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オリー主でないのに続いてしまったようです。 オリー主と思ったら違った様です。 の続き
作者:くま   2010/02/19(金) 22:16公開   ID:2WkxvL3EczM

月村家とバニングス家に多少の借りを作りながらも、俺達の日本での生活はスタートした。

帰国してからおよそ半月で4月が始まるタイミングと随分と切りのいい事も在って、

俺は大学に復学しストレートよりも2才年上の大学1年生となった。

恭也や美由紀と同じ大学だった為、ノートなどの心配が要らない点は随分と得をしていると思う。

調子にのって、美由紀先輩ありがとうございます、なんて言ったら物凄く嫌な顔されたが。

そして大学生であるのと同時に、俺はまだ御神の剣士でもあった。

向こうでの殺し屋家業の事を師匠である四郎さんは良い顔をしなかったが、

破門とかそう云った事にはならなかった。

元より未熟者の俺が修行の旅で巻き込まれたトラブル、

と言うことで見逃してもらえたのだと思う。

IFの話になるが、俺ではなく恭也が同様の事件にに巻き込まれたなら、

あっさりとエレンを返り討ちにして、

あの時殺されたおっさんに託された証拠の品を警察に届けて終りだっただろうし。

例え俺が課けていた負荷の代わりに50sの重りを付けていても、

あの男ならやり遂げると俺には思えてしまう。

修行の旅の成果を見せてみろ、とか言われて一対一で勝負を挑まれ、

ほぼ一方的にボコボコにされたのだから余計に。

まあ、その程度ですんだのは僥倖だろうと思うんだが、

開くばかりの実力差に頭を抱えたくなったのも事実だったりする。

そんな相変わらずの半端ものでしかないのが俺の現状なんだが、

当然、俺以外の面々もそれぞれ新たな生活をスタートさせていた。




吾妻エレンとして吾妻家に養子に入ったエレンは、

俺や美由紀も通っていた地元の高校に入学し、

同時に翠屋でウエイトレスのバイトを始めていた。

原作的にどういったキャラで学園生活を送っているのか疑問だが、

それなりに友人も出来たようで安堵している。

たまにシフトが重なる翠屋でのバイト(エレンはウエイトレス)では、

バリバリに演技をしていて、惜しみなく振りまかれる笑顔にファンみたいなのも既に居るらしい。

俺よりも翠屋の売り上げに貢献しているのは間違いないだろう。

たまたま店に来ていたエレンの友人らとの会話によると、

物凄い営業スマイルとの評判だったので、

学校でのエレンは素と同じで物静かなキャラで通しているかもしれない。

まあ、何にせよ、日本での生活に馴染んできたのはいい事だと思う。

時折、酷く疲れた顔で、接客業って大変なのね、とこぼしてた辺りは少し頑張りすぎだと思う。

なんというか元来の性格なんだろうけど、真面目すぎるのも考え物だ。

今度のゴールデンウイークに行く温泉旅行で、疲れを癒してくれればいいのだが。

ちなみに、俺が高町家の道場に行く時は、いつも一緒に行くようになった。

高町家の人外ぶりは、俺をボコボコにした初見で理解できた様だが、同時に興味も湧いたらしい。

狭い世界で生きてきたエレンが、色々と興味を持つのはいい事だと思う。

あとは高町家の面々に影響されて、ある意味人から外れない事を祈るのみだ。





そしてもう一人の同行者であるキャルは、エレン以上に日本に馴染んでいた。

何と言うか、本物の天才、というヤツを見せ付けられた気がする。

何日かの特訓を経て、話せなかった日本語を日常会話に支障の無いレベルでマスターし、

その上、難しいらしいなのは達の学園への編入試験にも、数日の特訓でパスした。

