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混魂 第五話:ストーカーは犯罪なので止めましょう
作者:亀鳥虎龍   2020/01/30(木) 23:25公開   ID:SITQgi7z/cc
 魂郷町の繁華街にあるキャバクラ、その名は『スナックすまいる』。

店内では、一人のキャバ嬢が接客をしていた。

彼女の名は志村妙。

新八の姉で、現在はこの店で働いている。

「へぇ、政府関連の仕事をしてるんですか。 凄いですね」

「けどよぉ〜、俺はケツ毛ボーボーだから、女にはモテねぇんだよ」

「そんな事ないですよ。 きっと良い人が見つかりますよ」

「じゃあ聞くけど、もしお妙さんの彼氏がケツ毛ボーボーだったらどうするんだ?」

客の男に問われ、お妙はこう答える。

「ケツ毛ごと愛します」

「!?」

この台詞に、男はこう思った。

運命の人に会えたと――。





―ストーカーは犯罪なので止めましょう―





 魂郷町にある剣術道場、名前は恒道館道場。

この道場は『天堂無心流』と呼ばれる剣術を教えていた。

しかし廃刀令が発生した事で、門下生も離れていったのである。

そんな中、屋敷の茶の間にて、

「えぇぇぇぇぇ! 結婚を申し込まれたぁぁぁぁ!?」

「マジでか!? 凄いアルよ姉御!」

新八とチャイナ服の少女が、お妙の話しを聞いて驚いていた。

少女の名は神楽。

『夜兎族』と呼ばれる種族の天人で、魂郷学園の生徒。

一人暮らしのできる資金がなかったので、志村邸で居候になっている。

「でも、相手は店のお客として来た人なんでしょ? その後どうしたの?」 

そう言って神楽の隣から、首に赤いスカーフを巻いた少年が問う。

彼の名はカロル・カペル。

魂郷学園の中等部に所属する中学1年生で、神楽と同じ理由で志村邸で居候となっている。

「一度は断ったんだけど、あまりにもしつこいから、右ストレートをお見舞いしてやったわ」

カロルの問いに対し、お妙は笑顔で当然のように答えた。

「どんな人だったんだろう…。 僕も顔を見てみたいなぁ〜なんて」

そんな事を呟いた新八だが、まさにその時だった。

「お妙さぁぁぁぁん!」

お妙を呼ぶ声が聞こえ、新八達は外へと顔を向けたのだ。





 新八と神楽、カロルが縁側の方へと出ると、

「お妙さぁぁぁぁん! 俺と結婚してくれぇぇぇぇぇ!」

そこには電柱によじ登っている男が、大声で叫んでいたのだ。

見た目は若いが、何故かゴリラと見間違えてしまう。

着物に袴姿、腰には刀が差されていた。

すると今度は、警官が男に向かってぶ。

「おい、アンタ! そんな所で何してんだ! 泥棒か!?」

「安心してくれ、お巡りさん! 俺は泥棒でも、恋泥棒だ!」

「上手いこと言ったつもりか! 早く降りなさい!」

「お妙さぁぁぁん! 頼む! 顔を見せてくれェェェェ!」

「……新八、もしかしてあの人……」

「うん…恐らく姉上が言ってた……」

男の姿を見て、新八とカロルが彼の正体を察する。

「あれ、姉御?」

するとお妙が、手に灰皿を持つと、

「あっ、お妙さん! 良かった! やっと顔を見せてくれ――」

ドガッ!と、容赦なく男の顔面に投げ飛ばした。

見事にクリーンヒットし、男は電柱へと落ちたのだである。





 同時刻、真選組の屯所にて――、

「近藤さん、いるか〜?」

土方は屯所内を歩きながら、誰かを探していた。

「どうしたの、副長」

すると偶然、ベルベットに遭遇したのである。

「いや、近藤さんを探してんだ。 見てないか?」

「ゴメン、見てないわ」

「そうか。 ったく、どこ行ったんだよ……」

頭を掻きながら苛立つ土方であったが、ベルベットは深くため息を吐く。

「じゃあ、パトロールに行ってくるわ。 もし局長を見つけたら、屯所に戻るように伝えとくから」

「おう、頼むわ」

ベルベットが外へ出たのを見届け、土方は再び局長探しを再開したのだった。





 時刻は14時15分、喫茶店『CAFE AGITΩカフェ・アギト』。

この店は魂郷町にある喫茶店で、学生から高齢のお客が食事を楽しんでいる。

店内の隅の席にて、銀時はイチゴパフェを食べていた。

彼の眼前には、お妙や新八達が座っている。

「良かったじゃねぇか。 帯刀してたって事ァ、御上公認の役人ってことなんじゃねぇか?」

「でも最初は、知らないふり程度だったんでけど……。 行くトコ行くトコに姿を見かけるようなったのよ」

「銀さん、なんとかなりませんか?」

「んなこと言ってもな、そんな面倒なのはゴメンだぜ」

新八に尋ねられ、銀時はメンドくさいという顔になるが、

