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とある血統の黄金精神
作者:亀鳥虎龍   2021/01/27(水) 23:00公開   ID:Iagjyn7tR9w
 それは、突然の事だった。

「おい! 早くその子を救急車に乗せるんだ!」

「出血が酷い! 早くしろ!」

「そっちの子は!?」

「この子は大丈夫だ! 掠り傷で済んでる!」

「事故を起こした乗用車は!?」

「通報者によると、ナンバーは見えなかったらしい!」

とある横断歩道で、ひき逃げ事故が起こった。

轢かれた少女は、救急車で病院へと運び込まれる。

霞んでいく意識の中、少女はずっと考えた。

「(さっきの男の子、だいじょうぶだったかな?)」

信号無視をした乗用車から、子供を護ろうとした少女。

その際に、車に轢かれてしまったのだ。

自身の命より、子供の安否を心配しながらも、彼女の意識は途切れたのだ。

7月下旬、学校なら夏休みの序盤に当たる時期。

身を挺して幼き命を救った少女だが、彼女は知らなかった。

この事故の一年後、運命の歯車が動き始めた瞬間を――。






―とある血統の黄金精神ゴールドスピリット






 学園都市――日本の東京西部の3分の1を占める巨大都市。

この街では、科学技術による超能力開発が盛んである。

その為、人口の約8割が学生であるのだ。

「ここが学園都市か……」

一人の男が、スケッチブックとカメラを見つけている。

彼の名は岸辺露伴。

M県S市にある、杜王町という街から来た漫画家。

いわゆる、学園都市外部の人間である。

彼は漫画の取材で、この街を訪れて来たのだ。

「さて、承太郎さんから頼まれた“仕事”を済ませて、取材をしないとな!」

そう言うと彼は、好奇心に身を任せるのだった。






 今から少し前――8月25日の杜王町、杜王駅東口駅前広場にある喫茶店『カフェ・ドゥ・マゴ』。

露伴はある人物と顔を合わせていた。

白いコートと帽子姿、約190cm以上の長身の男。

名は空条承太郎。

かの有名な企業『スピードワゴン財団』とコンタクトを取れる人物だ。

「露伴、キミに頼みたい事がある」

承太郎が差し出した写真を受け取ると、露伴はそれに目を通す。

写っているのは、短めの黒髪で黒い瞳の少女だ。

「彼女の名は女上めがみ聖歌セイカ。 ある日本人夫婦の養子だ。 小学校を卒業後は、学園都市に移住している。 実はキミに、彼女の皮膚の一部か髪の毛を回収して欲しいんだ」

「構いませんが、何故そんな事を?」

「今は言えない。 正直に言うと、康一くんに依頼したかったんだが、彼にはイタリアに行って貰った事があったから、流石に何度も頼るワケにはいかないからな」

「そういえば、そんな事があったような」

「その点、キミなら仕事の取材を理由にすれば、容易く潜り込めるはずだ」

「成程、それで僕に依頼をしたという事ですか。 良いですよ。 この仕事、引き受けます。 正直に言うと、学園都市には興味がありましたし」

「決まりだな。 そうそう、旅行費はスピードワゴン財団が、全額で負担してくれるから、安心して向かうといい」

「ぜ、全額ですか!?」

一つの依頼だけで、岸辺露伴は内心で歓喜の叫びを上げてしまう。

「(まさか…一人の少女の捜索だけで、スピードワゴン財団がそこまでしてくれるとは!? 学園都市で取材が出来るだけじゃあなく、事実上は無料で旅行が出来るようなもんだ! まさに、一石二鳥じゃあないか!!)」

