俺が目を開けた時、そこに映っていたのはなのはの顔だった……。
不思議に思う、ここのところ彼女との接点はあまりなかったはずだった。
しかし、その時俺は気がつかなかった、それの意味する事に……。
「アキトさんおはよう! 朝食出来てるよ?」
「……ああ、おはよう」
まだ眠気の残っていた俺はいまいち理由の分からないまま、大使館の食堂へとやってくる。
リニスに作ってもらわない場合はこの国のホテルで働いていたというシェフに作ってもらっているのだが、今日は違うらしい。
いかにも和風のあさげといった感じのする食事だ。
「この朝食は?」
「えっと口に合わなかった?」
「いや、旨いがいつもと違うと思ってな」
「にゃはは、それ私が作ったんだよ」
なのはがにぱーという感じで微笑んでいる。
これはいったいどうしたことだろう?
というか、ほかのやつらはどこに行ったんだ?
「少し聞きたいことがあるんだが……」
「うん、何でも質問して」
「フェイトやリニス達はどこへ……?」
「買い物だよ。今日は重要な用事があるから準備しないといけないんだって」
「……ふむ」
そんな重要な用事があっただろうか……この間バレンタインのチョコは沢山もらったが。
2月に入ってからいろいろあったせいで、今一思い出せない。
あの事件から少し時間がたち、俺はレジアスとの提携を取りつけたものの、あれ以来あまり派手な接触はしていない。
基本的には大使としての仕事がある上、プレシアの行方もわからない、更にはヤマサキの件もある。
いろいろと走りまわる羽目になった。
フェイトも表面的には落ち着いて見えるが、どこか危うい感じもする。
そして、犠牲になった管理局員達の中にメガーヌが含まれていたのを聞いた。
知り合って2年、つき合いはそれほどでもなかったがクイントと共に漫才を繰り広げている様を時々みかけていただけに痛い。
クイントも心労と肉体的にかなり疲弊していたため、入院中だ。
俺達が見舞いに行った時はそれなりに明るくしていたが、やはり、時々虚ろな目をしていた。
そんなこんなで、問題点ばかり残った事件だったため、いろいろ奔走していたのだ。
それが今日突然全員が出かける用事と言われてもピンとこない。
「もしもし? アキトさん!」
「ん? ああすまない、考え込んでいたようだ」
「もー、折角作ったんだからきちんと食べてね?」
「ああ、そうだな。まず食べてしまうとしよう」
しかし、実際庭と、館のそれぞれの掃除、庭師と合わせて5人ほど雇っているはずなのだが、その使用人達の姿も見えない。
成金ぽく思えるかもしれないが、この大使館というものは難民を100人単位で住まわせることもあるのだ。
それなりに、住居や緊急避難用の講堂のような場所も用意されている。
5人では毎日の掃除も事かくのが実情だ。
しかし、幸いにしてリニスやリインフォースはその辺りの技能も卓越しているためあまりせっぱつまってはいない。
まあ、その辺は置くにしても使用人がいないのは不思議でもあった。
「使用人たちも買い物なのか?」
「ううん、休暇を出したっていってたよ?」
「……それは」
ここまで来ると、俺に内緒で何かしているのだろうと言う程度はわかる。
しかし、何をしているのかといわれるとさっぱりだ、何か俺に心配させたくないような事でもあるのだろうか。
そういえば……女の子のお祝いというものがあった気が……。
いや、男性としてはあまり関わってやらないほうが気が効いているアレだ。
赤飯炊いたりな……。
誰がと言われれば、3人対象が考えられてしまう。
すなわち、ラピス、フェイト、アリシアの3人だ。
俺は、それとなくなのはからその辺の事を聞き出そうと思った。
「それにしても、わざわざすまないな」
「ううん、いいんだよ。だってこの前は助けてもらったし、お礼もしたかったから」
「礼を言われるような事はしていないと思うが」
