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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版) 41 死の臭いは一番知っている。
作者:黒い鳩  [Home]  2014/09/12(金) 06:09公開   ID:m5zRIwiWPyc
「いってきまーす」

「いってきます」

「いってらっしゃい♪」


楽しそうに走っていく子供達を見ながら、クイントは生きていて良かったと感じていた。

実際今まで、自分だけ生き残ってしまったという自責の念が邪魔をして楽しむべきことを楽しめない事も多かったからだ。

復讐を考えなかったわけではない、しかし、相手の強大さは身にしみている、怖いのは犯罪者ではない。

それを養護するような管理局の策動だ。

場合によっては自分が犯罪者の仲間入りをさせられる可能性すらある。

そうなった場合、夫や娘たちに迷惑がかかってしまう。

彼女は燃え上がるような理不尽への怒りを無理やりにでも抑え込むしかなかった。

ただ、必要になった時のため資料集めだけは欠かしていない。

危険にならない程度を心がけながらも、まだ諦めたわけではないのだった。


「さて、仕事仕事。港湾区はあなたの担当なんだから、何かあったらよろしくね?」

「ああ、頑張るとするさ。できれば何もないに越したことはないがね」


ゲンヤはそう言いながら出勤していく。

クイントはそんな彼を頼もしく、しかし、不安げに見守っていた……。

























「さて、人はいないかな?」

「私だけのはずです」

「そうかい? はるみちゃんは優秀だね」

「はる……はい、ありがとうございます」

「駄目だよ。誰の目があるのかわからないんだから。はるみちゃんはそんなに畏まったりしないだろう?」

「あっ、そうですね。では山崎主任、実験のほうどうしますか?」


慌ててとりつくろうはるみちゃん(?)に笑顔を向けながら山崎は顎に手を当てる。

山崎は今ちょっとした実験に取り組んでいた。

次元を渡るシステムとしても、時間を渡るシステムとしてもボソンジャンプは謎が多すぎる。

ならば、翻訳をすればいいとユリカを組み込みいろいろやっているが今一かんばしくない。

理由は彼女の見る夢、これがノイズとなり実験を阻む。

今まで有志による実験でも成功率は60%を切る、生還率がだ、ピンポイントとなると更に下がるということになる。


「表向きはこんな所だけど、あれ、解析してみると面白いねぇ」

「やはり関連性のあるものなのですか?」

「同時進行で解析してるから、あんまり詳しい事はわかんないけどねぇ。

 さわりだけでもちょっと新しい実験をしてみる程度には面白いよ」

「といいますと?」

「その場にいながら他の次元に干渉できるかもしれないという感じかね?」

「……それができれば、かなり進みそうですね……」

「まあ、レリックの方に関してはね。とはいえ、あれって別に最終目的というわけじゃないからねぇ。

 その先の事も見据えないと」

「その先と申しますと……」

「ほらほら、はるみちゃん口調が固くなってるよ?」

「あ、ごめんなさい」

「そうだねぇ、当面はアルハザードへ行くことかな?」

「アルハザードへの扉?」

「ボソンジャンプっておあつらえむきだと思わないかい?」

「あ……確かに、次元も、時間も移動可能なら、そう……なりますね……」


楽しげにアルハザードへの扉の事を話し始めようとするが、

はるみちゃんと呼ばれた女性はついていけていないのだろう、戸惑いを隠せていない。

山崎ことスカリエッティにとって当面の目標は自分の技術を上げることである。

完全な生命を作り出すと言う意味では、自分の技術はまだ全然足りていない、その事を自覚している。

ボソンジャンプの実験は確かに面白いが、生命の創造と言う意味ではかけ離れ過ぎていて応用が効かない。

アキトのように身を守るためや、移動の助けにはなるかもしれないが、

永遠の命や全能である事という条件に当てはまるわけでもない。

つまり、ボソンジャンプの研究はあくまでアルハザードへの道をつけるためのものなのだ。

だが、アルハザードの技術を盗むだけ盗むつもりではいるが、それが最終というわけでもない。

