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黒の異邦人は龍の保護者 # Epilogue 2 “Children Days ―― 銀 ―― ” 『琥珀銀』編 @
作者:ハナズオウ   2018/01/07(日) 23:57公開   ID:6rmYvcepEFg




 シュテルンビルトの都市伝説の一つとなったパンドラ事件から6年。

 幾度かの危機を向けつつ、シュテルンビルトとそこに住む人たちは平和を享受していた。




「じゃぁ、また明日ねー、楓」

「またねー!」

 シュテルンビルトのとある交差点。

 鏑木楓は、大きく手を振り横断歩道を渡る友達を送り出す。

 栗毛をサイドポニーに括り、かつて“ブルーローズ”カリーナ・ライルが袖を通した高校の制服に身を包んでいる。

 父であるワイルドタイガーの『HERO TV』1部リーグ引退から5年の時が流れた。

 高校生となった楓は小さく間延びし、街の空を見上げる。

 見送った友達は最近できた彼氏とのデートに行くのだと嬉しそうに語っていた。

 自分には咲かない色恋沙汰が頭を霞めるも……

『まぁ、いつかくるだろう』

 ――と頭から追い出す。

「さてと、お婆ちゃんが心配するから遅くはなれないけど……」

 まぁ、適当に雑貨屋にでも行くかと足を動かす。

 一歩目が足につこうかという瞬間に衝撃が2つ、楓の脚を襲う。

 おうっと崩れたバランスを立て直し、足元に目をやると見覚えのある少女たちが抱き着いていた。

「こんにちは、アンバーに銀」

「こんにちは!」
「……こんにちは」

 元気に挨拶を返したアンバーは、鮮やかな緑色の髪を腰まで伸ばし、ホットパンツにパーカーというラフな格好をしている。

 抑揚の小さい声であいさつを返した銀は銀色の髪をポニーテールにし、アンティークドールを思わせるロリータ風のスカートを着ている。

 対照的な2人はこう見えて双子の姉妹なのだ。

 それも楓の大事な友人黄宝鈴の愛娘達だ。

 フィギュアスケートを続けている楓はよくこの子たちを発表会に呼び、交流を持っている。

 アンバーは傷だらけの一眼レフカメラを常に持ち歩き、いつも写真を撮っている。発表会に呼ぶのはそういう機会になればという面もある。

 銀は生まれつき盲目と聞いているが、優れた聴覚で周囲を全て近くできるらしく、文字が読めないだけでそれ以外は普通の人と同じだ。

「ねぇ銀、今日はお姉ちゃんピンクだよ」

「ピンク……この前はミントだった」

 だねぇとアンバーは笑っている。

 この子たちが脚に突っ込んでくるのはコミュニケーション半分、スカートの中の確認半分。

 毎度報告され、毎度記録される。

 自分でも覚えていない回数を銀は正確に覚えている。

 以前の集まりの時に面白半分で聞いた結果、事細かに記憶されていた。

 その記録をまた更新したか……と苦笑いを浮かべながら、楓は2人の頭を撫でる。

 気持ちよさそうに目を細め、顔をグリグリと楓の脚に押し付ける。

「2人とも寄り道中?」

「消しゴム買いに行くの! リンゴの匂いの」

「お姉ちゃんいいお店知ってるし、一緒にいこうか?」

「うん!」

 楓は銀とアンバーと手を繋ぎながら、馴染みの雑貨屋さんへと向かう。

 自分も買わないといけないなと思っていた小物を探しながら、2人が迷子にならないように目を離さない。

 アンバーは自然と可愛いものなど注目した商品を銀の手に乗せて触らせる。

 楽しそうに買い物を始めたので、楓も自分の買い物を始める。

 そろそろ買いたかった可愛めのペンを探す。

 その過程で、可愛らしいヘアピンを見つけて買い物かごに入れる。

 自分の買い物を終えると、アンバーがキラキラした目でイヤリングなどを見ては、銀に手渡していた。

「買えた?」

「うん!」

「これから探偵事務所?」

「うん! パパとママもいるから」

 ならお姉ちゃんも行くー! と、楓はまた銀とアンバーと手を繋いで歩き始める。

 黒が初めた探偵事務所は知り合いしかいないため、楓はちょくちょくと顔を出している。

 そこに友達のパーセルがいれば、家まで送ってもらえるかなとも思いながら。

「銀ちゃんにアンバーちゃん。これプレゼント」

 と、楓は買い物袋の中から、ヘアピンを2つ取り出す。

 音符がついたヘアピンを銀の前髪に着ける。

 もう一つ、太陽のモチーフがついたヘアピンをアンバーの前髪に着ける。

「この前の写真のお礼だよ。

 2人に似合うと思ったけど、本当によく似合ってるね」

 満足そうに笑顔になる楓につられるように2人も笑顔になる。

 それからは3人で楽しそうに歌いながら探偵事務所へと向かった。


 平和なシュテルンビルトの日常である。




―――――――





TIGER&BUNNY × Darker Than Black


黒の異邦人は龍の保護者


   “Children Days ―― 銀 ―― ”


