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魔王日記 第四十六話 エルフとはロリババアの宝庫である。
作者:黒い鳩   2011/07/13(水) 16:41公開   ID:LkYSqd5eQkI
閑静な住宅街のかなり外れにある一軒家。

人の出入りが元から少ないのだろう、人でごった返していた国境付近とはまるで別世界だ。

外れにあるせいもあるが、住宅街その物も静かなものだ。

高級住宅街という感じはさほど間違っていないのだろう。

実は、ムハーマディラはかなり強制的に区画割りが実施されたらしい。

恐らくは、石神の手に寄るものだろうと思われる、

こうして分業化を図った事によって町の巨大化にも対応できるようにしたのだ。

従来の魔物に対抗するための城郭都市では、大きくなるのにも限度があるという事なのだろう。

ともあれ、この一軒家、当面の住居なら伝手があるとの事で、フィリナの案内でやってきたのだが。

流石に高級住宅街、綺麗でそこそこ広い作りになっている。



「へぇ、これが……」

「はい、マスター、私達が各地に用意している隠れ家の一つです。

 ラリア公国にはあまり行かなかったので無かったのですが、メセドナ共和国には2か所用意されています」

「私達というと、勇者のパーティの事?」

「はい、オーラム・リベネットという、魔法使いが用意した物です」

「大丈夫か? そっちのほうから通達が行ったりしない?」

「恐らくは、少なくとも彼は最後まで魔王討伐には反対していましたから」

「へぇ、それはどういった理由で?」

「魔王が失われることで、魔王領内のパワーバランスが崩れるのではないかという懸念です。

 事実、前魔王ラドヴェイドは積極的な領土拡大は行っていませんでしたから。

 貴族の何人かが暴走気味に領土拡大をしたりしていましたが、小競り合いで済んでいたのも事実です。

 もちろん、小国のいくつかはそんな小競り合いで潰れてしまっていますので、恨みを持つ者も多いですが」



へぇ、人間側にもそう言う考えの人がいるのか。

いや、この特別自治区が存在している事そのものがこの事実を示しているともいえるな。



「ともあれ、中にお入りください、まだ茶葉は残っているはずですから、お茶くらいは出来ると思いますよ」

「分かった、フィリナの料理には感謝しています」

「はい、たっぷり感謝してくださいね♪」



事実この旅ではフィリナのお陰で色々と助かっている。

料理は旨いし、家事もそつなくこなす。

飲み水は清浄化の魔法で綺麗に出来るとの事なので、腹を下した事もない。

流石に紙の調達は出来なかったが……。



「魔王を打ったのは、魔王があの町に進行してきたからなのか?」

「そう言う噂を先に耳にして、私達は人々の脱出を促して、陣を敷きながら待っていました。

 完全に避難を終える前に来てしまったので結局混乱してしまったのですが」

「なるほど、ラドヴェイドも面倒な立場だったが、フィリナ達もなかなか面倒だったんだな」

「そうなりますね、それも今ほどという訳でもないですが」

「ごめんなさい……」

「いえいえ、でもこれはこれで楽しんでいますので」

「へ?」



俺が謝ったのが面白いのか、それとも本当に今の生活を楽しんでいるのか。

フィリナは嘘偽りなく笑っているように見えた。



「元ニートのヘタレだったマスターが、立派な魔王様になるのを見届けるというのも面白いかと」

「いや、ニートだった事はないから! というかそれ、かなり酷くない!?」

「いえいえ、成長していく過程を見られるのはいい事ですよ?」

「何故疑問形!? せめてそこは肯定してよ!」



見た目がサファイアブルーの髪をした超がつく美人(しかも巨乳)なだけに、

微笑みながらからかわれると俺としてはたじたじになるしかない。

年齢は恐らく同じくらいなのに、この経験値の差はいったいなんなんだ!?



