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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版) 43 試算通りに行くことはまれ。
作者:黒い鳩  [Home]  2014/09/14(日) 00:44公開   ID:m5zRIwiWPyc
「まさか本当にやってしまうとはな……」

「私だけの功績やあらへん、地球外対策局も全面協力してくれたし、聖王教会のバックアップも大きかった。

 私がやったことは、せいぜいちょと橋渡しをした程度や」

「そんな事はない、俺も、対策局の人間も、自分ではそんな事は思いつきもしなかった」

「そうかな? アキトさんのやったことを真似てみただけなんやけど」

「規模を大きくしてか?」

「まあ、そやね」


そうこう言っているうちに会場に到着する。

今日ははやてが作り上げた、次元連盟のお披露目式だ。

正確には次元国家共同互助連盟。

国家間でお互いに助け合いましょうというような意味になる。

実質的には聖王教会と地球などの管理局に属していない世界による相互援助組織と言う事になるのだが、

とはいえ、全てを合わせても管理局に属している世界の半分にも満たないものだった。


また、聖王教会自身、管理局と事を構える気はないため挑発しないようにセレモニーの規模も小さめにし、

管理局に属している国の報道機関や、管理局の上層部の立ち入りを認めていた。

そのため、この連盟が実行力を持つ組織になりうるのかどうかの方は未知数であり、

逆に管理局に取り込まれてしまう可能性を考えて参加しない国もちらほらみかける。


「このままやと組織として機能するのか怪しい所や……」

「今は気にするな、動き出してから悪い所を直していく、そうするしかないだろう」


俺達が舞台裏でそんな話をしているうちに、式典は始まったようだ。

連盟は議会制を取っており、各国の代表が集う形となる。

地球には200以上の国があるが、ここでの発言権は5つ、

管理局と交流を始めた国である日本、それに強国といっていいアメリカ、中国、ロシア、ヨーロッパという4つ。

代表者はそれぞれの国から選抜された者たちだ、事態は既に俺の手元を離れているといっていい。

地球でも魔法文化は試験的に導入し始めている。

まだ民間にまで浸透してはいないが、金持ちなら魔法を使った物を買う事も不可能ではないという程度には。

もっとも、地球に魔法使いは少ないため、それらの物品すら扱えない人たちのほうが多いのだが。


脱線してしまったようだ、兎も角、発言権は各国にあり、加盟国は100ほどになっている。

それと聖王教会をプラスしてどうにか管理局の半分程度の国力ということになる。

しかし、実際管理局のように一本化した組織体系でないため上手く回る可能性は五分五分といったところ。

そんな組織ではあるが、組織の立ち上げは俺が地球外管理局を通じて行ったより数倍難しい外交だったろう。

それを実現化したはやては19歳にして既に次元世界屈指の政治家といえるのかもしれない。


そう言う事を考えている間にもスピーチは続き議長国である聖王教会のほうからの組織説明にはいっていた。

議長国の席に座っているのは法王だが、スピーチはその部下の騎士が行っているようだ。

カリムは預言の確認のために来ていない、何か良くない預言をカードから読み取ったらしい。

彼女の予言の的中率はかなり高いものらしく、聖王教会でも一目置かれている。

騎士というだけにしては地位が高いように思えるのもそのためらしい。


「はやて、出番のようだな」

「うん、それじゃあ行ってくる」


はやては濃紺のスーツ姿で壇上に上がる。

そして、スピーチを始めた。


『私は、ここに連盟としての最初の議題を提出したいと考えるものです』


細かな取り決めはおおよそ終わったところであっただけに、各国の代表がざわめく。

しかし、はやては表情を崩すことなく続ける。


『管理局の行ってきたことは治安維持活動ではありますが、全て上からの目線で行われたものでした。

 それが間違っているとはいいません、でも、こぼれおちるものが多いのも事実です。

 実際、私の知る限りでも3度彼らの行動により不幸になる所だった人たちを知っています。

 こぼれ落ちた者を拾う者はいないのか、それが私の考えていたことです。

 誰もしないなら、私たちがそれを行うしかない、それがこの連盟を呼び掛けた理由なのです。

 ですが国家同士の話し合いでは動きが遅くなってしまうでしょう、そこで実行部隊の設立を提唱します』


実際各国の代表に対して働きかけたのは彼女だ、だから彼女が何のためにここにいるのかは知っている。

これは予定調和ではあるが、それでも管理局に対してかなり強気の発言であると言える。

来ている管理局の提督達は言われたことに鼻白んでいた。


『ちょっといいかね?』

『はい』

『我々管理局が行ってきたことは間違いであったというつもりかね?』

『いいえ、ですが他のやり方もあると考えています』

『それは、我々が試せばいいことではないかね? 君が管理局に来てくれるなら歓迎するよ』

『確かにそれも一つの道かもしれません、

 でも私は力のある者なら構わず組織に組み込もうとする管理局の体質についても疑問をもっています』

『管理局は常に人材不足なのだよ、組織として仕方ない事なんだ』

『そもそも、管理ってなんです? それら次元に無数に存在する国らを上から見下ろすという事ですか?』


食いついてくる管理局側の提督にはやては少し表情を厳しくする。

しかし、管理局としてはそれを認めるわけにはいかないのだろう、いろいろなところから崩しにかかってくる。


『管理局というのは便宜上の呼び名に過ぎない、別に神を気取っているつもりはないよ』

『でしたら、別に一つだけの組織がそう言う事に携わるという形をとらなくてもいいと思います』

『しかしそうなれば、事件の起こったとき境界線を争う事になりかねないのではないかね?

 管理局はそう言う事のないように他者がない組織として大きくなったのだが』

『協力することは考えないのですか?

