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Princesses' servant―For Answer― 第一話「白いゴーレム」
作者:ドッケン   2009/05/11(月) 23:55公開   ID:faF.fvGDguA
最初に
 この作品には独自解釈や独自設定などが盛り込まれています。
 また、キャラの性格が変わっている場合があります。
 そういったものがお嫌いな方は、閲覧をご遠慮ください。







 ここは何処だろう?
 私はさっきまで、魔法学院の自室で寝ていたはずなのに。
 きょろきょろと辺りを見回すと、何処までも続く荒野、緑は無く、所々に巨大な瓦礫があるだけ。
 私はゆっくりと歩き出しましたが、大地を踏みしめている感覚はありません。
「これは……夢?」
 ふと、私の耳にずしんという音が聞こえてきました。
 音がする方をみると、奇妙な形の山がみえます。
「何かしら?」
 よく見たい、そう思った次の瞬間、私はそれの下にいました。
 巨大な六本の脚、巨大な六枚重ねの羽、一瞬ドラゴンかとも思いましたが、首が無く無数に取り付けられた大砲、そして外装は輝く材質から金属とわかります。
「一体、これは!?」
 その時、大砲が全て同じ方向を向き、一斉に撃ち出されます。
 私はあまりの轟音に、耳を塞ぎ、大砲が向けられた先見ました。
 その方向から何か光るものが近付いてきます。
 よく目を凝らして光を見る。その中心には、両手を前に突き出した白いゴーレム。
 それも、この巨大なモノと同じ金属で、流線型の白い鎧を纏った……。
 光が一瞬弾けると、ゴーレムの背中から光の翼が現れます。
「白い、空を飛ぶゴーレム!?」
 ゴーレムはすばやく、巨大なモノの下に飛び込み、地面を滑るように移動しながら、両手に握り締めた筒から断続的に炎を放つ。
 恐らくゴーレムが手にしているのは銃なのでしょう。
 しかし、私の知っている銃は一発ごとに銃口から弾を込めなければなりませんが、あの銃は連続で撃つことが出来るようです。
 そして、それを乱射しながら、下に取り付けられた大砲を破壊すると、背中から光を放ち、宙へ舞い上がりました。
 私もそれを追いかけます。
 そして、私は驚きました。
 そこには白いゴーレムと同じようなゴーレムが無数にいたのです。
 白いゴーレムは、巨大なモノの上に着地すると、滑るように移動しながら大砲とゴーレムたちを破壊していきます。
 あちこちから黒い煙が上がり、爆発も起こり出しました。
 それを確認すると、白いゴーレムは光の翼を広げ、凄まじい速度で離れます。
 私も追いかけるようにそこから離れると、もの凄い轟音とともに巨大なモノは爆発しました。
 白いゴーレムは、立ち止まると満足そうにそれを眺めます。
 一体、このゴーレムはなんなのでしょう。
 いくら、夢の中だといってもこれは非常識すぎます。
 おそらく、このハルゲニア全土を探しても、これほどのゴーレムを作れるメイジはいないはず。
 それに、あのような巨大な建造物は聞いた事もありません。
 そのようなことを考えていると、ゴーレムの胸の部分が開き、一人の男の人が出てきました。
 歳は私と同じくらいで、黒髪の優しそうな顔をした人です。
「あの人がこのゴーレムを動かしていた?」
 男の人は寂しそうな表情を浮かべました。
「……こんなことをいくらしたって、死んだ連中は帰ってこないのにな」
 男の人がそう呟いたとき、ゴーレムの中から、音が響き、急いで男の人は戻ります。
「クソッタレ!アンサラーか!……もう少しがんばってくれ、ホワイトグリント」
 男の人がそう呟くと、ゴーレムの胸が閉じ、後ろを振り返りました。
 そこには先ほどとは比べ物にならない数のゴーレムと、灰色の雲を引き裂き降りてくる巨大な傘のようなもの。
『俺の名前はヒラガ・サイト!ホワイトグリントを継いだ、ラインアークの亡霊だ!!テメェらに殺された仲間の仇……とらせて貰うぜぇ!!』
 ホワイトグリントとは、恐らく白いゴーレムの名前。ヒラガ・サイトは先ほどの男の人の名前でしょう。
