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混魂 第七話:Ωを名に持つ戦士/地球の記憶と人喰いの異形
作者:亀鳥虎龍   2020/02/12(水) 22:53公開   ID:Iagjyn7tR9w
 嘗て……とある草原に、二人の異形が戦っていた。

一人は緑色の身体に赤い目、もう一人は赤い身体に緑色の目をしている。

互いにボロボロで、全身は血だらけ。

そして体力は既に、限界を迎えていた。

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

天まで響くほどの咆哮を上げ、二人は真正面から地を駆ける。

そして共に、最後の一撃を放ったのだった。





―Ωを名に持つ戦士/地球の記憶と人喰いの異形―





 午前0時30分、深夜の魂郷町。

「ハァ…ハァ……」

一人の女性が、息を切らしながら走っていた。

必死で走っていたが、その先は行き止まり。

「いや……来ないで……」

追い詰められた女性は、涙目で命乞いをするが、

「シャァァァァァ!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

それも虚しく、絶叫を上げたのだった。






 翌日、午前9時半頃。

「コイツはヒデェな」

真選組が現場検証を行っており、近藤は遺体に目を通す。

遺体の損傷は酷く、四肢や内臓が食い千切られていた。

「コイツは当分、肉料理は口に入らねぇな」

「俺も死体は見慣れている方だが、コイツはトラウマもんだぜ」

土方と沖田ですら、眉をひそめてしまう。

「死亡推定時刻は、午前0時半から午前1時の間くらいだと思われます」

死亡推定時刻を聞き、土方は現場を見渡す。

誰もいない路地裏で、遺体のある位置には壁である。

「こんな裏路地まで、一体何してたんだ?」

「ホトケさんの顔の表情から見て、相当怖ぇもんに襲われていたんじゃないですかい?」

沖田が言うように、被害者の顔は絶望に満ち溢れた表情になっていた。

「獣に襲われた――ワケじゃないよな?」

「しかし手足や内臓が食い千切られた事から見て、獣に襲われていた感じだぞ?」

「どうやらこのヤマは、簡単にゃ終わりそうにはねぇな」

空を見上げながら、土方は煙草を口に咥えたのである。






 同時刻、とある廃工場にて、

「こんなもんかしらね?」

「はぁ、もう少し暴れたかったけどね」

ベルベットとジュディスが、黒スーツの男達を再起不能にしていた。

実は彼等は、天人で構成されている組織の者で、ある取り引きを行っていたらしい。

「こ、これが…真選組……」

男の一人に刺突刃を向けながら、ベルベットは尋問を行う。

彼女は地面に置かれたアタッシュケースに指を差しながら、その中身を問う。

「答えなさい。 このケースの中身は何?」

「………」

「答えないって事ね? ねえ、ジュディス――」

ジュディスを呼ぼうとしたが、まさにその時であった。

「フン!」

当然のように、ジュディスはケースを思いっ切り地面に叩きつけていたのだ。

「何してんのアンタァァァァ!?」

「え? 何って、ケースをこじ開けてるだけよ?」

「当然のように何言ってんの!? 尋問するしてるの見てたでしょ!?」

「だって、面倒だし、こっちの方が早いでしょ?」

「まず押収する証拠品が破損させたらダメでしょ!?」

「………あっ」

「今更気付くな!」

彼女の予想外の行動に、流石のベルベットもツッコミを入れざる負えなかった。

すると、ケースがパカッと開いたのだ。

「あっ」

「うそ…」

同時に中から、何本かのUSBメモリが散らばったのである。

「なにコレ?」

「USBメモリ…よね?」

首を傾げる二人であったが、男が即座に動いた。

「畜生!」

《ジャガー!》

首筋にある、電子コネクタのような痣に挿し込んだ瞬間、

「うおぉぉぉぉぉ!」

その姿を変貌させたのだ。

豹を人型にしたような外見で、これには二人も驚く。

「嘘でしょ!?」

「どういうこと!?」





 男が豹の怪人に変貌し、ベルベットとジュディスは驚きを隠せない。

「グルルル……」

二人は構え、何時でも戦える体勢に入る。

しかし、その時であった。

