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混魂 第一話:天然パーマの奴がいる職場に悪い奴はいない…と思う
作者:亀鳥虎龍   2020/01/11(土) 21:27公開   ID:SITQgi7z/cc
 今から二十数年前の地球。

そこでは地球人と宇宙民族『天人あまんと』による、妖魔との激しい戦争が勃発した。

しかし地球の勢力である『侍』は破れ、彼等は剣を失ってしまう。

更に天人も破れ、妖魔は異界へと姿を消した。

コレを機に地球人は、天人と手を取り合う関係を築く事を選ぶ。

後にこの戦争は、『攘夷戦争』という名で歴史に刻まれたのだ。

時が経ち、舞台は日本の『魂郷町』へと移る。

これは魂郷町で起こる、なんやかんやな物語である。

「いや、“なんやかんや”って何ぃぃぃぃ!?」





―天然パーマの奴がいる職場に悪い奴はいない…と思う―





 魂郷町の何処かにある、一軒の飲み屋。

名前は『スナックお登勢とせ』。

この店の二階には、『万事屋よろずや銀ちゃん』と呼ばれる事務所が存在している。

その事務所の玄関前で、口論が行われていた。

「いい加減にしろよ、この天然パーマが! 滞納している家賃、いい加減に払いやがれェ! 払えないなら、キ●タマなり腎臓なり売ってこんかい!」

「ぎゃーぎゃーウルセェんだよババァ! こないだ壊れたビデオデッキ直したろ! アレでチャラで良いだろうが!」

「良いワケねぇだろうが!」

一人は50代で着流し姿の女性が、もう一人は銀髪の天然パーマが特徴的な男。

男の名は『坂田銀時』。

万事屋を営んでいるが、基本的に性格は気だらくだ。

女性の名は『寺田てらだ綾乃あやの』。

事務所の大家で、自身の店では『お登勢』と名乗っている。

二人の口論が続きそうになるが、背後から声を掛けられた。

「あれ、何してるんですか?」

長い青い髪を黄色いリボンで結び、整った顔立ちにスタイル抜群の美女。

彼女の名は『マイ=ナツメ』。

この事務所で働いていおり、たまにお登勢の店を手伝っている。

「どうせ、家賃滞納してる銀時に、バアさんがブチギレたんだろ?」

するとマイの元に、一人の青年が歩み寄って来た。

長い髪に端正な顔立ち、黒のジャケットを着こんでいる。

その隣には、口に煙管を加えた犬が座っていた。

青年の名は『ユーリ・ローウェル』。

彼もまた、万事屋で働いている一人。

隣の犬は、ユーリの愛犬の『ラピード』。

「ほいよ、バアさん。 今月の家賃」

家賃分の金額が入った封筒を渡し、お登勢はそれを受け取った。

「おっ、わざわざ悪いね。 しかし、アンタ等もアンタ等だ。 こんなバカと一緒にいなくても、十分に稼げると思うよ」

「生憎、コイツを一人にしたら、ロクな事にならないからな」

「それについては同感だね」

万事屋銀ちゃん……報酬次第で請け負う“なんでも屋”。

