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混魂 第二十一話(番外編):万事屋結成!(ユーリ編)
作者:亀鳥虎龍   2020/04/23(木) 22:57公開   ID:SITQgi7z/cc
 それは、雪が積もるほどの寒い冬の事である。

初老の女性が、夫の墓参りに来ていた。

墓前で手を合わせた女性であったが、男の声が聞こえたのである。

「おーい、バアさ〜ん。 その饅頭、食っても良いか? 腹が減って死にそうなんだわ」

声の主は墓の後ろにおり、空腹で動けない状態だった。

「そいつはアタシの旦那のだよ。 食いたいなら旦那に言いな」

女性がそう言うと、男は墓石に頭を叩き付けたのだ。

その後、男は供え物の饅頭を口に入れる。

「……ウチの旦那、何て言ったんだい?」

「死人が喋れるワケがねーだろ」

「ふっ。 罰当たりだね」

「だが、一方的に約束はした」

手を合わせ、男は墓の前で誓ったのだ。

「“この恩は一生忘れねェ。 アンタのバアさん、もう長くねぇ命かもしれねぇ。 だが今度は俺が、アンタの替わりに護ってやるよ”ってな」

これが、坂田銀時とお登勢の出会いであった。






―万事屋結成!(ユーリ編)―






 魂郷町のとあるアパート、その名は『太陽荘』。

家賃は安めで、ペットの飼育も可能。

このアパートの101号室に、ユーリはラピードと住んでいた。

「ん……」

ゆっくりと目を開けると、ユーリはすぐさまベッドから起き上がる。

「もう朝か……」

朝食のトーストを口に入れ、コーヒーを淹れたカップを手に持つ。

「あれから結構経っな……」

そう思いながら彼は、初めて銀時と出会った頃を思い出したのだ。






 故郷を離れ、魂郷町に着いたユーリ。

「まずは、住まい探しだな」

「ワン!」

ラピードも住める住居を探す事にした。

不動産事務所を尋ねると、意外と速く見つかり、

「今日からここが、俺等の部屋だな。 なあ、ラピード」

「ワン!」

こうして彼とラピードは、太陽荘の住人となったのである。






 翌朝、収入を得るためにバイト探しを始めたユーリ。

「とりあえず、コンビニ店員が定番か……」

「キャァァァァァ!」

だが背後から、女性の声が聞こえた。

「ひったくり! 誰か捕まえて!」

どうやらバッグを盗られてしまい、引ったくりの男は逃走しているようだ。

「どけぇ、ガキぃ!」

男はユーリへと走ってくるが、彼はため息をした後、

「誰が、どくかよ!」

その場でハイキックを叩きこんだ。

「がはっ!」

キックは見事に顔面に命中し、男は倒れてしまうが、

「くそっ、覚えてろ!」

すぐに立ち上がり、その場を走り去った。

ユーリはバッグを拾い上げると、持ち主の女性に返す。

「ほらよ」

「ありがとうございます」

「気にすんな。 そんじゃ」

女性と別れた後、彼は足を進めたのだった。






 その夜、仕事が見つからず、

「はぁ〜、疲れた」

偶然見かけた喫茶店、『CAFE AGITΩ』で夕飯を済ませるユーリ。

「いらっしゃいませ」

そこに、一人の女性店員が声をかける。

「御注文の方は?」

「ん〜と、このタマゴサンドを頼むわ」