怪人は驚異的な脚力で移動し、ベルベットの顔面を掴む。

そのまま彼女の頭を、地面に叩きつけたのだ。

地面にクレーターが出来るほどの威力であったため、その場で意識を失ったベルベット。

「ベルベット!?」

驚くジュディスであったが、怪人が彼女に標的を定める。

「このっ!」

すぐに迎え撃ったジュディスであったが、怪人の身体には傷一つ付けられなかった。

更に怪人は、彼女の腹部に拳を打ち込むと、

「ウオォォォォ!」

顔面に再び拳を打ち込んだのである。

「がっ――」

吹き飛ばされたジュディスは、そのまま気を失ったのである。

倒れた二人を見下ろし、怪人はトドメを刺そうとしたが、

「!?」

何者かの気配を感じ取り、すぐさま気配のした方角へと振り向いた。






 怪人の目と鼻の先にいたのは、一人の人影であった。

遠くて見えないが、ゆっくりと近付いて来る事が分かる。

これ以上目撃者を増やすのはマズイと考え、怪人はその人物へと襲いかかった。

鋭い爪を振り下ろすが、それを拳で弾かれてしまう。

再び攻撃しようとしたが、逆に拳を叩きこまれたのだ。

仰け反ってしまった怪人が見たものは、信じられないものだった。

それは全身が黒く、上半身を金色の装甲で覆った戦士だったのだ。

金色の角と赤い目がある仮面で素顔を隠し、腰にはベルトが巻かれている。

戦士はゆっくりと歩み寄り、怪人も“彼”に襲いかかった。

しかし攻撃を軽い動作のみで避けられ、そのまま拳によるカウンターを打ち込まれてしまう。

圧倒的な強さに、流石の怪人も不利を感じてしまい、その場から逃走したのだ。

「………」

戦士は追跡をせず、その場から姿を消した。

その数分後、ベルベットとジュディスが病院へと運ばれたのである。






 午前10時30分。

場所は変わって、万事屋事務所では……、

「銀さん、求人を募集しましょう」

突然マイが、そんな事を言ったのである。

「求人? 何で?」

首を傾げる銀時であったが、彼女はこんな事を言ったのだ。

「今まで私達3人とラピードで仕事してましたけど、人員も増やしたいと思っているんです。 一応、玄関と事務所の近辺に張り紙をしときました」

「まあ…確かに、人手は多い方が仕事も楽だしな」

ラピードの頭を撫でながら、ユーリも同じ事を考えていた。

「それに、銀さんが滞納した過去の家賃も、早く払えますし」

「そういやお前、一体どんだけ家賃滞納してんだ?」

「…………」

ユーリに滞納した分の家賃の金額を聞かれ、銀時は冷や汗を流しながら目を逸らす。

「おい、目ェ逸らすなよ天パ」

「目を逸らしたくなるほどの金額なんですか?」

しかし、その時だ。

「すいません。 求人募集の張り紙を見たんですが…」

一人の青年が、玄関を開けながら現れたのである。






 ソファーに腰掛け、銀時は青年と正面を向き合う。

青年の名は『水澤悠』。

様々な場所を旅して回っていたが、そろそろ仕事を探そうと考えたそうだ。

魂郷町の街中を歩いていたら、張り紙を見つけたそうなのである。

「何か、得意なもんは?」

「簡単なパソコンの操作くらいは」

「お、良いんじゃねぇか?」

「そうですよ。 コンピュータの操作が出来るメンバーなんて、ウチの事務所にはいないですよ」

左右からユーリとマイに言われ、銀時は頭を掻きながら、

「しゃぁねぇな、分ァったよ。 悠、オメェを採用するよ」

「あ、ありがとうございます」

こうして『万事屋銀ちゃん』に、新たな仲間が加わったのだった。






 午前11時、魂郷町のとある病院。

病室のベッドに寝ていたベルベットとジュディスであったが、扉からノックが聞こえる。

扉が開くと、近藤と土方が入って来た。

「邪魔するぞ」

「邪魔するなら帰って」

「は〜い」

「じゃねぇよ! なに吉○みてぇなやりとりしてんだお前等!」

近藤とベルベットのコントじみたやり取りに、土方はすぐさまツッコミを入れたのである。

「そんで、何があった?」

「ん〜…。 どう言えば良いかしら」

「そうね。 簡単に説明できるかどうか……」

女性陣の二人は、軽く首を傾けながら悩んだ。

「信じて貰えるかどうかが妖しいんだけど……」

「構わねぇよ。 憶えてる事、全部教えろ」

そう言われ、彼女達は憶えている事を話した。