たまに来る依頼を引き受けながら、彼等は日常を過ごすのであった。





 リビングにて、銀時達はそれぞれの時間を過ごしていた。

「んで、これからどうすんだよ? 今月の家賃は払えたけど、何かデカイ仕事ってあるのか?」

ユーリが茶を啜ると、デスクに座っていた銀時が呟く。

「腎臓ってよ、別に一つでも人は死なねぇよな?」

「売らねぇよ! なに怖ぇこと言ってんだ!」

本気で腎臓を売る気の銀時だったが、リモコンを手にとってテレビの電源を入れる。

すると映像には丁度、ニュースが報道されていた。

『こちら、現場の結野です。 温泉街に現れた謎の巨大生物は数時間もの間、周辺の施設を破壊し突如、姿を消した模様です』

「温泉街に巨大生物か……怪我人は出なかったのかな?」

映像の事件現場に目を向けながら、マイは怪我人の安否を心配する。

するとピンポーンと、インターホンが鳴ったのだ。





「ったく、何だよ」

銀時が玄関へと歩き、ゆっくりと扉を開ける。

「はいはい、どちら様?」

「アナタハ、神ヲ信ジマスカー?」

そこに立っていたのは、明らかにウソ臭い宗教の人間だった。

「帰れ!」

依頼にんではなかった為、銀時はその場で扉を閉める。

リビングへと向かおうとしたが、再びインターホンが鳴りだす。

流石に腹が立って来たので、とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、

「ウルセェ! 勧誘は受けねぇって言ってんだろうがぁ!」

玄関の扉を思いっきり蹴り飛ばした。

しかし扉はサングラスの男に命中し、男の頭からは血が流れてしまう。

「「局長ぉぉぉぉ!」」

部下と思われる二人の男が叫ぶ中、銀時はこの光景を目にした後、

「すいません、間違えました」

当然の如く去ろうとした。

「待て!」

すると男の一人が、銃口を銀時の向ける。

「お前が万事屋だな? 一緒に来て貰おうか?」

「悪いな。 「知らない大人に付いて行くな」って、母ちゃんに言われてんだ」

「そうかい。 じゃあ、「御上の言う事に逆らうな」とも教わらなかったか?」

サングラスの男がそう言うと、銀時はその意味に反応した。

「オメェ等、政府の連中か?」

「入国管理局の者だ。 一緒に来て貰うぞ」

こうして万事屋一行は、サングラスの男『長谷川泰三』に連れて行かれたのである。





 行き先を教えて貰えないまま、銀時達は車に乗せられた。

因みにラピードは留守番である。

助手席で長谷川に、後部座席の銀時はぼやく。

「政府のお偉いさんが俺たちに仕事の依頼ね……。 テメー等、仕事なんてしてたのか? 街見てみろ。 天人共が好き勝手やってるぜ」

「こいつは手厳しいねぇ。 そうは言うが、天人のおかげでこの国が発展できたのも事実だ。 俺達は連中の機嫌を損ねないように、うまいこと共存するほかない。 そのために、やれるだけのことはやってるんだぜ?」