「ともあれ、今後の方針を考えるにあたり、魔王としての知識から何かありますか?」

「まあ、普通にしていてもこれだけ人族や魔族があふれている街なら徐々に魔力を吸収できる。

 ある程度以上になったら、魔王領内でもそうそう負けないだろうし、強めの魔族から魔力を頂いてもいい。

 今なら殺さなくても抵抗さえされなければ魔力は吸収できる」

「そうなのですか、かなり効率がよくなっていますね」

「それと、魔力が高くなれば、肉体的にも強化が効くし、魔法等に対しての結界も維持できる」

「魔力がなければ元のニートと言う訳ですか」

「ぐはぁ!?」



しかしまあ、事実である。

そりゃ鍛えた分の筋肉や、反射神経、戦闘のための精神セット等までは失われないだろうが、

筋力や、防御力、スピードの増幅、魔力に寄る防御障壁に魔法、それらが失われては一般人とそう変わらない。

だから、魔力を逆に奪われたり、魔力が無効化するような場所では闘わないようにしないといけない。



「それに、今の感じですとあまり魔力を悠長にためている時間もないかもしれません。

 戦争が起こる気運が高まっていますから……もっとも、それを利用して魔力を貯めるのも手ですが」

「出来ればそれは遠慮したいな。それに、戦争を止められるなら止めたい」

「そこで……これなんてどうでしょう?」

「んっ、もしかして新聞か?」

「はい、これも最近はじめられた物らしいですね」

「……石神いろいろやってるなー」

「会いに行かれますか?」

「いいや、出来る事があるなら先にやるよ。石神は恐らくいずれ会える」

「信頼……しているんですね」

「まあな、幼馴染連中の中でもアイツとは一番長い」



それに奴ほど律儀な奴もそういない。

恩義には恩義で返す。

少なくとも敵対していない相手は利用はしても、損はさせない。

そういう信義を石神は持っている、石神自身、人の繋がりというものを軽視してはいないのだ。



「それで、新聞のどの欄を見ればいいんだ?」

「ここです。”開拓途中の山奥に白銀の魔物を見た!”」

「ナニソレ、胡散臭いな……」



この言い回しは水曜特番とかで、でっち上げ率90%くらいの番組に良く合った言い回しである。

フィリナも流石にそこら辺までは俺から記憶を取得していないらしい。

ある意味ほっとする話だ、というか、性的な方向の知識が粗方流れ込んでいるのは、

俺がそう言う人間だからか、フィリナの興味がそっちにあったのか……。

どっちにしろ、落ち込む話である……orz



「白銀の魔物についての分析ですが、恐らくは強大な魔力の塊だと推測されているようです。

 この話、聞きおぼえないですか?」

「……ティスカのおじいさんの家にいた、金色の魔物か?」

「はい、恐らくは彼らも何らかの手段でそれを知り、利用しようとしているのではないでしょうか?」

「なるほどな……、そして俺もそんな魔物となれば、今ならかなりの魔力をもらう事が出来る」



今は急いで強くならなくてはいけない、それは間違いないのだ。