人をよみがえらせる術があるというが、スカリエッティにとっては似たようなことが可能だ。

身体の破損部分をクローンで補い、生命の核とも呼べる心臓を動かしてやればいい。

改造すればさらに簡単だ。

脳の再現率は流石に100%とはいかないが、

情報のDLをするシステムとしてナノマシン補助脳を利用すればいい事はこの世界の技術を持って知った。

だが、蘇生が出来ることと完全な生命とは=ではない。

だから、アルハザードの技術を吸収した後、更にその先を考えねばならない。

最も、先が長いと言う事は人生に飽きないと言う事でもある、スカリエッティは現状に満足してもいた。


「と言うわけなんだよ。私は先の長い目標と言うのは嫌いじゃない。それでこそやりがいがあると言うものじゃないかね?」

「はい、博士はやはり素晴らしい方です。それでその……」

「ああ、手配を頼むよ。この世界では多分何も起こらないから、申請する必要もないだろうね。気楽にやりたまえ」

「わかりました、それでは素材を集めてきます」

「研究室のほうへ持って来てくれたまえ」


山崎という名の技術者はどこか狂気のようなものを纏わせ、それでいて妙に明るい感じで歩いていく。

はるみと呼ばれた助手らしき女性はそれを心配そうに見送った後、自分の仕事をすべく踵を返した……。




















小学校と中学校の合同とはいっても、旅行先へ向う便は人数の多さもあって違うため、

別々の便に乗り込む予定だったスバルとギンガ、しかし、ギンガは普通に自分のクラスと共にいたものの、

スバルはついはしゃいでしまい、港湾施設を勝手に見回っていた。

一応便が来るまで自由時間を半時間ほどもらっているのでダメと言うわけではないが、

スバルが半時間以内に帰ってこれるのかと言われれば疑問だった。

そして、そんなスバルの行動を心配になったギンガは友達に謝ってから、探しに行くことにした。


「もう、いくら楽しみにしてたからって……一緒に行けなくなったらここからそのまま帰らなくちゃいけないのに。

 あの子のことだから、そうなったら大泣きしそうね……後10分で見つけて帰るか……ちょっとハード。

 ううんかなりハードだ……大丈夫かしら?」


それでも、ギンガはスバルの行動指針を大体把握していたので、10分以内ならなんとか見つけられると確信していた。

少しは遅れるだろうが、謝れば許してくれる範囲だろう。

流石に30分も遅れれば自分も置いてきぼりを食らうだろうが。

そう考えながら、ギンガは走っていく。


「あっ、スバル……あんな下の方に……」


スロープになっている施設のため、地下階まで突き抜けてみることができる。

そして、下の方でいろんな店を散策しているスバルを見つけた。

食べ物系の店を目印にして探せばかなり範囲を絞れる。

人ゴミで見つけるのは難しいかもしれないと考えていたのである意味運は良かった。

スバルが向かっている方向には更に下に向かう階段で、今から行けば当然帰りは間に合わない。

時計は持たせていたはずなのだが、やはりすっかり忘れているようだ。


「ほんとにぼんやりなんだから……」


ギンガは急いで地下へと向かう階段に走った……しかし。


「なっ!? 何!? 地震!?」


凄まじい揺れが港湾施設全体を襲う。

それは、何もかもに一瞬ひずみが出来たように見えた。

次の瞬間、そこかしこで爆発が起こり、火災が発生し、パニックを起こした人たちは我先に逃げはじめる。

ギンガは、少しだけ冷静に物事を見ることができた、普段からそう考えているせいもあるが、

パニックが起こるのが早かったため自分が乗り遅れてしまったと言う感じだった。

それでも、冷静さが残ったのが幸いと、まずスバルを助けるために地下へと向かおうとする。

しかし、その時足に痛みが走る。

どうやらくじいたらしい、ギンガもスバルも事情があって体の一部は機械だ、しかし、そこは違っていた。

立ち上がろうとするが、痛みで上手く立ち上がれない、

仕方なくけんけんのような要領で片足歩きをしてみるが、長い距離は無理そうだった。


「このままじゃ、あの子のところへ行けない……」


そうでなくても、火災が発生しており天井のほうもぐらぐらしてきていた。

早く逃げなくては命にかかわる、もう既に一般の人たちはかなり脱出しているようで人数も減ってきている。