 そもそも事件の解決が優先されるのであって誰の手がらかなどと言うのは本来瑣末に過ぎないはずです』

『ならばこそ、全て我々に任せればいいのではないかね? 我々には実績がある』

『それゆえの危うさを私は危惧しています。過去の実績が貴方達の目を曇らせる事も……』

『どうどうめぐりの平行線か……まあいい、それは議会で決めればいい事だったね』

『はい、これから議員の投票で許認可を受けることになります』

『だがくれぐれも言っておくが、それが我々の認めたものだと思わないことだ』


管理局の提督は二ヤリと笑う。

恐らくは、脅しや、賄賂など既にばらまいてあるのだろう。

だが、忘れているかもしれないがここにいる議員の大部分は管理局に入るのをよしとしなかった国々だ。

そして、全てはやての言葉によって集ったと言っていい。

俺は最初から予想していた、この実行部隊の許認可は可決だろうと。

はやてもその事を信じながらこちらに戻ってきていた。


『賛成78票:反対10票:保留12票で可決とします』


裁決にはさほど時間がかからなかった。

3分の2以上の得票を得て可決、管理局としてはうっとおしい組織が出来上がったことだろう。

これで、はやての現在の目的であるシグナム達の解放についてはうまくいくだろう……。

























それから約半年、連盟大規模犯罪抑止局と呼ばれる部局が立ち上がり、複数の次元世界に居を構えた。

ミッドチルダも例外ではなく、大規模な施設と共に治安維持組織が駐留することとなった。

もっとも、ミッドチルダにおける管理局の規模と比べれば千分の一にも満たないだろうが。


「しかし、地球外対策局の次は連盟の隊長さんですか、いつもながら巻き込まれてますねー」

「俺なりにやってきたつもりなんだが……」

「いいえ、悪い事だとは思っていません。元々マスターはそういう星の元にいるということでしょうし」

「それもなんだかな……」

「主アキト、主からは8:00AMまでに来てほしいと言われています。

 このままでは間に合わないかもしれませんが?」

「……そうだな、急ぐとしよう」


俺はリニスに門の使用を頼んだ、転送システムが家から直接通っているのは正直楽だ。

あれから、規制緩和や政府関連の話し合い等を経てある種の治外法権への移動はかなり楽になった。

現在地球とミッドチルダを繋ぐ門は100を優に超えている。

他の世界も合わせれば今は1000近い異世界への門が存在している事になる。

その辺りの事もあり、通る方もいろいろ緩和されているのが実情だ。

それに連盟の施設は連盟法で保護されるので、色々と優遇もうけている。

問題は管理局と治安維持についてぶつかった時のことだが、何分まだ出来たばかりだ、これから決めていくしかない。


門から出るとそこはもう抑止局、機動六課の転送門だ、そして今は俺がその組織の長という事になるらしい。

本来ならはやてがつくはずだったが、管理局との軋轢でとりあえず管理局で地位のある俺を据えたようだ。

そのため、管理局の人員もかなり入り込んでおり、恐らくは監視要員や扱いづらい人員を回してきていると思われる。


好奇の視線、尊敬の視線、蔑みの視線、いろいろな視線が入り混じっている中を歩いていく。

俺自身、ご近所さんにはリニスやリインフォースの事もあって妙なプレイをしていると勘違いされて敬遠されているが、

そういう視線とは違う、管理局の裏切り者への怒りのような視線が多い。

因みに俺ももう35歳だ、近所に行く際は少し老けたような顔を映像投影するようなシステムを使わねばならない。

リニス等は素で老けて見せる事も出来るようなのが凄いが、

どっちにしろまだ魔法がなじんでいない地球では老けないのは異常に見られるだろう、

ヴィータ等もゲートボール大会の時は相応に背が伸びていたりする。


そんな関係ないことをつらつら考えているうちに、所長室にやってくる。

扉をあけると、そこでははやてとキューエルシュランク、そして守護騎士4人組がソファーに座ってお茶をしていた。


「アキトさん、ギリギリやね。お茶冷めてまうで」

「済まないな、少しやる事があってな……」

「主、本日もご機嫌麗しく……」

「もーリインは堅いなー、そんな畏まったこと言わんでもええっていうたやん」

「そうですよ〜♪ 今から緊張してたら先が続きませんよ」

「キューちゃんはリラックスしすぎやけどね」

「一緒にお菓子を食べながらじゃ説得力がありませんよマイスターはやて」

「ま、高月堂のどら焼きやし、なかなか食べられんしね」

「並ぶの大変ですもんね」


はやてとキューエルシュランクはお菓子の事で盛り上がっている。

リインフォースは呆然としていたが、はっと気がついたようだ。


「リインフォース、貴方も一緒にお茶でも飲むか?」

「ええ、頂きます。主アキト、どうぞ」

「ああ」


椅子を引かれたので俺はとりあえずはやての正面に座る。

両隣りにリインフォースとリニスが座り、シャマルがお茶を出してくれる。


「それで、今日はどうすればいいんだ?」