白銀の魔物は恐らく釣り人かその組織が狙っているだろうが、今度はくれてやる訳にはいかないな。

だが、出遅れている感もある、出来るだけ急いで動かねば。



「とはいえ、最初は裏を取る事から始めないとな……」

「裏を取る仕事なら、やはりハンターズギルドに行くべきですね」

「ハンターズギルド?」

「いわゆる盗賊ギルドです。ですがそれでは聞こえが悪いとロロイが改めました」

「ほう……ロロイってそんなに大物なんだ」

「いいえ、あるのはこの国だけですし、盗賊ギルドと今も抗争をくりかえしています」

「……なるほど」



ロロイもなにやら色々あるようだ。

まあ、彼もまた風来坊のようだったし、訳ありなんだろう。



「ロロイの言うハンターとは、遺跡発掘をメインに仕事をする盗賊の事のようです。

 犯罪に手を染めない、もしくは法のラインぎりぎりあたりまでを良しとするとか言ってましたね」

「ギリギリって……、ともあれ、一般の盗賊ギルドとは違うという事か」

「まあ、個人的な盗賊行為をしない盗賊ギルドという認識で間違っていないかと」

「なるほど……」



確かに、遺跡発掘だろうと広義でいえば盗賊行為ではあるしな。

それに彼、歴史にロマンを感じるタイプにも見えなかったし。

まあ、それはともかく、荷物を置いたら早速行ってみるかな。



「じゃあ……」

「今日はお休みにしましょう」

「え?」

「確かに時間があるとは言えないですが、マスターは今まで気を張りっぱなしだったはずです。

 公国脱出時も魔王領での事も気が休まる時はなかったのではないですか?」

「それは……」



そう言われるとつらい、確かにこんなふうに目的地が見えない旅を繰り返したのは初めての事だ。

なんだかんだいって、カントールに根を張っていた事で色々安心できていたという事か。

でも、あまり時間をかけていられないのも事実だ、せめて情報集めくらいしておきたいというのは本音だ。



「私は疲れても魔力さえ補充されればなんとかなります。

 しかし、マスターはその分魔力の消費が激しくなり余計に疲れる事になりますよ?」

「そうかもしれないな……分かった今日は休むよ」

「はい、少し待っていてください。食材を買い付けてきますので」

「ああ……任せる」



フィリナの言っていた事は半分当たりで半分外れ。

俺は自分に魔力を流さないようにしているので今はフィリナに常に供給されている。

結論から言えば、フィリナは常にエネルギーが満タンに近い。

だから、フィリナは精神的な事を除けば今はさほど疲れていないだろう。

俺の疲れだって、ある程度なら疲労回復の魔法もなくはない。

しかし、それでは精神的に参ってしまうというフィリナなりの気遣い。

なんというか、ありがたい話しではある。

あんまり自然なので服従の強制力があるのか疑いたくなるほどだ。



「まあ、今はそんな事を考えても仕方ないか」



そう思い、せっかくだから応接室のソファーに沈んで時間が過ぎるのを待つ事にしようと……。

ん?

なんだ、先客か……って、先客!?