承太郎と別れた露伴は、すぐさま学園都市へ向かう為の準備を開始したのだった。






 現在の8月31日、学園都市にある第7学区。

この区域に、神園聖歌の通う学校がある。

「しっかし、噂には聞いていたが、凄い街だな」

そう言って露伴は、街の光景を目にした。

近未来に来たような感覚に陥ったが、同時に彼の好奇心が刺激されたのだ。

「こんなリアリティは、他にないかもしれない。 早く仕事を済ませて、すぐに取材にするぞ!」

街の中を歩く中、露伴は承太郎から渡された資料を取りだし、

「一応、承太郎さんから貰った資料を確認するか」

資料に書かれていた情報を確認した。





 女上聖歌は、幼くして母親を亡くしている。

正確には、物心つく前から母親の顔を知らないのだ。

勿論、父親の顔も知らない。

暫くは施設育ちであったが、子供に恵まれなかった夫婦の養子へと迎えられた。

大切に育てられ、心優しい少女へと成長する。

そして小学校の卒業後、学園都市へと移住した。

現在は第7学区にある『柵川中学校』に入学、今も学園生活を送っている。

「しかし何故、承太郎さんはこの子を調べたがるんだ?」

疑問を抱きながらも、ゆっくりと街を歩いていく。

路地裏の近くを歩いた時だった。

「や、止めてください!」

「ん?」

何人もの男達が、一人の少女を取り囲んでいたのだ。





「良いじゃねぇか。 俺達と遊ぼうぜ?」

男の一人が、少女の腕を掴む。

「離して下さい。 人を呼びますよ!」

「行ったところで、誰も助けてくれないぜ?」

この会話を聞いたいた露伴は、周囲を見渡す。

少女が困っているのに、誰も助ける素振りがない。

いわゆる、見て見ぬふりだ。

「(ハァ、僕の性分じゃあないが、流石に目覚めが悪い)」

呆れながら少女を助けようとした露伴であったが、まさにその時だった。

「分かりました。 離さないなら―――抵抗しますね」

少女はそう言うと、掴まれていない方の手で、男の腕を掴んだのだ。

その瞬間、ジュゥ〜という音が聞こえ、

「ギャァァァァァァ!」

男は少女の手を振り払うと、自身の腕を抑えている。

「いでぇ! しかも熱ィ!」

さっきまで少女の腕を掴んでいた方の腕が、火傷を負ったのだ。

「あ、兄貴!?」

「このアマ!」

仲間の一人が金属バットで、少女を殴ろうとした。

だが同時に、少女は小さく呟く。

灼熱の地獄バーニング・イン・ヘル

すると彼女の背後から、人の姿をした『虚像ヴィジョン』が出現する。

少女がバットを掴むと、虚像も連動して掴む。

すると、バットがドロドロに溶けたのだ。

「なっ、なにィ!?」

「あの女が掴んだ瞬間、バットが溶けた!? まるで、熱でドロドロになったチョコレートみたいに!?」

溶けたバットに驚くが、男達は虚像の姿が見えていない。

そんな彼等に、少女は鋭い眼光で睨む。

「これ以上近付くなら、今度はその顔、全面火傷にしてあげましょうか?」

「「「ひ、ヒィィィィ!」」」

流石にビビったのか、男達はすぐさま逃げ出したのだった。

学園都市に住む少年少女達は、何らかの超能力が使える。

しかし、少女の能力を目にした露伴は、驚きを隠せない。

彼女の傍に立つ虚像は、自分と同じ能力だからだ。

「アレは……まさかスタンド!? しかもあの少女は!?」

手にしていた写真と、少女の顔を見比べた。

写真では黒であった瞳は、実物は赤である。

交互に見比べた露伴は、ここでようやく確信した。

「(間違いない! あの少女が……あの子が承太郎さんが言っていた―――女上聖歌!!)」

スタンド能力を持つ者は、同じスタンド使いと引かれ合う。

岸辺露伴は、遂に女上聖歌と出会う事が出来たのだ。






 足を進める聖歌であったが、露伴は少し迷った。

彼女に接近するべきか、承太郎に一度連絡するべきか…と。

「(さて、どうするか……)」

すると、近くにいた少女達の会話が聞こえた。

「あれって、女上聖歌よね?」

「ホントに中学生なのかしら? 凄く美しいわよね」