「うん、突然で悪いことしたけど、今日は挨拶だけやさかい。資料はあらかたまとめといたから明日までに目通しといて」

「分かった」


予定表をさらっと見る、就任の挨拶をして、各部署の責任者に会いに行くという程度のようだった。

キューエルシュランクははやてと一緒にどら焼きを食べていたが、やはりデバイス時間には正確なようだ。

突然、どら焼きを無理して飲み込むと、はやてに話しかける。


「マイスターはやて、そろそろ時間だと思うんですけど」

「うん、ああ、そやね……じゃあ、ヴィータ、シャマル準備よろしくな。アキトさんはついてきてくれる?」

「わかった」


就任式典はどうやら外でやるようだった、晴れていたからということもあるだろうが、

いろいろな陣営の人員を見るにはちょうどいいのだろう。

檀上にあがってざっと見たが本当に人種のるつぼだった、中には髪の毛が紫だったり、緑だったりするのもいる。

因みに俺の知るスバル・リョーコは最初会った時緑色の髪の毛をしていたが、単に染めていただけで元は黒髪だ。

しかし、こういった場に染めてくる奴がいるとも思えない、ラピスのように遺伝子的をいじくられたわけでもないなら、

当然地毛ということになる、それも突然変異ではなく、その世界では普通にあるという事だ。

あまり気にしていても仕方ないが、やはり異世界だなとは感じた。


『これは、全次元初の試みになると思う。

 地球外対策局の実績を買われて任についたが、正直俺自身何も分かっていないに等しい。

 だから、それぞれの主張を、やり方を俺に教えてくれ、便利ならばどんどん採用し運営を強化していくことが出来るだろう』


ザワザワと周りの人間が小さく話しているのが聞こえる、まあ確かにこんなことを言う隊長はあまりいないだろうしな。

だが実際ノウハウのない状態から始めることになるのは事実だ。

それからはあたりさわりのない話を続けたが、彼らの声がやむ事はなかった。


「さて、次は各部署回りやね。ああ、それと一応私が課長補佐になるさかい、よろしくね」

「ああ、よろしく頼む」

「因みに、私は課長補佐陪席秘書です!」

「補佐と陪席と秘書は類義じゃないのか?」

「まあ、補佐の補佐の補佐ちゅーことやね♪」

「私の後継者として、心配ですね……」

「すぐに補佐の数を減らしてみせます! お任せくださいマイスターはやて!」

「がんばって、キューちゃん♪」


はやてが最初に案内したのは医務室、それなりに本格的な設備が整っている。

医師もいるが、魔導師も少なくない、医局長はシャマルが担当するようだ。

金髪碧眼でバランスの取れた美人、しかし、おっとりした表情がどこか安心させてくれる、確かに医局には向いているが。


「まあ、シャマルの魔法が一番効からね……それに、医師の皆からも慕われてるみたいやし」

「そうなのか?」

「はい、シャマルさんは我々の大先輩にあた」

「わーわー! とっ、とにかく怪我とか病気は任せてください!」


別に遮らなくてもシャマルが200歳以上であることは全員がよく知っているのだが……。

はやてが苦笑しながらいなし、シャマルは涙目になっている。

俺はこう言う場で言う事もないので、先に立ち去ることにした。


「ちょっと! 待ってって〜空気悪なった所においていくなんてひどい事するなー」

「すまん、ああ言うのは苦手でな」

「主アキト、いつも女性に囲まれているのですからいい加減慣れた方がいいと思いますが」

「まあ、自覚はしてるよ。皆にそれなりに好意を持ってもらっている事は」

「それなりにって、マスター。猛烈にの間違いだと思いますが」

「ですよね、ですよね! リニスさんの言うとおりだと思います!」

「そうやね、アキトさんのジゴロぶりには皆もびっくりやもの」

「……言わないでくれ」


俺は背中にズーンと影が差した様な気持になる。

俺は元々女性関係に疎い方だが、確かに好意を持ってくれている人がいることくらいは知っている。

しかし、俺としてはそれを受けていいのかどうか、未だに迷っている段階だ。

特に最近はすずかが女性らしいので困る……。

言っている間に次の部署についたようだ。


「ここは技術開発室、まー分かってると思うけど」

「ああ……」

「あっ、アキトさんいらっしゃい」

「ああ、順調にしてるか?」

「ええ、ラピスちゃんもかなり張り切ってるみたい。

 地下施設をほぼまるまる移動したから、このあたりの拡張工事は大変だったみたいだけど」


すずかがそういいながら俺を奥へと案内してくれる。

そう、ここから地下へと続く特殊な通路が存在している。

そして、すずかとラピス、そして一部の技術者だけがそれを知っていた。

地球にデータ提供したナデシコタイプ宇宙船の雛型が今はここにある。

まだ実戦で使うにはデータが足りないという事だが、既に管理局の次元航行船と同程度の通常航行は可能だ。


「アキト!」

「ラピス、がんばってるか?」

「うん!」


そう言って、ラピスは走り込んできて俺に抱きつく。

最近ラピスはスキンシップを自分からしてくるようになった。

なんというか、年相応というには子供っぽい気もするが。

前の無感情の反動だろうか?


