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オリー主と思ったら違った様です。
作者:くま   2009/10/03(土) 22:05公開   ID:2WkxvL3EczM

※正直、いろいろと酷い事になってます。

 オリ主、性格改変、原作レ○プ、ネタ、なんでも在りです。

 特に原作を大事にされる方は、戻ってください。

 今日から俺は!!……じゃなくて、それでも俺は!という方は先に進まれたらいいかと思います。

































アレは確か俺が3歳の誕生日を迎えて1週間もしない頃のことだったと思う。

チープな展開では在るのかもしれないが、唐突に前世の記憶と言うものを思い出し始めた。

およそ三日間、高熱で寝込んだ甲斐もあり、殆どの前世の記憶を取り戻した俺。

幼児期から天才プレイで、俺の人生勝ち組。

と簡単に喜べるような安易な前世は送ってなかった。

この先の小中高程度までの学業的な成績は、

前世の記憶のおかげでかなりの成績で行けるとは容易に予想できる。

前世でも努力して出来た…というか努力した分は出来た子だったので、

相応の知識は身につけていたからだ。いわゆる秀才君だったのだ。

まあ逆に言えば秀才でしか無いわけで、天才には勝てない事も良く知っていた。

同時に試験の出来が良いからといって、

それが人生において大した意味合いを持たないのも経験から知っていた。

簡単に俺の人生を振り返ればそれも頷けるはずだ。

小中高とコツコツ努力して、そこそこの大学に入った俺は、

在学中にもコツコツ努力してけっこうな大企業に就職できた。

が、その大企業が不祥事を起こして俺のいた部門ごと閉鎖を決定。

同時に事を起こした上司とは責任的には無関係だった部下の連中も含めて俺の首もトンだ。

理由は報告義務違反とかそんなものだった。

というか、俺が入って1ヶ月ぐらいだったし、まだ右も左もよく解らない状態だったんだが、

対外的なポーズも含めての全員の連帯責任ということらしい。

その後口封じの意味合いもあってか、

その企業の傘下にあった中程度の規模のブラック企業に就職の斡旋をされた。

もちろん良く解ってなかった俺は、勧められるがままに再就職しちまった。

その頃はまだ、努力すればその分報われると信じていた俺は、

本社からの斡旋野郎と言うレッテルで差別を受けながらも、結構頑張った。

それなりの結果を出したその後、待っていたのはより酷い差別というかいじめだった。

流石に人間不信に陥って精神的に参り、体調不良による休職にまで追い込まれた。

その時の上司に言われるがままに受けた精神科では、

仰々しい病名を貰って、それを理由に会社は俺を解雇。

金銭的な解決をされて、会社から俺は放りだされた。

その後も病名を持っているおかげで、中々就職できずにいた俺なんだが、

在る日通い詰めていたハローワークであっさりと死んだ。

順番待ちに耐え切れなくなったDQNが振り回した椅子が、俺の頭にクリティカルヒット。

脳挫傷だかそんなんであっさりと他界する破目に。

身体の感覚がごそっと失くなって、走馬灯を見た事まで思い出したのは少し怖かった。

まあ、最後は大して痛みを感じてなかったのが僥倖かもしれない。

まあ、そんな前世を送っていたおかげで、

俺は幼児期からの天才プレイとかに興味が無くなっていたんだ。

どちらかと言えば適当にやりたい事をやって、適当に生きていこうって思ってる。

まあ、3歳児でそんな決意をしているのは異常だとは自覚していたけどな。

そんな風にどんなに知識があろうとも、当時の俺は3歳児でしかなく、

シングルマザーでお水な系統で働く母に、

それこそおんぶに抱っこになりながら生きて行くしかなかったんだ。

その後、割と重要なな事件が起きるのは俺が8歳の時。

シングルなはずの母が出産し、俺に妹ができたんだ。

妹に付けられたのは俺と同じでごくありふれた名前で、

DQNネームで無くて良かったと俺は心底思っていた。

で、シングルなままで生む決断をした母に、

父親って誰よ?と聞けるほど俺は悪い子にはなれなかったので、妹の父親が誰かは知らなかった。

お店のお客らしいってことは母の電話とかで溢れた話から察したが。

母親の妊娠が解ったその前後ぐらいからだろうか、

お隣の高町家との親密な付き合いが始まったのは。

高町家の母である桃子さんもウチの母と同時期ぐらいに妊娠したのが、

より積極的なお付き合いが始まったきっかけだろう。

母親同士が仲好くなれば、当然子供同士も普通は仲好くなるもので。

向こうは兄妹で、妹が同い年の美由希ちゃんで、兄が2つ上の恭也君。

で、今度生まれた末っ子がなのはちゃん。

アレ何ぞ聞いた事在るなーと前世的な記憶をほじり返し、とらハorリリカルなのだと結論を出す。

その時にZZGの主題歌が頭のなかを運ったのはご愛嬌だろう。

俺がどう思うと、この世界は俺にとってのリアルでしかないのは確かな訳で。

俺は高町家のお隣さんとして生きて行くだけなのだ。

大魔王からは逃げられないって言うしね。

当初こそ親がシングルな分、ウチが高町家にお世話になる事が多かったのだが、

その恩義を返す機会は悪い知らせと供にやってきた。

高町家の大黒柱である士郎さんが大きな怪我で入院したのだ。

始めたばかりの喫茶店もあって、途端に忙しくなる高町家の面々。

俺がダイレクトに手伝える事は無かったが、

家に残される事になったなのはちゃんの相手をするぐらいの事は出来た。

まあ、ウチにもなのはちゃんと同い年の妹がいたし、その遊び相手にも丁度良かったのもあるしな。

「なるほど、光源氏計画発動と曰う訳だな、兄者よ。

 普段の行動からペドフィリアで無い事は確認してるが、

 自重した方が良いと妹としては忠告しておこう。(戦闘民族高町家的な意味合いで)」

お前本当は何歳だよ?と突っ込みたくなる妹の発言はスルーし、今日も今日とて高町家へと向かう日々。

ウチより高町家の方が広いし、遊び道具もそろってるのが理由だ。

生まれた頃からの付き合いもあるし、毎日の様に顔を合わせていた事もあって、

