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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版) 40 モンディアル氏40になっても結婚できず(なのは世界の伝統)
作者:黒い鳩  [Home]  2014/09/11(木) 08:02公開   ID:m5zRIwiWPyc
赤い星、かつては俺の世界でもそう呼ばれていたらしい。

最も、火星開発後も土壌改良はそう勢いよく進んだわけじゃない。

肥料にしたところで、地域全土をカバーするだけの肥料なんて想像もつかない。

だから、確かに火星の土は赤かった。

俺はそんな事を印象に持つ、何故なら極冠遺跡の周辺は岩砂漠ばかりで、赤い大地ばかりが目立つ。

まるで、人など住んでいなかったかのように……。


「まったく、感傷に浸っている場合じゃなかったな……」

「主アキト、どうされたのです?」

「いいや、それより揺り戻しが起こる前に戻らないとな、あの世界の火星から地球に戻る事は出来ないからな」

「最悪、私とユニゾンしていれば宇宙でも呼吸困難などで死ぬことはないですが」

「ああ、その時は頼む」


それでも、ぶっつけ本番でためしたくはない。

それに、今はあくまでスカリエッティの目的の調査だ、幾つかヒントはある。

以前俺やユリカを捕えた時はナノマシンと演算ユニットの研究を行っていた。

それと、スカリエッティは以前から人を改造したり、人造人間のようなものを作ったりしているらしい。

つまりは人そのものか、人体実験を必要とする何かを作り出すのが目的なのだろう。


「しかし、その極冠遺跡に奴らがいるという保証があるのでしょうか?」

「いいや、確証があるわけじゃない、だが、奴らは火星の後継者となったとき、演算ユニットを手にし、最後はここに陣取った」

「この場所に意味があると?」

「まあ、あっても俺に分かる自信はないがな。リインフォース、頼りにしているぞ」

「我が全能を持って」


俺は、そうした会話をすませてから極冠遺跡の中心部に飛ぶ。

遺跡は以前とほとんど変わらない姿でそこにあった。

しかし、中央に置かれているはずの演算ユニットは存在せず、俺の知る歴史とほぼ同じである事を知る。

俺は、今まさに演算ユニットそのものであるといっても、その全容を把握しているわけではない。

内部はブラックボックス化している分も多く、また、リインフォースやリニスのほうが外部から見られるだけよく見てもいる。

だが、ふと見ると見覚えのある残像が残っている。

もちろん、現実の光景ではない事は知っているが、やはり懐かしい。

あれはアイちゃんが20年前にボソンジャンプされる前の瞬間……古代火星人のプレートを……イネスに……。

プレート!?

そういえば、あれは一体どうなったんだ。

少なくとも古代火星人を知る上では重要な情報源になっただろうに……。

イネスが隠匿している?

だとして、研究はどうなっている?