「かしこまりました。 少々、お待ちください」

女性が立ち去ると、ユーリは窓の外を眺めていた。





 客からの注文を受けたマイ=ナツメは、オーナーのいる厨房へと顔を出す。

「津上さん、タマゴサンドの注文が入りました」

「了解」

店長の津上翔一は、すぐさま料理に取り掛かる。

「よし、これで」

タマゴサンドを皿に盛り付けると、それをマイに差し出す。

「はい。 これ、出しといて」

「はい!」

マイは皿を受け取ると、すぐさま客の元へと向かうのだった。

彼女は深い事情で実家を去っており、現在は一人で暮らせる生活費を稼ぐために働いている。

自宅は家賃がやや高めのボロアパートで、今は『CAFE AGITΩ』で働いていたのだ。






 翌日、ユーリは仕事探しを再開。

「昨日のカフェもいいかもしれねぇな」

街中を彷徨っていた彼であったが、まさにその時である。

「ギャァァァァァァァァァ!」

「ん!?」

銀髪で天然パーマの男が、女性にボコボコにされていたのだ。

「…………」

ジト目で眺めていたが、止めに入る気もなく、

「(そっとしとくか)」

そのまま素通りしたのだった。






 時刻は午後の12時を過ぎた頃、

「はぁ、そう簡単に見つからねぇか」

今日も仕事が見つからず、一旦帰ってラピードの散歩に出たユーリ。

「へぇ〜。 こんなところに剣術道場があったんだな」

偶然見かけた道場の看板を目にし、そのまま素通りしようとした時だ。

「チクチョォォォォォ!」

敷地内で、誰かの大声が聞こえたのである。

「な、何だ!?」

思わず門を潜ってみると、眼鏡の少年が木刀を何度も降っていた。

「あのハゲが何してくれたってんだよ! たまにオセロしてくれただけじゃねぇか!」

「父ちゃん、ハゲてたのか?」

「いーや、精神的にハゲて――」

すると屋敷内から聞こえた声に、少年は返事をしようとしたが、

「――って、アンタまだいたんですか!? てか、人んでなに本格的クッキングしてんですか!?」

「いや、定期的に甘いもんくわねェとダメなんだわ俺」

「だったらもっと手軽なもん作れや!」

声の主である銀髪の男が、イチゴケーキを普通に作っていたことにツッコミを入れたのだ。

「あ〜、悪ぃんだが、どういう状況だ?」

「へ?」

そんな彼等に、ユーリは思わず声をかける。

コレが坂田銀時と、志村新八との出会いであった。





 銀時が作ったケーキを食しながら、ユーリは新八の話しを聞いた。

志村家の屋敷でもある『恒道館道場』は、元は名のある剣術道場。

しかし攘夷戦争の終戦を引鉄に、門下生たちは道場を離れたのである。

更に運の悪い頃に、根っからのお人好しだった新八の父は、友人の借金を肩代わりしてしまったのだ。

そして父親は病死し、新八は姉と共にバイトで借金の返済にあけくれていた。

だが今日、新八のバイト生活に悲劇が起ったのである。

自身に陰湿なイジメを働いた猫型天人の大使に、銀時が木刀で再起不能にしたのだ。

彼曰く「イチゴパフェをこぼされたから」だそうだ。

銀時が店を去ったと同時に、警察が駆けつける。

すると警官は真っ先に新八に疑いの目を向けた。

新八は必死に否定するが、銀時の木刀を腰に指していた事が決め手になり、バイトを解雇される羽目になったのだ。