「共存ね……。 そんで、具体的に俺等にどうしてほしいの?」

ユーリが問うと、長谷川はようやく教えてくれた。 

「俺達は今回の件、あまり大きくは動けねぇ。 実は央国おいこくせいの皇子が地球に滞在中なんだが、その皇子に問題があってな。それを解決してほしいわけだ」

「入国管理局――いや、政府の方々がそこまで言い切れるほどなんて……余程大きな事件なんですか? でも、そういうのは警察に頼むべきでは?」

マイが首を傾げるが、再び長谷川は答える。

「お嬢ちゃんの意見はごもっともだ。 だが、コイツだけは警察に任せるワケにはいかねぇ。 なんせ、極秘の仕事なんだからな」

車を走らせてから20分後、ようやく目的地に着いたのだった。





 到着した場所は、魂郷町の西側にある自然公園。

「おい、こんな所でなにさせようってわけ?」 

「さっきも言ったろ。皇子が来てるってな」

「あんた、まさか……」

「おお、よく来たのう。長谷川よ」

遠くから神々しく何者かが現れる。

央国の皇太子が着る衣服に身を包み、優しげに声をかける者。

その隣には、付き従うように立つ御老体。

そう、彼こそが央国の皇子・ハタである。

「ハタであるぞ。 余のペットであるペスがいなくなってしまってのう。 探し出して捕らえてきてくれんかのォ」

「「「……」」」

銀時たちは無言でハタ皇子を見つめる。 

デップりとした横長の体型、血色の悪い顔色に額から生えた猥褻物っぽい触角。

そしてねっとりとした話し方。

銀時とユーリは無言で目を合わせると、背を向けて公園を出ていこうと歩く。

「オイぃぃぃ!! ちょっと待てェェェ!!」

離れていく二人を見て、長谷川は慌てて銀時の肩を掴み、動きを止める。

「ギャーギャー喧しいんだよ、グラサン。 手をはなせ」

「いや、分かるけどさぁ! 分かるけど待って! 頼むから待って! なあ、お嬢ちゃん! アンタも説得してくれ!」

「すみません。 なんなら、私だけでも引き受けましょうか?」

「マジで!? 嬉しいけどアイツ等も必要なの!」

マイですら苦笑するが、それでも長谷川は必死に止めようとする。

「頼むよぉ! 政府はあそこから金とか借りてて、国際問題にでもなったら国がやばいんだよ、滅ぶんだよ」

「知るかよ。 ペットくらいで滅ぶ国なら、滅んだ方がマシだわ」

「ペットくらいとはなんじゃ。 ペスは余の家族も同然ぞ」

思いっきり聞こえていた為か、ハタは銀時に抗議する。

「だったらテメーで探してください。 バカ皇子」

「同感だ。 御自慢の権力使って探して貰え、バカ皇子」

遂にハタ皇子を『バカ』と呼んだ銀時とユーリだが、遂にお付きの爺が切れた。

「お前等ぁ! さっきから皇子をバカ呼ばわりしやがって! このバカに失礼だろうがぁぁぁ!」

「いや、お前の方が失礼だろ!」

だがコイツの方が失礼だったが、皇子にツッコミを入れられる。





 ハタ皇子と爺の口論を他所に、ユーリは長谷川に尋ねる。

「なあ、そのペットの写真とかないのかよ?」

「ああ、これだ」

長谷川は懐から写真を取り出し、彼等に手渡す。

写真にはハタ皇子と戯れる、蛸の様な生物が写っていた。

「コイツは蛸型のエイリアンで、皇子は『ペス』と名付けている」

「こんなもん、何処で見つけられるんだよ?」

「ん?」

しかし、マイが何かに気付く。

「どうした、マイ?」

「いや、音が聞こえた気がしたんですが」

何かが折れた音が聞こえたが、まさにその時だった。

バキバキという音が響き、全員が聞こえた方向へと顔を向ける。

「グォォォォォ!」

そこには蛸の様な巨大生物が、咆哮を上げたのだ。

この生物を目にしたハタ皇子が、大声で叫んだのだった。

「おお! ペスだ! ペスが戻ってきたぞ! 誰か捕まえてたもれ!」





 ハタ皇子が巨大生物を『ペス』と呼び、三人は写真と比較する。

「「「………」」」

暫く沈黙したが、ユーリが叫んだのだ。

「写真と全然違うじゃねぇかぁぁぁぁぁ!」

同時にマイが、ある事を思い出す。

それは、ニュースを観ていた時の事だ。

――温泉街に現れた謎の巨大生物は数時間もの間、周辺の施設を破壊し突如、姿を消した模様です。

「まさか、温泉街を破壊した巨大生物じゃ!?」

「テメェ! まさか知ってて黙ってたのか!」

ユーリに胸倉を掴まれ、長谷川は涙目で叫ぶ。

「仕方ないじゃん! アレの存在がバレたら、国際問題になっちゃうんだよ! 最悪の場合、俺の首が飛んじゃうし」

「知るかよ!」

口論する二人であったが、銀時が前に出る。

