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冥王となんでさ
作者:くま   2008年08月03日(日) 23時51分19秒公開   ID:t3Bv3m5WYUk
※例によって蹂躙クロスです。

 読み終わって残念な気持ちになる事が予想されますが、

 それでも構わない方やM属性の人はどうぞ先にお進みください。
















「シロウ、―――貴方を愛している」

あの黄金の別れの後、俺はその言葉を胸に生きてきた。

そしてこれまでと変わらず正義の味方を目指し、何時か必ずそこにたどり着く。

セイバーの言葉とその想いだけは決して変わる事が無い。

…そう思っていた時代が、俺にも在りました。














俺に転機が訪れた原因は、至ってありがちな事であるが、遠坂のうっかりだった。

色々と彼女に借りがあった(向こうは否定していたが)俺は、3年の冬休みに彼女の実験に付き合うことになった。

大師父からの課題であるという宝石剣の試作品の試作品ぐらいのモノが出来たので、

本格的にロンドンで研究を始める前に一度実験をする事になったのだ。

俺が頼まれたのは、宝石剣を使用した事により起こる異変の感知。

アンタ、そういうの得意でしょ。

という彼女の言の通りに、俺はそういった事を比較的に得意としていた。

というかまあ、他の事だと遠坂の足を引っ張るだけなのでそれしかさせてもらえなかったといった所なのだが。

そして実験は始まり、最初の内は順調だった。

が、色々とうっかりが重なったのだろう。

発動すらしないはずの宝石剣は暴走状態で起動し、事も在ろうか俺を渦のようなものに引き込んだ。

何かしらの重圧からなのか、あっさりと意識を手放してしまう俺。

再び目を覚ました時には、見知らぬ公園でぼーと立っていたのだ。

ココが何処で何時なのか?

