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いけいけ僕らの北辰
作者:エフィン◆w5dHlYLuiWA   2008年08月23日(土) 04時47分01秒公開   ID:GgopBDPWyuU
これは、あったかも知れない1つの世界のお話。


第0幕


「……終わった」

火星での戦闘を終え、1ヶ月が経とうとしていた。

憎き北辰を倒し、逃げ延びていた科学者共に死の鉄槌を下した。


色々と後始末を終えたアキトは、そう呟くと
瞳を閉じ、もう戻れないあの頃を思い出す。



ボロボロなアパートの一室で川の字で寝たこと。
なんだかんだで屋台に集まるナデシコの仲間達のこと。
いつも笑顔でいたユリカ。
少しずつ笑みを見せるようになったルリ。
ブルマ姿のルリ。
スクール水着のルリ。
ランドセルを背負って上目遣いで「お兄ちゃん……」というルリ。


「……」

どうやら厳しい戦いの中で、記憶が捻じ曲げられているようだ。
そう思いたい。

と、回想……もとい、妄想中のアキトの腕をちょいちょいと小さな手が引っ張る。

「どうした、ラピス?」

にやけた顔を見せないためか、振り向かずに問うアキト。

「……めーる」

いつの間に後ろに立っていたんだろう、と小首を傾げながらアキトは手元の端末を操作し、メールを開く。

『がんばれ』

「……これだけか?」

たった1文だけのメールに疑問を浮かべるアキト。
送信者はアカツキだ。
一体何をがんばれというのだろうかと考え込もうとした彼を、
再びラピスが腕を引っ張る。

「どうしたラピ……ス」

今度はラピスの方に振り向いたアキトの目に映ったのは……

「久しいな、復讐人!」

「ほ、北辰!!」

倒した筈の北辰が、ラピスの隣に立っていたのだ。

「まぁ、待て。 戦うつもりは無いぞ」

「何を……っ!」

瞬時に警戒態勢をとるアキトだが、そんな彼を片手で制した北辰は
その証拠にでもと、1枚の写真を彼に差し出す。

「これは……!」

「ふっ」

その写真に驚愕するアキトに、何故か誇らしげな北辰。
その2人を交互に見上げたラピスは、その写真が何か気になって覗こうとするが

「いやまぁまてラピス。 たいした写真じゃない」

と、瞬時に懐に仕舞うアキト。
銀色の髪をツインテールにした少女が写っていたような気がする。

「くくっ、やはり貴様は我と同じ生き物よ」

「悔しいが……認めてやる」

悔しがってるような表情は全く浮かべていないが。

「で、なぜ貴様がここにいる」

「うむ、ようやく聞いてくれたな。
 話せば長くなるが―――

    省略

 ―― であるからだ。
 ネルガルの長髪の軽そうな男にここに行けと言われてな」

「……(アカツキめ)。
 ちなみにいつからこのユーチャリスに乗っていた?」

「半月ほど前、貴様らが月基地に補給しに来たときからだが」

「らぴーす」

「わたしはしってたよ?」

「土産に月ひよこ(饅頭)を渡したら喜んで乗せてくれた。
しかもそれを分けてくれた。 いい娘だな」

「……(俺には分けないんだね、ラピス)」

「というわけで、暫く厄介になるぞ」

「どういうわけか知らんが、断る!
 大体お前は……」

反対したアキトの言葉を聞いた北辰はすぐさま懐から猫耳カチューシャを取り出すと、
近くに居たラピスに被せ、いつのまにか固まっているアキトに向かってにやりと笑みを浮かべる。

