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混魂 第四話:好きな事に夢中になるとトラブルに遭うので気を付けよう
作者:亀鳥虎龍   2020/01/27(月) 23:09公開   ID:SITQgi7z/cc
「お〜い、どこ行った?」

真選組の屯所にて、土方は誰かを探していた。

「副長、どうかしました?」

隊士が声をかけると、彼はこう言ったのである。

「なあ、ベルベットを知らねぇか?」

「ベルベットねえさんなら、今日は仕事でいないですよ?」

「仕事?」

「今日はお通ちゃんのライブで、その護衛任務に行ってるみたいですよ? 局長から聞いてないですか?」

「あっ、そういえば……」

捜していた人物がいないと知り、土方は頭を掻いてしまう。

「いないなら、仕方ねぇか」

立ち去ろうとしたが、最後に隊士がこう告げたのである。

「そうそう、姐さんから伝言です」

「伝言?」

「「こないだの任務の始末書は副長の部屋のテーブルに置いてるので、確認をお願い」だそうです」

「……ハァ、分かった。 すぐに部屋に行ってみるわ」

伝言を受け取り、土方は自室へと向かうのだった。

「――ったく、相変わらず仕事が早い奴だぜ」






―好きな事に夢中になるとトラブルに遭うので気を付けよう―






 池田屋ホテルの一件から暫くして、

「くそっ! ふざけんなよ、アホ警察が! 一日も取り調べやがって!」

「まあ、良いじゃねぇか。 容疑も晴れたんだしよ」

「そうですよ。 気分転換に、何か食べに行きましょうよ」

長い取り調べをされ、ご機嫌斜めの銀時。

そんな彼を、ユーリとマイが窘めていた。

しかし、その時である。

突然塀の上から、男が落ちて来たのだ。

「いで!」

「だ、大丈夫ですか!?」

マイが駆け寄るが、警察が声をかけて来た。






「キミ達、ちょっと良いか?」

「ん?」

「実はここに留置してた罪人が逃げ出したんだ。 誰か、此処を出た人物を観てないかい?」

「え…それって――」

それを聞いとユーリが、先程の男に視線を向けた時だ。

「そこをどけぇ!」

男がマイを人質にして、そのまま逃げ出そうとしていた。

「車をよこせぇ! この女の命が消えて良いのか!」

「いや、このタイミングで!?」

流石のユーリも驚くが、男は銀時に視線を向ける。

「おい、お前! 運転は出来るか?」

「え、まあ…免許あるんで」

「この嬢ちゃんを助けたかったら、俺の指示に従え!」

「「………」」

この状況に、ユーリと銀時は顔を合わせた。

とりあえず二人は、その指示に従う事にしたのである。





「何でこうなるの?」

「知るか」

「すみません。 私が不用意に近付いたせで……」

警察が手配してくれた車に乗り、銀時達は男を目的地まで連れていく。

「ったく、今時脱獄なんて止めろよな」

「そんなことしてまで、何しに行くんだよ?」

「俺ァな、大事な場所へ行かなきゃならなねぇんだよ」

「大事な場所?」

「ああ。 命より大事なよ……」

男は意味深な言葉を発し、彼等を乗せた車はある場所へと辿りついた。

車から出ると、男はその中へと入る。

銀時達も、後を追うように入ったのだった。





「みんなァァァァ! お通のライブに来てくれて、ありがとうきびウンコ!」

「「「「とうきびウンコぉぉぉぉ!」」」」

「それじゃあ、今日は楽しんで行ってネクロマンサー!」

「「「「ネクロマンサー!」」」」

「まずは一曲目! 『お前の母ちゃん何人だ』!!」

ステージの上で歌う少女に、観客達は楽しそうに叫ぶ。

勿論、男もその一人だった。

この光景に対し、銀時は男に問う。

「なあ、オッサン。 これって何?」

「今この街で人気のアイドル、『寺門通』ちゃんのライブだ」

男は真剣な顔で答えるが、銀時とユーリの中で何かが切れた。

「テメェは……」

「人生を……」

「「何だと思ってんだァァァァァァ!!」」

「グパァァァァァ!」

怒りに身を任せ、二人は男の脳天に踵落としを叩きこむ。

流石のマイも、これには苦笑せざる負えない。

だが彼等の立場からすれば、アイドルのライブ見たさに脱獄する男に付き合わされる羽目になったのだ。

銀時とユーリがマジギレになるのは、ある意味で当然の事である。

「ったく、ふざけやがって」

「帰るぞ、マイ」

「え? あの人は良いんですか?」

男に視線を向けたマイであったが、銀時は当然の如くこう言った。

「良いんだよ。 このライブが終われば、自分からムショに帰ェるだろ?」

「いや、野生動物の帰巣本能じゃないんですから……」

ライブ会場を後にしようとした三人であったが、まさにその時である。