 ヒラガ・サイトという方の叫びは、まるで魂の叫び。
 悔しさ、憎しみ、怒り……。
 それらが込められた叫び。
 ホワイトグリントが光の翼を広げ、凄まじい速度でゴーレムの群れへ突っ込んでいきます。
 それと同時に放たれる無数の銃と傘のようなものに集まる、薄い緑色の光。
 私の中で何かが叫びました。
 アレは全てを破壊する光だと。
「ダメ!戻って!!」
 私は叫びましたが、恐らく届きはしない叫び。
 巨大な傘から光が放たれると同時に、ホワイトグリントも同じような光を放ちます。
 二つの光がぶつかった瞬間、目を開けていられないほどの光に私は包まれたのでした。




 ふと目を開ければ、そこは魔法学院の自室でした。
「あの夢は一体……」
 白いゴーレム―ホワイトグリント。
 黒髪の男性―ヒラガ・サイト。
 そして、あの叫び。
 ……一体、なんなのでしょう。
 その時、部屋にノックの音が響きました。
「姫様、お目覚めでございましょうか?」
 聞こえてきたのはメイド長の声でした。
「はい、起きていますよ。お入りなさい」
「失礼いたします。今日はとても天気がよろしく、恰好の召喚日和ではありませんか」
 ああ、そうでした。今日はメイジとして、一生涯のパートナーとなる使い魔を召喚する日でした。
 私はメイド長が準備した学院の制服に袖を通します。
「アンリエッタ、国の頂点に立つ者は様々な物をその目で見て、その身で体験する必要があります。
 そこで、貴方にはトリステイン魔法学院に入学してもらいます。
 様々な貴族や平民の方の子女、子息と交流を深め、今、この国に何が必要か見極めなさい。……というのは建前です。
 貴方が王位を継げば、もう自由は利かなくなります。今のうちに、同世代の子供達と目一杯交流を深めてらっしゃいな」
 母上がそういって、優しく微笑み、送り出してもう一年経ったのですね。早いものです。
 本来であれば、他の同級生と同じ扱いをしてもらいたかったのですが、警護の面で仕方なく魔法衛士隊の方々が何名かいらっしゃいます。
「姫様!」
 廊下に出るとピンク色の髪をした、小柄な少女―ルイズが手を振って走ってきました。
 彼女とは幼馴染で、よく宝物庫に忍び込んだり、王宮を抜け出して街に出かけたりしたものです。
 ……最も怒られるのも一緒でしたが……。
「おはよう、ルイズ。いよいよ、今日ね」
「ええ、いっつも魔法を失敗してバカにされているけど、今日は絶対に成功させて見せます!」
 ルイズは今の今まで魔法を成功させたことが無く、どんな魔法を使っても必ず大爆発を起こしてしまうことから、『ゼロのルイズ』とバカにされています。
 そのためか、今日は一段と気合が入っているようです。
「姫様はどのような使い魔をお望みなのですか?」
「私ですか?私は属性が水なので、水に関係したものでしょう。カエルとか水鳥とか」
「う、カエルはやめたほうが良いかと……」
 私がカエルといったとたんに顔色が変わりました。
 そういえば、貴方はカエルが嫌いでしたね。
「そういうルイズは何が望みですか?」
「……ドラゴンとかグリフォンとか言わないので、何か出てきてくれれば……」
 そういってルイズは暗い顔をしました。
「大丈夫です。必ず成功します」
「……だといいんですけど……」
 ルイズはそういってため息を一つつきます。
「ふふ、大丈夫です。始祖ブルミンのご加護がきっとあります」
 そういって、私はルイズに微笑みました。




 朝食をとった後、生徒達が学院内の広場に集められ、使い魔召喚の儀式―サモンサーヴァントが行われています。
 皆さん、カエルやジャイアントモール、梟など様々なものを呼び出し、中にはウィンドドラゴンなどというものまでありました。
「では、あなたの番です。ミストリスティン」
 髪の毛がやや後退ぎみの先生、ミスタ・コルベールが私に声を掛けます。
「はい」
 私は召喚用の魔方陣の前に立ち、杖を掲げ、目を閉じて深呼吸をしました。
「……我が名はアンリエッタ・ド・トリステイン。
 数多の世界に存在する我が僕よ!