「皆さん座ってください、いいハーブティが入ったのでご馳走しちゃいます♪」

「おー、すずかちゃんの入れるお茶は旨いからなー」

「そんな事ないですよ、茶葉がいいだけです」

「そんな事ないって、いいお嫁さんになれるよ」

「もう、はやてちゃん。からかわないでください」


そういいつつすずかは俺を見る。

なんというか、分かっているがアピールしてきているな……。

俺は二コリと笑って返す。

それ以上すると了承になってしまいそうなので、冷や汗ものだった。

実際、すずかは家事は何でもこなし、機械いじりをしているのに油臭くもない、その上上流階級の気品すら漂っていた。

そして今の彼女らは19歳、もう結婚できる年頃である……。


「さて、すっかりご馳走になってしまったな。はやて、次はどこにいくんだ?」

「ええ!? もう行ってしまうんですか?」

「アキト、そんなに急いでどうするの?」

「そうはいってもな、かなりの部署を回るんだろう?」

「まあね、後10か所くらいはまわらんとな」

「そういうわけだ」

「そうですか……、仕方ありませんね。また来てくれるのをお待ちしています」

「すずか、物分かりいいね」

「こう言う時、我がままを言っても痛い子だと思われるだけですし」

「いや、私が言うのもなんやけど。口に出して言わへんかったらもっとええと思うよ……」

「あら……」


すずかは最近こうして口に出すようになった、口に出さないアピールはあまり効果がないという事を学習したらしい。

確かに俺は好意にはかなり鈍い、しかし、こうつきつけられるのは結構しんどいものがある……。

一気に疲労した気分になったが、その後も一通りの部署を回ることになった。

そして次は戦闘班の部署へと向かう。


「魔導師部隊長、高町なのはです」

「魔導師部隊副長、フェイト・テスタロッサです」

「戦闘車両長、アリシア・テスタロッサです」


三人は敬礼をしながら俺の前に立つ。

なのはは管理局からの出向という形だが俺の監視も引き受けさせられたはずだ。

まあ、どの程度忠実にするつもりか知らないが。

フェイトは地球からの任官ということになる。

ここには、パワードスーツが呼びも含めて80ほど、輸送用のヘリや航空機、車両なども多数存在している。

魔導師部隊とパワードスーツ部隊の二つを持って六課の戦闘部隊となる。

とはいえ、パワードスーツは戦闘車両扱いとなるので、戦闘車両長ということだ。

すずかも副長を兼任しているが、基本はアリシア一人で指揮を執ることになる。

因みにパワードスーツの乗り手は魔導師の資質がないものがほとんどだ。


シグナムやヴィータも魔導師部隊の配属になっている。

それぞれ、第一小隊、第二小隊の小隊長で、隊長副隊長を除き各10名、

第五小隊まであり、魔導師部隊とその隊長達全員合わせて62名となる。


魔導師部隊62名、戦闘車両部隊62名、移送部隊31名、探査部隊127名、実戦部隊はかなりの規模ではあった。

もっとも、ミッドチルダ内の全てをこれでカバーする事は出来ない、あくまで管理局の協力者という体裁を取っている。


