■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
正義の紅い魔王
プロローグ
(カンピオーネ!×Fate)
  [→]  【PAGE 1/2】
 辺りは、赤く燃えている大地。

 此処は、一人の男性を始末する為に用意された舞台。

 男性は、神秘を扱う魔術師。魔術師を殺し気に来たのも……また、魔術師達だった。

 男は、命が失われて行くのが許せなかった。ただそれだけで、戦い続けた。

 この理想の果ては、既に知っていた。それでも許すことが出来ず、最愛の女性と別れ――此処に至った。

 そんな男に近付く人の気配。しかし男の体は死に絶え、身体を動かす事は不可能だった。

 男は死の淵で呟く。最愛の女性の名を、もっと一緒に居たかった……と。

「なら、一緒にこの世界から逃げる――士郎?」

 掛けられた声は、最愛の女性のモノ。

「遠坂……」

「私ね、ずっと昔にアーチャーからアンタの事を頼まれてたの。それに……絶対に幸せにするって、私自身に誓ったから。このままの終わりじゃ、私が納得できないのよ」

 最愛の女性は、あたかも自分の為と言っているが――それは、彼女なりの優しさ。

「だが、そんな事をすれば……。遠坂も協会から追われる事になる」

「大丈夫、そんな下手はしないわ。士郎の了解さえ取れれば、すぐにでも並行世界への移動が可能よ。まぁ、それでも一寸は時期を待たないといけないけどね」

「それは、如何言う意味なんだ……遠坂?」

「その言葉の意味を聞くって事は、私と一緒にこの世界から逃げるって事よ。それでも、聞く?」

 女性の言葉を聞き、男は暫く悩んだ末に答え出す。

「ああ、俺にはやっぱり遠坂が必要だ。俺は、遠坂と一緒にこの世界から逃げる事にする」

「そう。なら、教えてあげる。まず、私とアンタの魂を人形に入れ替えるわ。そして私の体は、その見返りとして蒼崎に提供する事になってるの。で、その後――冬木の土地で、第二魔法の失敗をする。これは、まぁ、協会に対する体面ね。実際は、冬木の大聖杯に残った魔力を使って並行世界にトンズラするってだけよ」

 こうして、一組の男女は世界から姿を消す。

 そして、移動を果たした世界で男は神を殺し。新たな世界で八人目の『魔王』として君臨する。

 ――◆◇◆――

 気が付くと俺は、知りもしない空間に居た。

「始めまして、隣り合った隣人の子にして――私の新しい息子《・・・・・》」

 背後から声をかけられ、振り向くと其処には一人の女性と――あの聖杯戦争で倒した筈のギルガメッシュが居た。

「新しい、息子? それに此処は――」

「黙れ、雑種。貴様が元居た世界で、分け身とは言え――我を倒しさえしなければ、我は此処になどに来る必要は無かったのだ」

「如何言う……事だ」

「フフフ……。この世界はね、“まつろわぬ神”と呼ばれる存在が玉に地上に現れるの。そして、その“まつろわぬ神”を殺して神の権能を算奪した者を【カンピオーネ】或いは【魔王】と呼んでいるのよ」

「そう言うことだ。忌々しくも、貴様は過去に於いて我を打倒している。故に我は、この世界の法則に則り――貴様に我の権能を授けに来た」

「一寸、待て! 当時、お前に留めを指したのはアーチャーの筈だ。だとしたら、俺がお前を殺した事にはならない筈だ!」

 俺が、ギルガメッシュの言葉に反論すると。もう一人の女性がその答えを話す。

「それがね、そう言う訳にも行かないのよ。彼を倒したアーチャー――【英霊】エミヤ シロウと貴方は同一存在。だから、自体がややこしくなちゃってるのよ。同一存在で在る以上、彼を殺したのは貴方。今の在り方が違うと言っても、それは事実なのよ。何よりも私達の世界には【英霊】エミヤが居ないわ。いいえ、衛宮 士郎と言う人物自体が存在しない。だからこそ、神を殺した《・・・・・》と言う事実を持った貴方をそのまま送れないの」

「故に、苦肉の策として貴様に我の権能を授けに来たと言う訳だ! 何より、同じ【英霊】であるアーチャーではなく。当時の未熟な貴様に追い詰められた事自体が、我慢ならん! 我が権能を授けるのは、いずれ貴様を殺す為と知れ! 必ず我は、“まつろわぬ神”として顕現する。その時こそ、彼の戦争に於ける汚名を雪ぐと同時にその命を我が前に差し出すが良い」

  [→]  【PAGE 1/2】

■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る