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混魂 第二十話:人の恋路は邪魔しちゃダメ!
作者:亀鳥虎龍   2020/04/06(月) 23:21公開   ID:SITQgi7z/cc
魂郷町のとある料亭。

近藤を筆頭に、土方と沖田、そしてベルベットとジュディスが正座している。

彼等の顔は、一人の男を見ていた。

サングラスに強面の中年男性で、見るからに威厳が感じられる。

彼の名は『松平片栗虎』。

真選組の上司で、警察庁の長官を務めている。

近藤や隊士達は、親しみを込めて『とっつぁん』と呼ぶ。

「すまねぇな、急に呼び出しちまって。 実は呼んだのは外でもない。 遂に、奴が動く」

「とっつぁん、そいつはホントかい?」

「ああ。 俺独自のルートで、情報を入手した。 だが、奴はかなり危険だ。 俺一人では止める事は出来ない。 お前等の命、俺に預けちゃくれねぇか?」

「とっつぁん…。 アンタがそう言うなら、俺達はこの命を預けるぜ」

「ふっ…頼りにしてるぜ」

松平が立ち去り、近藤達は一礼する。

彼の姿が見えなくなると、近藤は土方に声をかける。

「おい、トシ。 一つ確認していいか?」

「なんだ?」

「……“奴”って誰かな?」

「知らねぇのかよぉぉぉ!?」

これには土方も、思わず叫んでしまったのだった。

そしてベルベットは、ポツリと呟いたのである。

「………さっきのやりとりは何だったのよ?」






―人の恋路は邪魔しちゃダメ!―






 魂郷町でも有名な遊園地『サンライトパーク』。

その門の近くにて、一人の少女が立っていた。

彼女の名は、松平栗子。

可憐な外見なのだが、片栗虎の愛娘なのだ。

「よう、栗子。 待ったか?」

すると浅黒い肌にサングラス、如何にもチャラチャラした格好の青年が現れた。

青年は栗子の元へ歩み寄ると、彼女は笑顔で出迎えたのだ。

「いいえ、七兵衛様。 私も丁度来たところですわ」

「悪いな。 実は電車がさぁ……」

そのまま門の方へと向かう二人であったが、

「ヤロウ…ふざけやがって……。 栗子はお前の為に、一時間も待ってたんだぞ?」

芝生から松平がライフル銃を構え、スコープで七兵衛を狙っていた。

「どうしてくれる。 俺が手塩を掛けて育てた娘の命を、一時間も無駄にしたんだぞ? テメェの命できっちり、償って貰おうか? おい誰か、ちょいと土台になれ――」

「「待たんかいぃぃぃぃ!」」

そんな彼に、土方とベルベットがツッコミを入れたのである。






「何だあの三下を絵に描いた様なヤロウは! あれの何処が危険なんだ!?」

「どう見たって危険だろうが! 巧みな話術で、俺の娘を誑かしてデートに誘った! コイツを危険と呼ばずになんて呼ぶんだ!」

それを聞いた土方は、状況を把握できたのである。

松平の言う“奴”とは、娘の彼氏である事を……。

「つまり“奴”ってアレか!? 娘の彼氏ぃ!?」

「彼氏じゃねぇ! あんなチャラ男、パパは絶対に認めねぇよ!」

「やかましいわ! アタシもアンタが警察庁長官なんて認めないわよよ!」

呆れるベルベットに対し、沖田が背後から声をかけた。

「ベルベット姐さん、俺も土方さんが真選組副長なんて認めねぇから」

「アンタは黙ってなさい!」

困惑しながらも、ジュディスは松平に問いかける。

「ねえ、長官。 あの時、独自のルートで情報を得たって言ってたけど……」

「勿論得たぞ。 栗子がヤロウと電話してるところをこっそりとな」

「それ、ただの盗み聞きよね?」

「冗談じゃねぇ! こっちは仕事休んでまで来たってのに、“娘のデートを邪魔しろ”だぁ!? やってらんねぇ、帰る」

「私も帰るわ」

呆れた土方とベルベットは、その場から立ち去ろうとする。

「おい待て、誰がそんな事頼んだ?」

「「はっ?」」

「俺はただ、あの男を抹殺して欲しいだけだ」

「もっとできるかぁ!」

「大体、どうして抹殺に繋がるの!?」

とんでもない台詞を吐いた松平に、二人はすぐさまツッコミを入れた。

「あんなチャラ男が、栗子を幸せにできると思うか? 俺だって、娘が好きになった奴は認めてやりてぇよ? だから色々悩んで考えた、そして抹殺という結論に……」

「色々考え過ぎだろ!? マフィアかテメェは!?」

「なに言ってんだトシ? 警察もマフィアも似たようなもんだろうがよ?」

「長官がとんでもない事言った!?」

「絶対、全国の警察組織を敵に回したぞ」