「おっ、魔王ではないか、久しぶりじゃのう」

「いや、俺は魔王ではないけどね」

「ん……確かに、よく似た魔力波長をしているので間違えたわ。

 魔王がこんなに弱々しい魔力な訳はないな」

「弱々しくて悪かったな……」



ソファーで寝っ転がっているのは、10歳くらいの金髪少女。

好きな人に言わせると幼女と言う奴だ、しかし、緑色を基調にした服装。

それに、長いエルフの耳。

年齢は明らかに10歳ではないだろうと思われた。

そういえば……俺は彼女を一度見た事があったような気が……。

ああ、そうか。



「勇者パーティの精霊使い、ヴィリナ・ラトゥーリアさんですね?」

「その通り、最近の若い者にしてはよくわかってるじゃないか。

 全く、皆私を外見から若く見積もりおって、これでも100歳なのだぞ!」

「100歳ですか……」



10歳にしか見えない100歳、なるほどこの世界のエルフは人間の10倍成長が遅いらしい。

だとすれば、成人するころには200歳になっている計算だ。

どうでもいい知識だけど……。


ただ彼女、勇者のパーティ中でもその能力は勇者に次ぐとすら言われている。

理由はその精霊魔法の強さと、精霊弓パスティアそして弓の命中精度。

だから、彼女からは逃げられないとよく言われているらしい。

ただ、くだんの精霊弓はかなり遠くに投げだされており、とてもひっつかんで矢をつがえられるとは思えない。

よほどくつろいでいるのか、実は弓をあまり大切にしていないのか。


しかし、俺にした所で最近は気配を探るのにもかなり慣れて来ている。

そして、先ほどまではフィリナもいたのだ、それで見つからないのだとするとかなりのレベルの穏行を使うという事になる。

警戒しても遅いかもしれないが、警戒しておかないとな。



「そういや、さっき話が聞こえて来てたけどいつの間にやらお前フィリナを落したのか?」

「あーいえ、そんな事は……」

「しかし、つきっきりで世話をしてくれるうえにマスター呼ばわりだしな。

 はっきり言って私でも羨ましいぞ。彼女は家事万能だからなー」

「う”」



事実だけに否定できない。

ラリアからの脱出行においては、料理は全面的にまかせていた。

何にしろ、一応俺も同じ手順で作ってみた事もがるが、やはり何か違った。



「このかわういヴィリちゃんも料理だけはあまり得意じゃなくてね」

「……」



かわういって……この世界では流行なのだろうか?

それに自分の事をちゃんづけとはまた濃い人物のようだ……。

ともあれ、彼女は精霊使い、確か精霊女王は魔族と敵対していたはず。

俺の魔力は殆ど出ていない筈だが(フィリナに殆ど吸い取られているので)おかしいな?

いや、彼女くらいになるとかなりその辺のセンスも人間とは違うのかもしれない。




「しかし、俺と話していていいんですか?」

「んっ、ああ、ヴィリちゃんは精霊女王とは関係ないよ」

「え?」

「ヴィりちゃん隣の大陸の人だから、こっちの大陸の事情はあんまり関係ないんだ」



隣の大陸……そういえば人族は2000年前にこの大陸に入植してきた事になっている。

それ以前にいた大陸も当然ある訳で、ここだけが人類圏と言う訳ではないという事だ。

そう考えてみると、確かに今までの魔王のやり方はかなり生ぬるいものだったのも事実だろう。

自分達の大陸に入植する事を許し、ついには大陸の半分まで侵略される結果となった。




「結論から言えば、この大陸の抗争は両方に歩み寄りの意思がない所に端を発しておる。

 ヴィりちゃんは人と言う物について研究しようと思って旅に出たんだよ。

 ちょっと前まではレイオスがおもしろかったのでついて回ってたんだけど、最近の彼は面白くないなー」

「その基準はなんなんです?」

「決まっているだろ! ヴィリちゃんが面白いと感じるかどうかだ!」

「なるほど……」



つまり、行き当たりばったりという事っすね。

こんな性格の人がエルフでも勇者と準ずる人として称えられるんだから恐ろしい。

いや、実際、吟遊詩人なんかも沢山勇者の旅を題材にした歌を歌っているけど、

彼女は不都合だからか大人の女性として歌われていたりする、どっちかというとナイスバディ系の……不憫だ……。



「おい、ボウズ、今ヴィリちゃんを可哀そうな者を見る目で見ていたな!?」

「いえいえ、けしてそのような事は……」

「ヴィリちゃんをバカにするなーパンチ!」

「グホッ!?」



俺は驚きと共に体ごと数メートル吹っ飛んでいた。

そのまま、転がされる俺。

なんという、見た目からは想像もつかない怪力。



「あっ、今ヴィリちゃんの事を怪力とか思ったな?」

「エスパーかい!?」

「ふっ、お前は技の本質を知らんのだ。

 ヴィリちゃんは100の力を相手に100のまま当てる事が出来るんだぞ!