取敢えず情報を集める事を決め、俺は行動を開始する。

それから2時間後、おれはココがミッドチルダの首都でクラガナンと呼ばれる都市の中央区画であり、

そして今が新暦75年5月初頭である事を知りお決まりの台詞をつぶやく事になる。

「なんでさ」

思わず俺がそんな言葉を口にしたのも無理は無いはずだ。














見た事も聞いた事も無いような地名、そして記憶の何処にもない年号。

技術体系化され当たり前に使用される魔法(無論俺の常識で言う様な魔法とは違うのだが)。

その他、様々な要因から俺はココが異世界だと理解した。

不幸中の幸いなのだろう、言葉には不自由しなかった事も在り、

この世界での治安当局にあたる時空管理局という処に早々に保護される事になった。

希にではあるが、俺のような遭難者を保護する事があるらしく、

仔細に渡る事情聴取の後、簡易な宿泊施設へと案内された。

俺が保護されたココは、時空管理局というその名の通りに、時空を跨がる世界を管轄下に置いているのだそうだ。

もちろん当局の管理下に置かれていない世界も多々あり、当局が認識できている世界はかなりの数にのぼるという話だった。

最終的には、俺が居た世界を特定し、そこに送り届けてくれるということらしい。

無論。今回の事故を起こした責任者(この場合は遠坂だろう)にはそれなりのペナルティを受けて貰う事になるそうだ。

今回の場合は事故である為、世界を航る為の船の燃料代くらいは出せ、という程度らしいが。
















そして管理局の保護下に入って三日目の昼。俺に絶望的な事実が突きつけられる。

それは俺が元居た世界は管理局の認識する世界のどこにも存在しないというものだった。

つまり俺が元の世界に帰ることが叶わぬという事の裏返しでもあった。

流石に落ち込む俺を前に、管理局の担当者は何も言わずに立ち去り、一人で考える時間をくれた。

そして俺はその日の内に覚悟を決めていた。

管理局の手を借りて帰れない以上、俺が帰る為にできる事は皆無と言って良い。

今回の騒動の発端となった遠坂の試作品の宝石剣ですら普通には作れないし、

投影なら作成できる可能性はあるが、あんな暴走状態での発動ができるはずも無い。

可能性が弊えた事で俺は決意を新たにする。

たとえ冬木の街に帰れずとも、あの別れを胸に生きて行く、俺はそう決めたのだ。

その翌日、此処で生きて行く決心をした事を告げると、

管理局の担当者からこのミッドチルダでの市民権を得る為にクリアすべき問題が提示された。

しばらくの間、管理局内で保護観察を受けてもらう事になるという話だった。

何処の世界から流れ着いたかも解らぬ不審者を野放しには出来ないということなのだろう。

当然の措置であり、俺は納得ずめでそれを受け入れる事にした。

保護観察処分中ではあるが、タダで飯を食わせてくれるほど管理局は甘くなく(当然だが)、

日々の糧として管理局の地上本部内にある食堂で俺は働く事になった。

そこで待っていたのはとにかく量をこなすという仕事だったが、料理長であるおばちゃんに気に入られ、

熱心な指導と黙々と作業をするのも苦ではない事も相まって、俺は1週間もしないうちにそこに溶け込んでいた。

昼間は食堂で働き、空いた時間はトレーニング、夕方には遅番の人と交代で解放されて、予定がなければ与えられた本部内の腰で休む。

休日の外出時には誰かに同行してもらう必要があったが、それでも随分と恵まれている生活をしていると俺は感じていた。

そのまま保護観察が解けるまで平穏な日々が続くと思われたが、現実はそうではなかった。

後にJS事件と呼ばれる事件が起き、管理局の本部は襲撃者によって襲われた。非

戦闘員である俺は、食堂の皆と一緒に本部に設置された緊急避難用のシェルターへと逃げ込む事しか出来なかった。

本部を揺るがす振動が、シェルター内にも伝わって来る。

料理長も何時もの豪胆な素振りはなりをひそめ、今はただシェルターの中で震えている。

俺は正義の味方として皆を守れる力が欲しいと切実に思った。

その後JS事件はエースと呼ばれる高位の魔導師達の活躍もあり数日のうちに終息した。

だが、事件の爪あとは割りと大きく深刻に影響を及ぼし、その結果約半年をもって俺の保護観察も終る事になった。

正直、俺の為に割く労力すらおしまざるを得ない状況に管理局は追い込まれていたのだ。

管理局から開放された俺だったが、急にそれが決まった事もあり行く宛てが在る訳じゃなかった。

そんな俺に声をかけてくれたのが、食堂の料理長だった。

料理長の親戚の中にクラガナンの中央区に喫茶店を経営していた老夫婦が居たそうで、

今回のJS事件に巻き込まれ、怪我こそしなかったものの、店がそれなりに被害を受けた。

結局、引退して校外に移り住む事になったそうだ。

そしてその店の再興込みで店長をやらないかという話を俺に持ってきてくれた。

改装と修繕の資金まで貸してくれるとあっては、俺は断る事が出来なかった。

そうまでしてくれた理由を尋ねると、料理長は俺の背中を息が詰まるほど強く叩き、