「引き受けたらいいじゃないですか、銀さん」

「ん?」

横からかけられた声に、彼は思わず反応する。

そこにはウェイター姿の青年が立っており、銀時の右に座るマイにコーヒーを差しだす。

彼の名は津上翔一。

この『CAFE AGITΩ』のオーナーで、銀時達とは親しい間柄である。

「ほら銀さん、ウチのパフェ代をツケてるでしょ? この仕事を引き受けてあげたら、俺が報酬代わりに今までのツケをチャラにしますよ?」

「ストーカァァァァァ! 出てきやがれぇぇぇ! 成敗してくれるゥゥゥ!」

「いや、切り替え早ぇよ!」

銀時の切り替えの速さに、彼の左に座っていたユーリがツッコミを入れてしまうが、

「やれるもんならやってみろォォォォォ!」

「ホントに出てきた!?」

ストーカー男が当然の如く現れ、今度はマイがツッコミを入れてしまった。





 自分から現れた男に、銀時はジト目で話しかけた。

「おいおい。 テメーから姿を見せるという事は、自分がストーカーだってことを自覚してるって事か?」

「人は皆、愛を求めるストーカーよ」

意味の分からない事を言った男だが、今度は彼が銀時に問いかける。

「ところで貴様、さっきからお妙さんと親しげに話していたな。 一体どういう関係だ?」

「え? 俺は……」

質問に答えようとした銀時だったが、遮るようにお妙が答えた。

「許嫁です」

「え?」

「私と彼は、結婚を前提にしてるんです」

「え、そうなの?」

「既にあんな事やこんな事もしてるんです。 なので、私の事は諦めて下さい」

銀時に恋人のふりをして貰うという作戦に出たお妙。

古典的な作戦であったが、男は簡単に引っ掛かった。

「何ィィィィ! あんな事やこんな事、そんな事もぉぉぉぉ!?」

「いや、“そんな事”は言ってません」

「だが、俺は認めん! 貴様の様な男が、お妙さんの許嫁など! だから今から俺と、お妙さんを賭けて決闘だぁ!」

しかし引き下がらなかった男は、銀時に決闘を申し込んだのである。





 時刻は、午後15時30分。

場所は河原へと移り、男は銀時を待っていた。

既に落ち着いた様子を見せている為、相当な実力者である事が窺える。

「ハァ…。 こうなるんだったら、あんな嘘つかなきゃよかったわ」

「どうするんですか、姉上。 見て下さい、あの落ち着きよう。 相当な修羅場を潜ってる証拠ですよ」

橋の上から見下ろしていたお妙は、先程の事を後悔してしまう。

「おい、眼鏡少年。 あの銀髪は何処行った!」

「なんか「用を足してく」ってトイレに行きましたよ?」

そんな中、マイがユーリが木刀を持ってる事に気付く。

「ユーリさん、その木刀は?」

「ああ、銀時に持ってきてくれって言われてよ」

「よう、待たせちまったな」

すると、ようやく銀時が現れたのだ。

「随分と長かったな。 まさか、大の方じゃないだろうな?」

「ヒーローがそんな事するかよ。 俺の場合は、糖の方だ」

「糖尿に侵されたヒーローなんて聞いた事ねぇよ!」






 銀時が姿を見せ、ようやく決闘が始まろうとしていた。

「そんじゃ、その刀を使いな。 俺はコイツを使うぜ」

木刀を構える銀時であったが、男は思わず目を見開く。

「おい待て! まさかお前、木刀そいつで戦うつもりか!?」

「おうよ。 それとこの決闘、俺は自分の命を賭けさせて貰うぜ?」

「なっ!? 死ぬつもりか!?」

「そんなんじゃねぇよ。 だが、ここで俺を倒せば、誰もお前がお妙を口説く事を止める奴がいなくなる。 だから俺は、自分の命を賭けようと思っただけだ」

本気で言ってると感じたお妙は、銀時に叫んだ。

「ダメよ銀さん!」

だが男はニカッと笑い、腰の刀を地面に置き、

「お前、イイ男じゃねぇか。 お妙さんが惚れるワケだ。 いや、女より男に惚れる男と見た。 おい、ロン毛。 その木刀を貸してくれ。 俺もそっちで戦う」

ユーリから木刀を借りようとした。

すると銀時は、男の方に自身の木刀を投げ捨てる。

「俺のを貸してやる。 長年使っている相棒だ」

「ふっ、そうかい」

「ユーリ! 木刀、こっちに投げてくれ」

「あ、ああ」

銀時はユーリが投げた木刀を受け取り、男も銀時が投げ捨てた木刀を拾う。

「それじゃ、いくぜ」

「ああ」

「いざ…」

「尋常に…」

「「勝負!」」

そして二人の決闘が、幕を開けたのだった。





 決闘が始まり、二人の男が地を駆ける。

「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」

男が木刀を振ろうとしたが、ここである事に気付いた。

「えっ!?」

それは木刀の柄から上、つまり刀身の部分が無くなっていたのだ。