『琥珀銀』編 @


作者;ハナズオウ






―――――――




「ふぁあ! 今日もリハ疲れたー」

 夜の光が灯るシュテルンビルトを歩く女性、カリーナ・ライルは夜の雰囲気を楽しみながら帰路に着いている。

 手には白い箱が持たれており、これの中身を見せた時の相手の顔を思い浮かべると頬が緩む。

 腹は確かに空いているが、プロフェッショナルとしてプロポーションを保つためには夕飯も腹いっぱいには食べられないかと鼻息を落とす。

「そろそろあの娘来てる頃かな……まぁ母さんも大好きだし、暇は持て余さないかな」

 数パターンある中で今日はどれだろうかと、口元を綻ばせる。

 どれが来ても家は賑やかになっているのは間違いない。

 お母さんが『あの娘』をおもちゃにしているのか、『あの娘』と姉がお母さんをおもちゃにしているのか。

 前者だったら、お腹いっぱい『あの娘』と夕ご飯を食べよう。と決めた。

 ただいまーとドアを開けたら、リビングから楽しそうな母の声が聞こえた。

 カリーナは笑顔でリビングへと入っていく。

 そこには想像通り、母と『あの娘』がソファーに座って本を読み聞かせていた。

 最近の母のトレンドは『あの娘』にシュテルンビルトに伝わる神話や都市伝説などを読み聞かせる事。

 そのために母が本屋通いを始めた時は驚かされたのを覚えている。

「ただいま、お母さん。

 いらっしゃい、銀」

 いつも母親である黄 宝鈴が頑張ってポニーテールにしているのに、既に髪型は別のものになっている。

 サイドを三つ編みにしてハーフアップにしている。

 犯人はわかり切っている……母親だ。

 銀髪のシルクのような輝きを放つ銀の髪がよく映えるように毎度、母が楽しんでいる。

「せんせぇ〜」

 母親の語りを聞き入っていた銀が、嬉しそうに小走りで駆け寄ってくる。

 ギュッと脚を抱きしめられるのはいつもの事だなと、母親に目を移す。

 そこにはいつも通り、『獲られた……』と少し恨めしそうな視線を送る母親がいた。

「お母さん、レッスン終わったら銀とお腹いっぱい夕食食べるから、よろしくねぇ」

 銀を連れて、ピアノを置いている自分の部屋に入る。

 いつものようにお母さんが部屋を清掃し、カーテンを開けている。

 銀のお気に入りのシチュエーションだ。

 月明りと街の明かりが部屋に差し込んでいる。

 目の見えないはずの銀だが、光は感じるらしくピアノのレッスンはいつのこれらの光の中で行われる。

 蛍光灯をつけている時よりも覚えも早く、何よりも奏でる音が優しい。

 母親の黄 宝鈴に聞くと、家での練習もそうしているようだ。

 それなら自分達目の見える人の事情を押し付けることもない。と電気を消している。



 …………

 ……



 小一時間のレッスンを終え、銀のお腹が可愛らしく空腹を知らせた。

 クスリと笑った私に銀は少し頬を赤らめて控えめに笑う。

 私はいつものように、銀をギュッと抱きしめて抱っこする。

 部屋を出ると、母親が腕によりをかけて作った料理の匂いが充満していた。

「ねぇ、せんせぇ! 今日もあれある?」

「そうね……あぁ、あるわよ。いっぱいよそってあげるね」

「うん!」

 好物の料理があるのがわかり、銀はギュッと私を抱きしめた。

「もうぅ! カリーナ、銀ちゃんお腹すいちゃってるんだから早く座らせて!」

 銀専用となっている少し高めの椅子をパンパンと叩きながら、母は銀を着席させるように催促する。

 もちろん、その隣に陣取る母親は銀に取り分けて世話をする気で息巻いている。

 既に銀用に買われた可愛らしい小皿には銀の好物のゴーヤチャンプルが盛られている。

 座った銀は母に盛られる食べ物をパクパクと食べていく。

 姉に比べると感情表現が乏しいが、静かに、そして確かに銀は笑顔を作っている。

 それが愛らしいと母は骨抜きにされているのだ。

 私もお腹はすいているので銀の世話を母に任せて食べていく。

 銀用に盛大に作られた夕飯も終盤に差し掛かった時、銀はいつものように紅茶が飲みたい……と母にねだっていた。

 待ってました! とばかりに机の片隅に置いていたフレンチプレスを手に取り、ぬるま湯で温めたティカップに紅茶を注いだ。

 それと時を同じくして父が仕事から帰ってきた。

 にこやかにただいまをいう父の手にはこの町で有名なケーキ屋の箱を持っている。

 そうだった……母に負けず、父も銀の虜なんだった。

