●月◎日 曇り
最近、日記を日課にするようになった。
それなりに自分ではまめなほうだと思うけど、六課の人たちってまめな人多いから私あんまり目立ってない気がする。
魔導師部隊の活躍がいまいち芳しくないのもその原因かも。
次の出動までには整然とした規律で動ける魔導師部隊に育て上げたいなと思うんだけど、スケジュール的に少し苦しいかな?
でも、詰め込みするなら人数を絞らないといけないし……迷うところだよね。
●月×日 晴れ
私はその日助け出されたヴィヴィオという少女に会った。
ボソンジャンプを使う敵への対策会議が終わってからだったんだけど、
頭を悩ませることが増えてきちんと対応できていたか不安。
見た目は5歳くらい、最も話を聞くと作り出された生命との事で実年齢はかなり低いよう。
その割に話し方もしっかりしていたし、普通の少女のように見えた。
最初は周りを警戒していたけど、話してるうちに仲良くなれたよう。
そのせいで逆に仕事場まで付いてこられて少し困ったけど、可愛い上目使いでお願いされるとよほどの事でもない限り断れない。
左右で色の違う瞳は独特の雰囲気を持っているけど、それ以外は本当にただの子供のように見える。
私はいつの間にか彼女の保護者のような扱いを皆から受けていた。
●月▽日 曇り
ヴィヴィオはだんだん活発になってきていて、六課の人たちとも仲良くなってきている。
特にフェイトちゃんとはかなり仲良くなったよう。
そういえば、家ではキャロやエリオなんかともよく遊んであげてるみたいだし、子煩悩なのかも。
アキトさんは何か逆に警戒されてるみたい、フォローにはいるリニスが堂に入っていて何人か悔しそうに見てた。
私は笑ってごまかしたけど、正直最近アキトさんの周りが緊張孕んでるように見える。
●月■日 雨
今日私はお母さんになりました。
えーと、生んだわけではないのであしからず。
ヴィヴィオの後見人を本格的に決めないといけなくなって。
候補にあがったのがアキトさんとフェイトちゃんはやてちゃんに私だったんだけど。
ヴィヴィオ自身に選んでもらう事になって、結局私になったという事。
でも、フェイトちゃんにも結構なついてるし僅差だったと思うんだけどね。
▽月☆日 晴れ
保護観察的な意味も込めての共同生活が始まった。
とはいっても、まだヴィヴィオに家事を任せるとかできるとは思えないけど。
でもヴィヴィオはよく気のつくいい子、それに甘え上手……。
将来男の子を手玉に取ったりしなければいいけど。
▽月※日 晴れ
今日はリインフォースの復帰祝いも兼ねてアキトさんの家におよばれに行くことになった。
予想どうりというか、予想以上にアキトさんの家は賑やか……。
アリサちゃんもいるし、忍さんやお兄ちゃんまで来てた。
アキトさんは相変わらず女の子に囲まれてる、最近は特にリニスさんとすずかちゃんの牽制が激しい、
アキトさん自身も気が付いているんだろうけど、積極的にはなれない様子。
私も嫌いじゃないけど、あの中に入っていく勇気はないな……。
ヴィヴィオは比較的近い年齢のエリオ君やキャロちゃんと遊んでるみたい。
でも、どっちも魔導師としての力が強いから、遊びにそういうのを混ぜてはアルフさんにげんこつもらってる。
それからはやてちゃんと一緒に来ていたグレアムさんとも少し話した、
彼は昔の情熱をかなり失っていると自分で語っているけど、
今も地球と管理局、そして今は連盟とも外交を行う機関の半ば長として納まっている。
彼がはやてちゃんにしたことは今も少しわだかまりがあるけど、はやてちゃんが許しているのに私が許さないわけにはいかないし。
ただ、それでもアキトさんやはやてちゃんのようには付き合えそうにないと思った。
▽月△日 曇り
今日は本局に顔を出した。