「……ぶぅ、そういうぶっきらぼうな所は減点だよ。お礼してるんだからきっちり受け取ること」
「なるほど、そうだな。ありがたく受け取っておこう」
「うん、よくできました! ってちょっと偉そうだね。えへへっ」
「しかし、あんな所に一人でいたのは何故だ? 演習なら小隊単位で動くんじゃないのか?」
「うん……飛べるの私とヴィータちゃんだけだったから、皆を避難させてから何が起きたのか確認しようと思ってたの」
何とも子供らしくない、庇護する大人の側にたった言葉だった。
俺が11歳のころは何をしていたのだろうと思い返してみる、
確か両親が死んで、施設に引き取られてすぐのころだ、施設の子供たちとなじめず、出される食事もまずい。
両親の死から立ち直ってもいなかったし、心は不平ばかりだった気がするな……。
この違いはいったい何なのだろう……。
そして、ふと思った。
「無茶はしていないか?」
「無茶? ううん、やりたい事だもん。ちょっとくらい辛くたって。それはそれで楽しいよ?」
「……やはり、あの時倒れたのは疲労のせいか」
「そんなこと……」
「まあ、今休んでいると考えられなくもないが、体が成長しきるまでは体力も完全じゃない。
お互い、無茶はしすぎないようにしないとな」
「ぶっ、アキトさん人の事言えないもんね♪」
なのはは軽く笑ってだが、その言葉の意味はとらえているだろうことを感じさせる。
実際俺のように無茶の効く身体というわけでもないのだ、
普通の少女にしかすぎない彼女が魔法の才能だけでここまでやっている。
無茶をする彼女にもだが、そんな彼女にどんどん仕事を回す管理局にも不信感は残る。
管理局は彼女らを使い捨てにする気だろうか?
もっと、倫理規程などをきちんとしなくてはいけないのではないか?
俺が無茶をするのとなのはが無茶をするのは意味合いが違ってくる。
その事を教えてやりたい、そう思った。
しかし、とりあえずは当面の目的を優先しよう。
「なのはちゃんは皆がいつ戻るか聞いてないか?」
「夕方には戻るって言ってたと思うよって、ちゃん!?」
「……ああ、昔の癖で……すまないな」
「そう言えばそんな事も聞いたような……でも、その顔ならむしろそうなのかも?」
「顔?」
「アキトさん柔和な顔してるもん。この間見た時は目を黒いので覆ってたから……」
「そう……かな、童顔とはよく言われるが……」
「うん! アキトさんかぁいいかぁいい♪」
「いや、それは違うだろう!?」
なのはは何が面白いのか椅子の上に立って俺の頭をなで始める。
流石に俺もこんな事をされたことはなかったので、どうしていいか分からず戸惑ってしまう。
本当に何から何まで企画外の少女だななのはと言う少女は……。
「さてっと、アキトさん、ちょっとお出かけしよ」
「出かけると言ってもな……何か買いたいものでもあるのか?」
「うん、私クラナガンのほうは仕事でしか来ないから。街とかあんまり知らないんだよ」
「なるほどな」
意図はつかめないものの、こう言う時は理由がある事は大体分かっている。
ここまで仕掛けをしていて何もないと思うのは昔の俺ならあったかもしれないが、
こんな仕事をするようになって疑い深くなった俺にはありえない話。
だが、あえて乗っかってみるのもいいだろう。悪い意図で言っているのではない事もわかるから。
「すまんがバイクの免許しかこちらでは取得していないからな……」
「ううん、大丈夫だよ」
ヘルメットをかぶりながらにこりと笑うなのは。
実際この免許もパワードスーツ関連の特許等を申請していた関連でついでについてきたものだ。
免許を取りに行く暇もなかったしな。
それに、後2年で領事館をいくつ作るのか、通商協定はどうなるのかなど色々と申請やら会議やらが多い。
通常業務も忙しい事が多いため、これから数日の休暇はわりと重要だった。
家族サービスもせねばならんな……。
「さて、どこに行きたい?」
「ミッドモール!」
「了解」