 いつも提示で帰ってくるくせに銀が来る日はいつもより帰りが遅い。

 銀が喜ぶであろうスイーツやお菓子を買って帰るために街中をあっちへこっちへ行っているようだ。

 まぁ私も、労せず美味しいスイーツを食べれるのだから文句を言う理由はない。

 少女一人に骨抜きにされた母と父を見ながら、明日のスケジュールを確認する。

 毎週決まった習慣となっている。

 そろそろ黄かその旦那が迎えに来る頃かな。。。

 その証拠に銀が食べている途中のケーキそっちのけで、フォークを置く。

『ピンポーン』

 と家のチャイムが鳴る。

 母と父は、世界が終わるかのような絶望に似た表情を浮かべている。

 チャイムを聞くと同時に銀は嬉しそうに椅子を降りて玄関に向かう。

「パパだぁ」

 私も銀の後を追っていく。

 扉を開けると、銀の言葉通りに黄の旦那の『黒さん』が立っていた。

 肩にはいつも通り、白猫のカグヅチが乗っている。

「いつもありがとうございます」

 少し不愛想な黒さんが軽く頭を下げる。

 銀はギュッと黒さんの脚に抱き着いている

「いつも言ってますけど、私たちも楽しんでいるので気にしないでください。

 今日は黄とアンバーは?」

「2人とも家で過ごしています」

 この人はいつも不愛想なトーンで喋るけど、どこか優しさを感じるのよね……。

「銀ちゃ〜ん! まだケーキ残ってるわよ〜」

 母の悲痛を込めた声が響く。

 それを聞いた黒さんは銀の頭を撫でて、優しく呟く。

「折角用意してもらったものだ、全部食べておいで」

「うん!」

 と銀は再び家に入り、母の元へと戻っていった。

「黒さん、黄には言ったんだけど、来週末私のピアノの演奏会があるんだ。

 もしよかったら四人で来てよ。

 券は黄に渡してるから」

「そのつもりにしています」

 そこから少し雑談をしていると、ケーキを平らげた銀が再び黒さんの脚に抱き着いた。

 いつものように『またね』と挨拶して別れた。

 部屋に帰ると少し落ち込んでいる母と父がいた。

 孫が帰ったジジババを見ているようで軽く笑ってしまった。




―――――――




 シュテルンビルトの地階のブロンズステージにあるホール。

 休日の真昼に行われるピアノコンサートには、当日券を求める人が行列するほどの盛況ぶりであった。

 その数時間後に始まったコンサートでは氷のように冷たい音色ながら、流れるようなメロディーに観客達は魅了される。

 「素晴らしい」「なんてきれいな」などの賞賛の言葉すら放たれる事なく、会場はカリーナの奏でる音だけが支配していた。

 観客席の中で目を閉じて音楽に集中する銀髪の少女、銀は口元を綻ばせる。

 目に光は薄らとしか映らないが、綺麗な音は銀によって光と同等に感じている。

 年に何回とない機会に銀は幸せに包まれながら堪能している。

 が、旋律が支配する会場を轟音が乱入する。

 会場の壁や天井に10個弱の穴が生まれ、鉄の塊が飛び込んでくる。

「さぁて、“性能テスト”を兼ねて氷の女王に舞ってもらいましょうか……」

 観客達が悲鳴を上げるより先に、鉄の塊を従えた男が言葉を放つ。

 男はシャツにネクタイ、白衣とどこから見ても研究所に勤めるエンジニア。

 ただ、その目は狂気に満ちて笑っている。

 男が指を鳴らすと、塊はパキパキと変形を始め、黒いワイルドタイガー……かつての偽タイガーが10体現れる。

 違いは背中に漆黒の大きな翼が着いている事、暗めのクリアパーツが流動的な模様が見える事。

 各部に改良が加えられている事が目に見てわかる。

「みんな!! 逃げて!!!」

 経験と本能的に護りながら戦える相手ではない事を悟ったカリーナは、叫びながら能力を開放する。

 氷が高速で偽タイガーたちへと延びていく。

 見事命中し、氷は圧縮しながら偽タイガーたちを囲っていき、氷の小山が形成される。

 観客達は我先にと各出口から出ていく。

 連れてきた偽タイガーたちが凍っても男は焦る事はなく、逃げていく観客達を見ている。

 観客が全員退避するまで男は動かず、カリーナをなめまわすように目線で観察する。

「さて、邪魔者が消えた事だし、スタートとしましょうか」

「あなた何者……?

 その機械……昔タイガーに入れ替わってた……H、01……s」

「その通りだけど、間違いだね。

 これはその改良型……既に別のモノ“H-06s”