なのはちゃんも俺に随分と懐いてくれた。

で、賢しいはずの妹は逆になのはちゃんにべったりで、俺的には妹の将来がいささか心配になった。

百合的な意味合いで。

何を幼女相手に興奮してるのかと小一時間……。

そんな風になのはちゃんが懐いてくれた事に、

嫉妬しないわけが無いのが、高町家のシスコンオブシスコン。

高町家の道場で、稽古と称された一方的な暴行を受けるはめに。

士郎さんから、高町家の兄妹と一緒に剣の教えを受けていた時から、在る程度は予想していた展開だ。

通り雨の後に外で遊んで泥だらけになったんで、妹と一緒に風呂にいれてやっただけなのだが、

何が気に食わなかったのか割と疑問だった。

むしろ俺よりも、なのはちゃんとの入浴にテンション上がりまくりだった妹の方こそ、

如何にかすべきじゃないかと俺的には思ったんだが。

そんなこんなで割りと親しい高町家のお隣さんとして過ごすこと数年。

なのはちゃんからなのはに高町家の末っ子の呼び名を変えてからしばらく経った頃。

士郎さんが大怪我で済んだ事から覚悟はしていたが、なのはにリリカル的なイベントが発生した。

結論から言うとほぼ原作通りの展開になった。

お話し聞いて砲撃魔法のなのはの大活躍で、最後には泣き笑いでリボンの交換の儀式へってな感じだ。

その光景をウチの妹がハァハァ言ってたのを見て俺は改めてこう思った。

ダメだこいつ、はやく何とかしないと、って。

ただ予想外だったのが、俺が魔導師としての資質を持っていた事と、妹が異能に目覚めた事だろう。

俺の才能は予想通り大した事がなくて、レアスキルなしの魔力量が普通より多いというもの。

努力次第である程度までは行けるが……といういかにも感じだった。

一方妹の方は魔導師としての才能は無かったが、チート全開の異能持ちへと転身。

左手の制御可能な幻想殺しモドキなその左手と、

同時にかつ全方位3mの範囲に展開可能なベクトル変換領域。

疲労による制限時間はあるらしいが、まさに無敵な要塞と化すことも可能な変態的異能だった。

「これでかつる!私のハレム計画の発動だ!」

とか言ってたので取りあえずゴンと拳固を入れといた。

アレだ、能力のネタが一方通行なら、殴れないことも無いんだよな、原作的なやり方で。

もちろん、そんな異能持ちだからといって、死者の蘇生とかは当然出来るはずも無いのも道理で。

なのはと一緒に行った時の庭園?では上条さんばりに紫ママをぶん殴る事しかできなかったらしい。

結果待ってたのは左腕の骨折。

妹は俺と違って身体の方はまるで鍛えて無いから当然の結末だろう。

ま、その時の俺はアースラで待機だったけどな。

魔力はあったが魔導師としての鍛錬などした事のない俺は、

戦力外通告されて指をくわえて見てることしか出来なかった訳だ。

ちくせう、天才なんて大嫌いだ。

で、その後A’sの展開はほぼ原作壊滅的な感じだった。

最初こそ原作通りになのはが襲われたんだが、その隣に居たのがウチの妹。

ヴァルケンズを一方的にボコる以前に、張られた結界を左手で破壊して、

二人してあっさりと逃げたらしい。

その後、なのはの反応が消えた事に駆けつけたフェイトと感動の再会。

まあその時も、妹は相変わらずハァハァ言ってたらしいが。

団体行動するようになった年少組の次に狙われたのが俺。

一応リーダー格の剣士とは良い勝負はしたんだが、多勢に無勢であっさり敗北。

ヴァルケンズの本気があの程度の技量なら、高町家の面々なら勝っていた事が予想できるだけに、

俺は暫く凹んだものだ。

俺の攻撃が当たっても尽く通らなかったのが敗因なのだが、あの戦闘民族は色々と違うからな。

同い年の美由希は俺より数段上だし、恭也は言うに及ばず、

引退したはずの士郎さんなんて俺的には雲の上の存在だ。

うん、まあ努力はしてるんだけど、剣士として人並みの才能しか無いらしいんだよね、俺。

そんな不甲斐無い俺の仇討ち……なんかではなく、

単になのはに襲い掛かった不埒な輩の排除ってことで、今後は高町家から恭也が参戦する事に。

どうやってか八神家の住所を調べ上げてきたウチの妹と供に襲撃をかけて、

あっさりとヴァルケンズを撃破。

妹がすぐ壊すんで結界を貼れず、全力も出せないうちに恭也に一人ずつ潰されたらしい。

んで色々とお話し合いの結果、闇の書を如何にかしないとって事になった。

その対策として、妹の幻想殺しモドキが大活躍。

悪影響のでるプログラムだけ選んで抹消して正常化したらしい。

何と言うチート能力。後で聞いた俺は呆れ返るしかなかった。

で、コレにはヴァルケンズプラス1名も大感激。

八神嬢も妹に抱きついて感謝を示したらしい。

マイナスの影響としてはユニゾンとかは出来なくなったらしいけどね。

「フハハハハ!ついに来た!これぞ私ハーレム!」

まれに見る活躍で調子に乗ってた妹は、そんな事を言っていたらしい。

「……その中にはなのはも入っているのか?」

直後の恭也からの投げかけに鷹揚に頷いて、きっつーい拳固をもらったそうだ。

いいぞ、もっとやれって俺は思ったね。

で、その後の処理としては、八神家にあったのは闇の書ではなくて夜天の書だってことして、

管理局に対しては白を切る事にしたそうだ。

無論、管理局側で色々とゴタゴタはあったらしいが、

魔法至上主義的な概念がどうとかで、結局追求しない事になったそうだ。

どうやら魔法が剣術よりも下だって事を容認できなかったらしい。

俺はその間ずっと寝込んでたんで、全部が全部、終った聞いた話なんだが。

でまあ、その後はたいした事件も無く、無事に高校の卒業を迎えたんだ。

一応は進学を選んだんだが、自分の未熟さを思い知っていた俺は、

2年間の休学届けを出して、修行と見聞を広げる為の旅に出た。

で、その旅の最初の目的地だったアメリカで、

ふらふと適当に歩いていたら、なんとなしに事件に巻き込まれた。

殺人の目撃をしちまって、結果、追われる側に回った俺。

追い詰められて殺られちまう筈だったんだが、

何の手違いか才能とやらを認められて組織に組み込まれる事に。

その際に記憶とか消されて、数ヶ月前にぼんやりとは思い出したんだが、

