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晴れと琴の音色 第1話『出会いとスクリーン』
作者:ことりん   2013/03/21(木) 09:10公開   ID:2630cXPtXf2
人生の魅力とは、先が見えない事だと思う。
先が見えないから、夢や希望を抱く。

でも、自分にもし未来が見ることのできる能力があったら、きっとそれを使ってしまう。

人の感情はいつだって矛盾している。


第1話『出会いとスクリーン』

「麻〜琴!」

放課後になると早速、私の親友の晴香が帰りの支度をすませて、わざわざ私のクラスまで迎えにきた。

「早いね!ちょっと、待ってて」

「うん」

晴香は身長が143cmしかなく、この高校で一番小さい。
そして、一番小さい上に目が大きな黒目で、甘えん坊で私の一番の癒しだ。

「ごめん、行こっか」

「うん♪」

廊下を歩くと、生徒の視線が突き刺さる。

いつもそうだ。
おそらく、こんなに可愛い晴香が隣にいるのが羨ましいのだろう。

正直、晴香が私なんかの隣に居ていいのかと不安になる。
まぁ、自ら癒しを手放そうなどしないけど。

「ちょっと」

4階の教室から階段で1階まで下がり、下駄箱で靴を履き替えようとした時だった。

誰かに声を掛けられた。

晴香の方を向くと、口パクで「先言ってるね」と言っていた。

「何でしょうか?」

「君さ、僕の事分かる?」

「は?」

いきなり驚きの質問だった。
私は記憶力だけはいいほうだから、会った事があるのなら覚えているはずだ。

「新種の僕僕サギですか?」

私が真面目な顔で言うと、彼はブッと吹き出した。

「ハハッ!…ねぇ、それ真面目?」

「もちろんです、失礼ですね」

私が怒り気味でそう言うと、彼ははたまた笑った。

本当に失礼な人だ。

「フゥ……ごめん、ごめん。知り合いに似てるもんだから、もしかしたらと思って…さ」

「はぁ…?」

私なんかに似ている人なんているのだろうか。
正直いるなら、会ってみたい。

「まぁそれだけ、ごめんね。あ、僕の名前は、冷泉恭彦。また会うだろうから覚えておいて」

「私は、雅麻琴です」

私も自己紹介をすると、冷泉さんはとても驚いた顔をした。

「……どうかしました?」

「ううん、何でもない。またね」

彼はそう言ってどこかへ言ってしまった。

「変な人……」

私の呟きは、誰の耳にも届かなかった。

「あ!!」

私は、晴香を待たせているのに気づいて急いで学校を出た。

しかし、どこを見ても晴香の姿はない。

「先、帰っちゃったのかな」

私はしょんぼりしながら、帰り道を歩いた。

1人で歩くと、道がとても長く感じる。

「ッ……!」

いきなり、地面に体が吸い付くような感覚に襲われた。

「何コレ……!」

私は意識が朦朧とし、その場へ倒れ混んだ。

誰かが駆け寄ってきた気がするけれど、よく見えない。

スッ

いきなりスクリーンのように頭の中に何かが流れ始めた。

「ようやくーーーーと思ったのに」

「これじゃーーーを救えない」

視界がぼんやりとしていて、会話もはっきりとは聞こえず、途切れ途切れだ。

それでも、気持ちが流れ込んできた。

『悲しい』
『悔しい』

決して明るいものでないと分かった。

スッ

今まで暗闇だったのに、いきなり光がさしこんだ。

「ーーー!帰ってきたんだ!」

「ーーーして、ーーーね」

「もう、そんなのいいよ!ーーが無事なら」

今度流れ込んできたのは、どちらかというと明るいものだった。

それでも、視界と会話ははっきりとしていない。

これは何? 

この流れ込んでくるのが何なのか分からなかった。

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