 基本性能はあれを軽く凌駕する!」

 パチンと男が指を鳴らすと、H-06s達は難なく氷を割って出てくる。

「あなた個人の性能事態は01sの時に把握済みです……今回は新しい機能のための“人柱”としてお迎えしようと思っております。

 虫の息でもであればよろしいので……」

 男はH-06sの一体に指示を出し、地面へ掌から巨大なレーザー砲撃を放つ。

 カリーナが形成した氷は瞬時に溶け、レーザーがカリーナへと届く刹那、目の前を緑色”が通り抜ける。

 緑色”はカリーナの胴体に抱き着きつつ、地面へと滑り込む。

 レーザーを危機一髪で回避したカリーナは胴体に巻き付く緑色”を視認した。

 見覚えある琥珀色の瞳と愛くるしい笑顔の少女。

「アンバー!?」

「うん! 助けに来たよー」

 白基調のドレスに身を包んだアンバーは、緑色の髪をサイドポニー風にお団子にしている。

 いつもピアノを教えている小学3年生になった銀の双子の妹。

 姉と違い、かなり明るく活発でカメラを肌身離さず持ち歩く女の子だ。

 アンバーが離れ、2人は立ち上がるとカリーナへと手を差し伸べる。

「手をつないで、銀の先生」

 カリーナがアンバーの手を握った瞬間、アンバーから蒼い光が小さく立ち上る。

 するとカリーナの視界に今まで体験したことがない不思議な光景が見えてくる。

 今見ている光景に残像のような薄く動く光景が見える。

 それが未来予知を視覚化した光景であると理解したのは数秒後のことである。

 H-17sから放たれたレーザーの残像のようなものに寸分違わずに実際のレーザーが重なったのだ。

 アンバーが見ている光景とその慣れた動き。

 幾重にも放たれるレーザーや攻撃を意とも容易く避けていく。

 想定と違う光景に仕掛けてきた男の表情が強張る。

「なんで避けれる? って言うでしょ」

「なんで避けれる? っは!」

 自身の台詞を言ってのけたアンバに驚愕の声を挙げる。

 アンバーは満面の笑みを浮かべ、余裕綽々としている。

 避けるのはいいけど、どう打破すれば……とカリーナは利用できそうなものを目で探す。

「大丈夫だよ、怒った銀が全部やってくれる」

「え……?」

 いつも大人しい銀に能力があるなんて聞いたことがない。

 母の黄に聞いても、うーん。あるのかな? と言っていた。

 ないんだろうと思っていた。

 視線で銀を探すと、銀はステージの端に立っていた。

「…………さない。

 ――――許さない」

 静かに、だが確かに放たれた幼女の怒りに満ちた声。

 肩にはいつも連れている白猫のカグヅチが乗っている。

 爆発するような怒りではなく、永遠に燃えるかのように燃え続ける怒りを放つ幼女は齢10歳になろうかという銀髪の女の子であった。

 ムスっと頬を膨らませ、不機嫌な視線を男に向ける。

「先生のピアノ、邪魔した。

 ――天照(アマテラス)!」

 左目に赤い炎を灯した銀の冷たい言の葉と共に、シュテルンビルトの晴天の空は一瞬にして闇に呑まれた。

 真っ青だった空は漆黒の闇に包まれ、その中央に針で穴を開けたかのような点が煌めく。

 点は少しずつ大きくなり、明らかな光の球体となる。

「日輪」

 右目に宿った赤い炎が『ッボ!』と音を立てて爆発し、更に強く炎が燃える。

 それに合わせ、シュテルンビルトの漆黒の空に光の輪が掛かり、その中心に光の玉が煌めく。

 シュテルンビルトの空の異変に、カリーナも男も気づかない。

 ただ銀が力強く呟いているのが聞こえてくるのみ。

 当の銀は聴覚に集中し、10体の偽タイガーの位置を補足していく。

 両手を前で重ね、力強く呟く。

「天墜」

 銀の言葉と共に、建物の天井に10個の穴が穿たれ、その真下にいた偽タイガー達の身体の半身や全体が蒸発して跡形もなく消滅した。

 10体が無残にも破壊され、戦力をすべてそがれた男は手を前に出し、能力を解放する。

 残骸となった10体の破片が男の手に集まり、巨大なレーザー砲へとクリエイトされた。

「私の能力は“クリエイト”! 思い描いたものをスクラップから創作する能力です!

 大量にばらまいたレーザーを避けれますか!?」

 ははは!! と男は笑い、創作した砲台にエネルギーを充てんする。

「うるさい……!