ミッドモールというのは大型のショッピングモールだ。
ミッドチルダ随一を自任しているとかいないとか。
一度行った事があるが、10km四方が小売店のテナントで埋め尽くされている様は壮観というか威圧的ですらある。
それもこれも、ミッドチルダの特殊性にあると言っていい。
東京は日本の首都だが、ここクラナガンには何十という世界の人々にとっての首都ということになる。
ざっと見ても、1憶人の国の首都と1000億の首都だ当然違う。
そうなれば当然モールに集まる商品は地方色まで含めると凄まじいことになるわけだ。
「凄い人だね……」
「まぁな、町一つまるまるショッピングモールのようなものだからな」
そう、数十の異世界の商品が軒を並べているのだが、それ以上に異世界から集まる人の数が凄い。
毎日何十万という客の出入りがあるのだ、他ではなかなかお目にかかれない光景だろう。
当然、客としてくる人々の衣装もそれぞれの世界の衣装なのだから、見たこともない衣装も多い。
銀色のラメの服に、鹿のような角をつけた異常に目立ちそうな爺さんがいたり、
袖が長すぎて引きずっている服を着ている女性がいたり、他にも裸と見間違えるような肌色の全身タイツもいた。
ここなら俺のスーツでも変態じゃなさそうだなと思う、だがあえて口にしようとは思わなかったが。
「あっ、あそこにあるの何かな?」
「あれは……、って……なんだあれは?」
モール内に大きな空間が空いている場所があり、そこから見上げる空間には綿菓子のようなもので出来た巨人がいた。
ユーモラスに動くさまはなんとも緊張感がなく、ゆるキャラとかいうジャンルに属するのだろう。
しかし、それが曲がりなりにも空をふわふわ浮かびながら子供たちに風船などを渡している様はなんとも違和感にあふれていた。
流石魔法の世界と言うべきなのだろうか……?
「風船もらっちゃった」
「別にもらって悪いものでもないだろう、ついでにそこの店でアイスでも買うか?」
「うん!」
そうして、アイスを選ぶのだが、見たこともない明らかに歯が立たなそうな金色やら毒々しい虹色のアイスも存在していた。
チョコなど問題にならないほど黒いのもあったが……。
無難にミントを選択する俺はきっと間違っていないはずだ。
しかし、なのははかかんに虹色のアイスに挑戦していた。
「それでよかったのか?」
「うーん、でも虹色だよ? 偏見はよくないってお母さんも言ってたし」
「偏見……だがその虹色毒々しいような……」
「そうかなー?」
「まあ、食べてみてダメそうだったら変えればいいさ」
「うん、ちょっと食べてみるね」
そう言ってなのはは神妙な顔でアイスを口に運ぶ。
「はむ…………」
「どうだ?」
「……」
「大丈夫か?」
「ほにゃ〜、川の向こう側で会ったこともないおじいちゃんが手を振ってる〜」
「おい!?」
「なんか、向こう岸までいったら戻れないって船頭さんがいってるよ〜?」
「それは三途の川だろ! 戻って来い!」
俺は思わずなのはの頬をぺしぺしと叩く。
トリップしていたなのはは、はっとした顔になってきょろきょろ周囲を見回す。
「はっ!? あれ……? おじいちゃんは?」
「幻覚だ」
「そうなんだ……。とっとんでもなく幸せな味だよ……」
「なんというか、やばい気がするから普通のを買い直そう」
「……うん、そうだね……」
次は、バニラとチョコとイチゴの三段重ねにしてとりあえず決着がついた。
なのは、チャレンジャーにもほどがある……。
しかし、今のなのはは年相応に見える、普段が普段だけに微笑ましい光景だった。
その後も、アンティークショップらしき店に入って、
魔法が実在するだけに使えるのかもしれない魔法の武具だの、魔法のじゅうたんだのどっかで聞いたような物品を見たり。
古代ベルカの秘宝とかいう黒い石の言われを聞いたり(半分寝ながら)
服の店では正直目がちかちかする原色の服が多かった、高級服ということになるのだろうか?