 我は求め、訴える!
 気高く雄々しき使い魔よ!
 我が導きに答えよ!!」
 呪文を唱え終えると同時に、私は杖を振りおろします。
 その瞬間、ふと頭の中に夢に出てきたヒラガ・サイトという男性と、ホワイトグリントというゴーレムの姿が頭をよぎりました。
 そして、魔方陣が輝きだし、幾つもの稲妻のようなものが走り出します。
「こ、これは一体!」
 ミスタ・コルベールが驚きの表情をし、それと同時に魔法衛士隊の皆さんが私の前に立ちはだかります。
 徐々に、魔方陣の中からナニかが現れてきました。
 白い角、青く輝く目のようなもの、白い流線型の鎧と光の翼。
 まさかこれは夢に出てきた……
「……ホワイト…グリント……」
 私は誰にともなく小さく呟きました。
 魔方陣から現れたホワイトグリントはゆっくりと着地し、光の翼をしまいます。
「……これはゴーレム…なのか?」
 誰かがつぶやきました。
「す、凄い。流石は姫様。こんな見たこともないゴーレムを召喚するだなんて!!」
「なんて凄いんだ!!」
 皆さんが口々に驚きを口にします。
「さ、ミス・トリスティン、コレクトサーヴァントを。ゴーレムを召喚するなど聞いたことがありませんが、これはまさしくあなたが召喚したもの。
 早速、貴方の使い魔となさい」
 ミスタ・コルベールが私にコレクトサーヴァントを促しますが、ホワイトグリントは既に従者であるのです。
 そう、きっと私が召喚したのはホワイトグリントではなく、これを駆り、戦場を駆け抜けた男性―ヒラガ・サイト。
 私はフライを唱え宙に舞い上がると、胸の部分で止まります。
 それを確認するかのように、胸の部分が開くと、中には椅子に座り気を失っている男性が一人。
 その姿は、夢に出てきた男性と同じでした。
「ご主人を助けて欲しいの?」
 私の言葉に、ホワイトグリントが頷いたような気がします。
「ミスタ・コルベール!中に人がいます!気を失っているようです!!」
「何ですとっ!!」
 私の言葉にミスタ・コルベールはすばやくフライを唱え、同じ位置にまで上がってきます。
「な、なんと!このゴーレムは人が乗れるのか!」
「そんなことより!」
「おお!そうでしたな!!」
 そういってミスタ・コルベールは体を固定しているベルトを戸惑いながらはずすと、ゆっくりと地面に降りる。
「……息も脈もある。だれかこの者を医務室へ!」
「ならば、我々が運びましょう」
 ミスタ・コルベールの言葉に、魔法衛士隊の一人が手を上げる。
「いいか、いっせーのっ!」
 ヒラガ・サイトさんは二人の魔法衛士隊の人に抱えられ、医務室へと向かいました。
「……ヒラガ・サイト…ホワイトグリント……」
 私はそう呟き、ホワイトグリントを見上げます。
 まさか、夢に出てきたモノを召喚してしまうなんて……。




「……ここはどこだ?」
 俺はゆっくりと目を開け、周りを確かめる。
 どうやら、どこかの医務室みたいだな。
 俺はゆっくりと自分の記憶をたどってみる。
 確か、アンサラーと戦って、その時発動させたアサルトアーマー同士がぶつかり、発生した光に巻き込まれて……。
「なりません!どこの誰かも分からない者と会うなど!!」
「良いではないですか!あの者は私が召喚したのです!それなのに会うなとはどういうことですか!?」
「良いですか?あの者はあのゴーレムを操っていたのですよ!もしかしたら、ガリアや東方、下手をしたらエルフの手のものかも知れないのです!!」
「構いません!!」
 なにやら部屋の外から、若い女と男の言い争う声が聞こえる。
「うるせぇな……」
 俺はそう呟き、記憶をたどるため、布団を被ろうとしとき、ノックが響く。
「なんだよ、開いてるよ!」
 俺はぶっきらぼうにそう、返答すると、ドアが開き一人の女が入ってきた。
 女は白いドレスを身に纏い、頭に王冠を乗っけた美しい少女だった。
 おいおい、こんな格好した女が居るってことは、ここはクレイドルの中か?
