義兄の面影を重ねていたかもしれない。

ただし、彼とは唯一の違いがあった。

それはクレドが、家族であるキリエとネロを切り捨てられなかった事だ。

実妹のキリエだけでなく、弟分のネロをも救おうとした。

救おうとしたからこそ、クレドはサンクトゥスに反逆し、そして返り討ちに遭ってしまう。

だがベルベットは、最後まで家族を捨てなかったクレドを立派だと感じた。

そんな中で、クレドはダンテに視線を向け、何故か微笑んだ。

「神の力は強大だ。 もし、神に対抗できるものがいるなら……それは貴方だろうな。 魔剣士スパーダの息子、ダンテ」

「期待されてるみたいね」

「……らしいな」

ダンテは基本、人に何かを命じられる事を好まない。

そんな彼でも、クレドのその言葉を否定する気にはなれなかった。

誇り高いであろうこの男が、死に瀕している際に、必死にダンテを煽ろうとしている。

ダンテには、その姿が尊く見えた。

その行動は、あまりにも人間らし過ぎた。

悪魔の力を手にしながらも、人の心は失っていない。

その事実だけでも、ダンテはクレドの言葉を素直に受け止める事が出来た。

もはや立っているのも危ういハズなのに、何度も咳込みながら血を吐くクレド。

それでもダンテ達は、彼に手を貸さなかった。

クレド自身も、それを請う素振りを見せない。

「こんな事を言えた義理でないのは、理解している……。 頼む…キリエとネロを、救ってやって欲しい。 もはや私には、それは――」

言い切らぬ内に、クレドは不意にダンテの方へと倒れていく。

既に事切れたのだと知ったダンテは、彼の身体を支える。

そしてその亡骸は、仄かな白い光に包まれ、儚い泡のように消えた。






 クレドの最期を見届け、ダンテは不敵な笑みを見せる。

「……遺言じゃ、尚更断れないな」

「どうするの?」

「少し、やる気出てきた」

小さく微笑むダンテに、トリッシュも小さく微笑む。

そしてジョルノ達も、決意を新たにする。

「なら、やるべき事は一つですね」

「おっしゃ! 久々に燃えて来たぜ」

「あの〜、俺は右腕が脱臼してるんですが……」

当麻は軽く挙手するが、ジョルノが彼の右腕を掴むと、

「ちょっと失礼」

「へっ?」

ゴキンと、強引に関節を戻した。

「〜〜〜〜〜!!!」

声にならない叫びと共に、当麻は痛みで転げてしまう。

「オメェ…たまにおっかねぇよな」

「そうですか?」

ジョルノの予想しない行動に、流石に幽助もドン引きしてしまう。

「アタシも一緒に行きたいけど…この足じゃ……」

片足で立っているのも精一杯のベルベットだが、ライフィセットが彼女の身体を持ち上げる。

「よっと」

「えっ、ちょっと!?」

それは俗にいう、お姫様だっこであった。

「その足じゃ無理だし、抱えるよ」

「だ…だからって、これは恥ずかしいわよ!」

「ダメかな?」

「……ダメじゃ…ないけど////」

屈託な笑みで首を傾げるライフィセットに、ベルベットは顔を赤くしながら彼の胸に顔を押し付けた。

「おーおー、お熱い事ですな…」

すると、ユーリがゆっくりと歩み寄る。

「ユーリ、大丈夫か!?」

「悪い、結構遠くまでふっ飛ばされた。 しかも、そのまま気ィ失ってた。 だから、俺も手ェ貸すぜ。 連中をぶっ飛ばさないとな」

「じゃあ、私は住民の避難をするわ」

それだけ言うと、トリッシュは歩きだそうとする。

しかし、ダンテがすぐに呼び止めた。

「おい、トリッシュ!」

「……何?」

「元はと言えば、お前が『アレ』を教団に渡したのが原因だろう!? なのに後始末は俺に任せる気か!?」

ジョルノや当麻達には、イマイチ良く分からない状況のようだ。

しかしダンテの台詞から、トリッシュの行動が今回の一件に関わっている事が分かった。

「じゃあ、交代する? 私は別に良いけど」

だがトリッシュがそう言い、ダンテは思考を一旦止めると、

「いや、このままでいい」

彼女に住民の避難を任せたのである。

「考えなしに否定する癖、直した方がいいわよ。 貴方も、そのお嬢ちゃんと一緒に来て。 ここを出るまでなら、ボディガードをしても良いわ」

「じゃあ、お願い」

「お、お願い////」

顔を赤くしながら俯くベルベットを抱え、ライフィセットはトリッシュと共に離脱した。

「……まずは、体を動かせって事か」

彼等とは別の方向に歩き、ジョルノ達はダンテと共に神を追う。

悪魔を泣きだす――。

その言葉が似合う、伝説のデビルハンターが始動した。






〜オマケ〜

 スナックすまいるに顔を出した銀時。

するとキャバ嬢の一人が、銀時にチョコを渡す。

「銀さん、受け取ってください。 私の気持ち!」

「え、マジで!?」

「あ、ずるーい!」

「銀さん、私のチョコを貰って!」

「私も!」

そう言って、キャバ嬢達が銀時へと迫る。

男なら喜ぶ光景だが、銀時は顔を青ざてしまう。

周りはキャバ嬢だらけで、見事なおしくらまんじゅう状態となった。

「く…苦しい…息が……」

息もできない状態となり、銀時の意識は途切れてしまう。






「はっ!?」

銀時が目を覚ますと、そこは自身の部屋。

服も普段の格好ではなく、寝間着姿であった。

この日は2月14日、つまりバレンタインデーである。

「と…と……とんでもねー悪夢を見たぁぁぁぁ!」

これは偶然にも彼が、2月14日バレンタインデーの前夜に見た悪夢であった。

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■作者からのメッセージ
神楽「最後は銀ちゃんの夢オチだったアルな」

新八「まあ、この長編が長すぎて、仕方ないけどね」
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