はっきりと思い出せたのは昨日の晩。

コレまで途中ハンパだったのは、俺が自身で魔法に関する記憶を封印していた所為だった。

その記憶の開放に釣られて、色々と思い出したこともあってな。

取り戻した記憶と照合して、俺が本来的に何者なのかって事を改めて自覚した訳だ。

オリ主だと思ったら、実は憑依でした。

一文で表現すとそうなるんだが、其処のところどう思う?


「ゴメンねレイジ。

 わたし、レイジの言ってる事が良く解らないよ。

 でもね、魔法とか本気で言ってるなら、病院へ行った方が良いんじゃないかな?

 良い病院を探さないといけないだろうけど、多分そこではみんな親切にしてくれるよ?」


きっちりかっきり思い出した俺から振られた話に、心配そうにこちらを覗きこんでくる少女。

取りあえず俺は、心配してくれてありがとう、と返しながら、

少女ことキャル=ディヴェンスの頭を撫でてやる。

えへへと嬉しそうに頬笑むキャル。

その笑みに頬を緩めつつ、今後の原作の展開を思い出し、何とかしないとなーと思考を廻らせる俺。

そうしてこの瞬間から、吾妻玲二に憑依した俺による、原作破壊が開始された。

































先ず先にやるべき事は嘘を暴露すること。

という訳で翌朝、キャルに色々と説明をする事にした。

朝食の後、真剣な話をすると言い、キャルを食器を片付けた後のテーブルに付かせる。

用意したのはキャルから渡された500万ドルの入ったカバン。

それをテーブルの上に投げ出して、キャルからの依頼のキャンセルを告げる。

当然食って掛かってくるが、暫くは言いたいだけ言わせておく。

そして落ち着いた頃にこちらから切り出した。

先ずは金の出所の問題。

この金自体がヤバイ金であること。

今現在もこのロスのギャング団ブラディーズに探されているシロモノである事を告げる。

そして同時にキャルがどのような経緯でそれを手にしたであれ、

ブラディーズの追求を逃れるものではない事を話す。

相手は押しも押されぬギャング団だ。

拾っただとか偶然手に入れただとか、そんな理屈が通る相手ではない。

更に俺がこの金を受け取った場合には、俺自身がブラディーズから狙われる事になるとも付け加える。

ブラディーズのボスであるワイズメルが此処に乗り込んできた事を思い出したのか、

反論が出来ずに黙り込んでしまうキャル。

慰めは後ですると割り切り、俺は更に話を続けて行く。

次に話すのはキャルが俺に依頼した相手の範囲。

あの晩の関係者全部を殺して欲しいという依頼が、実際には実行不可能であることを告げる。

恐らく、ジュディを撃った輩はあの場で死んでいた事、

俺が属する組織が殺されたヤツラの取引相手であり、

あの晩の取引に俺も立ち会う予定だった事も暴露する。

ついでに俺が属するインフェルノと言う組織に付いても語る。

インフェルノの概念とかはあまり理解はされなかったようだが、

俺の立場、つまり所詮は組織子飼いの殺し屋でしかなく、

金を積まれただけじゃ動けない事は理解された様子だ。

ギャングどもを殺してるからと言っても、俺は決して正義の味方なんかじゃないのだ。


「……結局、わたしが死んじゃったジュディの為にして上げれる事なんて何も無いんだね」


そう言って落ち込むキャル。

まあ、まて、まだ慌てる時間じゃない、と諭して、さらに話を続ける俺。

原作を思い出したトリッパーの本領発揮はここからなのだ。

取引の相手の日本のヤクザとインフェルノには手を出すわけにはいかないが

、今回の取引の邪魔を画策した輩が別に居て、

こちらの慌て様を陰で笑っているそいつこそが、この件の犯人のようなものだと説明した。

そしてキャルの目に冥い意思の光が戻る。


「全部なんてもう言わない、そいつだけ、そいつだけでも殺して。

 お金じゃダメなら、わたしができる事なら何でもするから。だから、そいつだけは絶対に殺して!」


縋りつくように俺に訴えて来るキャル。

俺はキャルの頭をかるく撫でてやりながら、こう答える。


「安心しろキャル。俺自身そいつには少しばかり借りがあるんでな。

 お前に頼まれるまでも無く、借りは返すつもりだったさ」


旅に出た俺は魔力養成ギブスと魔法に関する記憶の封印を施し、

同時に身体的にも負荷をかけた状態で日常生活を目標としていた。

ステルスの為に足首の皮膚と同化させる様に偽装したインテリジェントデバイスは、

同じ魔法文明の探査でもよほど精密に行なわない限り引っかからないシロモノにした。

それらのリミットが切れたのが一昨日の事。

負荷状態とは言え、敗北したのは事実で、

その後にヤツから受けた記憶の封印で、更に俺の記憶は曖昧なものに。

敗北したとは結果的に言え生き延びた俺が、記憶を取り戻し復讐する機会を得た事も事実。

そして俺は復讐の為の一歩を踏み出す事にした。

小太刀の形状に仕立てたインテリジェントデバイスを展開。

サーチスフィアを形成し、鈍くガンメタリックに輝くそれらを街中へと解き放つ。

ふと気付いて視線を運らすと、そこにはぽかーんとした表情のキャルが居た。

まあ、目の前で起こった事が信じられないって処なのだろう。


「昨日、言っただろう、俺は魔法が使えるってな」


「……レイジ、頭の病気じゃなかったんだね」


割と失礼な言葉を返してきたキャルに、俺はぐりぐりとウメボシを御見舞いするのだった。

サーチスフィアでヤツを探している間。

記憶を完全に取り戻した俺は日本に連絡を入れていた。

理由は良く解らないが電話が上手く繋がらなかったんで、

妹とのチャットのやり取りに成ったんだが、それはこんな感じだった。


『妹者、久しぶり、元気だった?』

『もしかして兄者か?元気だ、つーか着々とハレム計画進行中ww。

 私は心配して無いが、なのはが心配してたので、砲撃喰らう覚悟しるww』

『うは、それはしねるw。実はオレ、最近まで記憶喪失してたぜwww』

『思わず紅茶吹いたwwドコの寒流の主人公ですか、おまいはwww』

『寒流じゃなくてソレなんてエロゲ主人公(笑)ですが何か?

