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地味な男-今日も彼は挑戦する
(シェアハウスー今日も僕は監視するー 変人さん)
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※本作は添え書きに元作品『変人さん』とありますが、当作品の概念及び要素のようなものを持ったオリ主であり、『変人さん』のキャラクター自体は登場しません。
少々下品な表現を含みます。
ご理解お願いいたします。

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シェアハウスーーそれは複数人でひとつの住居を共有することだ。
管理人且つ住人のシロダをはじめ、それぞれ何かしらの目標を持つ学生達が暮らす家で起きた、『7人目』の住人を巡る一騒動があった……
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「あっ、ヤバみな良きフレーズ閃いちゃった的な!」
リビングで食卓を囲む一同、機嫌良く声を上げたのはヘッドホンを首に掛けた女子・ミツバだ。
ロックを好む彼女は自身もミュージシャンに憧れ、作曲を思案することが多々ある。
「こーら。食事中なんだから後にしなさい。」
ロングヘアのアカネが苦笑交じりに嗜めると周りも笑う。
女優志望のしっかり者な彼女とのやり取りも日常の一つだ。
そして……
「そうそう、先ずは食うのが『いーと』思うぜー」
ほくろのある口元をニヤつかせながら青年・フジが言い放った瞬間だった。

・・・・

その場にいた一同が黙りこくり、空気が凍りついた。
芸人を目指す彼は度々ギャグを咬ますが、レパートリーは駄洒落ばかりで陽気ではあるがムードメーカーには成り切れていない前途多難な男だ。
大体はシロダが雑にあしらうなり、彼と腐れ縁の長髪を結った気怠げな青年・アイカワがだりぃと呆れるなりで終わるまでが日常茶飯事だが、その日はどうやら違うようで……

「ブッフ!!!」
ッ!?突如フき出す声が響き、一同は思わずそちらに視線を向ける。
本人も思うところがあったのだろう、繋げるように不自然に咳き込む彼に一層彼らは困惑した。
「ゴホッゴホッ!?ご、ごめん急に…!」
茶色いベストを着て眼鏡をかけた青年ーーさっぱりとした短髪とは裏腹に猫背気味でやや頭を垂れている彼は無理矢理咳で誤魔化しているが笑ったのがバレバレだ。
「ちゃ、チャギ?お前……」
「アッウッエッ、ごめごめんねいきなり笑って、気持ち悪かったよね!?」
いきなり!?万年スベり男フジがタイミングからして期待に顔を輝かせるも、しどろもどろな彼の言い分に困惑するとミツバとシロダが肩を叩く。
「んま、思い出し笑い的な?」
「涙拭けよ。」
「あっゴメンネ、本当に。またボクが余計なことしちゃって……」
「オロオロすんなよ、気にし過ぎだ……」
ガーンと残念そうな表情を浮かべるフジを尻目にアイカワが宥めるも、チャギは空になった食器を慌てて重ね立ち上がった。
「だ、ダイジョブダイジョブ。ご馳走様でした……みんな喉渇いてるよね?水持ってくるよ……」
えー!?彼の様子に声を上げたのは小柄な女性ユズーー漫画家を目指す傍らで住人全員の食事を含む家事をこなす面倒見の良い女子だ。
「も、もぅ終わり!?チャギ君もっと食べなよ!」
いつもながら折角の料理を殆どお替りもせずに済ませてしまう彼に思わずやや不服そうな口を開くが、当の青年は全員に水の入ったコップを配ると申し訳無さそうにそそくさと自室に戻ってしまった。
へたり込むフジに困ったように首を傾げるユズーーやや気まずい空気が流れる中、アイカワがやれやれと首を振る。
「たりぃなぁ、シロダ。この空気どうにかしてくれ。」
「あ、ああ……もう随分経つし悪い奴じゃないんだけどなぁ。」
「そうそう、なんだかんだお掃除とかも手伝ってくれるしね。」

実を言うとチャギは彼ら6人よりだいぶ後に入った者だ。
元々人見知りらしいがそんな自分を少しでも変えたくて入居を希望したと言っていた。
夢については特に聞いたことがないが、わざわざそのうえでシェアハウスを選んだところからしてさしずめ『他人に慣れる』と言ったところだろうか。
掃除やハウスメイトの用事を誰より率先して手伝うなど気が利く面を持つ一方で、口数が少なくおどおどと遠慮がちなその態度は、さながらサークル仲間のような距離感になっているシロダ達にとっては浮いていた。

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