 クレイドルは7000メートルの上空に存在する、巨大なプラットホームだ。
 俺が生まれる前に起こった国家解体戦争とリンクス戦争により、荒廃してしまった地上を捨て、新たな生活圏として生まれた。
 だが、そこに受け入れられるのは、企業関係者であり、俺のようなリンクスや兵士、貧困者は荒廃している地上で生き続けるしかない。
 クレイドルに住む連中の中には、変わった趣味を持った奴も居るという。
 きっとこの女もそんな奴なんだろう。
 後ろに控える男も中世の貴族みたいな格好しやがって。
 俺を拾った理由も、きっと自分の子飼いのリンクスになってもらおうって考えか?
 そんなことを考えていたら、女が俺のベッドの隣の椅子に腰掛ける。
 女は微笑みながら俺を見る。
「なんだよ?」
「貴様!何だその口の利き方は!?」
 俺に掴みかかろうとした男の手を女が押さえる。
「具合はどうですか?」
「……問題ない。てか、俺を拾ってどうするんだ?お前はGAか?それともインテリオル・ユニオンか?それともオーメルか?」
 俺の言葉に女は一瞬きょとんとする。
「じーえーとかいてりおるなんとかって何のことですか?ここはトリスティン魔法学院といいますが……?」
「はぁ?トリスティン魔法学院?」
 俺は記憶の中をひっくり返してみるが、そんな名前は全然覚えがない。
 ふと外を見てみると、俺の目に驚きの光景が見える。
 草や木々、それに夜空に浮かぶ二つの月。
 俺はベッドから飛び出して窓に駆け寄る。
 地上に草木はない。そりゃ、クレイドルにいけば多少はあるが、これほど綺麗なものはない。
 それに月は一つだけだろ!!
「な、なんだここはっ!?」
 俺は女に掴みかかる。
「こ、ここはハルゲニア大陸にあるトリスティン王国ですぅ!わ、私はアンリエッタ・ド・トリスティンといいます!!」
「放せ!ばか者!!」
 俺はアンリエッタとかいう女の隣に居た男に、引き離される。
 ベッドに倒れた俺は頭を抱える。
 まさか…まさかとは思うが……。
「おい、国家解体戦争、リンクス戦争、アーマード・コア、アームドフォース、GA、インテリオル・ユニオン、オーメル・サイエンス。これのどれかでも知っているか?」
「……申し訳ありません、どれも聞いたことがありません」
「…嘘…だろ」
 今俺のいったことはどれもこれも、俺達の世界では有名なものばかりだ。
 いくらクレイドルの人間でも知らないわけがない。
 アンリエッタだけじゃなく、隣の男も首をかしげている。
「俺……小説の主人公みたいに、別世界に着ちまったのか?」
「あ、一つだけ分かるものがあります」
 俺はアンリエッタの声を聞いて顔を上げる。
「貴方の名前がヒラガ・サイトで、貴方の乗って来た白いゴーレムがホワイトグリントということだけは」
 そういってアンリエッタは、にこりと微笑んだ。


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■作者からのメッセージ
初めまして、ドッケンと申します。
皆様の作品を読みながら、自分も書いてみたいと思い書いた次第です。
ゼロの使い魔とAC4FA、しかもお姫様がヒロイン。
無謀な挑戦かもしれませんがよろしくお願いいたします。
テキストサイズ:11k

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