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進化の龍よ蒼き航路を超えて 第3話「その名は敷島」
作者:地獄の釜   2023/01/11(水) 22:53公開   ID:mc.YSvMBfS.

「女神にバーチャルアイドルに格闘家に異界人…アイドルときて、挙げ句の果てに電脳人とその創造主に怪獣使いか、そういう能力者もこの世界に飛ばされていたとはな…俺たちも他の世界ではマンガの登場人物というわけか…」


 母港の学園にある図書館にてカムイは自分たち以外の異世界出身者について調べていたが、どれもこれもレパートリーに富んでおり同時に全員女性であることに苦笑した。ここまで女所帯だと不安に思えてくる。

 自分の事はあの時明かしておりもっと警戒されると思っていたがこういう経緯があれば慣れるものかと思ってしまう。しかし流石に地球を壊滅状態に追いやったのは流石に非難されたが、それに至る経緯も知られていた故にそれはそれでチャラにしようと言われカムイは深く頭を下げたことを思い出す。

 同時に自分たちが他の世界ではマンガの登場人物として有名な人物である事を知り、ある程度は違ってはいたが運命が既に決められていたことを知り精神的に来るものはあった。それは仕方ないとして受け入れる事にした。

 皆に余計な心配を掛けた負い目はある。故にカムイはこの母港に来てチームで行動する時や作業時以外は常に1人で居ることにした。本当に信頼されてるか?裏ではなにか企んでいるのではないか?チーム1疑い深く、慎重なカムイは常に携帯武器も隠し持ちながら常に警戒をしながら行動を続けていた。

 各員の特徴、経歴、KAN-SENの力を得た際の艦種や装備の特徴に加えた本人たちの特殊能力……必要な物を調べ上げたカムイは周囲を見回しながら窓の外を、島の外に広がる青い空と青き海を見て、自分の情けなさを再び恨みながら廊下へと出た瞬間に夢でも見たのかと思う事が目の前を横切っていた。


「……博士?」

「むぅ、ここの人間…いや君は一体何者かね?」

「貴方は……敷島博士、いや違いない。姿は大いに違うが間違いなく貴方は敷島博士だ…!」

「儂の名を知っておるのか?しかしここはどこかね、こんなに綺麗な青空や広がる青い海…とても儂の知ってる━━お主、泣いてるのか?」

「俺は……俺は……っ!」


 姿は大いに違うが見間違えるはずが無い、元の世界にて早乙女と並ぶマッドサイエンティストにして自分の作った兵器で脳みそぶちまけて惨たらしく死にたいと騒いでいたあの陽気で狂気な恩人、そして目の前で木っ端微塵オープン敷島に弾け飛んだ狂気の科学者敷島博士だ。

 木っ端微塵になっても生きていたと風の噂で聞こえていて、もう二度と再会することは無いと思っていた恩師の姿を見て堪えていたものを我慢することは出来なくなったカムイに対し事情を察した敷島はその懺悔を受け入れることにした。


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「ふむ、【アズールレーン】に【KAN-SEN】……そして儂の知らぬ、いや最悪の進化に至った【ゲッター聖ドラゴン】……感謝するぞお嬢さん」

「イラストリアスお姉ちゃんから聞いた話だけど良かったの?」


 おうと、くしゃっと笑った敷島は目の前の少女━━ロイヤル所属軽空母型KAN-SENのユニコーン━━に対して感謝すると思った以上に不思議な世界に来たと笑った。

 あの後堪えていたものを吐き出した後疲れきり寝てしまったカムイを近くにいたKAN-SENに手伝ってもらいながら医務室に運んだ敷島は、この世界の事を教えてもらい現在の状況の把握を軽く済ませた。


「どこの世界でもゲッターに選ばれた者は、どこまでも運命の子というわけか……」


 別の自分敷島もゲッター線に纏わる者としてゲッターパイロットと関わりを持っていたと想定はしたが、まさか我が子のように鍛え育てたパイロットとは想定しなかった。


「ゲッターパイロットとしても少し甘すぎるが、優しさ…それが無ければ心も持たんか……」

「おじいちゃん、ゲッターのパイロットは優しさを持ってちゃ駄目なの?」

「そうじゃの、……ゲッターロボが戦う相手は強大だ、元は人間だった鬼百鬼帝国悪魔デーモン族復活した古代人アトランティス人生きながらえた機械化恐竜とその司令者メカザウルスとハチュウ人類……果に人と異なる進化を重ねた知的生命体インベーダーとも戦わないといけないのだよ」

 敷島が語るのは勇ましくもおぞましくも有るゲッターの歴史である。太古から現代に異界に未来、人ならざるもの達に足らず元は同じ人間でさえとも殺し合う呪いの運命。それ故にゲッターに関わる者は優しさを甘えとして捨て去らなければならない。