 普通、攻撃とかは色々な場所にエネルギーを送って各所でスピードをつけて拳をひねり出す。

 だからインパクトの瞬間、どうしても100%どころか30%も込められた力を相手に流しこめない。

 だけどヴィリちゃんは修行の末、その力の伝道をほぼ100%にする方法を見つけたのだ!」

「それは……凄いですね」



確かに、運動エネルギーというのは無駄が多い。

体を動かすのと同じだけの熱エネルギーを直接叩き込めれば人の血液は沸騰するのではないか。

もっとも、一か所に集中出来ればという条件がつくが。

俺は強くなりたいと思っている、この先生き残っていくにはフィリナにも頑張って貰わないといけないが、

自分で候補達を倒すか下すかしないといけない以上、強くなれるなら何でもやってみたい。



「ただいま帰りました……えっ……ヴィリ?」

「オウお帰り、フィリナ、夕食はヴィリちゃんの分も頼むな」

「えっ……はい……マスター、ちょっといいですか?」

「えっ?」

「(なんで一緒にいるんですか?)」

「(俺達がつくより前からいたらしい、穏行でも使われたんじゃないか?)」

「(なるほど……)」

「(ヴィリちゃんは寝ていただけだから穏行なんて使ってないぞ)」

「どわ!?」

「ふう……ヴィリ……貴方はいつもいつも……」

「そういうフィリナもかわういぞ!」




見た目十歳の子供に手玉に取られる俺達……。

何とも格好のつかない構図である。



「はいはい……マスター、彼女は基本的に楽しそうな事なら善悪云々を建前にしませんから。

 あまり、気にしなくてもこちらに何かする事はないと思います。

 根掘り葉掘り聞かれると思いますが、出来れば適当に流してくださいね」

「はあ……」

「全く、フィリナはもしかして、前の事を気にしてるのか?

 レイオスにお前の事を意識させたのはヴィリちゃんだものな!」

「えっ?」

「いやー、楽しかったぞ。元々レイオスはあ奴を好いておったが、恋愛にはとことん鈍い奴だったのでな。

 ちょっとだけ誘導してやったのじゃ、フィリナのパンツを懐に忍ばせたり。

 フィリナの水浴びの場所を教えてみたり」

「って、勇者の犯罪歴はあんたのせいかい!!」

「フフフッ、やはりな……」

「なっ、なにがやはりなんだ……」

「お主突っ込みの才能をもっているな!! 名はなんという?」

「いやまあ、シジョウ・シンヤっすけど……」

「ほう、シジョウが名前か?」

「いや、俺の住んでいた所では逆で、こっち流ではシンヤ・シジョウってことに」

「ほうシンヤか、変わっているが呼びやすい名だな、ヴィリちゃんは気に入ったぞ!」

「へ?」



満面の笑みで俺を指差す10歳風エルフ。

何だか嫌な予感しかしないんだが……。




「いや、レイオスが最近実家(王宮)に引きこもってつまらんからな。

 誰か才能のやるやつを探したおったのだ!」

「えーっと、その才能って突っ込みの?」

「うむ! 正確には面白い反応が出来る事であって突っ込みでなくてもヴィリちゃんは構わんぞ?」



うわぁ……妙な所で妙な人に気に入られたものだ……。

とはいえ、戦力としては一級品の……筈(汗

まあ、利用できるとも思えないが、敵対するよりははるかにいい。



「それでお主らは何をしようとしているのだ?」

「白銀の魔物を探そうと思ってね」

「ふむ……、その捜索ヴィリちゃんに任せてみないか?」

「え?」

「どうせ、今日は休むのであろ?

 ヴィリちゃんはさっきまで十分寝たからちょっと行ってくる」

「へっちょっと!?」

「飯はとっておいてくれー」



俺に注文を残すとヴィリはさっさと行ってしまった。

これが魔王候補の作戦会議だというのだから笑える話だ……。

そんな事を考えていると、フィリナが料理の鍋等を持って戻って来ていた。



「ヴィリはもう行ってしまったのですか」

「ああ……俺は彼女の事を詳しく知らないが、大丈夫なのか?」

「はい、恐らくは。彼女はこの大陸の出身ではありませんから、いえ、それだけという訳でもないのでしょうが。

 兎も角、そういった、どの勢力とは敵対し、どの勢力には味方するというのはないです」

「え?」

「彼女にとって、面白い人物を観察する事が一番大事でその他は全て2の次なんです」



なんだそりゃ、奔放にもほどがあるぞ!?