 ちなみに今も少女と同居中、俺、勝ち組だな』

『な、ナンダッテー(AA略)』

『しかし、コッチに置いてくとヤンデレ化するので、お持ち帰りするからヨロ』

『おk、掌握。取りあえず通報しとくぜ、高町家になwww』

『ちょ、おま、それは勘弁しるww』

『少女写真うぷで考える』

『ミリ、デジカメとかねーしw』

『じゃ、ケータイで』

『ガラパゴスはコッチじゃ売ってねー』

『マジで?』

『マジで。つーか、うぷしても証拠付き通報するつもりなのが、まるっとお見通しの件』

『バレたかwww』

『それと、もうひとりぐらい増えるかもだが、今の処未定。ゴタゴタしてるんで、暫くかかる予定だし』

『へー』

『興味無しかよwww』

『ソンナコトナイヨ、シンライノウラガエシダヨ。

 つーかそんな面白イベント目白押し羨ましすぐるwww』

『イベントいうなww。そっちは何も…ってなのは襲撃の件どうなった?』

『ぶっちゃけ、ハレム計画の邪魔なので粉砕したぜwww』

『流石妹者、敵には容赦ないww』

『まかせろwww。あー、あとイベントじゃないけど、ちょっとした事が判明』

『?』

『アタシの親父なんだけどさ、何でもどっかの極道で若頭やってるらしい。

 結構デカイトコだって話だけど、これって勝ち組フラグだと思う?』

『むしろ死亡フラグじゃね?そのヤーさんの組織のだけどなwww。

 高町家的なお話し合いで壊滅とか、かわいそうすぐるwww』
 
『ですよねーww。まあ、最近、コッチもなのはと一緒に剣術始めたし、最強への階段を急上昇中。

 ゴドウグミだかミルクキャラメルだかも纏めて粉砕!!玉砕!!大喝采!!するぜw』

『そういう台詞は☆KYOUYA☆を倒してから言うべき』

『ソレなんて無理ゲーwww土下座して許しを請わざるを得ない』

『ソレよりもオレが☆NANOHA☆に土下座して許しを請わないといけない件』

『それは確かにwwwたぶんブレイカー3本ぐらいで許して貰える予感www』

『むしろバスター5本プラスでも許して貰えそうにない悪寒』

『ダレウマwww』

『メシウマ……になって欲しいのですがwww』

『無理じゃね?』

『ですよねー、あーそろそろ仕事行くわ、またな、ノシ』

『ノシ』


うん、まあアイツも変わり無いって事で安心した。

まあ日本へ帰る事を考えると、ちょっとウツに成るけどな、砲撃的な意味合いで。

チャットの感じだと、在る事無い事含めて俺の無事ぐらいはなのはに伝わるだろうから、

取りあえず安心だな、うん、そう思いたいというのが正直な処だ。

そんな風に昨日買って来た中古のノートPCの前でカチャカチャやってたのが物珍しかったのか、

キャルが画面を覗き込みながら俺に聞いてくる。


「レイジ、何してたの?」


「ああ、日本に居る妹と久しぶりに話をね。そういやキャルはパソコンとか触った事無さそうだな?」


「うん、ウチにも無かったし、そういうのに触る機会はなかったよ」


「そうだな、分解しないなら、俺が居ない間好きに触ってて良いぞ。

 まあ、この程度のじゃ、大した事も出来んけどな」


「ホント?あーでも何をすればいいのかな?」


「最初の内は、サイトでも適当に眺めとけば良い。

 触ってるうちに色々覚えてくものだしな。

 じゃあ、キャルのID作っておくから、ログインはそれでする様に」


「うん、解った」


そんな会話を交わして、仕事に出かける俺。

今の任務は、クロウディアからの指示で梧桐組の連中を餌に、鮫釣りを続行中。

まあ、監視はぶっちゃけサーチスフィアを付けとけばおkなので、

魔法を思い出した今となってはちょろい仕事でしかないんだが。

というか、さっきから何か頭の隅に引っ掛かりが…。

あーそうだよ、梧桐組だよ。

妹が言ってたゴドウグミって、俺が今餌にしてる梧桐組のことじゃね?