ちなみに編入試験なのは、来日のタイミング的に普通の入試は受けれなかった所為だ。

それとバニングス家由来の生徒という建前(俺が頼んだ)もあり、

なのは達と同じクラスに入れられたとの事。

中学校に通いながらも管理局の仕事を持っている魔法組に代わり、

アリサやすずかと行動を共にする事が多いそうだ。

といっても遊んでると言うよりも両家の当主に気に入られ、色々と教え込まれてるらしい。

アリサ曰く、

将来的にはバニングスと月村の両家を結ぶパイプ役として世界征服の一端を担ってもらうつもり、

なんだとか。

本気か冗談か良く解らないのが、アリサの怖いトコなんだけどな。





そして元より日本に居た魔法組で無い方、

つまりアリサとすずかなんだが、キャルの事でも触れたが、

それぞれの家を継ぐ為の勉強をしつつ、普通に学園生活を送っていた。

キャルからの又聞きの話になるだが、普通にお嬢様的学園生活を送っているらしい。

二人の家のレベルを考えれば、まあ当然と言えば当然なんだが。

原作との違いはウチのキャルが、両家にお邪魔する機会が多いことぐらいだろうか。

キャルが二人の家の格の高さに全く物怖じしないのは、

友人的な意味合いで二人にとっても多分いい事なんだと俺は思う。

正直、二人の家を訪問する時なんかは、俺でも少し気後れするしな。

それともう一つ、原作との違いがあった。

原作とらハ的な事件、つまりアリサの誘拐が発生しそうになったんだが、

遇々遊びに行くついでで同行していたキャルの活躍により、未然に防がれていた。

魔法で属性付加したBB弾を装填したエアガンの有用性が、改めて示されたとだけ言っておこう。

誘拐犯はBB弾にフェイトが付加した電撃で、しばらく痺れて動けなくなったらしい。

いくら護身用とは言え、そんなものを持たせる俺も何だが、

それを躇い無く相手に向け、総弾数を使い切るまで撃ち尽くせるキャルもまた何だと思う。

まあ、結果的にアリサが助かったのは事実なので、好事と言えばその通りなんだが。

他方、アリサの相棒であるすずかには特にそういった事件とかは無し。

確かに突発的なイベントには心踊る部分が在るが、それでも平穏が一番だと俺は思う。

一時的に記憶を欠損し、殺し屋までやってた俺が言う事じゃない気もするけど。

原作的な意味合いで、二人はたぶん平穏でセレブな生活をこれからも送って行くんだろう。

あまり裕福で無い家庭環境だった俺としては嫉妬を感じる、

というか、ぶっちゃけ将来的にコネを期待したりもしている。

まあ、今の所、借りの方が大きいんだが。

そういえば月村の秘密的な何かが在った気もしたが、

俺が覚えてない位なので、多分大した事じゃないんだろう。

そもそも月村関係なら、KYOUYAが何とでもしてくれる筈なので安心だしな。






そして、アリサ達と同じく今年から中学生となった魔法組の三人なんだが、

一番原作と違う展開を行っているのがはやてだろう。

一応は管理局の嘱託を受けてはいるのだが、

ヴォルケンズが管理局入りして無い事もあり、そんなに深入りはしていない様子。

あっちの何とか教会ってトコとも特に接触はしてないらしいし。

原作と違い初代のリーンフォースが健在で、管理局ではペアで行動している事も大きな違いだろう。

理由は一応在って、リーンフォースが居ないと、はやての使える魔法が極端に少なくなるからだ。

この辺は妹がしでかした適当な無効化の弊害らしい。

夜天の書とはやてとのリンクが消去された所為とか何とか。

詳しく聞く気も無かったんで、良くは知らないんだけど。

健在であるリーンフォースもまた、主と離れて行動する事を良しとせず、

結果、二人がペアで行動するというパターンで落ち着いたらしい。

