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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その9
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 例えば、対人戦では生き残る確率がそもそも違ってくる。降伏が可能、あるいは戦闘不能状態に陥れば見逃されたりする対人戦と違って、対BETA戦は負け=死亡である。
 またBETAは対人戦と違って駆け引きをしてこない。基本行動は前進と、攻撃だ。回避、という選択肢がまずない。対人戦はある程度弾を避けられることを前提に銃を運用する必要があったりと、いろいろと行動の先読みをする必要があったりするのだ。

 「理屈はわかるが、世の中そんなにあまくはないぞ?対人戦の必要性が全くないとは思えないが」

 「ええ、ですので最低限の対人戦訓練は行っています。その際は、不殺まりもと言われるくらいの活躍をしていたんですが、今回は久しぶりの対人戦ということと、相手の力量が高いだけあってそこまでの余裕はないみたいですね」

 「不殺?」

 「ええ、簡単です。管制ユニットに一切損傷を出さずに相手を戦闘不能に追い込む。別名、だるま作りのまりもとも呼ばれていましたが、そちらのほうは本人が嫌がるので周りには広まっていないですね」

 小塚の頭に四肢を切断、あるいは破壊された戦術機を睥睨するまりも機の姿が浮かぶ。ぶっちゃけ、怖い。
 それに、相手を殺さずに完全無力化するにはそれだけ圧倒的な力量が必要だ。知れば知るほど期待のルーキーの力量に驚かされる。

 「おや、どうやら調子を取り戻したみたいですよ」

 隆也がモニターを見ながら小塚に告げる。
 モニターには四肢と頭部を切断され無力化された撃震弐型が転がっていた。

 「スパイク9、戦闘行動不能、大破と認定」

 長刀でだるまを一機作り上げたまりもは、次の獲物を探してセンサーに目を向ける。

 「図に乗るなよ、新人!」

 その頭上から奇襲をかける4機の撃震弐型。
 副隊長の広中中尉はまりもの存在を早急に排除する必要があると認め、中隊から一個小隊を対まりも用として裂くことを決定したのだ。

 「ようやく暖まってきたところです、先輩方こそお覚悟を」

 静かにまりもが告げた瞬間、一方的なまりもの蹂躙が始まった。
 制空権を握った第一中隊の4機からの銃弾を嘘偽りなく紙一重でかわすまりも。
 その機動は今まで彼らが見てきたどの国の機動とも違っていた。
 人間の機動を越えた機動、それを戦術機が可能とすることは頭では皆理解していた。だが、頭で理解していただけで誰もその本質に迫ったことは無かった。
 それをいままざまざと見せつけられていた。
 怪奇な三次元機動は、人間には到底出来まい。それをまりも機は苦もなく実現していた。
 体感時間は一瞬。実際の時間にしても数秒だろう。
 気がつけば眼下にいたはずのまりも機が頭上に位置していた。
 そして無残にも四肢を打ち砕かれて落下していく3機の戦術機。

 「終わりです」

 急降下するまりも機に対して衛士が回避行動を取るが、それはまるで読まれていたようにまりも機から放たれた120mmが吸い込まれていく。
 一瞬にして両腕をもぎ取られ、体勢が崩れて機体の制御が失われる。
 狙いしましたように降下中のまりもが残った両足を切断していく。

 「スパイク5、6、7、8。戦闘行動不能、大破と認定」

 管制官の声がややうわずっているのも仕方がないだろう。
 それだけの機動だったのだ。おそらくこの場に居る誰もが目を疑ったに違いない。
 いや、一人だけ例外がいる。立花隆也だ。

 「さすがまりもん、レーザー級に照射されるぎりぎりのタイミングを見誤っていないな。とは言え、対人戦で光線級を意識するのってどうなんだろうな?」

 「もう、今は軍務中、神宮司少尉でしょ、立花伍長」

 先ほどの苛烈かつ勇猛な機動を行ったとは微塵も感じさせない柔らかい声が、隆也の鼓膜を震わせる。

 「あいあい、了解。でも与えられた状況を最大限生かすのは最低限必要なんじゃないですかね、神宮司少尉。今回は対人戦でBETA出現の制限も掛かっていないんですが。あえて飛行高度に制限を課すのどうなんです?」

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