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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その45
(マブラヴオルタネイティヴ)
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だが当然、彼らを持ってしてもオリジナルハイヴの圧倒的BETAの物量、その圧力の前に一機、また一機と犠牲が増えていく。
せめてもの救いは、彼らがS11を起動している事くらいだろうか。生きてBETAに喰われる悲惨さを思えば、まだましな死に方だっただろう。
だがその犠牲は決して無駄にはなっていない。彼らのおかげで少しでもBETAの圧力を和らげることができ、また貴重な時間を稼ぐことが出来たのだから。
最速での前進を行う米軍とソ連軍。二つの国はルートこそ違えど、目的とする場所、すなわちアトリエの位置は同じだ。
必然的に部隊が集結すると共に、米国、ソ連と部隊が入り交じる、端から見たら混成部隊とみられてもおかしくない様相を呈してくる。
だが不思議なことに、二つの国はまるで元から同じ一つの部隊であったかのように、効率的に動きBETAを屠っていく。
お互いが一級品の衛士同士だったこともあるのだろうが、それは恐ろしく練度の高い共同作戦訓練を受けた部隊と同等の動きをしていた。
米国軍の軌道降下部隊の隊長は、ソ連がここまで協力的な連携を取ってくるとは思っておらず、少々衝撃を受けていた。
あの自国が一番、他国は有象無象の輩共、とか思っていそうな、高飛車なソ連がそのような共闘をやってのけるとは、実に衝撃的な出来事だった。
対して、ソ連軍の軌道降下部隊の隊長は、内心忸怩たるものを抱えていた。
如何に本作戦の担当将校であるバザロフの命令とはいえ、あの米国軍と共同戦線を張ることになろうとは。
もともとの命令は、そのような事態になった場合、極力協力し合い行動すること、だったがまさか両軍が入り交じり同じ目的地へと向かうことになるとは思っても見なかった。
だが、そんな彼の思いとは別に、同じ一流同士が組んで同一の目標に向けて邁進する充足感が心にわき上がってきていた。
如何にソ連軍が広いとは言え、これほどの腕を持つ者は少ない。ましてや、極東の小娘が提唱した新しい戦術機の運用を完全に物にしているものはかなり限られている。
というのも、ソ連は独自にハイヴ攻略用の機動戦術を構築していたために、なかなか他国の、しかも天才とは言われているが一介の一衛士が提唱した戦術機の運用理論はなかなか受け入れられなかったのだ。
そんな中、一部の柔軟な思考を持ち、かつその機動戦術の有用性を見いだした者は、その戦術機動を物にすべく一心にその取得に取り組んだ。
今回の部隊にいるのはそんな連中が殆どだ。つまり、良い物は良い、といいそれを受け入れるだけの度量を備え持つ者ばかりなのだ。
そう考えれば、この二つの国の戦術機部隊が互いに共闘するという希有な光景を見ることが出来るのも納得だ。
かくして二つの国の衛士たちは、共同して目的の地へと向かっていく。
1997年 初夏 国連軍横浜柊町基地
「博士、超時空振動計に、微細な振動波を検知しました」
イリーナ・ピアテフ、ポーランド出身の優秀な技術者であり、夕呼の秘書的な立場にいる女性から、香月夕呼に報告がもたらされる。
「そう、それで場所は特定できる?」
「それが…おそらくカシュガルハイヴ、オリジナルハイヴ周辺と言うことしか」
「そう、やはりね。隆也、あんたの読みは正しいかもしれないわね」
呟く夕呼の表情には、いつもの人を食ったような余裕は感じられない。
「博士…」
か細い声で夕呼を呼ぶ声に、彼女ははっと振り返る。
そこには頭からうさ耳をはやした少女が。まだ幼いためこの場に、すなわちAL4計画の司令室でもある横浜基地の司令室には非常に似つかわしくないように見える。
「社、大丈夫よ。まだ、最悪には至っていない。可能性があると言うだけよ」
言いながら手元になるコンソールをたたき出す。
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