エルフっていうのは基本人間の権力構造には興味を示さないものだが……。

しかし、レイオスが面白くて次が俺と言うのが意味分からん。



「基準がよくわからんな……」

「あら、簡単ですよ。彼女が好きなのはからかいがいがあって、前向きな人です」

「そんな人沢山いるんじゃ……」

「ええ、沢山と言うほどではないですが確かにいますね、ですが。

 ただそれだけの人にはからかいはしても、それ以上はしません。

 もう一つ、彼女が気にするもの、それは立場の複雑さです」

「それは……」

「今大陸でも屈指の複雑な立場にいるのがマスターであると私は自負しています」

「……まあそうかもね……」



俺は思わず遠い目をする。

確かに、今の俺の立場ほど複雑なものはそうないだろう。

元はただの引きこもり気味のフリーター、この世界に来てからは冒険者であり、

魔王復活をもくろむ存在でもあったが、今はその魔王の候補であり、冒険者達からは裏切り者として追われる立場。

賞金の高さ次第ではいつ冒険者に囲まれてもおかしくない。

そして、魔王の候補としては最弱であり、ただぼーっとしていても強くなる事は出来ない。

継承戦ではいつ殺されてもおかしくない立場だ。



「俺の立場……複雑っていうより危機一髪ッて感じだな……」

「ええ……マスターに死なれては困りますので、頑張って泥水啜ってでも生き残ってくださいね♪」

「笑顔で言われてもな……」



フィリナは相変わらずSッ気を時々滲ませてきて怖い。

取りあえず、作ってもらった飯は旨いので文句を言わず飯を食う方に集中する。

あんかけチャーハン風の料理だが、食った事のない食材のようだ。

しかし、やはり旨い、



「凄いな、フィリナは料理屋でもやっていけるんじゃないか?」

「そうですねー、料理は好きですし、それもいいかもしれませんね。

 ただその場合、マスターは店舗経営を学んでいただく事になりますが」

「へ?」

「離れられない身としては、マスターにも元の世界に帰る事を諦めてもらって同じ仕事に従事するしかないでしょう。

 大丈夫ですよ、料理も一から教えますので♪」

「ぐっ!?」



確かに現状で料理屋を始めるとなれば、そう言う事になる。

それはそれでいいかもしれないんだが……。

なんというか、気持ちは複雑だな。



「それよりも、今日はゆっくり休んでくださいね。

 恐らくかなり疲れていると思いますので……」

「全く、旅慣れてるフィリナ達には敵わないよ。じゃあ、俺は寝るから、後はよろしく。

 フィリナもあんまり無理せず早めに休んでおいてくれ」

「はい」



俺は、フィリナにベッドのある部屋まで案内される。

今まで俺が寝てきたどんなベッドより良いベッドだ。

天蓋付きベッドや羽毛布団なんて初めて見た。

オーラムとかいう魔法使いはかなりの金持ちなんだろうな……。

しかし、長くそれを味わう事は出来なかった。

ふかふかのベッドの中に入った途端、俺は泥のような眠りの中に入り込んでしまったから……。






















翌日、俺は天蓋付きのベッドというものがどんなものなのか、ちょっと不思議に思う事になった。

いや、朝なのにピンク色が一面に広がっていた。

天蓋が木の場合は天井と変わらないのだろうが、俺が見たのはピンク色の……あれ?



「ふがふが(なんだ顔の上に何か乗っている?)」

「うーん……むにゃむにゃ……」



明らかに何者かが俺の上に乗っている。

ピンク色だと思ったのは、その服の色だったと……ん?

服の色?

違うなこれは、もっと肌に密着した……あり?