しかも若頭ってまんまストライクじゃねぇか。

流石、オリ主な妹だな。生まれからして奇妙なフラグを立ててくれてるとは。

義理とは言え父親に死なれて、妹はともかく母親に泣かれる可能性は排除したいと言うところ。

そんな訳で原作から完全に逸脱するイレギュラーな行動開始する事に。

ます俺が向かったのは梧桐組のメンバーが待されている高級ホテル。

正直真正面から当たってみて通るとは思えないが、

何もしないよりはまし、と切り替えて出入り口を固めてた若い衆を通じて面会を申し込む。

クロウディアの名前を出し、門前払いだけは避ける様にした。

部屋の備品を借りて一枚のメモを作り、

ソレを折り畳んで目的の人物だけに見せるように言付けて手渡す。

見ようと思えば誰でも見れてしまうが、そこは梧桐組の人員のレベルに賭けるしかない。

メモを渡してから5分後、俺は部屋の中へと通された。

険悪な雰囲気の中、俺は謝罪と供に今回の訪問がプライベートな事項によるものだと告げた。

盗聴の可能性アリ、出来れば身内の筆談で。

と言う俺の意向をどうやら汲んでもらえたらしく、他の組員がカラオケで歌い始めた中、

俺と若頭と側近のメガネ君で他愛ない話をする振りをしながら、メモを回し始めた。

先ずは自己紹介。俺が先に渡したメモに書いたのが、

妹が生まれる前に母が働いていた店の場所と名前と源氏名だ。

その女性が自分の母だと主張。

証拠は無いに等しかったんだが、何故だか若頭は俺の言う事を信じてくれた。

俺の生意気そうな目が、当時女性に見せてもらった息子の写真にそっくりだって理由でだ。

次に告げるのは、俺の妹の存在。

あんたには娘が居る、ってな事を突然知らされた男の表情を十分堪能させてもらったとだけ言っておく。

色々と思う所があったらしく複雑な表情を見せる若頭。

ある意味置いて行かれていた側近のメガネ君に向けて、個人的な忠告をする事に。

つまりドクターギュゼッペ=サイスマスター=1年前に梧桐組とクロウディアにババを引かされた男。

この情報にはメガネ君は勿論若頭も表情を変える。

殺気立つ彼らに向けて、俺は個人的な忠告を続ける。

クロウディアへの復讐と自身のインフェルノへの復帰、その為の捨て駒にされる公算が高い事。

そして現に四人の犠牲者を出している事も合わせて指摘する。

なおも食い下がりそうだったので、

今回の取引の情報を得て、かつ両組織に関り無く自由に動かせる伝手を持って居るのが、

ドクターギュゼッペことサイスマスターであるとも指摘する。

ヤツの手札である前ファントムのエレンの手にかかれば、

警戒体勢を敷いてない4人程度の殺害は容易なものである事も付け加えて。

そして、今回の件とは別に俺自身がヤツに対する借りがあり、

それを返す為に行動している事も伝えておいた。

悟桐組が如何判断するかは不明だが、あわよくば情報を得ようという算段での情報提供だった。

一通りの事を話し終えた俺は、連絡先の番号を渡し、その場を去る事にした。

未だ考え込んでいる若頭と側近のメガネ君を残して。

それから3時間後、俺は梧桐の若頭から連絡を受けた。

梧桐組はサイスマスターを切る事を決断したというものだ。

どうやらクロウディアと連絡を取り、サイスマスターがギュゼッペである事を確認したらしい。

丁度いい事に展開したサーチスフィアも、ようやくサイスマスターの居場所を突き止めた処だ。

ただ、今すぐには行動を起こせない。

都合悪く、ヤツがエレンと行動を供にしていたからだ。

俺は二人にそれぞれサーチスフィアを付け、二人が別行動を取るタイミングを待つ事にした。





二人の周囲をサーチスフィアで探る様にしてから1日半後。

何らかの指示を受けたエレンが、サイスマスターの元を離れて別行動に移った。

サイス自身は華僑系のマフィアの賓客として引きこもっており、動く気配がない。

巡って来た好機に行動を起こすことを決めた俺。

更に幸運な事が起こる。

サーチスフィアで探られている事を感じたエレンが、

何者かに監視されている事をサイスマスターに報告。

結果、エレンは一時的に行動を止め、監視を振り切る為にこの街からしばらく離れる事になった。

エレンがハイウエイの向こうの街への移動を開始したのに合わせ、俺も行動を開始する。

襲撃の決行は今晩。

ゲストを一名連れてというハンデは在るが、魔法を思い出した俺は何も不安を感じてなかった。

銃弾程度なら寡黙な俺のデバイスが自動で防いでくれるし、

そもそもが普通の銃弾ではバリアジャケットを貫けないのだ。

サーチスフィアで敵の隠れている場所も察知でき、そこへ障害物を回りこみつつ攻撃出来る魔法もある。

まさに反則としか言いようの無い、至れり尽せりな状態なのだから。

が、不安要素が無い訳でもない。

身体的負荷を開放した状態で御神の技を使った事が無いというものだ。

今の状態で闘ってみない事には、戦闘による負荷がどの程度のものになるのか、良く解らないのだ。

今回、御神の技を使う予定は無いが、用心するに越した事は無い。

常に最悪を想定しろ、現実はその斜め上を行く。

というのは良く言われる台詞だしな。


「あの、ホントにわたしが着いて行っても良いの?邪魔じゃない?」


と心配そうな声を上げるのが、今回のゲストであるキャルだった。

連れて行ってくれと言い出したのはキャルの方だったのだが、

事を目の前に構えて不安になってきたんだろう。

実際、件の華僑系マフィアの屋敷に出入りしてるのは、見た目からして屈強な男達ばかりだしな。

経験から言わせてもらえば、ああいうあからさまな輩よりも、

もっと普通に見えるヤツの方が厄介だったりするんだがな。


「安心しろ。お前は何も気にせずに、黙って俺の後ろに付いて来れば良い」


キャルの頭にポンと手を乗せ、諭すように告げる俺。

その不安を完全に払う事は出来なかった様だが、肯定の意味を表すようにキャルは頷いて答える。

そして俺はキャルを促しつつ、件の屋敷から300mほどの距離を残して車を降りる。

デバイスを展開し、先行する形でサーチスフィアを飛ばす。

先行したサーチスフィアからの情報を元に、次は攻撃用のスフィアを飛ばして行く。

特別得意と言うわけでも無いので、俺が同時に展開できる攻撃スフィアの数は5個。