 月詠、『新月』」

 右目に蒼い炎を灯し、銀は次なる能力を解放する。

 薄らと蒼がかった光が放射線状に広がり、アンバーとカリーナ、男を包み込む。

 包み込まれた瞬間に、男が捜索したレーザー砲が音を立てて崩れ去る。

 男が何度能力を発動させようと試みても、能力が発動することはない。

「もう、銀! 私の能力もキャンセルしないでよ〜」

「カグー。あの人、悪い人だから捕まえて

 ――――『スサノヲ』」

 銀が大きく見開いた両の瞳に、緑色の炎が灯る。

 肩に乗せていた白猫『カグヅチ』に緑の炎が燃え移り、カグヅチは急速な成長を遂げる。

 2mを超え筋骨隆々な身体、前足の付け根付近に純白の巨大な翼が生えている。

 ニャーニャーと言っていたのに、雄々しい雄たけびをあげている。

 銀の命令通り、一直線に飛び出し、犯人へと迫る。

 反射的に犯人が銃を乱射するが、カグヅチに到達前に銃弾が蒸発する。

 犯人の首元の服を噛み、前足で腹を踏み、捉えた。

 ホールに走って入ってきた黒が男の顔を握る。

「ウロボロスか……」

「……」

「魏 志軍はどこだ」

「しら……」


「パパ手を放して! 爆発する!」

 アンバーの叫びに黒は男から手を離し、バックステップする。

 と同時に男の頭は爆散する。

「証拠隠滅か……三人とも、無事でよかった」

「「ママは!?」」

「2人のおかげで無事だ。赤ちゃんもな」

 黒の報告を聞き、銀は静かに笑顔をこぼし、アンバーはピョンピョンと嬉しそうに跳んでいる。



 パンドラ事件から7年……。

 箱から出でたモノは数百年、千年の遺伝の後に生まれ出でるかどうかという新人類NEXTの到達点。能力の限界点。

 イザナミとイザナミから生まれ出でた神々の集合体

『銀』

 銀髪の長髪をなびかせ、音で世界を知覚する者。

 彼女は今後、能力を鼓舞する事無く、迫りくる危険にのみ力を振るい、優しい音楽を奏でて過ごす。

 優しい盲目の少女『銀』の物語はこうして始まった。




―――――――




 とある晴れた、よく星がきらめく夜。

 不定期開催される黄家周辺の友人たちのBBQ大会。

 親交がある者たちはスケジュールを合わせ、こぞって参加するイベントとなっている。

 今日の呼びかけは「ピアノを習っている銀が一曲弾けるようになったから発表会」だった。

 パンドラ事件後からトレーニングセンターに黄が連れてきていた双子。

 突然10代の少女が連れてきた双子の幼女。

 ボクの娘なんだと笑顔で紹介し、結果としてその場にいた者はは皆受け入れた。

 それから幼女たちと一緒に成長してきた。

「カリーナさんと舞さんが一時間遅れてくるっていうし、銀の発表会もカリーナさんが来てからね」

 銀を抱き上げた黄宝鈴は集まってきたメンバーに報告する。