「L・O・V・E・お・つ・う! ほら、お前等も!」

法被姿で眼鏡をかけた少年が、同じ法被を着た男達に叫んでいたのだった。





「L・O・V・E・お・つ・う! ほら、お前等も!」

「L・O・V・E・お・つ・う……」

「何だその弱気な声は! そんな声がお通ちゃんに届くかぁ!」

眼鏡の少年を見た銀時は、思わず「アレ?」という顔になる。

「おいそこ! 何ボケっとしてんだ! 声はれェェ!」

「すいません、隊長」

「お前、何時から隊長になったんだ?」

「俺は生まれた時から、お通ちゃんの親衛隊隊長だ――って、ギャァァァァァ!」

銀時に声をかけられ、少年は彼の顔を見て驚いてしまう。

「ぎ、銀さんにユーリさん!? それにマイさんまで!? どうしてここに!?」

「「「いや、こっちの台詞なんだけど」」」

彼は魂郷学園に通う高校生で、名前は志村新八。

父親が保証人になった借金をキッカケに、万事屋に助けられた経験を持つ。

因みに彼には、キャバクラで働いている姉がいる。

更に補足を付け加えると、彼は絵に描いたような『地味』な見た目だが、同時に常識のある少年でもあるのだ。

「オメェ、まさかこんな趣味があったとはな……。 オメェの姉ちゃんになんて声かければ良いんだよ」

「俺だって自分の趣味は自分で決めてんだよ! 文句あっか!」

「新八君って、こんな感じでしたっけ?」

「いや、もう少し常識人のはずだったぞ? それとも、趣味に没頭すると豹変するタイプか?」

初めて会った頃の彼と比べても、今の新八は明らかに別人であった。





 普段とは違う新八を見て、ユーリとマイは若干引き気味になる。

「ちょっと、そちらの方。 あまり騒ぎを起こさないで貰いませんか?」

そう言うと、40代くらいの女性が現れた。

雰囲気からして、恐らく彼女がマネージャーだというのが分かる。

「すみません、マネージャーさん。 コイツ等は僕がシメときますんで」

「やってみろや」

「あら、ファンの方でしたか。 ん?」

するとマネージャーは、脱獄男の姿を見て驚いた。

「アナタ!?」

「ん?」

男も彼女の姿に、すぐに気付いたようだ。





 ライブ会場のロビーにて、マネージャーと脱獄男はベンチに座っていた。

「まさか、お前がお通のマネージャーになってたとはな。 正直、夫として驚いたぜ」

「あの子の夢を叶えるために、親子二人三脚で頑張ったのよ。 それにしても、アナタ確か服役中のハズじゃ……まさか!?」

「………」

「呆れた。 もう二度と、私達の前に顔を出さないで頂戴。 アナタの所為で、あの子がどんな思いをしたのか忘れたの? 父親が人殺しだなんて……」

「………」

「もう一度言うわ。 二度と私達に迷惑をかけるような事はしないで! 今でもあの子の事を思ってるならね」

マネージャーがそう言うと、男の元を立ち去ったのである。

独りになってしまった男に対し、マイは缶コーヒーを差し出す。

「あの、よかったらどうぞ」

彼女の存在に気付いた男は、受け取った缶コーヒーの栓を開ける。

その様子をユーリは、ロビーの柱に背中を預けながら傍観していた。

因みに銀時は、トイレに行っていたので姿は無い。

「――ったく、さっきの話を聞いてたのかよ。 それなのに、コーヒーなんざ。 随分ともの好きな嬢ちゃんだな」

「すみません。 どうしても気になってしまって」

男の隣に座り、マイは再び話しかけた。

「でも、奥さんの言いたい事も分かります。 いくら娘さんのライブの為とはいえ、脱獄するのはどうかと思いますよ?」

この問いに対し、男はコーヒーを飲んだ後に答える。

「……昔、お通がまだガキの頃、アイツと約束したんだ。 “アイドルになった祝いに、100本の薔薇を花束で贈ってやる”って」

「そうだったんですね」

「でも、人を殺めちまった挙句、女房と娘に迷惑をかけた以上、今の俺にはそんな資格はねぇよ。 女房の言うとおり、俺の顔を見せない方がアイツの幸せかもな」

男は残ったコーヒーを飲みほし、からになった缶をゴミ箱に入れ、

「巻き込んじまって悪かったな。 特にアンタには、怖い思いをさせちまったよ。 じゃあな」

そのまま立ち去ろうとしたのだ。

だが、まさにその時だった。

「キャァァァァァァ!」

「!!?」

ライブ会場から、女性の悲鳴が聞こえたのである。





 場所は替わり、ライブ会場はとんでもない状況になっていた。

「お通ちゃ〜ん! 僕の胃袋で一つになろうよ」

新八が隊長を務めるファンクラブ、その名は『寺門通親衛隊』。

その法被を着た巨漢の天人が突然、ライブステージで暴れていたのだ。

顔はつぶらな顔をしているのに、腹部には凶悪な牙を持った口が開いている。

「た、隊長! 大変です! 会員ナンバー『49番』が暴れ始めました!」