今はサーチスフィアも同時に展開しているので、3つが上限だ。

とは言え、魔導師でもないマフィアの面々が、俺の攻撃スフィアに抵抗できるはずも無い。

俺が歩きで近づき屋敷の正面に立った時、警護役を含めた全ての連中が床に倒れ附していた。

まあ、攻撃スフィアは非殺傷設定にしたんで、死んでは無いが。

おっかなビックリな態度で着いて来るキャルと供に、そのまま屋敷の中へと俺は進む。

此処に着くまでと同様に、視界に入る前に攻撃スフィアを打ち出して敵を打ち倒し、

貼り付けたサーチスフィアの情報を元に、迷わず目的の人物が居る部屋へ。

護衛役とおぼしき倒れていた二人の男を跨ぎ、そのまま部屋の中へと入る。

室内のテーブルの処で倒れている人物を無視し、備え付けのクローゼットの前に立つ。

魔力刃を展開したデバイスで折り戸を切り裂き、ようやく姿を露にした人物に声をかける。


「久しいな、サイスマスター。そして、さよならだ」


俺が言い終えるよりも早くヤツの右手が動き、そしてその手の中で銃が暴発する。

無論偶然ではなく、向けられた銃口へ俺が飛針を撃ち込んだのが原因だ。

その次の瞬間、俺は技も何もないただの斬撃でヤツの首を跳ね飛ばす。

ゴトリと頭が落ち、頭部を失った身体は鮮血を撒き散らしながら床に倒れる。

原作とはかけ離れたヤツの呆気ない最後だった。

用意していた不透明なビニール袋の一つをキャルに押し付け、俺はヤツの頭部を回収。

倒れた身体の方も弄り、懐からヤツの使っていた携帯も回収する。

その後はキャルの吐き気が落ち着くまでその場で待ち、

顔色の戻らない彼女を連れて、抵抗らしい抵抗も受けぬまま屋敷を出た。

追跡者が居ないことを確認して車に乗り込んでもなお、キャルの具合は悪そうだった。

目の前で、殺意を伴った殺人を見せ付けられたのだから、仕方が無いのだろうが。

屋敷からある程度離れた処で車を止めた俺は、

後部座席のシートを倒しキャルに横になって休む様に言いつける。

精神的にかなり参っていたのか、キャルは何も言わず俺の言葉に従って横になった。

自らが望んだ殺人に対する罪悪感、というのもキャルを苦しめている一因なのだろう。

原作の吾妻玲二もそう云った事に随分と困しんでいた様だが、俺は既に割り切れていた。

御神の剣の修行の内に、人を殺める事も当然に入っていたからだ。

俺の場合は同い年の美由希より2年遅れての実戦参加だったけど。

しばらく車を走らせ、バックミラーでキャルが寝息を立て始めたのを確認し、

俺はサイスマスターから奪ってきた携帯電話を手に取る。

登録の在る番号の中から目星を付けて、その人物へと電話をかける。

相手への第一声は、久しぶりだな、だと決まっていた。




翌日、インフェルノの幹部連中が集まっている拠点に、俺は顔を出してた。

前の日の晩に、クロウディアを通じて連絡を入れた件での、報告の為だ。

その場には、梧桐組の若頭と側近のメガネ君も同席する事になっている。

俺が会合に持ち込んだのは、バッグに入った500万ドルと昨日刈り取ったサイスマスターの首。

今回のこの件の襲撃犯を突き止め首級を上げたという証拠付きの俺の報告を、

幹部連中は元より会合にゲストとして参加した梧桐組の面々も、納得せざるを得なかったようだ。

今回のサイスマスターの行動の動機が、復讐だと容易に推測できるのも幸いした。

クロウディアは俺のスタンドプレーを快く思ってない様子だったが、

その他の面々は今回の行動を俺の功績だと認めてくれていた。

それを見越した上で、俺は一つの提案をする。

サイスの手札であった前ファントムことエレンの事だ。

推測では在るが、今回の襲撃が彼女の手によるものである事を説明し、

サイスの死後も生き残っている彼女の始末を俺に一任するように提案する。

流石にその提案には誰しも良い顔をしなかったが、

援護を付けても足手まといであるとの主張を誰も覆せなかった。

正直、リズィの顔をまた潰した事になるのだが、

じっと俺を見つめた後、俺の言葉を肯定し後押ししてくれたぐらいだ。

その視線が、貸し1だ、と如実に語っていたのは言うまでも無いが。

俺からの提案が認められた後は、インフェルノと梧桐組との調整に話は移り、

俺はその場から退出する事になった。

前ファントムへの対応の為というお題目はあったが、その実準備は既に済んでいる。

昨日、サイスマスターの携帯を通じて、エレンを呼び出してあったからだ。

場所はある意味始まりの場所である郊外の廃工場、時間は今夜の8時。

今が11時だからあと9時間後にはコトを始める事になる。

エレンとの対決に用意するものは無いのだが、

それ以外の準備をするのには時間に余裕があるとまでは言えないぐらいだ。

俺は頭の中で予定を立てながら、インフェルノの施設を幾つか回って行った。





約束の時間の5分ほど前までに、

2件の電話連絡を含む全ての仕度を終え、俺は例の廃工場に車を乗りつけた。

他に乗り付けてある車など見当たらなかったが、恐らくエレンが先に到着している筈だ。

俺が車を降りてドアを閉めると、同じ様に助手席のキャルもドアを閉めた。


「キャル。今日は別に付いてくる必要は無い。

 お前にとっての仇には当たるんだろうが、俺は彼女を殺すつもりはないからな。

 事が終るまで車の中で待っているんだ」


「うん、それは解ってるし、わたしが足手まといなのも知ってる。

 でも私はレイジがどんな世界に生きているのか知りたい。だから、今日も一緒に居させて欲しい」


俺の言葉にそう答えたキャルは、じっと俺を見つめ返してくる。

どの道この後も一緒に行動する事になっているのだから、此処で同行させない意味もない。

俺は軽くため息を吐き、キャルの同行を許可する。

一瞬喜色を見せたが、すぐに表情を引き締めるキャル。

俺はさして気負ってないのだが、

俺から今日の相手の事を聞いたキャルは、いささか違う空気を感じ取っている様子だった。


「さて、行こうか」


そう促して歩き出す俺の後を、キャルは緊張を貼り付けたままの表情で着いて来るのだった。





人一人が通れるくらいに開かれた鉄扉をくぐり、俺とキャルは廃工場の中へと入っていく。

