■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その8
(マブラヴオルタネイティヴ)
[←]
[→]
【PAGE 2/4】
必要とされなくなった自分が、ようやく死ぬことを許されたのだと、安堵の吐息を漏らす。それは、一体どんな心境なのだろうか。無意味な死を拒み、祖国に、兄弟姉妹と共に尽くすことを喜びとし、オルタネイティヴ3に協力することが全てだった人生。
その終着地点は死。ただただ死。なにを紡ぐこともなく、ただ死んでいく。
本来ならば無念の想いを抱くはずが、彼女は全ての楔からの解放すら感じていた。
ただ一つ思い残すことがあるとすれば、一緒に戦術機にのる少女の事だ。彼女はまだ絶望も希望も知らない。ただ祖国のために尽くすだけの存在だ。
初めて彼女は空に祈る。出来ればその少女に幾ばくかの救いがあることを。
1993年8月 インド後方支援基地 帝国軍領域
薄暗い戦術機整備用ハンガー内には第十三戦術機甲大隊の整備兵たちが勢揃いしていた。ぐるりと彼らに囲まれるような位置に一人佇む隆也。
「で、新入りよ、当然わかってるんだろうな?」
整備兵の中で、隆也の正面に立っていた壮年の男が口を開いた。整備場で怒鳴り散らし続けたためか、かすかにかすれているがよく通る声だった。
「もちろんです、整備班長。大陸帰りの整備兵に、新規に大陸派兵部隊へと入る整備兵の掟、しっかりとたたき込まれましたからね」
隆也は両手にそれぞれ持ったボストンバッグを見せつけるようにしていやらしい笑みを浮かべた。
「ほぅ、若いのに肝も据わっている。大したもんだ。だがお前さんは、学校を出ただけのひよっこのくせに、いろいろと特権を持っている。特に戦時での独自行動権限なんかは最たるものだ。一言で言えば、俺たちはお前のことを気に入らない。そんな状況を、はたして覆せるかな?」
隆也の態度に整備班長の口元にも不敵な笑みが浮かぶ。
「自信はありますよ、まあ、見てもらえればわかると思いますが」
隆也はバッグを地面に下ろすと、もったいぶってゆっくりとジッパーを開いていく。
中から姿を現したのは本。大きさはA4サイズだろうか。
「たとえば、これです」
隆也が取り出した本を見た瞬間、周りを取り囲む整備兵たちのどよめきがハンガー内を揺らす。
「その絵柄、間違いなくドエロス高田のもの。俺が見たことがないと言うことは、最新作か!?」
整備班長のエロスに満ちた目が、隆也の手に掲げられた本に向けられている。
ドエロス高田。日本帝国が世界に誇るアングラ文化であるHMANGAのなかでも、一際独身男性、あるいは前線の性欲を持て余す男性たちに、尊敬と敬意を払われている作品を作り出す作家。
「それじゃ、その中にあるのはドエロス高田の最新作だというのか?」
驚愕の声が漏れる。ドエロス高田の本を耐性のない若い男性兵に与えた結果、翌日に仕事もままならないほどに衰弱して現れるか、栗の花の匂いが籠もる部屋にて失神している姿が発見されるかのほぼ二択であった。
それ故、かのHMANGAは最上級者用のSSSランク本として、初心者には決して見せてはならない一種の封印指定ものになっている。
その最新作を持ってきた隆也は、それに対して含みを持たせた笑みを返す。
「ええ、ですがそれだけではありません。全方位完全対応畑山、ょぅι゛ょ好き好き熟女もありよ津田、溢れ出る劣情の大柳」
「ま、まさか、あのエロス四天王の全ての最新刊を持ってきているというのか!?」
驚愕が、戦慄が、そして圧倒的なまでの性欲が倉庫内に充ち満ちる。
エロス四天王。その名は海外にHMANGA愛好家ですら知らぬものはいないビッグネームだ。その全ての最新刊を持ってきているとは。
女兵士がみたら、最低、と一言で表せるそんな風景がそこにはあった。
「その通りです。いずれも最新刊、内容は言わなくても想像はつくでしょう?そしてさらに、帝国軍内務省の3大美女の最新グラビア写真集です」
[←]
[→]
【PAGE 2/4】
■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る