アナウンスが入っており、緊急時である事は明らかだ。

今は脱出を優先すべきだし、ここで妹を見捨てたとしても世間は攻めはしないだろう。

しかし、ギンガにとってスバルはそんなに軽い子ではなかった。

だから片足でスキップするように歩きながらも、地下階へと向かっていく。


「今助けに行くから……無事でいて……」


明らかに無事ではない彼女が助けに行くというのは常識では意味のない行動ではある、しかし、心がそれを否定する。

しかし、彼女の足を止めることが起こってしまった。

目の前の天井が崩れてきたのだ、大きな壁やガラス張りにしてあったその分厚いガラスなどが割れ砕けながら落ちてくる。

そして、彼女は下の階へと降りる術を失った……。


「……そんな……」


目の前が真っ暗になったような感覚、もうスバルを助けられない、それどころか自分の命すら……。

その時になってとうとうギンガは恐怖ですくみあがってしまった。

火災はだんだんと上に向かっており、煙が侵入してくる。


「父さん……ゴホッ! 母さん……ゴホゴホッ!? 助けて……」


せき込み、意識が朦朧としてくる中、とうとうバランスが崩れ、柱がきしんで天井全体が崩れ始める。

港湾施設そのものが傾いてきている。

もう、助からないのだとギンガは感じた。

母親は部隊が全滅しても生き残った、でも、自分に同じだけの運があるとは思えなかった。

差から最後にそっと、せめてスバルだけでも助かってほしいと考えた。

しかし、その最後はいつになっても訪れ無かった……。


「何を諦めている!!」

「えっ!?」


煙でもうもうとする中、涙で霞む視界の中に黒い何かが映る。

ぼんやりとしか分からないが、力強い、激しさを内に秘めた闇。

そんな印象だった。


「わたし……助かるの?」

「……お前に生きる意志があるのなら煙の中から這い出せ!」

「はっ……はい」


煙に燻されて一酸化炭素中毒になりかけている彼女が片足を引きずりながらどうにか取った手。

それが、ギンガとテンカワ・アキトの出会いだった……。



























俺は爆発音を聞き、とっさにフェイトの元に走る。

まさかとは思ったが、彼女の魔法の力を思うと相手との戦闘でということもありうる。

しかし、いざ行ってみるとさほど心配する事態にはなっていないようだった。

なんというか、赤毛の少年がフェイトに愚痴を言っているようだった。


「貴方にボクの何が分かるんですか! 偽物だったんですよ! 親に捨てられたんです!」

「それでも優しくしてもらったんでしょ?」

「はい、研究施設に見つかるまでは……」

「私も同じ、F計画の産物……ううん、F計画はフェイト計画、つまり私が最初の偽物なの……」

「えっ!?」

「私はプレシア母さんの娘アリシアのクローンとして生まれた、でも母さんは私とアリシアの違いにいら立ちをぶつけてきた。

 母さんはかわいそうな人だった、アリシアの死に精神が耐えきれず狂い始めていた。

 でも、貴方の両親は違うよね、どこかで諦めていたのかもしれない、けど、貴方を愛してくれた」

「……それは……」


俺は少しだけ目を伏せる、フェイトにとってもその告白はつらいはずだ。

しかし、彼を説得するにはそれしかないと告白することにしたのだろう、その眼には決意が漲っている。

俺はフェイトに任せることにした、爆発があったのは港湾施設のようだからだ、

フェイトも少し気になっているようだが他の事は出来ないだろう。


「リニス」

「はい」

「フェイトを頼む」

「了解しました、でもあんまり事件に首を突っ込みすぎると自分の首を絞めますよ」

「はは、理解はしているつもりだがな」

「では主アキト、ユニゾンを」

「……わかった」


一瞬迷ったが、確かにその方が効率的だ、移動も非常時だ管理局に通達すればいいだろう。

それに、俺が離れすぎて魔法が使えなくなる事もない。

俺はユニゾンして黒いボディスーツとマント、バイザーの姿に代わり髪が白く染まる。


「リインフォース、管理局に飛行申請を頼む」

『了解しました』


ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐の名で許可が来た、確かクイントの夫だったような気がするな。