決戦場としては申し分無いスペースがそこにはあり、案の定、その中央にエレンが立っていた。

軽く手を上げた俺に、何も言わず銃口を向けてくるエレン。

が、俺に同行する存在に気が付いたのか、その子は?と何時もどおりの抑揚の無い声で問いかけて来る。


「立会人だよ、エレン。今回のヤマに巻き込まれた被害者の身内だ」


「随分と甘いことをやっているのね、ツヴァイ」


「まあ、成り行きで、ね。それにしても、相も変わらず厳しい指摘だな、エレン」


「……私をエレンと呼ばないで。私はアインよ」


「君をアインと呼ぶ人間は、もうこの世には居ないのにか?」


「……!!それでも、そうだとしても、私はアインとして生きる事しか出来ない」


「……解ったよ、アイン。俺が君を、サイスマスター習作であるアインを此処で終らせよう」


交わす言葉はそこまでで、俺とエレンは互いに無言となったまま各々の得物を構える。

エレンは大ぶりなコンバットナイフ、

対する俺は小太刀として使えるように展開した2本一組のデバイス。

特に合図が在った訳でもなく、同時に地を蹴り、俺達は刃を交え始めた。

エレンは一年前と変わらずに速くそして上手かった。

守勢に回った俺を良く攻め、時折放つこちらの反撃も全て受けるか流すか出来ていた。

だが、それだけだ。

御神の業を思い出した俺の防御を抜くことは叶わず、明らかに攻め手を欠いていた。

普通なら賞賛に値するそのスピードも、

高町家で修行をしてきた俺にしてみれば緩やかなものにしか見えない。

多少エレンの息が乱れてきたのを確認し、俺は攻勢に出る事にした。

刃を振るうスピードを徐々に上げ、じりじりとエレンを追い詰めて行く。

そして俺が放つのは御神流『貫』。

相手の防御を見切りソレを突き通す業だ。

彼女の太刀筋というか攻撃パターンを良く知ればこその技だった。

突き出された刃は中ほどまでエレンの身体を貫き、

エレンは身体を一瞬硬直させた後、力を失い地に横たわる。

言うまでも無く貫いたのは魔力刃で、非殺傷設定にしてあるものだ。

気絶する程度のショックは与えたが、実際にエレンには何一つ傷を付けて無い。

傷付け殺す事しかして来なかったコレまでの事を思うと、これこそがまさに魔法と言う感じだろう。

気絶したエレンの一応武装解除を行ない、廃工場の外へと運ぶ。

キャルに介抱を任せ、彼女が目覚めるまでの間に準備を済ませる事にした。

鉄扉を押し広げて開口部を広く取り、車を工場の中まで入れて駐める。

トランクに積んできたポリタンクの中身を床にぶちまけ、

車内に仕掛けた発火装置から伸びるコードを持ち車から距離を取る。

出入り口の近くまで避難したところで、コードをクロスして通電、発火装置を作動。

ボンという破裂音と供に車は炎上、床に撒いたガソリンにも引火して大きな炎が上がる。

爆発音が契機になったのか、俺がキャルの元へと戻った時には、エレンが目覚めていた。

抵抗する様子も無く、その小さな肩を落として、キャルの隣でただ座り込んでいた。

そして近づいてきた俺の姿を認めて、絶望感の漂う瞳で見上げ、力なく話し始める。


「そう、私は負けたのね。でも、何故?」


自分を殺さなかったのか、と続くであろう言葉は、

原作を知る俺にとっては予想の範疇のものだった。


「くだらないと思ったからだろうな、あの男の言うところの完全なる兵士というヤツがな。

 そんなモノは井の中の蛙に過ぎないって事を、俺は思い出したんだ。

 高々一人の男が考えた究極の兵士なんぞ、

 積み重ねられた歴史が産みだした本当のバケモノの前には、塵芥のごとく切り捨てられるのがオチだ」


エレンにそう答えながら、俺の脳裏に浮かぶのは高町家の面々だった。

超一流のパティシエである桃子さんを除き、俺が純粋な戦闘行為で勝てる相手がいない。

不意打ち等を駆使すれば勝てそうなのが末っ子のなのはだが、

それとて1級品のインテリジェントデバイスであるレイジングハートに察知され、

自動防御で防がれる公算が高い。

残りの三人の剣士に至っては不意打ち自体が通用しない。

俺には到達できていないレベルなのだが、音と気配で相手の位置が解るらしい。

少なくとも俺の有効射程距離よりも、三人が気配を察知できる範囲は広い。

そんな俺の答が予想外だったのか、エレンの表情に戸惑いが浮かぶ。


「あの男の言う事が全てだった君が、俺の言葉を信じられないのも解るが、コレは事実だよ。

 あの男が死んだ以上、君は寄る辺無き身で、行く宛ても無い。

 だったら、俺と一緒に来るんだ。俺言葉の真偽を確かめる為にもな」


そんな台詞と供に差し出された俺の手を、エレンはまじまじと見返した。

そして、しばらくの沈黙の後に、何かを決意したのか、俺の手を取って立ち上がる。

表情に先ほどまでの絶望の色は無く、どちらかといえば困惑気味に俺には見える。

だが、今はまだ、それぐらいで良いだろう。

この後俺と行動を供にすることで、エレンの常識はかなりの割合で覆される事になるのだから。

主に戦闘民族高町家的な意味合いで。

立ち上がったエレンとバック一つ分の荷物を持ったキャル。

二人が列んでいるところを見て、原作はもう完全に崩壊したなと実感する。

思わず漏れる俺の苦笑は、当の二人には理解できないものなのだろう。


「さてと、それじゃあ、そろそろ日本へと帰ろうか?」


待機状態にしていたデバイスを展開しながら、ある意味唐突に告げた俺の言葉に、

エレンとキャルはそろって可愛そうな人を見る目を向けてくる。

まあ、そうする理由も解る。

先ほど俺の乗ってきた車は燃やしたし、

エレンがここに来るときに使った車もまだ見つけていないからだ。

だが、魔法を思い出した俺には、転移という反則じみた移動方が未だ残されていた。

軽く咳払いをし、デバイスを通じて、転移魔法を起動させる。

此処から日本までは流石に距離があるために、即時に転移というわけにもいかない。

しかも今回は三人分と言う事もあり、何時もよりも魔方陣の展開にも時間がかかる。

ぶつぶつとつぶやく俺の足元から描かれていく直径5mほどの魔方陣を目にし、

エレンは何度も瞬きをして驚き、キャルはどこか達観したような表情を見せていた。

今更ながら気が付いたが、昨日から魔法バレが随分と激しい気がする。