 二人の話しを聞き、近藤と土方は首を傾いてしまう。

「USBメモリを挿し込んだ瞬間に、人間がバケモンになった?」

「ほら、やっぱり信じない」

「でも、本当の話しよ」

「マジかよ」

「人を怪物に変えるUSBメモリ…一体何なんだ?」

すると、今度は沖田が入って来た。

「ちーと失礼しますね」

「総悟?」

「現場から回収したメモリを調べたところ、とんでもねぇ事が分かりましたよ」

「とんでもねぇ事?」

再び首を傾げた一同に、沖田は再び口を開く。

「コイツは“ガイアメモリ”。 最近、巷を騒がしてるUSBメモリでさぁ」

「なっ!? ガイアメモリだと!?」

ガイアメモリ……地球上のあらゆる『記憶』を凝縮させた、特殊なUSBメモリの総称。

コレを使った人間は、『ドーパント』と呼ばれる怪物となって暴れ出す。

とある地方では、ガイアメモリに関わる犯罪が多数起こっているという情報は耳にしていた。

まさか、この魂郷町にまで流通するとは思わなかったのだ。

「じゃあ、お前等が取り逃がした怪物は……」

「メモリの売人か」

それを聞いたベルベットとジュディスは、売人に対する怒りを募らせる。

「あ〜〜〜、もう! 考えるだけでも腹が立って来た!!」

「そうね。 退院次第で、すぐに探しましょう」

女の怒りは怖いというが、近藤は小声で土方に呟く。

「………なあ、トシ」

「何だ?」

「何でウチの女性陣って、此処までる気満々なんだ?」

「…………………………近藤さん」

「ん?」

「それは……言わんでくれ」

「ですよねぇ〜」

彼と同じ意見なのか、土方もゲンナリしたのだった。






 時刻は13時25分。

万事屋一行は現在、森の中を探索していた。

「確か、この辺だよな?」

彼等は依頼で、行方不明の飼い猫を探していたのだ。

「どうだ、ラピード」

「ワン!」

ラピードの嗅覚を頼りに、彼等はその周囲を探索していく。

すると、ガサガサという音が聞こえた。

「にゃ〜」

可愛らしい鳴き声が聞こえ、一行は聞こえた方角へと視線を向ける。

そこには、一匹の白い子猫が現れた。

「こ、この子です! 畑山さん家のシロナちゃんです」

マイが写真と比較し、依頼人の飼い猫だと判明。

全員が駆け寄るが、思わず全員がギョッとしてしまう。

その身体は、血だらけになっていた。





 シロナの全身が血だらけになっており、怪我を負っていないかを心配する。

しかしユーリが、抱きかかえて確かめた。

「いや、コイツは怪我じゃねぇ。 偶然血が身体に付いただけだ」

「じゃあ、この子が進んで来た先に……」

ゴクリと唾を飲みながら、彼等はゆっくりと足を進める。

恐る恐る、先へと進んでいく。

そして、その先にあったのは、

「!?」

一人の人影が、血の海に座っていた。

否、『人』と呼べるものではない。

“異形”と呼ぶしかなかった。

その手には、明らかに人間の腕が握られている。

「な、何だよ……アレ!!?」

ユーリが呟くが、まさにその時であった。

「は…ハックション!」

「「「!!?」」」

銀時のくしゃみの所為で、異形に見つかってしまったのだ。

「グルルルル…」

くしゃみに気付き、異形はゆっくりと立ち上がる。

姿はワニのような頭部に、人間の様な体。

それがゆっくりと、銀時達へと歩いてくる。

「オイィィィィ! どうすんだよコレ!?」

「オメェがくしゃみしたのが原因だろうが!」

「どうするんですか!? このままじゃ、襲われますよ!!?」

「………」

動揺する一行であったが、銀時がこう言ったのだ。

「こ、こうなったら……アレをやるしかねぇ」

「な、何かあんのか!?」

「ああ。 たった一つだけの策がな」

「一体何ですか!?」

仲間達が尋ね、銀時はこう言ったのだった。

「逃げるんだよぉ〜〜!」

同時に、全力疾走で逃げたのである。

「いや、全然策じゃねぇだろ!」

勿論ユーリ達も、彼を置くように走り出したのだった。



後半へ続く……。

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 次回、彼が変身します。

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