その店が旦那との初デートで待ち合わせた店で、かつプロポーズを受けた店であることを語ってくれた。

恥じらう料理長を見て、人には歴史があるものだなと俺はしみじみ思った。














それから半年が経った。

引き継いだ喫茶店の経営も軌道にのり、新たな生活サイクルを築けた俺は、

自由な時間を可能な限り自己鍛錬に費やす事にした。

身体を鍛え上げるトレーニングと遠坂からの指導を受けて多少は改善された魔術師としての訓練、

そしてこの世界でいうところの魔法の習得への挑戦。

その中で取りわけ効果が顕著だったのがこの世界の魔法の習得だった。

それこそ魔法学校の低学年向けの教本から始めたのだが、

割合と相性が良かったのか、半年で基本的な事が出来るようなった。

バリアジャケットと呼ばれる魔法の防護服の生成と、身を守る為の幾つかの防御魔法。

攻撃の方は相性が悪かったのか、習得まで暫く時間が課かりそうだったが、

前の世界の魔術と比べると恐ろしい速さでの習得と言えるはずだ。

そうして状況の背景にあるのは、この世界の魔法の補助具として使われるデバイスの存在だろう。俺

が手に入れたのは中古で多少の不具合が出るインテリジェントデバイス。

解析によって故障箇所を突き止め、図書館でデバイスの整備関連の書を読み漁り、なんとか自力で修復したのだ。

しかしながら、素人の修理には限界が在ったのか、訓練中にデバイスが暴走し俺は死にそうな目に会う事になった。

しかしながらその死と隣り合わせの中で得たものは大きかった。

固有結界。

俺の魔術がそれに起因すると身をもって理解したからだ。

それはその後の鍛錬の方向性さえ変えてしまうものであったが、俺は確実に力を付けていると思っていた。

流石にデバイスの暴走は二度と起こしたくなかったので、色々な講習などに参加ししっかりと学んだ。

結果、解析を得意とする俺は、本局の駆け出しの整備員ぐらいのことは出来るようになっていた。

そんな矢先、俺はとある事件に関る事になる。

管理局崩れの魔導師達が、人質を取って店の近所の住宅に立て篭もったのだ。

無論、俺は目の前で起こっている事を許す訳には行かず、現場へと単独で踏み込み、

管理局の武装局員に攻撃を仕掛けた犯人の隙を付きを無力化、囚れていた人質の救出に成功した。

管理局の武装局員に負傷者が出たらしいが、人質は怪我も無く全員無事。

それを確認した所で、現場に居た管理局の武装局員に逮捕され拘置所へと拘留される事になった。

薄暗い穴倉の中で3日をすごし、そして俺は現場で指揮を取っていたという部隊長から尋問を受ける事になった。

ヤガミと名乗った女性隊長は俺を憎憎しげに睨みつけ口を開く。



「なんでや?なんであんな事をしたんや」



目の前の彼女が尋ねているのが、あの時の俺の行動原理だと思い至り、

俺は真正面から彼女の視線を受け止めて口を開く。



「それが俺の信念だからだ。

 正義の味方を目指す俺として、あの状況下で何もしないわけにはいかないからだ」


「…正義の味方やて?」



鸚鵡返しに訊ねる彼女に向けて俺はただ黙って頷く事で答えた。



「あーそかい、つまり、アンタは自称正義の味方で、自称正義の為にあんな事をしたちゅうわけや。

 アンタ、自分が何で捕まってるか、全く理解してへんな。

 アンタにかけられてるんはな、あの立て篭もり事件の共犯容疑や」



告げられた言葉に流石にショックを隠しきれない俺。



「如何いうことだ?俺があの犯人と共犯だと?ふざけるのも大概にしろ」


「ふざけとんのはそっちや!何が正義の味方やねん。

 アンタがしたんは、こっちの救出作戦を台無しにして、ウチの部隊員に重症を負わせたって事だけや。

 幸い人質が無事だったけど、アンタが何かしたから無事だったわけや無い。

 たまたま無事だっただけや。アンタは犯人側が有利になるようにしか動いてへんねや。

 確かに、アンタみたいなドアホが現場に居る事を、作戦に盛り込めへんかった落ち度はウチにもある。

 だからと言ってウチ等は立場上、そういうドアホゥを見捨てるわけにもいかへんねや」



言葉は万倍にもなって返ってきた気がした。

確かに俺は全てが上手くいったと思っていた。

しかし、立場が違えば見方も違う。

現場に居た管理局の武装局員達にとってしてみれば、俺のした事を認める訳にはいかないのだろう。



「だが、俺は…」



けれども俺は自分の行為を否定できないで居た。

管理局の人間にとっては知らないが、俺にとっては確かに正義の為の行動だったからだ。

俯く俺の視界に投げ込まれる一枚の写真。十代半ばと思しき女性のものだった。



「ライラ・ミューラ。3ヶ月前にウチの部隊に配属になったフォワードの新人や。

 あの時、犯人の注意がアンタに行かへんように、作戦外の陽動を買って出て犯人の攻撃で重症を負った子や。

 その子な、あれからずっと入院しててん。

 んでな、ついさっきようやく帰って来たわ。

 …冷たぁなってな。

 なあ、アンタ。アンタのやったんはホンマに正義やったん?

 アンタはホンマに正義の味方やったん?