「しかし、その甘さを…思いを記憶や意志として引き継げる者達こそ真にゲッターに選ばれたパイロットというものなんじゃよ。まあそれは嬢ちゃん達KAN-SENも似たようなもんじゃがな」


 それでも敷島は知っていた。あの時、死の間際に知ったゴウと呼ばれたゲッター線により作り上げられた人造人間が戦う意思の意味を。思いを引き継ぎ、更にそれを積上げ戦う意思へと変えて困難に立ち向かう。それこそ見守ってきたゲッターチームの生き方であるのだから。それはKAN-SENにも変わらず存在していることも敷島は語ったのだった。そう、思いを引き継ぎ自らの意思で困難に立ち向かうことこそ進化の意味なのだから。


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「ええと、本当に敷島博士なん…ですか?」

「お主があの竜馬の息子じゃとな?親父譲りのその面構えは確かにそうだな。だがなんとまあ礼儀正しい子じゃ、余程良い親に育てられたんじゃろうな。」


 ユニコーンが予め連絡をしていたおかげで手早く合流出来た拓馬は、目の前に現れた大男が紛れもなく敷島博士である事を改めて実感した。夕食の献立の仕込みに参加していたのでエプロンを付けてはいるが油断はしない様に警戒を維持している。何せあの敷島博士だからどんな行動をするか読めないからだ。ただ昼の残り物を勢いよく残らず平らげるその姿は、間違いなく自分たちの知ってる敷島博士では無いのは確かだ。

 何せ拓馬が知っている敷島は全身をサイボーグにしており、食事をしているのかも怪しい背の低い怪人だった。だが、目の前にいる人物は背もとても高く丈夫な生身である証拠と言わんばかりに食事をしている。

 敷島はそんな拓馬を見てある程度の見当をつけていた。彼らの世界の自分がどれほどこのゲッターチームを鍛え上げたのかを理解して満足出来ているからだ。それに竜馬の息子と聞いてどんな暴れん坊が出てくると思ったら、強くも穏やかな心と激しい衝動を併せ持ったゲッターの申し子だったのだから、竜馬と子をもうけた伴侶の姿は1度は見てみたい。


「…はあ食った食ったご馳走様。さて改めて…儂の名は敷島。嘗て早乙女と共にゲッター線開発に携わったしがない科学者じゃよ」

「俺は流拓馬、アークチームのリーダーやらせてもらってます。外で食材運んでるのが山岸獏、博士が運んだのがカムイ・ショウ。それぞれ3号機【カーン】と2号機【キリク】のパイロットだ。アークは神司令と敷島博士が確保していた早乙女博士の作った最後のゲッターロボだそうだ」

「なに、早乙女の最後のゲッターだと!?早乙女に何があったか教えてくれないか?」


 拓馬は自信が知る限りの全てを敷島に語った。自分たちの世界の歴史、真ゲッターロボとドラゴンの果て、宇宙からの侵略者にして被害者である惑星ダヴィーン、早乙女研究所の生存者が流竜馬・神隼人・敷島博士を除き関係者は全員ゲッター線に取り込まれ消滅したこと。そしてアークチームの今に至るまでの話を。

 全てを聞いた敷島は静かに、ただ静かに手を合わせていた。


「早乙女…弁慶…元気…ミチル…竜馬…隼人…皆、皆逝ったのか。お前達もよくも…よくここまで頑張ったな」


 目をそらすこと無く力強く頷く拓馬を見て、それでこそだと敷島は穏やかに呟いた。


「お前達なら未来で見た恐ろしき運命も超えられるだろう、だがお前達だけでは対処出来ないことがある…

 ゲッターのメンテナンスだ。お前達はあくまでパイロットチーム、メンテナンスはある程度はできても専門的な所までは対応はできないだろう?だから儂が見てやろう」

「いいんすか!?…ってアークはまだ構造把握してないけど…」

「なに、世界は違えど基礎フレームを作ったのが早乙女の真ゲッターならばだいたいの基礎構造は似たものだからなんの問題は無い!」


 ゲッターロボのメンテナンス技能はパイロットであるなら、最低限度の必修科目として技能の習得はしているもののエンジン部であるゲッター炉心等の専門的な部分はやはり敷島博士等の高度な専門家が求められる為にこの申し分は拓馬にとっても非常に有難かった。

 それに加えこの敷島博士は真ゲッターに詳しい様で、兄弟機であるアークのメンテナンスも面倒を見ると宣言したのだ。

 この後、長門の元へと挨拶に向かった敷島博士はやけに恐れられる事に笑いながらに心地よかったそうな。


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