いろいろな思考がごっちゃになって俺の頭の中に渦巻く。

いや、今回の事には関係ないだろう……。


「主アキト、どうしましたか?」

「ああ、いや……時間がないのにすまないな」

「いいえ、最悪でもこちらに来れる事は分かったのです。これから研究を進めれば……」

「そうはいかないさ、並行宇宙なんてこの世界に持ち込めばどうなるか……。

 特にボソンジャンプ技術の流出だけは避けたい」

「この世界ではメジャーなのですか?」

「いずれメジャーになる、演算ユニットである俺は活性化することになるかもしれないが、

 使い方次第では過去改変すら可能である事は、プレシアの件で把握した。

 だから余計に……な」

「しかし、並行宇宙理論においてはそれは同一の世界ではなく、分岐世界ということになりますが」

「否定はしない、だが、俺の認識では確かにプレシアはアリシアに再開し、アリシアは俺の養女ということになっている」

「……つまり、並行宇宙の分岐の元、主アキトは分岐した先へと向かうということですね」

「そうなのかどうかはよく分からないがな」

「なるほど、面白い話を聞かせてくれるわね……」

「イネス……」


ユニットのあった場所には今イネスが立っている。

さっきまでいなかった事を考えればボソンジャンプで現れたのだろう。

しかし、なぜという言葉はつきまとう。

俺達のいるここへ、どうしてイネスはピンポイントで現れる事が出来たのか。


「あら、久しぶりなのに挨拶もないの?」

「久しぶりだという認識はあるのか」

「多分そうじゃないかと思っただけだけどね。貴方はこの時代のテンカワ・アキトじゃない、そうでしょ?」

「……その根拠は?」

「第一に、今貴方は集中治療室にいる、動かすのをためらわれるくらいに重症よ」

「ふむ」

「第二に、貴方は私の事を知っている。それにここを懐かしんでいるようでもあった」

「……」

「第三に、並行宇宙理論、堪能させてもらったわ。そちらのお嬢さんは並行宇宙の存在ね」

「なるほど、まいったな。否定はしない、しかし、なぜここにいる?」

「そうね、これに導かれたからじゃおかしい?」

「!?」


イネスが白衣から取り出して見せたのは、アイちゃんが古代火星人からもらったというプレートだった。

俺の視線はプレートにくぎ付けになる。

何の変哲もないというわけでもないが、その辺にありそうなキャッシュカード大のカードのはずなのだが……。

俺はそのプレートが放つ情報が漏れだしていると感じていた。

プレートから漏れ出した情報は俺をたやすく飲み込む……。

たかだかカードに宇宙でもつまっているような……。


「それが導いたというのか?」

「どうなのかしらね、私がそう思えただけだから」

「フレサンジュ博士らしくもないな」

「うふふ、確かにそうかもね。でもこれはアイちゃんとしての記憶が呼び覚まされた結果かも」

「!?」

「そんなに驚かれても困っちゃうけど、プレートに反応があったからここに来てみたのは本当よ」

「そうなると俺達がここに来た意味も……ッ!!」

『ギギギッ』

「そこかっ!!」


昆虫の鳴き声のような電子音が響き、バッタが現れる。

俺もこの世界に来た事で感覚が鈍っているらしい、バッタどもが100m圏内に来るまで気づかなかったとは。

飛んできたなら気がついただろうが、どうやら溝などに隠れてもとから潜んでいたらしい。


『やあやあ、まさか君から来てくれるとは思わなかったよ』

「ヤマ、いやスカリエッティだったな……貴様何をたくらんでいる?」

『私はいつも同じさ。研究熱心な科学者、魔法も使うがね。

 ここはいろいろ研究材料があるんでねぇ、いつも虫型を張りつかせている、じゃなきゃこんなに早く分かるはずもない』

「……」