リンディ提督に代わって今はクロノ君が提督として活動している。
彼はベルカ自治領とも親交が深いので、六課の設立にかかわってくれている。
分かっている事、分からないこと、六課の動向、連盟の意向など私が気がついた事はすべて報告する。
書面にしないのはいろいろまずい事があるからという事だけど、今回の任務はこう言う部分がまだなじめていない。
それが顔に出ていたのか、私を見てクロノ君は少し暗い顔になり上層部の命令が最近おかしい事などを語ってくれた。
管理局は大きくなりすぎた事で情報の伝達が遅くなっていると感じていた私だけど、そこまでとはちょっとびっくりした。
お互いに警戒心は常に持つように言いつつ別れることにする。
ヴィヴィオはその日、長い間一人にしていたせいか、帰ってくるなり飛びついて泣き始めた。
私も疲れていたけど、慰めるには2時間くらいかかっちゃった。
▽月◎日 晴れ
この日はヴィヴィオを連れてプールに遊びに行った。
前のお詫びという事で、私も思いっきり羽を伸ばそうと考えていたのだけど……。
行ってみたら、知っている顔ぶれがちらほらと。
スバルやティアナはわかるけど、ラピスちゃんがプールに来るなんて珍しいよね。
フェイトちゃんも来ていたし、丁度いいのでみんなで遊ぶことにした。
とはいえ、年齢的にヴィヴィオが同じような遊びが出来るとは思えないので、いろいろ気を使ってもらっちゃったけど。
それにしてもフェイトちゃんはヴィヴィオと仲がいい、でも、少し子煩悩が過ぎるというか甘やかしてるように思える。
もう少し自立を助けるように接した方がいいと思うんだけどなー。
▽月*日
今日は二度目の対策会議。
考えてみればボソンジャンプっていうレアスキルはアキトさんだけしか使えない、そう言う物だと誰もが思っていた。
それは、私達がどこかでそう思いたかったという事が大きい。
もしも、同じことができる犯罪者が現われたなら、私たちには対処できない。
追う方にとってはどこに現れるかも分からず、現われても好きな時に消える。魔法以上に魔法的なその能力。
六課の技術関連の人たちは今必死にその能力を研究している。
アキトさんの話ではC・Cと呼ばれる物質。それさえあれば私たち魔導師はボソンジャンプをする事ができるらしい。
それは確かに凄いことだけど、相手に対して万全になるという事じゃない。
でも、ほかに方法がないならとC・Cの開発は承認された。
そして、アキトさんは他人のボソンジャンプ制御に、ボソンジャンプの無効化。
それらのことを演算ユニットに潜って知識を取り出すことにする事を決めた。
それは普段も侵食している演算ユニットに自我を放り込む事であり、下手をすればアキトさんがいなくなってしまう。
リニスさんやリインフォースが出来る限りサポートすると言っていたけど、大丈夫かな?
心配だけど、他に手がないのも事実、私は反対の意見を上げることはできなかった。
すずかちゃんやフェイトちゃんはものすごく反対していたのを覚えている。
疲れて帰った私をヴィヴィオが慰めてくれた。
不覚にもちょっと涙が出た。
▽月◆日 雨
ガジェットの襲撃事件があった。
丁度訓練を行っている最中だったので、私はその部隊を持って駆け付けた。
狙いはやっぱりレリックのよう。
ガジェットは相変わらずAMFを纏っていたけどこちらもそれなりに実戦慣れしてきた事もあり簡単に対処できた。
ヴィータちゃんは物足りないって言ってたけど出来ればボソンジャンプを使う相手には出てきてほしくないな。
でも、その後すぐフェイトちゃん達も別の場所に出撃したって聞いて驚いていると、更に次の事件が起きた。
私もそちらへ急行することになった、まさか3回も襲撃があるなんてガジェット達に対する指令が変わった?