姉の妙がそれを知り、鉄拳制裁を銀時に喰らわせたのだ。

「(あれがそうか……)」

ユーリが今朝の事を思い出しながら、新八の話しに耳を向ける。

その後、天人の借金取りに「『ノーパンしゃぶしゃぶ』という店を始めるから、お妙は払えない分をそこで稼げ」と言ったのだ。

この話しに首を縦に振り、お妙は道場を去ったのである。

「何でみんな、器用な生き方が出来ないんだろう……」

そんな事を呟く新八であったが、銀時は頭を掻きながら言った。

「器用な生き方なんざ、誰だってできるワケじゃねぇよ。 お前だって、それは分かってんだろ?」

身体を震わせながら、目から涙を落とす新八。

そんな彼に、ユーリが呟く。

「そんで、お前はどうしたいんだ? このまま此処にいるつもりか? それとも、姉ちゃんを助けたいのか?」

この問いに対し、彼の答えは決まっていた。





 スクーターに乗り、『ノーパンしゃぶしゃぶ』が始まる船へと向かった銀時達。

とは言っても、船は船でも飛行船である。

「あの、もう少し速度を上げられませんか?」

新八が問うが、銀時が当然の様に答えた。

「そうしたいけど、こないだ交通違反起こして切符切られたんだわ」

「そんな事言ってる場合じゃないですよ!」

「怒んなよ、新八。 大体、スクーターに人間三人+犬一匹を乗せてる時点で無理があるだろ?」

実は銀時のスクーターには、彼の後ろに新八、その後ろにユーリとラピードが器用に乗っているのだ。

定員オーバーでスクーターを爆走させるのは無理な話である。

すると、後ろからパトカーのサイレンが鳴ったのだ。

窓から顔を出した警官が、銀時に叫ぶ。

「おいお前! バイクを止めろ! ノーヘルだぞ! 道路交通法違反だぞ!」

「いや、その前に定員オーバーを注意しろよ」

ヘルメットを被っていなかった銀時を怒鳴る警官だが、定員オーバーを思いっきりスルー。

流石にユーリも、冷淡なツッコミ入れた。

すると、飛行船が飛んでいるのが確認できる。

「あああああああ! どうしよう! 姉上がノーパンに!」

「何ぃ!? ノーヘルだけじゃなく、ノーパンなのか!?」

何故か聞き間違いをした警官であったが、銀時はパトカーに視線を向けた。

実はこのパトカー、天人の技術で空中飛行もできるのだ。

「(嫌な予感しかしねぇ…)」

この時ユーリは、次の銀時の行動を予感したのである。






 その頃、飛行船の中では、

「お妙と申します」

お妙は接客の訓練をさせられていた。

「ちゃうちゃう! そんなんちゃう! もっとこう、谷間を強調せい! ただせさえまな板いたいな胸しとんのじゃ! もう少しエロく――」

しかし借金取りの社長が、彼女にとって最大の禁句を口に出す。

その瞬間ボキッと、彼の左腕があらぬ方向へと曲がった。

正確には、お妙に折られたのだ。

「ギャァァァァァァァ!」

腕を折られた社長は、絶叫を上げてしまうが、

「私の胸が…何?」

「す、すんません! マジですんません! やっぱり帰って良いです! 借金はチャラにしますんで!」

これ以上は自身の身が危険と判断し、お妙に帰るように促す。

そう、皆は気付いたであろう……。

今……お妙の貞操がピンチだと!

