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黒の異邦人は龍の保護者
外伝 “ Merry Christmas ーー聖夜の夜に in NC1976 ーー”『蒼き聖夜』編
(TIGER&BUNNY × DARKER THAN BLACK)
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  ※この話は「死神の涙編」よりももっと前のドラゴンキッドがシュテルンビルトに来た当初の話となります。




 異能力を手に入れた進化した人類“NEXT”と人類が共存する街“シュテルンビルト”。

 雪が降りそうなほど冷えきった夜。

 寒さを凌ぐように恋人達は肌を寄せ合う。

 寒さに耐えるように一人で歩いている人達は身を縮め、寒さに耐えている。

 緑のパーカーを着た東洋人の男、李 舜生《リ シェンシュン》は周りには目を向けず、街を歩いていく。

 マフラーも手袋もせず、李 舜生は寒さに耐えている。

 バーでのバイトを終え、李 舜生はポケットに“とあるモノ”を握り締め家路についている。

 程なく李 舜生はお世話をしている女の子、黄 宝鈴のいる家へと帰っていく。

 シュテルンビルトに来て数ヶ月、初めての師走。

 豪雪地域のように冬には雪が常時降り積もっているという事もないが、寒さは体の芯まで突き刺してくる。

 ブルっと体を震わせ、李 舜生は家へと入っていく。

 玄関に入ると、リビングの電気が付いているのが見える。

 テレビの雑音も聞こえ、いつものことか……っと李 舜生はリビングへと足を運ぶ。

 世話をしている黄 宝鈴《ホァン パオリン》は中学生程の薄い金髪のボーイッシュな女の子。

 トレードマークの黄色地に黒のラインが入ったカンフースーツは床に無造作に置かれている。

 タンクトップとパンツ姿となった黄は机に突っ伏してスヤスヤと安らかな寝息を立てて寝ている。

 世話をしてもらっている李 舜生の帰りを待ち、いつものように風呂上がりの格好で眠っている。

 黒のタンクトップにパンツ一丁。

 いつも通りとはいえ、この師走真っただ中でこれというのは……っと李 舜生は着ていた緑のパーカーを脱いで黄に掛ける。

 緑のパーカーを掛けられた瞬間、黄は嬉しそうに頬を染め、少しモジモジとして気持ちよさそうにヨダレを垂らし始める。

 李 舜生はいつものように、黄を抱きかかえようと視線を机に落とすと、そこには見慣れぬ手紙を見つける。

 手にとってみるとそこには黄の文字で書かれていた。


 『サンタさんへ

 ボクは一杯一杯悪いことをしてきました。

 お父様もお母様も、皆を傷つけたんです。

 師匠に出会わなかったら僕はきっとまだ皆を傷つけてきました。

 だから、シュテルンビルトのヒーローとしていっぱいいっぱい頑張ってきました。

 皆を守るために、毎日毎日一杯訓練もしました。

 ボクは悪い子だからプレゼントを貰えないのはわかってます。

 でも、師匠に早く追いつきたいから、ボクはダメだとわかってますがお願いです。

 ボクに……』


 手紙は途中で終わっていた。

 手紙の中は、自身が能力を扱いきれず、両親や周りの人達を傷つけた罪悪感で包まれていた。

 能力の制御を覚え、街を守るスーパーヒーローになったとしても黄の心には後ろめたさが残っている。

 強力な能力を振りかざすよりかはマシだが、子供なのだからもっと前だけ見て楽しめばいいのに……。

 っと李 舜生は苦笑を洩らす。

 そして、手紙を読んだ李にはわからない単語があった。

 『サンタ』

 “さん”が着けられていることから、人物の名前であるのはわかる。

 しかし、黄の実家にもそういった名前を聞いた事はないし、シュテルンビルトにいても聞いた事はない。

 しかも、懺悔して何かを欲して、それを貰えるといった文脈。

 いったいサンタとはどういったものなのか……李は必死に考える。


 李はこの世界の住人ではない。

 ゲートと呼ばれる物理法則が通じず、不可思議な現象が多発する領域が東京とブラジルに出来た世界の住人であった。

 本当の星空は偽りの星に変わり、月は姿を隠してしまった。

 NEXTに似た能力者が跋扈する世界で、なんの能力も持たない李は身に付けた格闘技術のみで生き残ってきた。

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