再び土方は呆れ、ベルベットは近藤の助け船を借りようとする。

「ちょっと、局長。 この親バカに何か言って」

しかしここで、彼女の期待は大きく裏切られてしまう。

「誰が局長だ? 殺し屋ゴリラ13サーティーンと呼べ」

サングラスを掛けた近藤が、ライフル銃を構えていたのだ。





「何してんだよアンタ? つーか、13サーティーンってなんだよ?」

土方のツッコミを無視し、近藤は松平の隣に立つ。

「とつぁん、俺も手伝うぜ! 俺は男のクセして、チャラチャラした軟弱野郎が大っ嫌いなんだ!」

「近藤……」

「実の妹のように可愛がっていた栗子ちゃんを、あんな男にやれん! いくぜ、とっつぁん!」

「おう!」

「って、おい!」

土方が制止を聞かず、近藤と松平はすぐに出動した。

「ヤベェな。 マジでやりかねねぇぞ……ベルベット、オメェはジュディスと先に帰ってくれ。 あの二人は俺がシバいておく」

「え…ええ(上司相手にも厳しいわね、この人)」

ベルベットとジュディスに帰るように促し、土方は沖田の方へと視線を向けたが、

「総悟、止めにいくぞ」

「誰が総悟でぇ」

「え?」

「俺は殺し屋“総悟13サーティーン”」

そう言って彼も、すぐさま出動したのである。

「うおぉぉぉぉい!」

「面白そうだから行ってきやぁ〜す」

「「「………」」」

コレを見た土方達は、思わず沈黙してしまうが、

「……人手、必要?」

「……ああ、頼む」

彼等はすぐさま、後を追うのであった。






 サンライトパークの園内。

栗子と七兵衛は、楽しそうにメリーゴーランドに乗っている。

そんな二人の少し後ろの木馬で、三バカ13サーティーンがライフルを構えていた。

しかしメリーゴーランドの構造上、距離が全く縮まらない。

「ヤロウ、やりやがるな。 コレを選ぶとは…」

「狙いが定まらねぇ。 なんか気持ち悪くなってきた」

「それより近藤。 コイツは何時になったら近付けるんだ? 距離は一向に縮まらねぇぞ?」

「縮まるかぁ! これメリーゴーランドなんだぞ!? この土台ごと回ってんだよ! 永遠に回り続けろ!」

上下に動きながら、七兵衛の頭部に狙いを定める殺し屋3人組。

土方は白馬が引く馬車に、ジュディスと隣同士で座りながらツッコミを入れた。

「す、凄いシュールね……」

外から見ていたベルベットは、この光景に呆れてしまう。

メリーゴーランドを無事乗り終え、次はコーヒーカップに乗った二人。

勿論真選組も、コーヒーカップに乗り込む。

「アタシはアンタ達みたいに、外見で人を判断したくないわよ。 それって、完全な偏見ってやつよ?」

「どう見ても悪い男だろ! 人間は基本、穴だらけみたいなもんじゃん! そこに穴を開ける意味が分かんねぇよ!」

「……アンタの言ってる事が分かんないわ」

近藤の意味不明発言に、ベルットはジト目でツッコンでしまう。

すると沖田は、当然のようにこう言ったのだ。

「ああいう年頃の娘はですねぇ、ちょいと悪そうなカブキ者に、コロッといっちゃうものなんですよ。 それでちょっと、ヤケドして大人になっていくんですよ」

「……総悟、アナタ歳幾つ?」

流石にジュディスもツッコミを入れ、ベルベットがこう言ったのである。

「まあ。良くも悪くもあの年頃のは、愛だの恋だのは幻想ってことよ、長官。 あんたの娘も、あの男にあらぬ幻想抱いてるみたいだけど、それが壊れれば夢から覚めるわよ」

そしてコーヒーカップを降りると、次のアトラクションへと向かおうとしているの栗子達を追うのだった。





 次に向かったアトラクションはジェットコースターだった。

「七平衛様、次はここに乗りたいですわ」

「マジか。 俺は好きじゃねぇんだけどな」

乗り気な栗子とは対照的に、七平衛は面倒臭そうな顔を見せる。

しかし、その時だった。

「動くとケツの貴方が二つになるぜ」

「っ!?」

沖田が背後へと接近し、ナイフで七兵衛を脅し、

「すぐに彼女とジェットコースター乗りな」

「七平衛様?」

「や、やっぱ乗るか?」

「マジでございまするか!?」

彼が栗子と乗るように誘導した。

その光景を見届けながら、土方達も少し後ろの席へと座る。

土方と同じ席に乗ったベルベットは、不安な顔で彼に声をかけた。

「ねぇ、ホントに大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。 総悟は人を追い詰めて虐めんのが趣味の超ドSだぞ?」