闇の書云々と言われる事も在るそうだが、管理局では有名な騎士達は顔を出さず、

はやての側に居るのがリーンフォースのみという事もあり、深くは突っ込まれずに済んでいる。

先にも言った妹の左手の所為で、管理局に保存してある闇の書の管制プログラムの容姿と、

今のリーンフォースの容姿に僅かながら齟齬があるのも良い方に影響しているとの事。

それよりも、はやての性癖と言うか揉み癖の方が先に有名になっており、

そういう意味で女性局員から避けられはしていた。

嘱託で本局がらみの任務へ初めて付く挨拶の際、

前線から引いて提督となったリンディさんのを皆の面前で揉みしだいた、

と言う伝説は今も広く語り継がれてるらしい。

あの娘の前で隙を見せるな、というのが昨今の女性管理局員の共通認識なのだとか。

その手の話が広がっていても、本人は全く気にした様子が無いのは、在る意味救いがないだろう。

そして管理局入りしなかったヴォルケンズだが、

あの時恭也に負けて以降、高町家の道場に通う日々を今も送っている。

女性陣3人が翠屋でのアルバイトをしつつ、

シグナムを中心にして、師匠である士郎さんから剣術やら戦い方を学んでいるようだ。

前衛組の二人はまだしも、補助担当のシャマルが何故?とも思ったが、

前衛の戦い方が変わる事で、後衛のフォローの仕方も変わるからということらしい。

それ故に道場に通うのは、シグナム、ヴィータ、シャマルの順の頻度だ。

残りのザッフィーは八神の家でお留守番。

主が帰る家を守るのも守護獣の務め、とか何とか吹き込まれた模様。

誰にというか妹、自重しる。

今では掃除洗濯料理等等、家事ならなんでもござれな状態との事。

まあ、基本わんこだし、守りに入るのも仕方が無いか。

更には、未だちっこいリーンフォースが生まれてない、というのも大きな違いだろう。

夜天の書の中にデータだけは残っているユニゾンシステムを活用する方法、

ということでプランは上がってるらしいが、未だ計画は道半ばといった具合なのだそうだ。

はやてが今のところ管理局への深入りを考えていないということもあり、

本局とか何とか教会の施設を自由には使えないのも大きな要因だろう。

その辺の原作スケジュールまで覚えてないので、何となく時期的遅い気がするてだけだが。





そんなはやてとは対照的に、ほぼ原作通りの進路を辿っているのがフェイトだった。

身近にクロノというお手本が居るからか、

原作通りに執務官を目指し……2回ほど執務官試験に落ちていた。

原作とは違い、なのはが大きな怪我を負ってないのにも関らず、だ。

俺がひねた思考回路で思うに、試験の出来とか関係ない所で落とされたんじゃないだろうか。

ハラオウン家が管理局のどの派閥に入っているかは知らないが、

敵対派閥の妨害工作とかは普通に在りそうだし。

ハラオウン家は養子でもこんなに優秀です、ってアピールを潰すメリットは俺には良く解らんけど。

まあ、こんな戯言なんざ、妄想に近い陰謀論でしかないな。

それよりか世界の修正力という説の方がまだ信憑性があるだろう。

なんにせよ、今度受ける3回目の試験には受かるんだろう。

それなりどころではなく、かなり努力してるのは、たまにしか会わない俺にも伝わってくるぐらいだし。

基本的にフェイトはいい子だし、応援をしたいと自然と思える。

なのはがらみで俺に威嚇をしてこなければ、なおの事良いんだが……。

文字通り牙を剥く感じで、そんな態度にちょっと凹むんだよな。






そして我らが魔王ことなのはだが、原作同様にまだ嘱託のままだった。

採用先であるアースラ所属のままで、武装隊へ出向と言う形ではあるのだが、