脱出は既にあらかた終わったのだが、まだ何十人か取り残されているらしい、

その救出のため、なのはが動いているようだが、飛行魔導師が少ないため手が回りきらない状況らしい。

フェイトやリニスも連れてくるべきだったかと少し後悔するが、なのはが凄まじい勢いで救出を進めているらしい。

俺が現場に着くころには救出対象は10名を切っていた。


『地下階の救出は彼女が向かいました、後は上層に取り残された数名のみです』

「わかった、素早く助けるとしよう」


実際、わりとテンポよく救出は進んだ、怪我人は多数出たものの死者はそれほど多くないようだった。

しかし、建物の崩壊が始まる頃になってようやく救出名簿に加わった少女がいた。

俺は、その少女の位置を演算装置で割り出し、飛び込んでいく。

今にも屋根が崩れそうになっている状態で煙がもうもうと舞い、下から炎で燻されている、そういう状況のようだった。

俺はリインフォースに頼んで天井に魔力を流してもらい、どうにか崩れるのを阻止する。


「リインフォース、天井を支えていられるのはどれくらいの間だ?」

『停止させていられる時間は10分程度でしょう、全体に亀裂が入っているのでどこかを外すだけで崩壊します』


魔力で支えるとはいえ、微細なコントロールが必要になる作業だ、仕方ないといえば仕方ない。

その間に少女を見つけ、救出しなければならない。

魔法使い相手ならボソンジャンプで救出というマネもできるが、少女は特殊らしい。

詳しいプロフィールがわかったのは、ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐の娘だからだ。

もう一人地下階に取り残されているらしいが、そちらはなのはに任せるしかないだろう。


俺は演算ユニットの計算を駆使して周囲を探す。

煙に巻かれたその中に少女がいることを確認できた。

魔導師の資質もあるようだが、確かに特殊な形態のようだ。

うかつにボソンジャンプで助ける事は出来ない。

俺は、移動して助け上げようとしたが、それをリインフォースに注意される。


『今動くのは危険です。支える魔力のバランスまで変わってしまいます』

「くそ……仕方ない……」


少女の意識はもうろうとしているようだった、これだけ煙に巻かれたのだ、一酸化炭素中毒を起こしていても不思議ではない。

早く助けなければいけない、しかし、動けば崩れる可能性もある……。

俺は仕方なく、飛び込んでそのまま飛行魔法を使って逃げるという選択をしようとしたその時。


「父さん……ゴホッ! 母さん……ゴホゴホッ!? 助けて……」


まだ意識がある、それに体も動かないわけではないようだ、しかし心がくじけているのだろう。

このまま意識を失えば死ぬ可能性が高かった。

俺は、その時何故こうしたのか、わからない。

飛び込んで助けるのとさほどリスクは変わらない上に少女が自分で動かなければ意味のないこの方法を……。


「何を諦めている!!」

「えっ!?」


俺は意識を失いそうになっている少女に活を入れた。

驚き眼を見開く少女、しかし、恐らくこの煙の中でははっきりと俺を視認してはいないだろう。

だが、他に人がいると知った少女は意識をはっきりさせてきたようだった。


「わたし……助かるの?」

「……お前に生きる意志があるのなら煙の中から這い出せ!」

「はっ……はい」


よたよたと足を引きずりながらそれでもなんとか俺の元まで歩いてきた少女を受け止める。

天井を支え切れなくなり、崩壊が始まる。

しかし、リインフォースは俺と少女を包む結界を張り巡らし飛翔する。

どんよりとした空の中に飛び出した俺はそこで既にスタンバイしていた少女を見た。


「なのは……そっちはもう終わったのか」

「うん、その娘スバルちゃんのお姉さんだね。よかった、どっちも助けられて」

「ああ、じゃあ後の事は頼む。俺は立場もあるしな」

「うん、ご協力ありがとう、だよ?」

「ふっ」

なのはがどこかおどけて語尾をつけるのがおかしく、少し笑ったが、リインフォースの言葉を聞き心が凍る。


『この火災、恐らく前に行った次元からの干渉です』

「!?」


なのはに挨拶を送り、俺はフェイト達の待つ施設の方へと向かいながらリインフォースの話を聞く。


「どういうことだ?」

『主アキトはあの世界にプロープになるものを残すように言われました』

「ああ、念のためにな」

『それには次元振同数をサーチできるシステムを取り付けてあります。

 スカリエッティが帰還する場合その扉が開くため、我々も知る事が出来るということですね?』

「次点だが計画を知る方はうまくいかなかったからな。