まあ、実質的にはエレンとキャルの二人だけだし、緊急避難という事にしてお茶を濁せばいいだろう。

管理局の拠点は日本にあるが、海を超えてこちらの事情までは探れないだろうからな。

そもそもがなのはのような優良株ならともかく、

管理外世界の俺程度の小物に管理局が構うはずも無いけど。

マルチタスク片隅でそんな事も考えながら、俺は転移用の魔方陣を完成させる。

ここから跳ぶ先は懐かしの我が家、ではなくお隣の高町家の道場だったりする。

それなりに広く場所が取れてかつ普段から物が無い場所という基準からだ。

狭い上に何時の間にやら物置にされる可能性がある自室とかは、どう考えても転移先には向かない。

そうした制約もある転移魔法の詠唱も終わり、

後はトリガーワードを口にするだけで発動する段階に入った。

そして俺はキャルとエレンの手を取り、口を開く。


「ジャンプ」


その次の瞬間、展開された魔方陣が発光を強め、俺たち三人は日本へと転移した。




「なんぞコレ?」


日本へと無事転移したはずの俺達だったが、

到着の直後、俺の身体は魔法的な何かというかバインドに拘束されていた。

勿論、バインドの色はピンク。

そして背後から少女の声でディバイーンとか聞こえてくる。

そうですか、到着直後に問答無用の魔王様の砲撃ですね。

俺はなのはをそんな娘に「バスター!!」

そうして俺は桃色の奔流にのまれあっさりと意識を失った。




気絶している間に運び込まれたらしい自室で目を覚ました時、

家には誰も居らず俺以外の全員が出払っていた。

やたらと物が持ち込まれて狭くなった自室が物悲しくて、俺は少し泣けてきた。

そういった感傷はともかくとして、俺には可及的速やかに行わなければならない懸案があった。

俺の帰国歴及びエレンとキャルの渡航歴の捏造だ。

そういったあてが無い訳でもない。

俺自身がというよりも、なのはや妹を通じて知り合ったコネが俺にはあったのだ。

色々と事情は詮索されるだろうが、

俺からのお願いを無碍に袖にするほど彼らは薄情ではないだろう。

俺自身、失踪状態に近かった分、疎遠には成っているのだが、

その辺の事情は腹を割って話せば解って貰えると俺は思ってる。

まあ、最悪は管理局の方から手を回してもらい、電子的な偽装を……とも考えていたが。

それよりも今は、日頃からお世話になっていたお隣さんへの挨拶が先なのは言うまでもなく、

俺はそれなりの格好に着替えて、隣家へと足を向ける。

徒歩45秒で付いた隣宅の玄関で呼び鈴を鳴らす。

玄関は開いてるから入れば?

とインターフォン越しに聞こえてくるのは、案の定なのはではなく妹の声だった。

勝手知ったる他人の家というか、俺は何時もそうしていた様に高町家に上がりこむ。

家の中のインターフォンの位置と結構な人数分の靴が玄関にはあった事から、

妹やなのは達が居間に居るのだろうと当たりをつける。

廊下を進むと予想通りに居間からはかましい声が聞こえてきた。

廊下から居間へと続くドアを開けると同時に、俺の腹の辺りに軽い衝撃が来る。

体当たり気味に懐へと飛び込んできたのは、俺の記憶よりも幾分成長したなのはだった。


「ただいま、なのは」


「……おかえりないさい」


昨日のバスターは何処に行ったのやら。

挨拶を交わしながら俺が久しぶりになのはの頭にポンと手を置くと、なのはは途端にぐずりだした。

で、そんな俺となのはのやり取りを見ているのは、妹とその愉快な仲間達プラス2名。

何か微笑ましいものを見る様な視線を向けてくるのは、

なのはの昔からの親友の二人のアリサとすずかだった。

それなりの付き合いがある二人は、なのはの俺への懐きっぷりも当然知っている。

それ故の視線だと、素直に受けとめておこう。

他方、厳しい視線を俺に向けてくるのは金髪コンビ。

アリサ以外のと言う事になるので、具体的にはフェイトとキャルだった。

フェイトはアレだろう、俺が羨ましくて嫉妬してるんだと思う。

なのフェイは俺の中でもジャスティスだしな。

んでキャルはあっちで親しくしていた俺に、

なのはみたいに懐いている女の子が居た事に驚いている位か。

それ以外の面子で少し疲れた表情を見せるのはエレンだった。

まあ、年下とは言え女の子数人に囲まれて、そのパワーに翻弄されたであろう事は容易に推測できる。

で、多分だが、その疲労の一番の原因になってるのがはやてだろう。

もんだのか?

もうばっちりや!

アイコンタクトで交わす会話でそう答えてきたし。

最後に一番問題そうなのが俺の妹だ。

泣き顔のなのは、テラもえす、なんてほざきながら鼻息を荒くしてる。

この前も思ったが相変わらずダメ人間への道を一直線だ。

こうして改めて見渡してみると、色々と濃いメンバーが揃ったものだと思う。

エレンとキャルがこの中に混じって生活していけば、

向こうで色々と在った事に心を痛めずに、笑って過ごせるようになる日も、

割とすぐに来そうな気がしてくるから不思議だ。

俺はとりあえずの思考をそこで切り上げ、

これから追求をしてくるであろうなのは達にどう答えるべきか考え始める。

取り敢えずは、エレン達が何処まで話したのかを確認する必要があるだろうが。

久しぶりなので甘えたいのか、べったりななのはを左手に抱きつかせたまま、

皆が居るソファーの方へと歩き出す。

俺はすぐ側になのはの体温と高町家の雰囲気に、なにかこみ上げてくるものを感じていた。

ようやく自分の居場所に帰って来た。

それは、俺がそう実感した瞬間だった。



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■作者からのメッセージ
アニメのあのオチに、ついかっとなってもっと酷いのを書いた。
反省はしてるが、後悔はしてない。
あと、まだ聞こえてこないって事はファントム2の話は立ち消え?

追記 指摘に基づき題名及び誤字をちょいと訂正、確かにオリーシュは彼だけですね。直してないのは中二病的な読み方をする部分なので気にしない様に。ガラパゴスは携帯とセットでググルと意味が解るかも?

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