 なあ、答えてぇな、何であの子がここで死ななあかんかったんや?」



彼女の言葉が俺の胸を抉る。俺にはすでに自分の行為を正義だと断じる事が出来なくなっていた。

だが、それでも俺は正義の味方である事を貫くしかない。俺にはそれしかないのだから。



「…けど、俺は…」

彼女の問いにまともに答えられない俺。彼女は立ち上がり、俺の前から立ち去りつつ言葉を投げ捨てていく。



「もうええ、アンタの性根はよう解ったわ。

 …悪いけど、これ以上アンタと交わす言葉は持ってへんわ」



そうして同じ部屋で待機していた女性へと向けて軽く手を合わせた。



「すまん、なのはちゃん、後、頼めるか?」



個人的にも親しげな様子の二人。

どうやら俺の尋問をもう一人の彼女が引き継ぐということなのだろうか?



「了解、と言っても、もうお話する段階じゃないかな?あとは実践で…良いよね?」


「もう場所は押さえてあるんや。元六課の訓練場なら十分やろ?」


「資料に書いてあった衛宮さんの実力なら十分すぎるよ」



突如出てきた俺の名。が、彼女たちが何を言っているのか俺にはまるで解らない。

さらに2、3言葉を交わしそしてヤガミと名乗った女性は部屋から出て行き、

残されたもう一人の女性が俺に話しかけてくる。



「さて、衛宮さん。どうやら、貴方は何も解ってないようなので、私が実践の中で理解させてあげる事になりました。

 ああ、安心してください、こちらは非殺傷設定にしておきますけど、貴方の行動になんら制限をつけるつもりはありませんから」



ゴォン。

低く何かが押し込まれるような音が響き、視界を光が被う。

次の瞬間、俺は何故か海辺にある広場のような処にいて、

そして目の前の女性は魔導師の戦闘装束であるバリアジャケットを身に纏っていた。

おもむろに彼女は取り上げられていた俺のデバイスを投げて渡してくる。

そして俺に杖を突き付けて、抑揚の無い底冷えする様な声で語りかけてくる。



「さあ、始めましょうか。言葉だけでは理解できないでしょうから、私がみっちりとその身体に教えてあげます。

 貴方がどの程度の存在なのかと言う事と、この世界の魔導師がどんな存在なのか、と言う事を」















一等空尉と名乗ったタカマチという女性と模擬戦を行なうことになった俺。

が、そこで行なわれたのは模擬戦なんてものじゃなかった。

一方的な蹂躙だった。

空を飛ばない彼女を相手に、何も成す術が無い俺。

投影した剣で挑んだ接近戦の攻撃は、悉く防御用魔法で防がれ、

そして魔力を乗せて無いであろう反撃の体術で追い払われる。

体勢を崩した俺に追撃されるのは誘導式の魔力弾。

かろうじてそれらを凌いだ俺に迫るのは直射型の砲撃魔法。為す術も無く吹き飛ばされる俺。

彼女の魔法に非殺傷設定がなかったら何度死んでいるか解らない。

吹き飛ばされた後、何とか立ち上がる俺を、彼女は悲しげな表情で見下ろしてくる。



「さっきからまるで猪武者だよね。通じてないのに、工夫の一つも見られない。

 私の教導を稟け始めた頃のライラは、もっと創意工夫して私に挑んできたよ?

 …ねぇ、あの変な結界魔法は使わないのかな?

 それか、奥の手を切らずとも、私程度なら如何とでもなると思ってるのかな?」



俺を見下す彼女の言葉に正直驚いていた。

変な結界魔法というのは恐らく俺がデバイスを暴走させた時に使ってしまった固有結界の事だろう。



「何か驚いてるけれど、やっぱり解って無いんだね。

 管理局が貴方のような怪しい相手に監視を付けないと本気で思ってた?