声だけしか聞こえなかったが、恐らくバッタが声を転送しているのだろう。

奴本人は今ステーションの一つでユリカを人間翻訳機にするための研究をしていることだろう……。


『いやあ、ユリカだっけ? 彼女を君と同じ様にしてみようと思ったんだけどさ。

 普通に取り込まれちゃってねぇ、まぁ生きているだけ他よりはマシなんだけど』

「黙れ!!」

『やっぱり君は特別な素養があるみたいだね、あの時死んだと思って処分してしまったのが惜しいよ』

「黙れと言っている!!!」


怒りで頭に血が上った俺は目の前のバッタに向かって魔法を弱体化する黒い剣で切りつける。

しかし、ディストーションフィールドが相手では分が悪かった。

はじき返され、10mは空を飛び地面に叩きつけられるかという時。

背後で俺の背中を受け止めるしっかりとした腕があった。


「主アキト、戦力が必要ですか?」

「……頼む」


俺は、一瞬迷ったがやはりこいつらを破壊せねばおれなかった。

奴から直接与えられる情報が信用できないという点も大きい。

俺は、黒いボディースーツと白銀の髪になる。

ユニゾンによって服装が規定されるだけでなく、リインフォースによって強制的に白くなる部分が出来るようだった。

細かい事はどうでもいいのだが。


「遺跡に被害を出したくない、出来るか?」

『了解、敵機、検索半径5km以内に同型122、ブラッディダガー射出します』


リインフォースが魔力で検索した範囲全てに黒い刃が降り注ぐ、

だが、ディストーションフィールドで覆われたバッタには効果が薄い。

ほとんどがはじかれ、その場で消滅した。

しかし、無駄な攻撃だったというわけではない。


『攻撃起点特定、詠唱を』

「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ」

『威力設定、ノーマルレベル、フレスベルク発動』


俺というより、リインフォースが発動させた強大な魔法は、分散し122のポイントへ向けて到達、

ディストーションフィールドを貫通しバッタどもを爆発四散させた。

ディストーションフィルドの出力が低いバッタどもだったせいもあるが、重力に影響を受けにくいエネルギー波なのだろう。

最初のブラッディダガーが影響力を低下させていたこともある。

魔法の理屈はよく分からないが……。

だが、流石に今のは負荷が大きかったらしく発動後俺はリインフォースとのユニゾンを解除されていた。


『これはこれは嫌われたものだ、虫型が全滅とはね』

「くっ!」


俺は背後を見て愕然とする。

奴の部下の戦闘機人の一人が地面から現れていた、それもイネスからプレートを奪おうとしていた。

声はその戦闘機人が腰に下げている無線機のようなものから漏れている。


「チィッ!」

「博士、こんな所で声を出さないでくださいよ!」

『いやー、彼の行動力に関心させられたものでね』


ドタバタしているように見えるが、俺が駆け付けた時には既にイネスの手からプレートは奪われていた。

俺は追いすがるが、地面の中に潜られては地面ごとボソンジャンプさせるしかない。

しかし、この世界ではそこまでピンポイントで相手の位置を探る事は出来ない。

本来存在しないはずの演算ユニットでは限界があるのか……。


「くそっ!」


俺は遺跡の地面に拳を叩きつける。

イネスが奪われなかっただけでもまだましなのだろう、実際時間があればやっていたはずだった。

A級ジャンパーのサンプルは多いほどいいはず。

そういう試算をしている俺が嫌になるが、プレートの事は悔まれてならない。


「これは……やられたわね。あれが山崎博士……個人レベルで原子透過なんてどんな人体実験の結果かしら?

 それにおにいちゃん、あれはいったい何?

