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騎士の片思い
(ファイアーエムブレム聖戦の系譜)
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吹雪の夜、一人の女性騎士が夜のシレジア城廊下を歩いていた。
色々な想いを胸に想いながら―――・・・・・・。

貴方(レヴィン)様の事、本当は好きでした。
だけど、それじゃ・・・妹(フュリー)が可哀想でした。
昔からあの子は貴方様の事だけを思って忠誠を誓って来たのですから――――・・・・・・。
私はそんなあの子に敵いませんでした。あの子の方が上。だから仕方なかった。諦めるしか無かった。
それでも、そんな貴方を想い続けました。叶わないと分かっていながら、仄かな想いを抱き続けていました。
昔、貴方は私の事、好きだったと知った時は嬉しかった。しかし、私はシレジアの四天馬騎士筆頭。
それは許されない事。シレジアの美しい大地を守る為に私は戦い続ける。貴方やあの子の未来、シレジアの為に・・・
その為に私はシレジアに存在する。御免なさい。もう貴方の風に触れられない。さよなら―――・・・。
フュリーの事、ラーナ様の事を宜しくお願い致します――――。


昔からマーニャは才色兼備でシレジア国内で人気高く、男性ファン・女性ファンが多数居た。
そんな完璧な女性にも悩んでいる事がある。それは、『片思い』と言う名のものだった。
マーニャは今も昔も変わらず、レヴィンの事を思い続けていた。だが、叶わないという事も分かっていた。
明日。もう一人の四天馬騎士・パメラ戦を控えつつも、眠れないのであった。
これがもう最後なのかも知れない。今までは思わなかった不安と恐怖。その気持ちがマーニャを襲う。
「これが、恐怖なのね。今までは感じた事すら、無かったのに・・・。」
そう呟きながら、窓に映る冬景色シレジア城下町を見る。珍しく吹雪の晴れた夜空にただ想う人の姿が思い浮かぶ。
「レヴィン、様・・・」
微笑んでいた。優しい風を身に纏い、色々な人と話していた。王子とは思えれない優しさだった。その風にずっとマーニャは触れていたかった。レヴィンにも、その風にも。
「貴方はお優しい方。最後の最後まで、私をそんな気持ちにさせてくれた・・・。だけど、私はシレジア騎士筆頭。私は戦う事でしか、生きていけない女。こんな私をお許し下さい。これが、私の生き方ですから。」
瞳に涙を浮かべて、セイレーン城方向の方に敬礼する。そこに想うあの人が居るからだ。
風の聖書フォルセティを手にすれば、レヴィンはきっと自分の思いを知る筈になる。だが、それをマーニャは口に出す事が出来ない。シレジア四天馬騎士筆頭としての誇り、自分の誇りがマーニャを縛り付ける。その道はマーニャ自身が望んだ事。それに後悔はしない。レヴィン、ラーナという君主の騎士で居られた事が誇り。それは騎士としての自分の誇りでもある。今、後悔し悔やんでいるのは女自身としての自分の片思いだった。
「私がこの想いをしなければ、私は女性に戻る事なんて無かった筈。どうしてですか?レヴィン様―――・・・。私を女性に戻してしまったのですか。そのせいで、私は思い悩んでいるんです。でも、叶わない。恋なんて。私は騎士。女性じゃないのですから――――・・・。」
自分が原因だと分かっていながら、思い人を責める。
そんな自分自身が穢いと自己嫌悪に陥りながらも、誇りを胸に何時もらしい振る舞いをする。
明日はシレジアの運命を決める戦い。その戦いにマーニャは分かっていた。
恐らく自分は唯では済まされない、と。
何せ相手は四天馬騎士2との戦いだ。それを想定し、結論付ける。
それでも怯み、恐れる訳には行かないのだ。自分の騎士としての自分が居るからだ。
女性を捨て、騎士道を選んだマーニャ。それに後悔など無い。
ただ、この片思いは後悔した。妹を思うと、自分の気持ちは言わない方が良い。
言えない悔しさを責め続けながらも、騎士として生き続けてきた。今更、後戻りをする事も出来ない。

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