「ちょっと待って!? これ、刀身が――」

思わず動きを止めてしまった男に対し、銀時は構う事なく木刀を振るい、

「ねぇぇぇぇぇぇぇ!」

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!」

「あべしっ!」

容赦なく男を吹き飛ばしたのである。

仰向けに倒れた男に対し、銀時は不敵な笑みを見せた。

「甘ェ、天津甘栗よりも甘ぇ。 敵から得物を借りるなんざ。 便所で削っといたんだ。 振りまわすだけで折れるくらいにな」

「お前…こんな汚ぇ手ェ使って…なんとも思わねぇのかよ……」

男の意見は最もであるが、銀時は笑いながら当然のように答える。

「何言ってんだ。 今時、決闘なんざ古いんだよ。 丸く収まるなら、コレくらいはしたって大丈夫だろ?」

「丸く…収まる……か?」

遂に男は気絶し、ドヤ顔でユーリ達の方を見る銀時。

「どうよ、俺の鮮やかな手口を――」

だが次の瞬間、新八と神楽のドロップキックが炸裂した。

「そんな事してまで勝ちたかったんですか! この卑怯者ぉぉぉぉ!」

「見損なったヨ! 侍の風上にも置けないネ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ! 新八! お前、姉ちゃんを守ってやったんだから、コレくらい見逃せよ!」

そんな彼等のやり取りを眺めながら、お妙は不敵に笑う。

「全く。 自分から汚れ役を買うなんて、不器用な人ね」

「全くだな」

「そうですね」

「うん、確かに」

これにはユーリとマイ、そしてカロルも同意せざる負えない。

「私、帰る。 二度と近付かないで欲しいアル」

「僕も暫く、顔を見たくないです」

「じゃあ、私達も帰りましょうか」

「うん、そうだね」

新八と神楽が帰って行き、お妙とカロルも二人を追う形で帰っていく。

「銀さん、私達も帰りましょう」

「帰りにAGITΩで夕飯食おうぜ」

「イテテテテ……。 ああ、分ァったよ」

そしてユーリとマイ、銀時も立ち去ったのであった。





 時刻は16時40分。

パトロールで街を歩いていたベルベットは、橋が人溜まりになっているのを見つけた。

「ねえ、何かあったの?」

近くの男性に声をかけると、男性もそれに答える。

「なんか、女を賭けた決闘があったらしいよ」

「決闘?」

「ああ。 でも、もう終わっちまったけど」

「今どき、決闘なんて誰が……」

橋の下から河原を見たベルベットであったが、彼女の目に映ったのは、

「………って、近藤局長!?」

自身の上司である真選組局長、近藤勲が気絶している姿であった。





 時刻は21時20分、場所は真選組屯所。

隊士達が寝静まった頃、ベルベットは土方の部屋を訪れていた。

「近藤さんが女賭けた喧嘩で負けたァァァ!?」

「声が大きい!」

彼女は夕方の事を報告し、それを聞いた土方も驚いてしまう。

「おい、その話は本当か!?」

「ええ。 しかもその相手、渡した木刀に細工してたそうよ」

「つまり近藤さんは……喧嘩で卑怯な手を使われたって事か………」

奥歯を噛み締め、煙草を持っていた手を強く握る土方。

真選組は近藤の人柄もあり、多くの隊士が彼の事を慕っている。

それ故、この話しを聞いた土方も、喧嘩の相手に怒りを燃やしていた。

だがここで、ベルベットは制止の声をかける。

「待って。 これは局長の問題であって、アタシ達の問題じゃないでしょ?」

「だがよ――」

「あのね副長、よく聞いて?」

「あん?」

「アタシがアンタにこの事を伝えたのは、この話しを誰かに漏らさないと思ってるからよ」

「………」

「いい? これは副長であるアンタと、その代理のアタシだけの秘密よ。 良いわね? 誰にもこの話しはしないって約束できる?」

「……ったく、分かったよ」

「じゃあ、アタシは部屋に戻って寝るわね。 おやすみ」

ベルベットが部屋を出ると、土方は煙草を口に咥え、

「まさか、近藤さんを負かす奴がいるとはな…。 銀髪の侍……一体何者なんだ?」

そう言って、天井を見上げたのだった。


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■作者からのメッセージ
銀時「そういえば、ジュディスとベルベットの役職って何だ?」

作者「ベルベットは副長、つまり土方さんの代理を務める『副長代理』。 ジュディスは沖田の副官ポジジョンである『一番隊特別副官』です」

ユーリ「局長代理ってのはないんだな」
テキストサイズ:9993

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