 変身して黒い針みたいなのに、光の矢、それも無数に? 自動追尾してなかった?」

「あーいやー」

「主アキト、その方にはおにいちゃんと呼ばせているのでしょうか? どう見てもその方の方が年上なのですが。

 もしや、私もおにいちゃんとお呼びした方がいいのでは?」

「そういえば、その子消えてたわよね。それに主? いろいろ聞かせてくれるかしら?」

「あっと、その、だな……」


この後、残り時間いっぱいまで二人にこってり絞られることになった。

何か違うと思いながら、それでもこういう場にはとことん弱いなと自覚する。

気がついた時には正座の姿勢のまま元のホテルに帰ってきていた。

その後、リインフォースが俺の事をおにいちゃんと呼ぶにいたり、更にリニスにも説教を食らう羽目になった。

げっそりした俺は、ホテルで泊まりたかったが、時間的にまだ夕方にすぎないため急いで家に帰ることにした。

一応九州土産は長崎なのでカステラと、佐世保バーガーを買って帰った。

佐世保バーガーは正直時間がたってしまっては不味いか? とも思ったが、そこそこ食える仕様だった。

もっとも、佐世保バーガーは手作りなので店によって味に開きが出る、俺の行った店はあたりだったのだろう。


「そんな事があったんですが……」

「ああ、今日は疲れた……」

「イネスに会ったの? 元気にしてた?」

「ああ、とはいえ俺達の時間軸的には過去なんだがな」

「細かい事はいーじゃない、私だって今15歳だけど、時間だけならプラス17年だよ」

「アリシアは時間の流れの違う世界にいたんだよね」

「うん、理屈はよくわかんないんだけどね」

「ママー、おしょうゆかけていいですか?」

「うん、でも塩分の取りすぎは健康によくないからちょっとだけだよ?」

「はい!」

「フェイトもすっかりママさんだね」

「もう、アルフったらからかわないでよ」

「正直に言ったつもりだけど?」

「それよりもおにいちゃんは……」

「ぶっー!! リインフォース! それはもう勘弁してくれ!」

「いえ、呼んでみると以外としっくりと」

「それじゃ、私もよんじゃおっかな。義父さんってちょっと年齢的にどうかなーって思ってたし。

 ね? おにいちゃん!」

「!?」

「義父さん……私も呼んでいいですか?」

「アキトはそう呼ばれた方がうれしいの?」

「マスターが望むなら私も呼びますよ、おにいちゃん♪」

「おじいちゃんはおにいちゃんなの?」

「やめーーーーい!!!!」


俺は流石にこれ以上は我慢できなくなり、おにいちゃん禁止令を発動した。

正直からかわれるのも腹が立つが、それ以上に恥ずかしい。

なにより、リインフォースやリニスはわかっててからかっている節がある。

その日は結局いじられ倒して、どっと疲れながら眠りについたことを覚えている。


本来はスカリエッティの事は重大事なのだが、この世界に干渉してくるにはまだ2〜3年ほどかかりそうだった。

プレートの事も向こうに行けない以上その時に対処するしかない。

忍は再度作るのにまた4年はかかると言っていたし、何より一時間であいつ等のアジトを探し出す自信はない。

結局心構を整えることしかできそうになかった。











それから数日、俺はリニスとリインフォース以外にフェイトを連れてミッドチルダ港湾区の方へ来ていた。

フェイトは現在、地球外対策局に入ろうといろいろ勉強をしている事を知っていたので連れて行くことにした。

実際ミッドチルダと違い、要大学卒業&特殊公務員試験という資格を要する。

立ち上げた俺は当然どちらも持っていないのだが、維持するにはそれなりに資格がいるという事だ。

とはいえ、フェイトアメリカの大学の試験をパスし、通信で通うという離れ業をはじめていた。

この調子なら19歳になる頃は、いや、飛び級すれば17歳には既に資格を取れるだろう。

そんなに急ぐことはないと言っているのだが、自分も娘を養いたいというような事もありはりきっている。

そういう意味ではラピスも同様で、マサチューセッツ工科大からオファーが来ている。

すずかも同時に誘われていた。そういえばはやてはミッドの大学に通うらしい。

アリサは更に飛びぬけていて既に大学を卒業しているとか。

正直この子達は天才ばかりなのだと呆然とする。


まあ、それは兎も角、今回は肩書きだけのつもりだった管理局少将としての仕事といった方が正しい。

地球外対策局として引き受けたのは、現在港湾区で暴れている少年の保護という名目だが、

実際は、管理局が今まで隠匿していたクローン技術の漏えい阻止というもののようだった。

俺達のような外部の者には聞かれたくない事情のはずだが、そこはそれ、どうやらレジアスの敵対派閥がやっていたらしい。

つまりは、発見して保護なり破壊なり、証拠品を持ち帰りレジアスの元へ持っていけば、

嬉々としてレジアスは敵対派閥つぶしに使うという事だ。

俺を便利屋として使う事には少々腹が立たなくもないが、以前管理局から放逐された人員の雇用権をもらった時の借りがある。

気が進まない仕事だったが、他の人間にも任せられず俺が直接出向くことになった。


「さて、報告が正しければこのあたりのはずだが……」

「その少年をどうするんですか?」

「保護といえば聞こえはいいが、要はとらえるという事だな」

「そう、ですよね……でもどうしてその子は管理局に逆らったりしたんだろう?」

「俺に言える事はそう多くないが、かなりの人間不信らしいな。

 まだ6歳にしかすぎないというのに……、一体どういう環境にいたのか……」


そのデータを見るにクローンだから、遺伝子操作を受けたからと、奇異の目で見られたり研究対象にされたのだろうと予想は付く。

ルリ、ラピス、フェイト、つくづく人間というのは度し難いな。

レジアスが同じ事をするなら俺は手を切るしかないと感じてもいる。

フェイトはしかし、おおよそ俺の考えている事を察したのだろう、表情が曇った。