「凄い設備だねー、管理局にもこれだけの設備はまだないんじゃないかな」

「そうなのか?」

「うん、多分そうだね。管理局は質量兵器の禁止の関連でほとんど人力だから」

「人力?」

「魔法を使わないと何も使えないっていうことだよ。

 向こうの機械類は全て魔力をエネルギーにすることで動いているから」

「なるほどな……」

「でも、動力が魔法ならその他は機械類の使用に制限はないんですよ♪」


大使をしていたころも大使館内では普通に機械類を使っていたのでそこまでは知らなかった。

確かに、機械類も魔法が動力だとすればある意味人力になるな……。

しかし、なのはもフェイトもそれだけ深くこの世界に関わっていたということなのだろうな。


「でも、あたしみたいに魔法使えない子はそれじゃやっていけないしね。ここには両方の施設があるの」

「まあ、俺もその辺は似たようなもんだ」

「もー、せっかくいろいろ教えてあげたのに……」

「ああ、今一魔法を使っていろいろすることになれなくてな……」


アリシアは割と魔法等に関しては気にせず関せずを貫いているが、

フェイトは逆に俺にそう言うものに慣れるようにいろいろ手伝ってくれている。

とはいえ、魔法調理器具の火加減を調整したりするのはまだ慣れない。

フェイトも料理はずいぶん上達したとは思うが、まだまだなのでその辺りお互いに微妙なのかもしれない。


「それにしても、管理局がよくなのはを手放したな……」

「手放したというのは少し違うけど、最近の私は以前みたいに即断即決出来ないみたいでね。

 少し頭を冷やしてこいって言うような意味かな」

「ほう……」

「足引っ張らないように頑張るから、ごめんね」

「いや、悩むのも若者の特権って奴じゃないか?」

「にゃはは、まるでオジサンだね?」

「まあ実際35なわけだが」

「そうは見えないよね」


いつの間にか、はやてはシグナムとヴィータのいるあたりで談笑している。

俺も考え事が過ぎるな……しかし、なのはを出してきたとなると、一網打尽を考ええいるのかそれともスパイ狙いか。

恐らくは前者、なのはがスパイに向いてない事はほぼ確実だ。


「さて、そろそろ次に行くことにするか。じゃあ、頑張ってくれ」

「うん、私もやれることをやるよ」

「あっ、義父さん……その、就任おめでとう!」

「ああ、ありがとうな」

「ふふふっフェイトちゃん、隅に置けないね♪」

「えっ、そんなこと……」


何やら言っているようだが、とりあえずスルーしておく事にする。

しかし、魔導師部隊は管理局からの出向が多い、これは実働部隊の半分に不安を抱えると言う意味でもある。

もちろん、管理局と敵対したいわけじゃない、しかし、管理局とやり方が違う以上ぶつかる可能性を否定できない。

対策は練っておく必要があるな……。


一通りの視察をすませ、資料を持って家に帰ることにする。

かなり大きな家にしたと思っていたが人があふれかえることが多いためいずれは増築もしなければいけないだろうか?