あくまで嘱託魔導師でしかなく、正式に管理局員になった訳ではない。

年齢的な事もあるのだが、本人も数年はこのままでいるつもりとの事。

俺の聞いた限りではあるが、今後入局するかどうかは別にして、

こっちで一応高校程度は卒業しておく予定なのだそうだ。

幾らなんでも高校ぐらいは出ておいた方が良いだろ、常識的に考えて。

という、俺の忠告が効いたのかは不明だが。

そして管理局の仕事をしながらでは、

お嬢様学校に通うアリサやすずかとは同じトコに行けないであろう事も解っているそうで、

中学より先の進路としては、美由紀や俺と同じ公立高校に通う予定との事。

一応は進学校だがレベルはそこそこ、しかも自宅からは近いという条件で考えると……という事らしい。

まあ、俺も似たような理由であそこを選んだし、その事に関しては家族でもない俺が特に言う事は無い。

ただ、中学に上がったばかりでそこまで考えているのは、いささか早すぎるとは思う。

先に目標を掲げるのは良い事だとは思うが、

もっとゆっくり考えても良いのでは?というのが俺の正直な感想だ。

基本、思い付きとかで適当に進路を決めた俺が言うべき事じゃないとは思うが、

計画的にこつこつやったところで、呆気なく全てが無に帰すことも在るというのは、

俺の前世での生涯から得たひとつの教訓なのだ。

それを他人に言う訳にもいかないんだけどな。

で、魔導師としてのなのはだが、順調に成長していた。

御神の剣の修行を始めた事で、体力的な不安を徐々に解消。

剣士としての才能はあんまり無いみたいだけど、

平均的な女子よりは、身体が動かせるようになってきていた。

すずかやアリサ、フェイトといった面々に囲まれてるはのはとしては、

自分の運動能力が上がってきた事に対する実感は乏しいらしい。

親友とも呼べる友人達はハイレベルな運動能力を持ち、

家族であり道場で一緒になる士郎さんや恭也、美由紀は人外レベルと来れば、

なのはがそう思うのも無理はないだろう。

無論、御神の剣においては先達にあたる俺も、

始めたばかりのなのはよりは、随分と動けるのは言うまでもない。

もっとも、なのはが剣術を初めて一番成長したのは、精神的な部分だと俺は思う。

俺との再会のときは色々と取り乱していたが、

普段のなのはは、俺が知っているよりも落ち着いた雰囲気を見せるようになっていた。

俺の冗談交じりのからかいにもムキにならず、

しょうがないな玲二お兄ちゃんは、と軽く流してしまううほどに。

俺としてはその成長に寂しさと喜びの入り混じった感想を抱いてしまうのだった。





そして精神的な成長を遂げたなのはの対極に居るのが、俺の妹だった。

なのはの後を金魚のフンの様に付いて行ったと思えば、俺の居ない間に正式に管理局入りしていた。

なんでも、とあるお偉いさんと知り合いになり、無理無理許可をもぎ取っただとか。

魔導師ランクはレアスキルの評価のみのFランクながらも、今の所属はエリートが集うはずの教導隊。

尤も、魔導師としてFランクの妹が魔法の教導を出来る訳はなく、

専ら仮想敵として訓練に参加しているそうだ。

が、改めて考えると妹の能力は魔導師にとっては天敵とも言える様なものばかり。

ベクトル変換で魔導師側の魔法を全て跳ね返し、

防御魔法やバリアジャケットも左手の幻想殺しで無効化。

PT事件の時こそ、鍛えてなかった左手で殴りかかって骨折したが、

今はカイザーナックル的な得物で左腕を保護し、ぶん殴るので問題ないらしい。

俺は、それって質量兵器じゃね?と思たんだが、

アームドデバイスだって直にぶん殴ってるので、

カイザーナックル的な得物も質量兵器には当たらないとの事。


「ふはははは、私は無敵だ!私が、私こそがジゲン世界の神になる!