「もしかして……その子の名は、エリオ……」

「なぜ知っている?」

「3年前、私が管理局に研修をしに行った事があるのを覚えていますか?」

「なのはが体調不良を起こしていた時のことか」

「はい、代わりにという意味もあったんですが、管理局というものがどういうものか見ておきたくて」

「それで?」

「その時の任務で、私が保護した子がエリオ・モンディアル。

 彼の両親が息子の死を受け入れられずに作り出したF計画の子供です」

「……」

「その後、研究施設で実験を受けていたところを研修で参加したチームが査察し、その子を保護しました」

「面識があるという事か」

「はい、管理局がその後あの子をどう扱っていたのか、私は私でいっぱいいっぱいでしたから……。

 いえ、言い訳ですね……」

「それでも会いに行ったんだろう? 時々管理局に行っていたのは知っている」

「そんなの言い訳にしかならない、あの子をもっと早く引き取っていればよかった」

「まったく……俺はいつの間にか孫が2人になっていたようだな……」

「あは、そうですね。でも私も子供が増えることになったら仕事はしっかりつかないと」

「それは、俺の収入が不安だと?」

「いいえ、手本の私が無職だと格好がつかないからです」

「言うようになったな」

「はい、父親に鍛えられましたから」


そういってにっこり笑い表情を崩すフェイトは、最初に会ったころからは想像もつかないものだった。

しかし、まだ憂いは残っている。

彼女は俺と似たタイプだと感じる、何かをしたこと、しなかった事に常に後悔をする。

完璧ではないのだから割りきって生きていけばいいものを、どこかでそれを認められない。

最も、俺の場合大人になってからの強烈な体験によるところが多いが、彼女は生まれてから常になのだ。

そういう意味では今のようになれたのは奇跡と言っていいのかもしれない。


「親子の会話が弾むのは結構ですが、そろそろ目的地ですよ」

「主アキト、あまり二人だけの世界を作り出さないでほしい。会話に入っていけない」

「ぶっ! そっ、そんな事ないですよ!?」

「ははは、大目に見てくれ。今回はちょっと事情がある」

「そうですね、フェイトの子供なら私の孫のようなものです。あんまりおいたをするならお仕置きせねば」

「おっ、お手柔らかにお願いします、リニス……」


俺達は、名目上基地の視察を行う事になっている、レジアスが別の派閥を動かしてやらせたことだ。

レジアスの反対派がやっている悪事を暴くことで勢力構図の変更を狙っているのだろう。

つまり、エリオという少年が今まで実験対象として扱われていたという言質が欲しいに違いない。


「最初に確認する、フェイト、お前はエリオという少年を説得、うまくいったらそのまま連れて帰ってきてもいい」

「えっ? 本当ですか?」

「その代り、子供が二人になるんだ、いろいろ大変だぞ?」

「はい!」

「リニス、お前はフェイトのサポートだ」

「最近、リインフォースを連れていくことが多くないですか?」

「お仕置きするんじゃなかったのか?」

「うっ、そうですね……ちょっときつめにお仕置きしますか」

「リニス……」

「あははは、冗談ですよ」

「次、俺とリインフォースは内部資料を漁ってエリオという少年が今までこうむってきた被害の実態をつかむ」

「了解しました、おにいちゃん」

「いや、それはもうやめて……」


気弱になった俺を3人が笑ってから、少年が暴れている地区までやってくる。

俺とリインフォースはその場をスルーし、近くにある養護施設となっているビル内へと進む。

フェイトとリニスは暴れている少年を説得、無理なら制圧することになっている。


「フェイトが心配ですか?」

「同じ雷撃系の魔導師でランクもAAに届くかどうか、本気のフェイトの敵じゃないだろう」

「ですが、本気になれないでしょう」

「まあ、そうだな。そこが隙にならなければいいが」

「心配いりません、リニスがついているのですから」

「そうだったな」


リニスは未だにフェイトよりも強い力と戦闘技術、そして強い精神も持っている。

正直、俺にとっては彼女のような強さは眩しい。

そんな事を考えているうちに、ビルに到着、オファーをしている所長に話を通すことにする。

リインフォースはビル内のデータにアクセスし、ハッキングを仕掛けることになっている。

魔法のパソコンの使い方は知らないが、ラピスに言わせるとさほど変わらないらしい。


所長はエリオが鎮圧されるまで出来るだけひき伸ばしがしたいようだ。

俺は所長室へと通されたまま待たされる格好となった。

俺の地位を考えれば待たせる事がどれだけやばいかは知っているはず。

それでも待たせるのはエリオの事がよほど知られたくないからだろう。

最もお陰でリインフォースはほぼ今までエリオが受けてきた虐待や実験に関する資料を一通り引き出したようだ。

俺はそれを見て、やはりと思うと同時に吐き気がしそうだった。

これはまだ奴と比べればひどいというほどではないのかもしれない、しかし、子供にすることでは明らかになかった。

エリオが人間不信になるのも頷ける話だ。

何より、最初両親に見捨てられたというのが原因だろうが……。

俺はもう、資料を手に入れた以上所長に会う必要もないためそのまま退出し現場に戻ることにした。

フェイトはうまく説得できたのだろうか?

その辺りの事が気になって仕方無い。


しかし、ビルを出たその時、近くにある湾岸区の飛行場で火の手が上がるのが見えた……。

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■作者からのメッセージ
まとめてどんどん進めてきたので少しばかり乱雑になってるかもしれないですが、なんとかSTS前ネタも2つを残すのみとなりました。
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