とはいえ、その手の店は当然のごとく世界ごとに何種類かあるらしく、ざっと200以上の店が軒を連ねている。
更には花屋と思しき場所で10mはあろうかという巨大な花をみたりもした。
殆どウィンドウショッピングとはいえ、かなりの時間をつぶすことになった。
下手なテーマパークよりも楽しめるかもしれないな、魔法のあるなしよりも異世界の文化の融合という意味の方が凄い。
うさん臭さのほうもパワーUPしているのがある意味凄いな。
「あっ、もうお昼まわっちゃったね」
「そうだな、どこかで食べていくか?」
「ううん、みんな帰ってると思うから大使館にもどろ?」
「そうか、そうだな……」
準備が出来たという事だろう、何の準備か知らないがサプライズでやってくれるのは楽しみではある。
なのはのほうも自分の役目が果たせたというような安心感が顔に出ているのが微笑ましい。
そう言った目で見ていたからだろう、なのはが俺に顔を近づけてきた。
「何考えてるんですか?」
「大したことじゃない」
「むぅー」
「そうだな、この間のことについてだが、寝不足だったらしいな?」
「うっ……。ここのところ忙しかったですから」
「学業の時間、遊ぶ時間、それらを食いつぶすほどの仕事の時間。やはり早すぎたんじゃないか?」
「それは……でも、私の力がみんなの役に立つならって……それに助けられる子は助けたいし……」
「世代って言う言葉を知っているか?」
「えっ……うん、知ってるけど」
「子供はまだ成長しきっていないと言う事もだが、子供はまだ子供を持っていない。
もしも、子供が何らかの形でいなくなるとその世代で家系が断たれてしまう」
「うっ」
「子供というのは、世代を引き継ぐ準備段階なんだ。次の世代を生み育てる仕事をまだしていない。
それが終わった後なら倫理観を別にすれば命を投げ出す仕事をしても悪くはないのかもしれないな」
「……そうだね」
俺も本来はそちらの部類なのだろうな、天河家は俺の代で途絶えるか、それともユリカが継いでくれたのか。
今となってはそれすら分からないが……。
そうこう考えている間にも、俺はバイクを大使館まで戻していた、護衛も付けず街中を歩いたのは久しぶりかもしれない。
しかし、警備の人員に門を開けてもらって中に入ると沢山の気配というか、演算結果が出ていた。
こういう時は演算ユニットも考えものかもしれないな。
「さあさあ、みんな待ってるよ。早く扉を開けて」
「そうだな」
なのはは嬉しそうに俺を引っ張って玄関に向かう。
玄関には誰もいない、少し離れたところで何かしているようだが……。
あえて詳しくは調べずに扉を開ける。
そこには……巨大な箱……プレゼント用にしっかりラッピングされたファンシーな2mくらいの箱があった。
「なんだこれは?」
「プレゼントだよ……きっと(汗)」
「開けてみるか……」
とはいえ2m……リボンの紐に手を伸ばすがかなり頑張ってようやくといったところだ。
微妙に辛い姿勢で引っ張ると箱が四方にぱかりと開く。
中には沢山の風船が入っており空へと向かってふよふよ上がっていく。
とはいえ、玄関とはいえ天井があるので途中でぶつかって張り付いているだけだが。
どちらにしろ凝った演出だと思ったその時。
両脇の部屋に隠れていたリニス達家族や、はやて達お隣さんなどがクラッカーをぱぱぱぱぱんと言った感じで鳴らす。
「「「「「「「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」」」」」」」
ざっとみて十人以上、俺も知り合いが増えたものだと思った。
そして、思い出してみると2月26日、確かに俺の誕生日のようだった。
しかし、俺は誕生日を教えた覚えはないが……ラピスが教えたのか。
ラピスにも直接教えた覚えはないのだが……そのあたり横の連携が何かあったのかもしれない……。
「でもこれでマスターも27歳になるんですねー」
「我ら守護騎士と同じように年はとらないのだろう、演算ユニットで肉体を構成している以上は」
「それでも年を重ねることは素敵なことだと思うんです」
「すずか……言う事が詩的ね……」
「いえ……あう……」
「アリサちゃんも許してあげなよ……なんだからさ」
「そうはいっても、ねぇ?」
「あのあの……義父さんおめでとうございます」
「おめでとー♪」