「ねこんさん?」

「ラピスに何するんだこの素敵な野郎め!!」

「ぐふぁぁぁ!!! いい拳だ、復讐人……」

バイザーで目元は隠れて見えないがきっといい笑顔を浮かべているアキトと
相変わらず悪役顔で笑う北辰に、見えない絆が出来かけた瞬間であった。



―― 数日後 ―――

「あの後何も答えてないが、結局お前まだ居るんだな」

「勿論だとも」



こうして、話は紡がれる。


――――――――――――――――――――――――――

第1幕






「……白鳥ユキナ、だな」

「!」

下校途中のユキナの目の前に立ちはだかったのは、編み笠・外套の妙な男だった。

「な、何よあんた!」

「くくくくっ……なに、そんなに恐れなくてもよい。
 少し頼みがあるだけだからな」

そういうと爬虫類っぽい笑みをスッと消し、真面目な表情に切り返る北辰。



「頼む!  我が『ゆけ、○カチュー!』と言ったら、『ぴっかちゅー』と言って貰いたい」

録音機器を設置しながらユキナに嘆願する北辰。

「……えっと」

「……(期待のまなざし)」

「……あーもう!わかったわよ!」

「そうか、助かる!……ぽちっとな」

そういうと機械のボタンを押した北辰は、嬉々とした表情を浮かべる。


「ゆけ! ピ○チュー! 電気ショックだ!」

「ぴーかちゅー!!」



「はいカットー! ……いや、助かった。 うむ上出来だ」

「はぁ……」

「無理を言ってすまぬな。 礼を言う」

満足げな感じの北辰は、彼女の手に何かを握らせると
シュタッと手をあげて

「ではサラバだ」

消えてったそうな。





残されたユキナの手には『世界一のぴかちゅー声の持ち主認定書 認定者・北辰』と
手書きで書かれたような紙が一枚。





「……なにあれ。 ……でも、ちょっと快感……」

ここに、北辰に人生を狂わされた人間が新たに……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第2幕


こら、何故逃げる。

ん? 絶対何か企んでいる、だと?

失敬な、我が奇策を考えられる頭を持っているとでも思うか?

ん、墓穴掘ってる? いや、そんな事は無いと思うが。

ともかく待て。 逃げるな。

……そんなに怯えるな、凹む。

そこで何故喜びを顕わにする。

っと、そろそろ逃げ道が無いぞ。

大人しく我の言う事を聞け。


……何をするつもりかって?

良くぞ聞いた! 妖精!

この服を着てほしいのだ!  え、即拒否? 勘弁




マジでお願いします。



え、土下座してもだめ?

ぬぅ、ならば仕方が無い……我が直に手を下してやろうぞよ!!

ふはははははは!

至高の(コスプレ)服を着る自分を喜ぶがいい! そして萌えろ我!


では北辰、いきまーーげふでゅぷ!?






な、ナイスパンチだぜよ 妖精


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第3幕


「はいアウト」

「いやまて、せめて我がどういった格好をしているのかだけでも

「断る。 精神衛生上悪い。 それ以上にラピスに毒だ氏ね」

「……最近の若者はこのようなこすちゅーむを着用すると喜ぶと聞いたのだが、駄目か?」

「確かに喜ぶだろうさ。 だが一言言っておく!」

ビシッと北辰を指差してアキトは叫ぶ。

「それは可愛い可愛い女の子が着てこそ萌える物だ!」

「な、なんだってっ!?」

「バリバリ野郎なお前が着てもキモイだけだ。 というかスカートな時点で気づけ糞」

「……では、ラピスに進呈する」

「了承 ――― お〜いラピス……あっ逃げた」

「恥ずかしがりやめっ この愛い奴」



初めて心が繋がった野郎二人は、全力で逃げるラピスをこれまた全力で追いかけるのであった。

*注* 北辰コスプレしたまま




野郎共の追跡劇は、スーパーバッタ×6を味方に付けたラピスの勝利に終わっていると
オモイカネのメモリーに保存されるのであった。




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■作者からのメッセージ
某チャットで書いたネタです。
HPにあるやつをミスって消してしまいましたが、
どうせならと、ここにあげちゃいました。

壊れた北辰、大好きです。

0幕の省略された部分は脳内補完してストーリーを楽しんで(?)ください。

テキストサイズ:5715

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