 ただし、ケーマ君には勝てないけどなww」


と管理局ではいつも乗り乗りで訓練に参加している、とはなのはの談。

希に一緒になる高町家の道場では、そんな様子を微塵も見せないんだけどな。

やっぱKYOUYAとかMIYUKIが居るから、道場では自重しているんだろう。

高町家の剣士達は何故か能力が効かないというか、妹の能力を超えてダメージを徹せる。

ちなみに御神流の徹を一応会得している俺だが、高町家の面々と同じ事は出来ずにいた。

きっと人外レベルにまで剣を極めないと出来ないものだ、

ということで納得し、俺は自分に言い訳するしかなかった。

正直、俺にも剣の才能があればなと思わずには居られない。

それでも、普段は自重しない妹とは、なんとか五分の対戦成績を修めていた。

道場では、修繕費的に能力全開できない妹には勝ち越し、

時間的な制約のある屋外では俺が負け越しな感じだったが。





日本に帰ってから、およそ1月半程度の間。

俺と回りの人々はだいたいこんな感じで過ごしていた。

そして、皆で行ったゴールデンウィークの温泉旅行で、

大人たちを中心に酔いつぶれる者がでる中、俺は妹に散歩に誘われた。

からころとサンダルの音を響かせながら歩く中、妹が先に口を開いた。


「よかったのかホイホイついてきて、俺はノ」


取りあえず拳固で黙らせたが、相変わらず道場以外では自重しないのはどうかと思う。

とは言え、いつもの悪ふざけなのは解っているので、

俺は拳を握ったまま笑みを見せる事で、妹に話の本題に入るように促す。

肩を竦めて、やれやれとばかりの態度をとりながらも、

今度は多少真面目な表情になった妹が語りだす。



「で、兄者は今後迎える三期は如何様につもりなのだ?

 なのは達に手を貸すつもりならば、そろそろ進路を決めとかないと不味いはず。

 今のままでは、完全に部外者扱いで、接点も無くなるのではござらぬか?」



珍しく真面目に語る妹の、言わんとするところも解らないではない。

確かに今の俺と管理局との間には、登録してある魔導師としてのつながりしかない。

こっちで何か事が起これば協力を要請される、という程度の関係でしかないのが事実だ。



「それもそうだが、色々と変わってるからな、まだ決めかねてるんだよ。

 そもそも今の現状じゃ、あの六課が出来るのかすら怪しいんじゃね?

 教会の騎士のねーちゃんの予言だって、すでに変わってる可能性高いだろ?」



俺の、というよりも主には妹の関与の所為で、

なのは達の状況は、原作とは結構かけ離れた展開になっている。

いろいろと細かいところでは同じ部分もあるが、

なのは達の管理局でのポジション等は随分と違うのは確かだろう。



「相変わらず、大きく関与するつもりは無いという事でよろしいか?

 ならば、某は好きに動くから、兄者は邪魔をしないで頂きたい」


「あくまで、お前やなのは達の人生だからな、好きにすればいいさ。

 でもま、馬鹿や無茶が酷ければ、止めない訳にはいかないな。

 一応は、お前の兄に生まれ変わっちまったからな」



俺と同じ転生者である妹に、釘を差す意味で告げる俺。

妹と俺の間で前世がどうとかいう会話を交わした事こそ無いが、

互いの事情はなんとなく察して、コレまでも対応法だけは確認し合っていた。

俺は基本的に放置、というか成る様に成れ的な対応を決め込み、

妹は積極的に関与していくというスタイルだ。

今のところ妹の関与がいい方向に働いているが、この先もそうとは限らない。

とは言え俺は、やはりなのは達に積極的に関与するつもりは無かった。

完全に無関係を貫くつもりはないが、あくまでアドバイス程度に留めるつもりだ。

なのは達から請われれば、話はまた別なんだが。



「で、お前は具体的には何するつもりなんだ?」



それよりも心配なのが妹がどうするつもりなのか?だ。

色々と自重しないだけに、何をやらかすのか全く予想が付かない部分があるからだ。

ジロリと睨む俺の視線を全く気にとめない自然体で、妹はあっさりと口を割る。



「三期の機動6課の代わりになる地上部の部署を早々に設立する予定でござるよ。

 管理局での某の居場所を作るというのが本音でござるがな。

 地上部上層部で話は走り出しており、その部署の名前すら決定済み、

 だとしたら兄者はどういたす?」



どうよ、と言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべた妹に、俺は正直頭を抱えたくなった。

誰だよ?この自重しないバカの戯言に同調したという管理局のドアホゥは?