「アキト……おめでとう」
「なんや楽しいなぁ、やっぱりこう言うのも人徳やろか?」
「そうですね、私も久々にこう言う事が出来て楽しいです」
「料理は私が作ったけどな♪」
「それは言わない約束です……」
「シャマルさんも料理上達しませんねー」
「キューエルシュランク……あまりいじめてやるな……」
「こういうのも姦しいっていうのかねぇ」
「ったく、何だよこの人数の多さは」
「俺は……すまん、何もできなかった」
「そんなもんですよ、僕もますます妹紹介できないと思いましたし」
「ゴホン、この場でそう言う事を言うのは礼儀に反するぞ」
「父さんも堅苦しい事言わないで」
「そうそう、誕生パーティなんだしさ」
「でも今日は甘いものばっかりで楽しいわ♪」
「いや、母さんはいつもの事という気がするが……」
「クロノ君そう言う事は黙っておいてあげるのがエチケットですよ」
「しかしだな」
「凄い勢いですね兄さん……」
「ああ、しかし見事に女ばっかりだな」
「あら焼いてるの? 恭也だってあんまり人の事は言えないと思うけど」
「そっ、そんな事はないぞ。俺は、お前一筋だ」
「本当かなー」
「そうですよー、私だって諦めたんですから自信を持ってくださいね」
「アンタが一番信用ならないんだけど……」
「うふふ」
「あはは」
「さあ、主アキトこちらへ。料理なども用意しておりますので」
本当にたかだか2年半ほどの間によくこれだけの人と知り合えたものだと思う。
笑顔のなのはが俺の手を引っ張って集団の中に放り込む。
俺は戸惑うばかりだったが、ケーキのローソクを息で吹き消したり、料理を食べたり、途中からドンチャン騒ぎになったりした。
誰が酒を持ってきたのか……。
「ふぅ……みんな凄い勢いだったね」
「酒が入ったからだろう」
「そだね、私もちょっと飲んじゃった」
「まあ、仕方ないんじゃないか? だが酔っぱらうほどのむなよ」
「にゃははは、お酒の良さってよく分からないよ」
「むしろその年齢で分かったら怖いな。将来の酒豪というわけだ」
「もー」
なのはも赤い顔をしている、どうやらほてった体を冷ますためにベランダに出てきたらしい。
俺自身勢いにのまれてかなり酒を飲んでいたので足元がふらついている。
ジャンプなどしないが、今やれば演算ユニットの計算も狂いそうだった。
そんな体を覚ますべく、なんとなく夜空を眺めている。
「ここで光ってる星って地球から行ける星はないんだよね」
「ああ、そうだな」
「次元の移動とかってお話としてはよく聞くけど実際してみると実感わかないんだよ」
「そうだな、俺も異世界だという違和感は割と少ないな」
「でも今日みたいに買い物とかすると違いがわかるよね」
「……」
「私の夢はいろんな世界でいろんな人の笑顔を見ること。今はそう思う」
「そうか」
「うん、だから無茶は出来るだけ少なくするから、続けていきたい」
まだ顔は赤らんでいたが、なのはの表情は真剣で、その目には決意が宿っている。
俺が地球側の大使であるから気を使っているのか、それとも決意表明の場が欲しかったのか。
しかし、その目の輝きに俺は折れるしかなかった。
「なのはは大きいな」
「大きい?」
「ああ、俺は俺の周りの人を目の届く範囲で何とかすることしか考えていない。
だがなのは、お前は出会う人すべてを助けたいと考えているのだろう?」
「そっ、そんな大それたこと考えてないよ」
「だが、今言った話を総合するとそうなる」
「うーん……」
そう言い返されるとなのはは黙りこみ、何かを考えているようだ。
その仕草は可愛いが、考えている事を思うとそうも言っていられないのかもしれない。
「そんな難しいこと考えてないよ、私、笑顔が好きだもん。だから笑顔が見たいんだよ♪」
「……ぷっ」
「あっ、今笑った!」
「いや、すまん。立派な考えだと思うが……」
「もう、そんなに我慢されると余計嫌だよー。爆笑してくれた方がまだましだよ」
そういいつつも、なのはも笑っていた。
笑顔が好きというのに嘘はないのだろうな。
しかし、ニュアンスは兎も角、意味は変わっていない事に気付いているだろうか……。
「でも、今日はアキトさんの誕生日祝えてよかったと思うよ。だって、みんなの笑顔が見れたから」
「……そうだな」
そう言ってなのははこの日一番の笑顔を俺に見せてくれた……。