「でもさ、あの子って、瞳の色が赤くなかった? 私、前に会った時は黒だと思ったんだけど? カラコン?」

「そうそう、アタシも最近知ったんだけどね。 なんでも、体質らしいよ?」

「っ!?」

その会話に反応した露伴は、思わず彼女達に声をかけた。

「キミ達、ちょっといいかい!?」






 暫く経った後、露伴はある人物に電話をする。

『もしもし、こちら空条承太郎』

電話の相手は勿論、空条承太郎だ。

「承太郎さんですか!? 僕です! 露伴です!」

『露伴? 何かあったのか?』

「そ、そうですね…まずは、結果から伝えます! 女上聖歌は『スタンド使い』です!」

『!?』

この報告を受けた承太郎は、目を大きく開いた。

『写真とは外見が大きく変わっていて、髪は長くなり、瞳の色が黒から赤になるんです! 偶然でした。 自分に絡んで来た不良達を、スタンドで追い払ってたんです』

「そうか…。 ところで、さっき瞳の色がどうとか言っていたが?」

『あ、はい。 彼女を知っている人に聞いたんですが、瞳の色は体質だそうです。 なんでも彼女、去年の夏に交通事故に遭ったらしくて……その事故から生還した代償――みたいなものだそうです。 本人曰く「死んだ実の父親の遺伝」だそうで、普段は黒ですけど、感情が高ぶると、瞳の色が赤くなるそうです』

「……彼女のスタンドだが、能力は分かるか?」

『遠目で見ていたので、未知な部分がありますが、分かった事が一つだけ。 “触れたモノを全て、超高温の熱で溶かす能力”です』

「……そうだったのか。 すまなかった。 正直、スタンド使いだった事は知らなかったんだ。 それだけの報告だけで十分だ。 協力、感謝するよ」

報告を終えた露伴であったが、ある疑問を口に出す。

「教えてください、承太郎さん。 彼女は一体、何者ですか?」

この問いに対し、承太郎は答えたのだった。

『……私は嘗て、ある少年を調べるため、康一くんをイタリアに向かわせた』

「イタリア?」

『少年の名は、汐華しおばな初流乃はるの。 イタリアでは、『ジョルノ・ジョバァーナ』と呼ばれている。 彼と女上聖歌には、ある共通点が存在する』

「共通点?」

『実の父親の名は………ディオ・ブランドー』

「!?」

コレを聞いた瞬間、露伴は背筋を凍らせてしまう。

「ディオ!? もしかして、あの『弓と矢』のDIOですか!!?」

『ジョルノの存在を知った時、再びスピードワゴン財団に調べて貰ったんだ。 彼の他にも、DIOの子供が存在しているではないかと。 知る価値があったんだ。 女上聖歌がジョルノと同じDIOの子供で、DIOの体質をどこまで受け継いでいるのかを……。 彼女のDNAから調べる必要があったんだ』

「そして僕の報告で、その可能性が濃くなったと…」

『いいか露伴、よく聞くんだ。 『スタンド能力を受け継いだ』と分かった以上、これ以上は女上聖歌に関わるな。 それ以上の深追いは、帰って危険を生みかねない』

「……最後に一つ、教えてください。 彼女は……『敵』でしょうか? それとも、『味方』でしょうか?」

『………私も、それが知りたい。 だが今は、キミ自身の安全が優先だ。 では、また何かあったら、連絡を頼む』

承太郎が電話を切り、露伴も電話を切った。

「………」

この時、岸辺露伴は何を思ったのだろうか?

それはまだ、誰にも分からない。








TO BE CONTINUED?


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■作者からのメッセージ
 とあるシリーズとジョジョで、コラボ短編を作りました。

ジョジョ第5部をモチーフにしているので、似ている部分があると思います。

露伴「いいや、違うね。 こういうのは、“パクリ”って呼ぶんだぜ?」

作者「露伴先生、手厳しいです」

テキストサイズ:8380

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