 恐らくは奴は時間移動と次元移動の秘密をボソンジャンプから得るつもりだろうとは思うが」

『先ほどの港湾施設から微弱ながら、その振動数を検知しました』

「微弱? 奴が戻ってきたということじゃないのか?」

『いいえ、歪みだけが残っていただけですが、針の穴のようなレベルではないかと』

「……それは管理局も察知したのか?」

『私もプロープを残していなければわからなかった程度の微弱なものです。管理局が知る事は難しいでしょう』


それだけでは、奴らが関与しているのかはわからない。

しかし、偶然にしては出来過ぎていた。


「しかし、そんな小さな穴一つで大事故になるとはな……どういうことだ?」

『そこまでは……ただ、空間がゆがむほどの力が加わっている事は事実です』

「……そうか」


スカリエッティは恐らく新たな実験を行っているのだろう、あのプレートを解析するために。

とはいえ、こちらから出来るアクションはそれらの情報の検証だけにすぎない。

奴らに対してはいつも後手に回らざるをえない。

せめて、こちらに残っている残党のほうだけでも捕らえられれば……。

しかし、残党のほうは全く動きを見せない。


「まったく……イライラさせられる……」

『しかし、主アキト、その男を叩きつぶしたとしてそれほど効果があがるのでしょうか?』

「ん?」

『恨みはあるでしょう、しかし、管理局との折衝をおろそかにしていいほどに強大な敵であるとは思えません』

「……なるほど、確かにな。冷静さを欠いていたようだ」

『いいえ、それに、スカリエッティという男、研究者としては恐ろしい男ですが、それだけにすぎません。

 裏にあるのは、やはり管理局とつながりのある何かである可能性が高いとみます』

「……6年前の事件のことか、不自然な点が多いのは事実だが……」

『何事も俯瞰して見る必要があると言っているのは主アキトであったと記憶していますが?』

「そうだな、俺はどうにも奴のこととなると熱くなる傾向があるらしい、忠告、助かる」

『我らは主アキトと共にあること、忘れないでください』

「……ああ」


確かに、今の俺が死ねば、リインフォースとリニスは死に、そして遺跡の暴走が起こる可能性すらある。

迂闊に特攻する事も出来ない、それでも体が先に動いてしまうという事があることまではどうしようもないが……。

今は冷静になることを心掛けなければ……。

そうして半分も戻ったころフェイトが合流してきた。


「あっ、義父さん! 大丈夫だった?」

「ああ、出来うる限りの救助をしてきたつもりだ。そっちはどうした?」

「うん、エリオ君話を聞いてくれたよ。今はリニスに預けてる、彼女義父さんと離れすぎて魔法使えないみたいだったし」

「あーそうだな」

「それで……あの……」

「ん? 何かあるのか?」

「……うん」

「一度合流してから聞こう、その方がいいだろう?」

「えっ、ああ!! はい!」


俺は何となくフェイトの考えている事は想像がついたが、あえて今は聞かないことにした。

もう一人の考えも一応聞いておきたいと考えたからだ。

実際、エリオの話を聞いてみると人と話すのは得意ではないようだったが、フェイトとなら一緒に住んでもいいという考えのようだった。


「僕はまだ、ほかの人の事まで信用していませんから……」

「そうか、だが俺の家に住むなら心得てもらおう、皆強いからな、下手に暴れると不味いことになるぞ」

「義父さん!?」

「えーっと、みんなフェイトさんみたいに、強いんですか?」

「私なんて、テンカワ家ではそんなに強くないよ」

「ッ!?」


フェイト本人は自覚していないが、恐らく魔法による戦闘力だけならリニス、リインフォースと並んで3強だろう。

俺のボソンジャンプは逃げには向くが、攻撃は奇襲ばかりで実質的にはあまり強いとは言えない。

しかし、家族は個性派ぞろい、ある意味強さでは測れないのも多い。

そう言う意味では、フェイトはまだ濃さが足りないと言う気はする……。


「あ……その、大丈夫ですか?」

「偉くかしこまったな、まあ、怒らせなければ大丈夫だろう」

「それってどういう……」


エリオが冷や汗を垂らすのを微笑ましく見つつ、フェイトもおせっかい焼きになったものだと考える。


俺自身そういう特性はないとも言えないので、大きくは言えないが……。



兎も角、こうしてまた我が家に家族が増えたのだった……。

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■作者からのメッセージ
モンディアル君がアキトにさらわれてしまいましたw
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