「いや、それの何処が大丈夫よ?」

そんな中、七平衛と栗子が座り、

「……しろ」

「へ?」

「ウ●コしろ。 ジェットコースターが走り終わるまでにしてなかったら殺すからな」

「えぇ!?」

後ろの席に座った沖田が、七平衛に脱糞を強要する。

「言っておくが、降りたら殺す」

そして遂に、ジェットコースターが発進した。





発進したジェットコースターの速度に、客の誰もが絶叫する。

「うわっ、思ったよりキツい!」

「どうだ、様子は――」

様子を見ようとした土方であったが、まさにその時だ。

「うわぁぁぁぁ!」

「「んが!」」

沖田が突然、彼とベルベットの顔面に直撃したのである。

「「おい、何してんだ!」」

怒る二人に対し、彼は慌てた顔で叫んだ。

「ベルト締めんの忘れたベルト締めんの忘れた!」

どうやら七兵衛を脅す事に夢中になり、シートベルトを締め忘れたようである。

「あああああああ!」

「ちょっと! なんかキャラが違くない!? アンタ、そんなキャラだっけ!?」

「Sだから打たれ弱いの! ガラスの剣なのぉ!」

目を回しながらも、必死に座席シートにしがみつく沖田であった。





 ジェットコースターが元の位置に到着し、客達はゆっくり降りていく。

「あら、どうしました七兵衛様? 座高が高く……」

「へへ…。 栗子…コレ聞いたら、絶対ぇに引くぜ。 俺、漏らしちまった」

「っ!?」

脱糞してしまった七兵衛に、栗子は驚愕を隠せない。

「(すまねぇ、七兵衛とやら……)」

「(アンタに恨みはないけど、これも長官の為よ。 この詫びは必ず……)」

その光景を眺めながら、土方とベルベットは内心で詫びの言葉を告げる。

しかしここで、予想外の事が起こったのだ。

「よかったですわ。 実は私もなんですの。 一人だけだとどうしようかと思ってましたわ」

「「「(えぇぇぇぇぇぇぇ!?)」」」

コレを聞いた土方とベルベット、そして松平は驚愕を隠せない。

因みに土方とベルベットは、二人で気絶した沖田の腕を肩にかけている。

「オイィ、どうなってんだトシぃ! ますます仲良くなってんじゃねぇか!?」

「オメェの娘こそどうなってんだ!? 普通、漏らすか!? 一体どういう教育してんだ!」

土方と松平は口論したが、ジュディスが二人に叫んだ。

「あら、大変。 あの二人、次のアトラクションに行くみたいよ」

「えぇ!? あの状態で!?」

両手でお尻を隠しようにしながら、栗子と七兵衛は次のアトラクションへと向かう。

勿論、土方達も追いかけようとする。

「近藤さん、早く行くぞ! 近藤さん!」

「局長、早く!」

未だにジェットコースターから降りない近藤に、土方とベルベットは何度も呼びかけた。

だがここで、彼等はある事に気付く。

それは、近藤の座高が高くなってるという事だ。

「(あれ…座高が高く……)」

「(ま、まさか局長……)」

「(まさかだと思うけど……)」

顔を青ざめながらも、嫌な予感を感じてしまう。

そしてそれは、見事に的中したのだ。

「皆……誰にも言うなで……ございまする」

一粒の涙を流しながら、近藤は静かに呟くのであった。

「「(えぇぇぇぇぇぇ!?)」」





 その後、松平と土方達はベンチに腰を降ろしていた。

彼氏の脱糞にも動じない娘に、松平は深くため息をする。

無論、娘の脱糞までは予想外であったが――。

「いやぁ〜、驚いたぁ。 まさかアレで引かねぇたぁ、我が娘ながらなんて恐ろしい…」

「いや、本当に恐ろしいよ」

「オメェ、この事誰かに話したら殺すからな」

「大丈夫よ、長官。 娘さんは漏らしてないわ」

そう言ってジュディスは、栗子と七兵衛の姿を目にする。

七兵衛は着替えているが、栗子は着替えた形跡が無い。

「あの子だけは着替えていない。 どういう事かは分かるわよね?」

「ケツ挟んでんじゃねぇのか?」

「違うわよ。 娘さんは、あの人に恥をかかせないように、嘘をついたの」

「なにっ!?」

「つまり何かジュディ? 栗子ちゃんは脱糞なんかでは、簡単には引かねぇと? 俺が脱糞して皆は引いたってのに、栗子ちゃんは奴の汚いところも受け止められるってのか?」

「近藤さん、俺も引いてますぜ」