「ユーリ、後で醤油買って来い。 今日の夕飯は蛸の刺身だ。 いや、たこ焼きがいいかな。 いっただきまーーーーす!」

木刀を腰から抜き、ペスへと駆けだしたのだ。

「させるかぁぁぁぁ!」

「へぶし!」

しかし長谷川のスライディングでつまづき、盛大に転んでしまう。

「いたたたた…。 頭大丈夫か!? 脳ミソ出てない!?」

「攻撃しちゃダメ! 無傷で捕えろって言われてんだ!」

「いや、無理に決まってんだろ! どう見たってデカ過ぎるだろうが!」

「でも、どうやって地球ここまで連れてこれたんですか!?」

マイの疑問はもっともであったが、そこはハタ皇子が説明した。

「ペスはのう、異境の星で偶然見つけた時に、余に懐いてしまってのう、そのまま我がペットの一員にし――」

全部言い終えようとした直後、ペスの触手が直撃したのだ。

「ゴハァァァァァ!」

「全然懐いてないじゃないですか!」

ハタ皇子はそのまま気絶してしまったが、まさにその時だった。

ペスの触手が、マイの腹部に巻き付いたのだ。

「キャァァァァァ!」

「マイ!」

「くそっ! 今、助けるぞ!」

コレを見た銀時とユーリも、即座に駆け出そうとしたが、

「止めろって言ってんだよ」

「「!?」」

二人の背後でガチャリと、長谷川が銃口を向けたのだった。





 銃口を向ける長谷川は、冷酷にこう告げたのである。

「無傷で捕えるなんざ、出来ワケがねぇってのは百も承知だ。 だけどな、多少の犠牲がないと、あのバカ皇子も分かっちゃくれないんだよ」

「その為に、ウチのマイをアイツの犠牲エサにしようってのか」

「テメェ等、どんだけ腐ってやがんだ!」

「あのお嬢ちゃんには、悪いと思ってるよ。 だがな、これが俺なりの『正義』なんだよ」

ペスの殺傷処分を下す為に、マイを犠牲にしようとした長谷川。

だが銀時とユーリは、不敵な笑みを浮かべた。

「…そうかよ」

「じゃあ、俺達は…」

「「俺達の『正義』を貫かせて貰うぜ!」」

ユーリは長谷川の銃を蹴り飛ばし、銀時がペスの方へと駆けだす。

「マイぃぃぃぃ! 気張れぇぇぇ!」

「くっ! ウグググ……!」

喰われまいと、マイも強引にペスの口を強引に開ける。

「よせ! 一国と一人の命、どっちが大事だと思ってんだ!?」

長谷川が叫ぶが、銀時は当然のように叫んだ。

「んなこと、知ったこっちゃねぇよ! 俺なは、自分の身が滅ぶまで……」

そして一気に飛び上がり、ペスの口腔内へとダイブし、

「背筋伸ばして生きてくだけだぁぁぁぁ!」

凄まじい一撃を、容赦なく叩きこんだのであった。

口から血を噴き出し、ペスはその場で倒れこんだ。





 ペスの噴き出した血が、噴水のように降って来る。

口腔内から脱出した銀時とマイに、ユーリが当然のように駆け寄る。

「よう、無事か?」

「な、なんとか……」

「おえっ、気持ち悪ぃ…」

そんな彼等の姿に、長谷川が内心で呟く。

「(何だそりゃ? まるでガキの学級目標じゃねぇか。 そう言えば俺も、ガキの頃にお袋に言われたっけ「ちゃんと背筋伸ばしな」って)」

「うおぉぉぉぉぉ! ペスが! ペスがぁぁぁぁ!」

ペットの最期を目にし、ハタ皇子が長谷川に激怒する。

「(母ちゃん。 俺、ちゃんと背筋伸ばしてるか?)」

「長谷川! 無傷で捕えろと申した筈だぞ! この事は父上に報告させて貰うからな!」

「……るせーよ」

「何っ!」

「ウルセーて言ってんだよ! このムツゴロー星人!!」

「ひでぶ!」

そして長谷川は、ハタ皇子を容赦なく殴り飛ばしたのだった。

この光景を目にした銀時は、「あーあ」という顔を見せる。

「おいおい、良いのかよ? そんなことしちまって?」

「バーカ、ここは侍の国だぞ? 好き勝手やらせるかよ」

煙草を一服する長谷川であったが、ユーリがジト目で呟く。

「いや、もう二度と取り締りはできねぇと思うぞ?」

「どう見ても国際問題……ですからね」

「……あ」

マイが呟き、それを聞いた長谷川も我に返る。

「バカだなぁ。 一時のテンションに身を任せたヤツは、自分を滅ぼすんだぜ」

最後に銀時がそう言うと、万事屋トリオはその場を去ったのだった。

その後日、長谷川が入国管理局を解雇されたのは言うまでもない。


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■作者からのメッセージ
 どうも、『学園都市Golden』とは並行の新連載です。

銀時「んじゃ、生温かい目で見てくれや」

ユーリ「“生戦い”は余計だろうが」
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