 毎度嬉しくてたまらない笑顔が見れるだけで、メンバー全員がこれを見たかったんだとばかりに嬉しさに包まれる。

 黒は口元を綻ばせながら、皆のために肉や野菜を焼き始めている。

 ワイルドタイガーこと鏑木虎徹は、娘の楓と一緒に訪れてお酒を飲み始めていた。

 楓はアンバーと一緒にかけっこを始めている。

 ハヴォックはベンチに座り、ウォッカをたしなみながらパーセルから渡されたプリントを読んでいた。

 つかず離れずでパーセルが居心地悪そうに立っている。

 このBBQではもう定例行事と皆が笑ってみている。

 会場にはかつての仲間で一番長く2人と接してきた折紙サイクロンが楽しそうに会談している。

 この会はかつてのヒーロー達が集まり、親交を深めあうよい場となっている。

 ベンチにはバーナビー・ブルックス・Jr、ファイアーエンブレムのネイサン・シーモアは楽しそうに歓談している。




 川辺に銀の楽しそうな演奏が響き渡る。

 かつてのヒーローたちは自分たちが守ってきたものを再確認できる一時。

 夜は静かに煌めいていた。





......TO BE CONTINUED??






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■作者からのメッセージ
本当に皆さま、お久しぶりです。

巷ではタイバニの新作が決定したとか!
テンション上がって予定していたエピローグ書き上げちゃいました。

エピローグで時系列があっちへこっちへ行ってしまいますが、
今回は本編から6年後。

『死神の涙』編にて黒と鈴の元に来た二人の子供のお話です。

この子たちプラスでもう何話か書きたいなーと思いつつ。。。

タイバニ新作の報せで、世間でタイバニ熱が再燃することを……(*'ω'*)

ちなみに、本編中ではサラッと流しましたが、アンバーと銀の能力についてです。

アンバーは、チート能力から少しダウングレードさせて、『未来視』の能力となりました。
銀と組めば、元のチート以上の能力も……なんて考えていたり。

銀は逆に笑ってしまうくらいのチートを目指しました。
天照は、今回は光を操りましたが、粒子レベルでのテレキネシスという感じです。天墜はある漫画で超好きな技をオマージュしました。

月詠は、NEXT能力を鎮める新月、高める満月という補助的能力。

スサノヲは、対象に力を与える能力。もちろん銀も対象になりえる。

この三つの能力と白猫のカグヅチというのが銀の能力のセットです。
あとがきかいてて書くの忘れてるなと気づきましたが、カグヅチは銀が形作る際に生まれた猫という設定でしております。
別のエピローグでそこら辺は書こうと思っております。

皆さま、楽しんでいただけたなら大変うれしいです。
気軽に感想いただけると大変うれしいです(^^♪


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