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とある医師の懺悔
作者:エコーズ   2012/07/29(日) 10:09公開   ID:U7fIhODV/5g
夢を見ていた。それは、僕にとって忘れ去りたい思い出でもなんでもない僕の過去の人生を投影したもの。

幼稚園時代の僕、小学校時代の僕と自分でもう覚えていないと思っていた自分の出来事を経ながら加速度的にあの時へ向かっていく。

中学、高校を経て大学の医学部に入り、そして・・・・・・・・あの男ハワード・ロックウッドまたはマモーと呼ばれる男に出会うまでを。


いくな、その男についてくなと僕は必死に夢の中の自分に叫ぼうとするがうまくいかない。体の自由がきかずまるで石になったみたいだ。

仮にいったところでこれは夢だから過去は変わらないのだが、それでも変えられるものなら変えてみたかった。だが、その努力も虚しく僕はその男についていくことを決めた。

その先は、悲惨な生体実験を僕が行うことに・・・・・・

はっと僕はここで目を覚めた。荒い動悸と息を抑えながら僕はなんとか立ち上がる。

いま自分が勤めている学園都市の病院の仮眠室で疲れを取るために寝ていたのだが、まさかあの出来事を見るとは思わなかった。

「これも僕の報い、僕が一生後悔していかなければならないんだ・・・・」

僕はそう呟く。それでも後悔なんてやめちまえ、お前がそんな重荷を背負う責任を感じるなんてことはないと悪魔の声が聞こえてくる。

その声に身を任せ責任逃避したいという気持ちもあるが、残念だがその誘惑は魅力でも誘惑に任せることはできない。

もしそんな誘惑に身を任せたら、結局のところマモーのところや学園都市で人体実験を行っている非人間的な畜生道に身を費やした人の皮をかぶった悪魔どもと同じになってしまうからだ。

僕は、冥土返し。学園都市の病院に勤務している医師だ。

周囲の僕の評価を着る限り、それに見合う技量は持っている自負はあるが僕は天才的な医師であるとともにたとえどのような人間であっても最後の最後まで治療するという高潔な人格者として評価されているらしい。

その陰に治療費を払えないやつを治療すると言ったり、犯罪者を治療する必要なんてないという声も聞こえるが本当の僕はそんなものではない。

僕はただの薄汚い犯罪者がにあっている。何故なら僕も一度は畜生道に身を費やしかけたからだ。

あれは今から数十面も昔になる。昔の僕は、大学病院に務める医師であるがそのかたわら大学病院は研究が全てという悪癖があるが、その悪癖に則り不老不死を研究していた。

不老不死。そう聞けばバカバカしく聞こえるかもしれない。が、科学的に見て不可能というわけではない。

近年になって長寿遺伝子というものが発見されているし、DNAのテロメア領域という細胞分裂に関わる領域を制御し細胞の分裂回数を落とすことで不老不死も実現できるかもしれないと言われている。

当時の僕も遺伝子を研究しての不死を研究していた。患者のため、人類から死という苦痛をなくすためという大義名分を掲げていたが、そんなものはまがい物に過ぎない。

それは僕が死を恐れていたからだ。大学病院で僕は初めてなんの治療もかいもなく死んでいく人を見た。病気で苦しんでいる人も見た。

それらを見ながら僕は自分が醜く老いることを本能的に恐れていただけなのだということが今ではわかる。今は死を恐れない、死とは単なる人生の終着点に過ぎず恐ることはないのだと。

でもその当時の僕は恐ることはなくがむしゃらに死を防ぐすべを見出そうとしていた。そのために西洋の錬金術や中国の煉丹術といったものや、重力が死に影響を与えるといったものまで全て調べていた。

そして僕は日本の大学での設備や資金、学閥での争いから研究が遅々として進まないことからアメリカの病院に映った。病院というより正確には研究施設だ。

不老不死を見出してないだけであって細胞の再生に関わる新物質の発見などそれなりに評価される論文をとっていたからスカウトされた話に飛びついたのだ。

その研究所に努めいていた際にある男が訪れてきた。ハワード・ロックウッド。

今はもう既に死亡している世界最大の億万長者で僕以上に死を恐れ、そして学園都市にも匹敵する技術力を裏で持っていた男だ。

学園都市が世界最強の技術というが、実際はそうではない。ある国ではナノマシンを利用した高度な防衛システムを実用化したそうだし、東京都の地下に極秘の遺伝子操作設備を作りクローンや遺伝子強化兵士といったものを作ったマイケル・小杉という犯罪者やある科学者が記憶操作技術を実用化したり、小型核爆弾を転売しようとした男もいるなど世界最強とは一概に言えない。

僕が開発した高度な細胞再生技術もマモーの技術があったから完成にこぎつけたのだ。

マモーも軍事面においては劣るが、かなりの進んだバイオテクノロジーや脳科学といった医療やコンピューターなどを持っている男だったが、僕はそれを知らずに彼の研究チームに入ることで豊富な財源を使えることを目当てに彼のスカウトに応じた。

それが毒蛇の巣にいくとも知らずに。

マモーの下で研究を進めているうちに僕はその実態を知った。要は不老不死を行うために人体実験を行ったりするということもありな非道な研究施設なのだ。

その上そこから逃げ出そうにもマモーが私兵として雇っているメンバーがいるから逃げられはしなかった。そこで僕はマモーに言われるまま人体実験をカリブ海の孤島に浮かぶマモー所有の島で罪悪感を感じながら行っていた。

僕は立派な人間などではない、結局のところ自分は卑小な一人の汚い人間に過ぎないのだ。

罪悪感を感じながら行っていたとは言え大量の人間を殺した虐殺者、それが僕だ。

そこから逃げ出せたのは、ひとえにアメリカ軍に感謝したい。マモーはあの当時、どうやら核テロリズムを目論んでいたようでそれを阻止するべく空爆が行われたのだ。

空爆であの島にいたほとんどの人間は死んだが、僕はなんとか脱出できた。あの島にあった船をなんとか動かし、警備が混乱する隙をついて脱出したのだ。

この経験を深く後悔した僕は、人の命を誰でも貴賎なく貧乏人でも金持ちでも救う活動を始めた。世界中の紛争地帯にも言ったし、貧しいスラム街にも言った。

そしてそんな活動の中アレイスターという男を僕は助けた。今その男が作った学園都市に僕は住み、医師として活動を続けている。

その学園都市もマモー以上の毒蛇の蛇に変わっているのが今の実態だ。とはいえ僕はアレイスターを助けたのを後悔はしない。

人の命を可能な限り救っていくのが僕にできることなのだか。



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