 確かに色々と問題な部分もある管理局だけれど、

 あんな事件があった直後に不審人物をそのまま野に放つほど愚鈍でもない。

 思惑が外れて良くない結果が出たのは認めないといけないけど…」



つまりは俺は泳がされていたと言う事なのだろう。監視下に置き、不審な人物との接触を待つ。

その段階で俺とその仲間をを一網打尽にする。恐らくだがそういうシナリオが書かれていたのだろう。



「…はあ。本当に貴方はダメなんだね。

 敵の言葉に耳を傾けている暇があるなら、現状を打開する為の手段を考えるべきだよ…。

 ねぇ、待っていてあげるから、貴方の変な結界魔法を使って見せてよ。それで終りにしよう」



ありありと失望を見せた彼女の言葉。

そして言葉の通りに自らは動こうとしない彼女。

俺はそれに8節の詠唱を持って応えた。

炎が走り俺の心情風景が具現化する。

そして俺の腕の一振り持って彼女へ創りだされた剣が殺到する。

殺してしまったか…。そんな考えを持った俺の背後に湧き上がる気配。



「なるほど、使わないんじゃなくて使えないから使わなかったんだ。じゃあ、終わりにしようか」



振り返り距離を取ろうとする俺を拘束魔法が縛り上げる。

そして彼女が俺に杖を向けて構え、俺はその彼女に向けて剣を降らせる。

が、殺到する剣を彼女は防御魔法で防ぎつつ、構えた杖に魔力が集束していく。



「スターライト・ブレイカー」



そして放たれる砲撃魔法。

桃色の光の奔流は剣はもとより固有結界もろとも俺を粉砕した。















それからの俺は自らが戦う事を放棄した。

彼女が放った砲撃魔法は俺の内面にあった全ての剣を粉砕し、

そのことで俺の中にあった信念のようなモノも打ち砕いた。

簡単に言うと心が折れたのだ。

かといって正義の味方を諦めたわけでもない。

ただ無闇に前に出て戦う事だけが、正義の味方ではないのだと俺は思い知らされただけ。

この年になってようやく身の程を知ったとも言えるだろう。

もっとも、固有結界を完全に破壊された俺に戦闘行為ができないというのも大きな一因である。

固有結界はまだ起動できるが、そこにあるのは刀身の砕けた剣ばかり。

当然にして投影できるのも刀身の砕けた剣が殆どだ。

今の俺がまともに使えるのは解析の魔術ぐらいなものなのだ。

それは俺の在り方を変えるには十分な出来事だったのだ。















それから俺が正義の味方として選んだのは、デバイスを始めとする魔法関連の装備の製作者への道だった。

今の俺が唯一使える解析の魔術とも相性が良いのが大きな利点だった。

喫茶店の営業を続けながら、管理局の知り合いに頼み回して貰った仕事をこなし、魔法道具製作者としてのレベルを上げて行く。

遂には正式に管理局と整備士としての嘱託契約を結ぶまでになった。

だが現状で俺は満足していない。

どんな状況下でも全ての攻撃から守る事が出来る道具を造り上げる。

それを為す事こそが、無謀な俺を守る為にあの事件で命を落とした、

ライラという少女への俺なりの贖罪だと結論付けたからだ。

それから十数年後。

俺はライラという女性の墓前に立っていた。

手にしているのは花と先日完成させたばかりの魔法道具。

『アヴァロン』と名づけたそれを墓に奉げ、俺は目を閉じて彼女の冥福を祈る。

トス。

何かが風を切る音と供に俺の胸に軽い衝撃が来る。

同時に走る激痛に膝を着き、胸の中央よりやや左側に生えたモノによって何が起こったのかを理解する。

何者かが投げたナイフで心臓を射抜かれたのだと。

激痛の為か、かすむ視界の隅に捉えた女性の姿。

それがあの時に見せられた写真のライラという少女の姿と被る。


「なん…で…さ」


「姉の仇ですから」



その言葉に俺は納得した。良く見ればあの写真の彼女よりも幾分年上に思える。

目の前の彼女はその言葉の通りにあの彼女の妹なのだろう。

そして俺は彼女の行動に正当性を認めた。



「…ああ、なるほど」



近代ベルカ式のデバイスを展開し、無表情な彼女はそれを振りかぶる。

これから訪れるであろう死を受け入れ目をつぶる俺。

グシャ。

自分の身体が肉塊にされる音と衝撃を聞きながら、俺は死んだ。











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■作者からのメッセージ
先ずは此処まで読んで頂いた方に感謝を。

アーチャーではなく穂群原学園三年生の衛宮士郎をりりなの世界に放り込んだらどうなるか?

というコンセプトで書いてみましたが、いかがだったでしょうか?

自分としては実に衛宮士郎らしい終り方だと思うのですが…。(後味の悪さは別として)

ではまた。

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