コイツの何に同調するのか全く以て不明だし、きっと何かのネタに走ってるに違いない。

と考えた処で、管理局でコイツを止める立場にいる人間が居ない事に気が付く。

リンディさんやクロノといった元より管理局員だった人物とは顔見知り程度、

親しくしてるなのは達はあくまで嘱託でしかなく、

唯一正規に局員になってるフェイトは、執務官試験の受験で手一杯。

うん、見事に妹の暴走を止めるヤツが居ない。



「一応は名前すら部外秘でござるが、兄者には先に申し上げておくでござる。

 今度設立される部隊は、地上部特務局第13課、通称『イスカリオテ』。

 非高ランク魔導師による非高ランク魔導師の為の育成機関であると同時に、

 管理局地上部で最も攻撃的かつ即応性に優れた非高ランク魔導師の実働部隊。

 ただし、後ろのはあくまで予定であって 人員は某と事務方しかまだ決まってないのでござるがな」



で、どうする?と妹のにやけた目が再び問いかけてくる。

つまる所、迂遠な俺へのスカウトのつもりなのだろう。

早々思惑に乗ってやるつもりは無いけどな。

俺がどうするかはともかくとして、妹の構想した部隊は其れ程悪くない様に俺には思えた。

実現性を別にすれば、人員の縛りが大きい高ランク魔導師を排除した点は、

原作であった機動6課と違い、管理局地上部の上層部辺りに受けが良さそうだ。

6課と違い、後ろ盾はおそらくその辺りなのだろう。

それにしても特務局第13課か、どっかで聞いたような響きなんだが……なんだっけな?

まあどうぜ前世がらみのネタなんだろうし、大した事じゃないだろう。

とはいえ、俺が積極的に関る気も無いのは変わらないが、

ある意味貴重なコネを無碍にするのも得策ではない。

俺の答えはコレまでの方針をあまり違えないものになる。



「悪いが、今直ぐに参加とかは無いな。

 今の大学生活をそれなりに楽しむつもりなんでな

 一応、4年後の進路の一つには入れとくよ。

 就職の選択肢は多い方が良いからな」



俺の答えに対し、妹はやれやれとばかりに肩を竦める仕草で応える。



「まったく兄者は夢が無いでござるな。

 そうも現実的なのもいかがなものかと。

 貴重な好機なんであろうに、何故思うがままになさらぬのか?」


「やりたい事はやってるさ、自分としてはな。

 ただ、それを他人に影響する範囲で、あまりやる気にはならないだけでな。

 現に、物珍しい体験してるだろ、エロゲの主人公的なヤツをさ。

 しかも、後半はチート性能つきでな、まあ、恭也ほどじゃないが……」



確かに、と俺の言葉に同意する妹。

そう、彼のエロゲ主人公ぷりは凄かった。

俺が中学に入った頃から、ヤツの回りには複数の女性の影があり、

お隣さんのよしみで、俺が翠屋でバイトを始めた頃が最盛期で、

何だかんだのあげく、月村さん家のしのぶさんと結ばれたのだ。

当時の店での修羅場は数知れず、たまたまシフトが重なっただけでも、

あの時は色々と胃に来たものだ、女性陣からのプレッシャー的に。

決着が着いた以上、流石に今はもう落ち着いたものだが。

それはともかくとして俺は、先ほどから気になっている事を確認してみる。



「というか、なんでお前、喋り方が侍言葉なの?」


「知れた事。最近、某がはまったアニメがキテ…」



返って来た碌でも無い答えを、俺はさっくりと聞き流す事にした。

そういやコイツ、最近はコロッケコロッケ煩かったなーと思い返しながら。






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需要は不明だが続けてみた第2弾。
オリ設定の嵐は気にしない方向で。
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