「え、アレってマスコットキャラじゃなかったの!?」

「あんなマスコットキャラがいるワケないでしょ!?」

実は49番は『食恋族』呼ばれる種族の天人で、好意を寄せた相手を捕食するのだ。

流石に隊長の新八も、会員の詳細までは把握でなかったようである。

「お通! 早く逃げなさい!!」

「だめ、怖くて足が…」

恐怖で逃げる事が出来ないお通。

「お通ちゃぁ〜〜〜ん!」

「きゃぁぁぁぁぁ!」

49番の魔の手が、お通へと迫りくる。

しかし、その時だ。

一人の男が、その手を振り払った。

「お通ゥゥゥゥ! 逃げろォォォォ!」

その正体は脱獄男で、白いビニール袋を目出し帽代わりに素顔を隠している。

「あ、アナタは!?」

「なぁに、ただのファンさ。 アンタのな」

父と名乗らず、通りすがりのファンを名乗る男。

だが、その時だ。

「邪魔するなぁぁぁぁぁ!」

激怒した49番が、襲いかかって来たのだ。

「っ!?」

拳が男に迫って来るが、まさにその時だった。

「間に合った!」

今度は別の人物が、その拳を蹴りで弾いたのである。






 49番の拳を蹴りで弾いたのは、なんと女性であった。

腰まで長い美しい黒髪に、琥珀色の瞳。

さらに真選組の隊長服姿で左腕に手袋、そしてブーツを履いていた。

「真選組副長代理、ベルベット・クラウよ! アンタを現行犯で逮捕するわ」

ベルベットは地を蹴り、49番へと駆けだす。

「行けぇぇぇぇぇ! 僕等もお通ちゃんを守れぇぇぇ!」

コレを見て新八も、親衛隊達と共に駆けだした。

「うおぉぉぉぉ!」

49番の剛腕が放たれるが、ベルベットは跳躍しながら避ける。

さらに彼の腕を踏み台代わりに飛び上がり、顔面へ向けて飛び蹴りを放った。

「うぐ!」

「っ! 見た目通りのタフね」

着地したベルベットであったが、49番は振るんだ程度であったが、

「おいおい。 随分と派手なショーじゃねぇか」

「ん?」

背後からの声に、彼女は振り向いてしまう。

「俺等も、参加させて貰うぜ」

そこには銀髪の男に長い黒髪の男、そして長い青髪の少女が立っていた。






 駆けつけた銀時達が前に出ると、彼等は武器を構えていた。

「手ェ貸してやるぜ」

「久々に、暴れるとしますか」

「ここから先は、私達が通しません」

三人が駆けだし、49番へ立ち向かったのだ。

「うおぉぉぉぉ!」

49番の拳が迫るが、マイが槍の『朱弾ガリアスフィラ=アウトシール』で受け流し、

「蒼破刃!」

次にユーリがニバンボシから青い衝撃波を放ち、顔面を狙い撃ち、

「そこだぁぁぁぁぁ!」

最後に銀時が、木刀による一撃を叩きこんだのだ。

巨体がぐらっと傾き、49番は倒れたのである。

「………」

この光景に無言の男であったが、マイが叫んだのだ。

「おじさん!」

「!?」

彼女が投げ渡した一輪の花を、反射的に受け取る。

「薔薇じゃないですけど、渡してあげて下さい」

三人がステージを後にすると、男は花をお通に渡す。

男はそのまま立ち去ろうとしたが、背後からお通が声をかけた。

「薔薇の花束、ちゃんと100本で持ってきてよ」

「!?」

「待ってるよ………お父ちゃん」

ステージを出た男に、銀時がこう言ったのである。

「よう。 次からは、ちゃんと刑期終えてから来なよ」

「バカ野郎……決まってんだろうが」

涙を流しながらも、男は娘の未来を祈るのだった。






 その後、男はパトカーで手厚く刑務所へと送られ、

「全く! あんな会員の存在も把握せずに、よくファンクラブの隊長がやってられたわね」

「……め、面目ないです」

「彼を退会させるか…ファンクラブを解散させるか…どれかを選びなさい。 それで今回の事は不問するわ。 良いわね?」

「は…はい……」

新八は親衛隊の代表として、ベルベットから厳重注意を受けたのである。

因みに49番は、今回の騒動を起こした現行犯で逮捕されたのであった。


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■作者からのメッセージ
 次回、真選組からあの人が登場!

銀時「ところで、真選組の女性服ってよ、男どもと同じなのか?」

作者「正確には隊長服+ミニスカート、そしてブーツ姿という感じです。勿論、長ズボンや半ズボンもありますよ」

銀時「で、ベルベットとジュディスは?」

作者「どっちも隊長服にスカート姿です」

銀時「えっ、マジで!? じゃあ、下着も見え――」

作者「因みにスカートの下は、スパッツや半ズボンの着用OKです」

銀時「ちっ、そう来たか!」

ユーリ「なにを悔しがってんだ?」
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