いや、その前に結婚して離れる人の方が多いだろうか。

どちらにしろすぐには無理な話ではあるが……。

玄関から家に入るとエリオとキャロ、それに子犬化したアルフが出迎えてくれた。


「お帰りなさい、アキトさん」

「お帰りなさい父さん」

「お疲れ、アキト」


最初キャロは俺の事をおじいちゃんと呼んでいたのだが、外見や世間体などからお父さんと呼ぶようになった。

とはいえ、個人的にいえばリニスとリインフォースのほうに直してほしいのだが。

それよりも、エリオのほうが変化は激しい、当初はかなりやさぐれていたらしく、警戒心もあらわだったが、

慣れてくるとだんだん彼の育ちの良さが目立ってきた、だが場所が悪かったのだろう。

女性陣のおもちゃのような扱いになってしまっている。

ついこの間まで風呂を誰が一緒に入るか等で盛り上がっていたほどだ。

最近はかなりエリオの方が意識しているらしく、逃げだしているが。

個人的に、そういう場面を見るのは微笑ましい、エリオも構いたがる他の家族もだ。

ただし、女性の好奇心にさらされた事のある俺としては時折止めに入るしかないわけだが。

最近はエリオとキャロをセットで可愛がるのが流行っているようだ、よく似た年齢だし、仲もいい。気持ちは分からなくもない。

アルフは二人の世話というか、逆におもちゃにされているところも見かける、精神年齢は近いのかもしれない。


「とりあえずお土産だ」

「あっ、これシュークリーム!?」

「一個づつにしろよ。夕食が入らなくなるぞ」

「気をつけます」

「んー?」

「アルフさん、一気食いは……」

「いーの、最近なんか出番なかったし」

「それを言ったらまずいんじゃ……」

「エリオ君一緒に食べよ」

「あっ、待って」

「さて、リニス、夕食は頼む」

「はい。今日は資料と格闘と言う事ですか?」

「まあそう言う事になるな」

「あの……私も……」

「うん」


10歳の子供二人、留守番を任せるのも不安なのが普通だ、しかしこの子たちは仕事の手伝いがしたいという。

しかし、悪いが任せるわけにはいかない。

アルフにもその辺任せてあるし、彼女もまたフェイトの時には散々思ったことでもある。

だから、留守は一任しているといっていい。

だが、それが余計に二人には不満なのかもしれない。


「学校があるだろう?」

「でも、お世話になてばかりなんて」

「何かしたいの……」

「子供がそんな事を気にするな。どうしてもというなら。

 今のうちにいろんな物事に触れて置くことだ、今後何をするにも必要になる」


二人は完全に納得したわけではないようだが、とりあえず引き下がってくれた。

正直この話題は一回目というわけではない、何度か家族会議にまで発展したことのある話だ。

結論はいつも同じ、せめて義務教育が終るまでは就職しないというものだった。

俺は15でも早いとは思うんだが。


夕食の準備が出来るころ、フェイト達も帰ってくる。

ラピス、フェイト、アリシアの三人だけではなく、今日はちょっとしたパーティにするために、

はやてとヴォルケンリッターやすずか、なのは、アリサ、忍達等も来ることになっている。

日が暮れると同時に随分とにぎやかになってきた。


「これから作っていく新しい組織に乾杯!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


12時近くまで飲み食いしていた事もあり、資料に目を通していると徹夜せざるを得ず、

翌日はぼうっとしたところをよく見られてしまうはめになった……。

さらに次の日写真などに取られていたことを知り、立ちくらみをおこしたのは公然の秘密である。

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■作者からのメッセージ
さて、ようやく10年目。
STSの時代に突入しました、一応数合わせ的に第六課という形は作っております。
ただ、色々と違っている面もありますのでそのあたりはご容赦をw
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