「おはようございますマスター昨晩はよく眠れまっ……!?」

「おー、フィリナ。ヴィリちゃんお腹がすいたから朝食を……むにゃむにゃ……」

「まっ……マスターの上から退きなさーい!!」

「なんだよ別に減るもんじゃ……むにゃむにゃ……」



ヴィリは半眠りのまま俺の上でくつろいでいる。

と言う事は、俺の頭の上にあるのは……。

ヴィリのパパパっ……パンツなのでは……。



「もー、いい加減にしなさい!!」



その時、怒り心頭となったフィリナは大きく振りかぶったフライパンを振り下ろす。

叩きつけられたフィリナのフライパンクラッシュは俺の顔面にクリーンヒットしていた……。

ああ、そういえばフィリナって耳年増なだけで基本的には乙女なんだっけ……。

そんな事を考えながら俺は気絶した。

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■作者からのメッセージ
最近遊戯王に入れ込んでる私ですが、週一のペースは何とか守れております。
とはいえ、今回も根本的にはお話が殆ど進みませんでした(汗
つーか、お話がまるでラブコメのように(滝汗
まあ一応次回くらいからはバトルを意識したものに出来ると思うのですが。
なかなか、一度ギャグ側に流れると真面目に戻り辛いものですねぇ。



感想を頂きいつも感謝しております!
テンションを維持するために役立てさせて頂いております。
特に、オリジナル作品であるため、どうしてもある程度の時間(ネタを考える)が必要になりますので。
これ以上のペースアップは難しいと思いますが、今後ともよろしくお願いします。



>STC7000さん
シンヤは何度も何度もやられてへ垂れてきたので、逆に開き直っている部分があるのかもです。
それに、今までと違い自分でも何かをすれば何かが変わると言う思いがある事が大きいですね。

石神は石神のルートがありますが、勇者パーティのサポートを受けているシンヤもまるきり後手と言う訳でもありません。
その辺り、今後ヴィリちゃんの活躍をよろしくですw(爆

後手後手が続いていますね確かに、となると魔力を得るための白銀の魔物が先手となるかどうか。
そして釣り人たちはどう動くのかこうご期待wwなんつってww

お互い体には気をつけましょうね、STC7000さんは最近の忙しい事が多いようですし。


>Februaryさん
はい、まあスルーしていますが魔獣や妖魔との戦いは何度かありました。
ですので、シンヤは微妙にレベルUPしていたりしますw
魔王領はさっさと抜けたかったと言うのが本当でして、イベントはかなり軽めにしておきました。
どうせまた行く事になると思いますけどねw

石神君は1年でいろんな方向に進出してきています。
まあ、バックにいるアルウラネの力も上手く使ってきていますので、まるっきり無手から上がってきた訳でもないですが。

励まし2www殆どこきおろしですなwww

ですねぇ、アニメや漫画の場合はそれはよくあります。
石神君は一応着替えてますがね!(爆

女物を着こんでにあう主人公なんて掃いて捨てるほどいますからね。
ここはあえて笑いをw

確かに、元スケ番みたいなもんですしねww


>まぁさん
遊戯王は書くのに殆ど頭を使っていないんですよ。
不思議なものですが書きながらネタを考えても特にスピードも落ちないし。
整合性なんてーのは頭の中に残っているかどうか怪しい程度ですしねw

苦難を乗り越えるのが難しいと言う事もあり、
今回強力な助っ人が参戦してくれる事になりましたw
お笑い方面でもですがw

ピンチを諦めてきたシンヤ君ですが今は周りの人々に支えられたりする事の幸福を知っています。
だから、出来るだけそれに答えたいと考えている部分が大きいですね。
自分を貫くにもやはり支えは必要ですから。


>T城さん
確かに、赤くなるフィリナは今まではあまり見なかったですね。
ただし、これからもそうかはわかりませんw
トラブルメーカーのヴィリがいますのでw

彼の目的は、アルウラネとの約束である、第三勢力を作る事なので。
全面戦争が出来るのは後背を突かれる恐れが無いからという事もあるので。
人類側、魔族側双方に一定の距離を持ち双方と交渉できる第三勢力を作るため石神は奔走中です。

接触は正直どのタイミングがいいのか今計っている最中でしてw
なかなかに難しいかもしれないですねー(汗





ではでは、次回門頑張りますのでよろしくお願いします!
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