推測するジュディスの横で、近藤は真剣な顔を見せる。

しかし脱糞後の着替えの所為で、真剣さが台無しだった。

すると、沖田が叫んだのだ。

「あっ、とっつぁん! 二人が観覧車に向かっていきますぜ! 観覧車っつったら、“チュー”が定番ですぜい!」

「なにぃ!? 栗子ちゃんが危なぁぁぁい!」

「おい、俺だ! すぐにアレを用意しろ!」

こうして三バカ13サーティーンは、すぐさま観覧車へと向かうのだった。

すると土方は、ようやくベンチから立ち上がる。

「お前等、先に観覧車の方へ行ってくれ」

「えっ、副長は?」

「ちょっとトイレだ。 何かあったら電話してくれ」

「わ、分かったわ」

こうして土方はトイレに向かい、ジュディスとベルベットは近藤達の後を追ったのであった。






 観覧車の近くに到着すると、ベルベットは双眼鏡を目に当てる。

ゴンドラに乗っている七平衛と栗子を眺め、他のゴンドラにも目を通す。

「あの三人、何処にもいないわね?」

「………」

「ん、何よ?」

ジュディスの視線に気付き、ベルベットは彼女に顔を向ける。

「今思ったけど、アナタは恋人とはいるの?」

「い、いきなり何よ!?////」

「いえ、ただの好奇心」

顔を真っ赤にしたベルベットだったが、ジュディスは悪戯っ子の顔になり、

「ふふっ…。 その顔、脈ありって感じね」

「………まあ、その…昔、「好きだ」って言ってくれた相手がいるんだけど///」

「年上? 同い年? 年下?」

「と………年下////」

「へぇ。 アナタもそういう、“恋する乙女”の顔になるのね」

「べべべべ、別に良いでしょう!?////」

ジュディスにからかわれ、顔が真っ赤になるベルベット。

しかし、その時である。

「「ん?」」

頭上からプロペラの音が聞こえ、二人は頭上を見上げた。






「我等…」

「殺し屋…」

「『侍13サーティーン』……」

「「「お命頂戴!」」」

栗子と七兵衛が乗っているゴンドラの前に、ヘリコプターが姿を現す。

そこには近藤と松平、そして沖田の三人が乗っていた。

三人はサングラスをかけ、ライフル銃を構えている。

「なにやってんのアイツ等ぁぁぁぁ!?」

それを目にしたベルベットは、驚愕を隠しきれなかった。

まさか娘の彼氏を抹殺するために、長官が此処までするとは思わなかったからだ。

「完全に職務乱用ね。 始末書どころの問題じゃないわよ…」

この光景に、流石のジュディスも呆れてしまう。

「ん?」

しかし別のゴンドラの上に、誰かが立っているのを確認した。

「アレって、副長?」

そこに立っていたのは、トイレに行ったハズの土方である。





「と、トシぃ!?」

ゴンドラの屋根に立つ土方に、近藤達も驚きを隠せない。

「トシ? 誰だそいつは?」

すると土方は、マヨネーズボトルを模したバズーカ砲を構える。

「俺は愛の戦士『マヨラ13サーティーン』。 人の恋路を邪魔するバカは、消えされぇ!」

放たれた砲撃は見事、ヘリコプターのプロペラに命中し、

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

そのままヘリは、巨大プールへと墜落したのだった。

「じゃあな、お二人さん。 いつまでも幸せにな」

こうして松平片栗虎による、『七兵衛暗殺事件』は未遂に終わる。

この事件を解決した土方十四郎も、クールに去る――ハズだった。

「待って下さい、マヨラ13サーティーン様! こんな脱糞野郎とはおさらばしますので、どうか私とお付き合いして下さい!」

「エェェェェェ!?」

新たな問題が出来たようである。

最後にベルベットとジュディスは、深く深呼吸をすると、

「ス〜…ハ〜……。 よし、帰りに何処かで食べてかない?」

「そうね。 CAFE AGITΩでいいかしら」

すぐさま現実逃避をしたのであった。


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■作者からのメッセージ
 遂に20話目を達成しました!!
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