3歳の誕生日を迎えたその日、目が覚めたら脳内に声が響いた。
『総取得経験値が規定値を超えたため、自身状態閲覧、自身状態管理の能力が解放されます。今後はこの能力を使うことにより自身の状態の把握と管理が行えるようになります。』
は?
まず最初に疑ったのは幻聴だったが、声が響き渡った瞬間目の前に状態一覧表示なるものが現れていた。
あれだ、SFに出てくる網膜投影みたいな感じで、実際の光景にかぶって様々な情報が表示されている。
え?
次に幻覚を疑ったが、何度目をこすっても、何度目を瞬いても消えることはなかった。
「…寝よう」
寝不足だ、寝不足によるなんらかの視覚障害の一種に違いない。
というわけでおれは、布団を頭にかぶってひとまずの現実逃避を行った。
再び目覚めたおれの眼前に広がるのは、ふて寝する前にあった光景と同じ物だった。
うん、夢でもなんでもなかった。
ここは正しい現状認識のためにも、少々検証する必要があるだろう。
と、言うわけで両親にこのことを報告したら、この子何言ってんの?みたいな目で見られた。
「天才というのはたまにおかしなことをいうらしいからな」
「そうですわね。隆也もきっとそうなのでしょう。あまりに聡明すぎて、わたしたちとは見ている世界が違うのでしょうね」
などと言われる始末。
うん、どうやらこの現象は一般的なものではないらしい。
いや、世界が違っているから、こういうこともあるかもと思ったんだが、どうやら違ったらしい。
となるといろいろと困ったことになるな。
なにせ、使い方がわからない。
というか、ぶっちゃけこの表示がうざい。
だって常に視界にかぶってるんだから、鬱陶しいことこの上ない。早々に両親に報告したのも、こいつの制御方法を知りたかったってのが大きい。
それがいきなり蹴躓くとは…
しょうがないので一人部屋にこもって、表示されている情報に目を向けてみた。
するとおもしろいことがわかってきた。
とりあえずめぼしいところで、
基本情報
名前:立花 隆也
性別:男
年齢:3歳
身長:92cm
体重:14kg
普通に自己プロフィールだった。この程度ならおれでもわかる。
次はどうも身体に関する細かい情報のようだ。
身体能力情報
筋力:27(60)
体力:30(60)
俊敏:23(60)
器用:30(60)
感覚:204(512)
知力:549(798)
精神:712(902)
見てるとRPGとかのステータスっぽい。それにしても、なんかえらい極端な数値だな。
3歳児の体に影響されてるからか、身体に依存する能力は軒並み少ない。
代わりに精神に関する数値はまさに桁が違った。
他人の能力がわからないんで何ともいえないが、この年にしては規格外と言っていいだろう。
気になるのが()で囲まれている数値なんだが、これに関しては今のところ何ともいえない。
ゲームとかだったら、補正値込みの数字なんだろうけど、なんか違うっぽい。要研究だな。
その次はどうもおれの技能関することらしい。
通常技能情報
・語学:497
・家事:334
・勉学:427
・etc…
とまあ、なんか自分ができることが延々と並んでいる。たぶん前世で培ったものが生かされているのだろう。
軒並み高い数値をはじき出している。
あとおもしろいことがわかった。単純に語学とか表示されいてるんだが、意識を集中すると、
語学:日本語421、英語143
みたいにさらに細分化して見ることができるようだ。ヘルプはないが、なかなかにユーザーフレンドリーな仕様だ。
とまあここまでは想定の範囲内だ。だてに昔はゲーム三昧の生活を送っていない。
問題は次だ。
特殊技能情報
・因果律への反逆
・自身状態閲覧
・自身状態管理
後ろの二つはとりあえず置いといて、最初の『因果律への反逆』ってのはなんだ?
因果律って言葉自体はまあわかる。
ようするに原因があるから結果がある、始まりがあるから終わりがあるなんて感じの考えのことだろう。
だが反逆ってのは少々穏やかじゃないな。おれって、そんなに反骨精神旺盛ではないですよ?
考えても仕方がない。せめてゲームみたいにヘルプが表示されていればなあ。
あと最後になるが、使用可能経験値、ってのがあった。見てみると100,478ってなっていた。
多いのか少ないのかわからないが、初めての6桁台の数値に心躍ったのは内緒だ。
使用可能っていうことは、なにかに使えるんだろうけど、今のところ謎である。
というわけで、この摩訶不思議な現象の検証は続くのであった。