帰ってみるとヴィヴィオが玄関に突っ伏して寝ていた。
申し訳ないと思うけど、この先同じことが続くんじゃないかと言う予感がする。
▽月#日 曇り
予感は的中、私達はその日も駆けまわることになった。
レリックが関わっているものばかりだから、レリックが見つかって悪い事じゃないんだけど、
レリックその物を必要としなくなったか、私たちに集めさせて一気に回収しようとしているのか。
私は不気味さを感じないではいられなかった。
▽月○日 曇り
仕事が久々に早く終わったのでヴィヴィオを連れてお買い物に行く。
ヴィヴィオははしゃいでいたけど、買ったのはお菓子ばかりだった。
来年には学校に通わせないといけないけど、こんな調子で大丈夫かな?
子供を育てた経験はないから、やっぱり不安。
フェイトちゃんやお母さんにも聞いてみよう。
▽月□日 晴れ
訓練をしていると、緊急招集がかかった。
以前捕らえた戦闘機人の子から話を聞けたとの事。
なんでも、目的については公言こそしていても隠してはいないとの事。
相手の使っているボソンジャンプの事については詳しく分からなかったけど、目的ははっきりした。
それは”究極の生命”の創造。
今一つピンとこなかったけど、根本的には、死なない、年をとらない、戦っても負けない、本質を見抜き、利用もされない。
つまり神のごとき存在の事、でも、私は何かこういう存在を知っている気がした……。
上手く頭の中で整理できないけど……。
ただ、究極の生命の創造と、戦闘機人、人造魔導師、F計画、それらは繋がっているように思うし嘘ではないと思う。
■月+日 曇り
ガジェットによる襲撃が来なかった、
だんだん散発的になっていた事もあり恐らくガジェットが尽きたんじゃという楽観視が増えてきた。
それ自体はいいのだけど、ボソンジャンプを使っての襲撃なんかが全くないのが不気味。
アキトさんやリニスによると研究のための時間稼ぎとしてガジェットを使っていたのだろうと言う事。
となると当然、研究が終わったという可能性が出てくる。
でも今はこれ以上どうしようもない、ヴィヴィオの様子を見ようと家に帰ったけどヴィヴィオは家にいなかった。
これって、家出? それとも誘拐?
私は半狂乱で周辺を捜しまわったけど誰もいない、仕方ないので近くの知り合いに片っ端から声をかけつつ、
ヴィヴィオを探して走りまわったけど、日付が変わるまで探しても見つからなかった。
■月−日 雨
雨の降りしきる中、ひたすらヴィヴィオを探して歩き、飛びまわる、誘拐にしては犯人から何も言ってこない。
なら家出をしたのかとも思う、確かに私は家をあけがちだし、最近は帰ってくるのが遅かった、そうだとしても否定できない。
一応ヘルパーさんは毎日来てもらってたけど、昼の数時間だけだしね。
でも、それよりも恐ろしいのは、スカリエッティが彼女を攫いにきた可能性。
彼女はスカリエッティの実験体の一人としてとらえられていたようなもの。
元はオークション会場にいたらしい。
それを考えると、今すぐにでもスカリエッティ達を捕えて安心したいのだけど。
今は少なくとも痕跡を探さなくてはならない。
寝不足で思考の鈍るその頭で考えた事はこれくらいだった。
■月★日 晴れ
ヴィヴィオをようやく見つけた、なんと自分で六課まで来たらしい。
その間いろいろあったようで、私に届けるつもりだったらしい弁当は中身がなかったが。
まあ2日遅れだとどの道食べられないだろうし、それはそれでいい。
でも、しっかり叱っておくことにした。
その後で私はヴィヴィオを抱きしめて涙を流した……。
■月▽日 曇り
今日はようやく第三回の会議を開くことができるそうだ。
ボソンジャンプへの対処法を見つけたとの事。
でも、嫌な天気だ……雷が鳴りやまない、何も起こらないといいのだけど。