「作者ァァァァァァァ! どこがピンチやねん!? 寧ろ、ピンチなのはワシやぁぁぁぁ!」

とうとう作者にツッコミを入れた社長であったが、まさにその時である。

ドガァァァ!と、何かが壁をブチ破った。

「な、なんや!?」

壁を見ると、そこにはパトカーが突っ込まれている。

「ったく、もう少しマシな作戦はなかったのかよ?」

「しゃーねーだろ。 上手く行ったんだから」

そしてパトカーから、銀時達が姿を見せたのであった。






「どーもー、万事屋で〜す」

「俺は通りすがりだ」

「ワン!」

「姉上、まだパンツは履いてますか?」

銀時とユーリ、そしてラピードに新八が前に立つ。

「新ちゃん!」

「くそっ! こうなったら……お前等ぁ! 出て来い!」

社長の声を聞き、無数の部下達が現れる。

「さて、どうするんですかい?」

ユーリは銀時に問うと、彼は新八に告げたのだ。

「この船の何処かに、脱出用の船があるはずだ。 オメェは姉ちゃんと一緒に、そいつで逃げろ」

「アンタは、どうするんです?」

「安心しろ、俺は死なねぇ。 必ず戻って来るぜ。 オメェは今、姉ちゃんを守る事だけを考えな」

「かかれぇ!」

社長の合図と共に、部下達が襲いかかる。

コレに対し、銀時が木刀で薙ぎ払い、

「ハイィィィ! 次ィィィ!」

「ほらよ!」

ユーリは部下の一人から奪い取った刀で叩き伏せた。

「うそ、この人達…」

「でたらめだけど、強い!?」

銀時とユーリの異常な強さに、流石の志村姉弟も驚愕。

「新一、行けぇぇぇぇ!」

「新八だ、ボケぇぇぇぇぇ!」

そして二人に足止めを任せ、新八は姉の手を引っぱるのだった。






 弟と船内の廊下を走るが、お妙は銀時とユーリの身を案じる。

「新ちゃん、ホントに大丈夫なの!?」

「大丈夫です、姉上。 あの二人は必ず戻ってきます。 もしかするとあの二人は、父上が言っていた人達かもしれないんです」

自身満々に告げる新八は、亡き父の言葉を思い出す。

――例え剣を失っても、自分の魂にある“信念”という名の剣を忘れるな。

だからこそ、新八は信じたのだ。

彼等の中にある、侍の魂を……。

しかし、その時だった。

「あああああああああ!」

「「へ?」」

銀時が一人、全力疾走で走って来た。

複数の敵に追われながら。

「ホントに戻ってきたぁ!!」

「きつかったんだ! 思ったよりきつかったんだぁぁぁぁ!」

「何やってんですか!? 戦ってから、まだ一分も経ってないじゃないですか!?」

「バカヤロォォォォ! 小説家だってな、ネタ作るのに一分もかかってんだぞ!!」

「というか、ユーリさんは!?」

「あ……そういや、忘れた」

「オイィィィィィィ!!」

その頃、ユーリとラピードは……、

「おいおい、こんなもんか?」

「ワン!」

殆どの敵を叩き伏せ、不敵な笑みを見せる。

その笑みには何処か心に余裕があり、敵もこれには震えてしまう。

「な、何だコイツは!?」

「さあ、楽しもうぜ!」

彼等の目を見て、背筋が凍ってしまったからだ。

その目はまるで、獲物を狙う狼であった。





 船内の奥まで走った銀時達は、一つの扉を開く。

「ここって、動力室?」

彼等が入ったのは動力室で、奥には動力源があった。

「そこまでや」

「っ!?」

しかし借金取りの社長が現れ、銃口を向ける。

「惨めなもんやな。 あの戦争から侍も天人も、全てを失ってもうた。 せやけど、0ゼロからのし上がって、この国はワシ等天人のもんにする」

「国だぁ? そんなもん、くれてやる。 今の俺には、目の前の零れ落ちていく命を守るのが精一杯だからよ」

「しみったれた武士道やのう。 もうええわ、逝け」

引鉄を引こうとした社長であったが、秘書が即座に止めた。

「あきまへんよ、社長。 あの三人の後ろ、この船の動力源でっせ。 間違って当たったら、ワシ等も終わりますわ」

「あっ、そやった――」

部下の制止で我に返った社長であったが、銀時は動力源を登っている。

「よいしょって」

「あ、あれ? あの、それこの船の心臓――」

社長が顔を青ざめるが、最頂部まで銀時は、

「客の大事なもんは、俺の大事なもん。 その為なら、俺は船だろうがUFOだろうが、撃ち落としてやらぁぁぁ!」

木刀を力いっぱい振り下ろし、動力源を破壊したのだ。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

「やりおった! アイツ、やりおったわぁぁぁぁ!」

こうして動力源を失った船は、そのまま落下したのだった。






 時刻は夕刻になり、港の方では、

「ハァ…ホント、危なかったですね」

「全くね。 あんなメチャクチャな人、初めて見たわ」

「どれに関しちゃ、俺も同感だ」

警察に無事保護され、志村姉弟とユーリはため息を吐く。

借金取りの社長たちは、遊郭の違法営業を行った容疑で逮捕され、

「でも、ああいうのも悪くねぇ…」

ユーリは警官と揉めている銀時を眺める。

そしてコレを機にユーリとラピードは、『万事屋銀ちゃん』で働く事を決意したのだ。


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■作者からのメッセージ
 今回は万事屋結成秘話でした。

元は銀魂の第一訓です。
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